今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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特別な魂と未だ分からないあたしの罪

特別な魂

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「ハヅキ。今日までよく頑張りましたね。今回が最後の転生です。
 貴女もこれまでの人生で色々学んだと思いますし‥色々考えたり反省したと思います。
 貴女の贖罪は終わりました。
 今世は『貴女の理想』の容姿にしてあげますから、最後の人生楽しみなさい」
 「神様」がにっこり微笑んでおっしゃいました。
 頭に直接‥語り掛けてこられるような優しいお声で。
 ああ、この声は‥今までも時折聞かせて頂いていた声だ。とうとうあたしは神様にお会いすることが出来た!
 あたしは顔をそっと上げて(不敬になるといけないから、ほんのちょっと)神様を盗み見た。
 神様は美しい人だった。
 秋の稲穂を思わせる輝く長い黄金の髪、常に慈愛に満ちた微笑を浮かべる花のかんばせは綺麗な卵型。薔薇色の頬。なだらかな弧を描く眉、真っすぐに伸びた鼻梁はだけど高過ぎずなだらかで、透き通って輝く瞳はまるで空か海を思わせる。微笑を浮かべた唇は桜色‥
 咲き誇る薔薇の様な華やかさはない。 
 神様は‥まるで自然そのものだった。
 暖かさは‥だけど、不思議と感じられない。
 母なる大地に抱かれているような‥そんな安心感や安らぎは感じられなかった。寧ろ‥あんなに柔らかで温かく微笑まれているのに‥何故かあの方からはほんの少しの温度も感じなかった。
 冷たいのではなく‥無機質。
 大自然が作った、厳しくも美しい光景を見た時、その神々しさに感動し、急に‥不安になる。自分がちっぽけで‥汚れて見えて、この場所に居ることが何か‥場違いのように感じられる‥そんな感じ。
 作り物じみた美しさを讃える圧倒的に高貴な存在。 
 この方の前では、人間の営み全てがちっぽけで馬鹿らしいことのように思えた。
 そうか‥相手に温度を感じないということは‥こんなに不安で‥遠い存在に感じるのか。
 自分があんなに求めてきた美しさの実態? 「リアル」? みたいなものを目の当たりにして‥あたしは急にストン‥と腑に落ちた。
 あたしが求めていた「美しさ」はこうじゃない
 そう気付いた。
 なのに‥
 さっき神様は言った。 
「今世は『貴女の理想』の容姿にしてあげる」
 って‥
 
 いや! 結構です。

 慌てて断ろうと思ったのに、
 あたしは‥
 気付けば3歳の子供になっていた。
 あたしの‥10回目の転生が始まったのだった。



 ここに至る詳しい経緯なんかは今は割愛するが、取り敢えずあたしの状況を簡単に説明しようと思う。
 あたしハヅキは『転生リピートタイプ10』という魂を持っている。
 転生をご存じの方は多いだろう。
 転生というのは、早い話「生まれ変わり」なんだけど、それは普通の人間にとっては実感できるものではない。
 例えば‥プラスチックをリサイクルして新しいプラスチック製品にしたところでそれは元のプラスチックと同じものだろうか? 新しい製品に元の製品の「面影」はあるだろうか? 答えは否だ。 
 普通の人間の転生とはまさにそんな感じで‥新しい人生に前世の記憶はない。
 だけど‥牛乳瓶やなんかは洗浄・消毒してまた同じガラス瓶として使う。
 それは前の製品と出荷先やなんかは違うが‥製品自体は前と同じ牛乳瓶だ。
 つまり、前世の記憶をもって新しい人生を送る。それがあたしたち‥「転生リピーター」だ。
 あたしたちと普通の人間の魂は本質が違う。人と獣よりも‥違う。
 普通の魂が「純粋な自然物質」であるのに対して、あたしたち転生リピーターは、人工否神の作った「作り物」なのだ。
 魂ってのは、何度も使っていると摩耗したり劣化したりして、やがて消滅する。形あるものはいずれ消滅するのは世の定めだ。そこであたしたち人工物の出番だ。あたしたちは、天然物の不足を補う代替品ってわけだ。
 作ってみたものの‥あたしたちはまだ試行段階だから、神様はあたしたちの経過観察をしてる。
 あたしのtypeの後ろの数字「10」は使用耐数というか‥耐久回数が10回ですよって意味。使用期限と同じで「これくらいなら大丈夫」って回数だ。多分、10回以上でも使えるだろうけど‥基準10回。10回までは確実に大丈夫‥ってとこかな。
 でも、リサイクル必至の紙やらプラスチックに比べて連続使用可能な「丈夫なガラス」の方が価値ありそ~って言ったら「そういうとこやで、アンタのあかんとこ」神様に変わってあたしたちを監視、観察している代行者の若者が呆れ顔で言った。
「アンタは一回目の人生でヘマした‥いうならば要注意人物や。
 何とも‥よくないバグを出した。俺はアンタのバグについて詳しくは知らないんだが‥何ともよくないバグだったらしい。
 その修正は、でもアンタら自身がしていくしかない。というか‥アンタらにそれが出来ないって分かったらこの計画は頓挫してまう‥ってわけや。
 アンタらはこの後の人間の未来を担ってる期待の新星や。
 せいぜい頑張りや」
 彼はそう‥慰めとも応援ともつかない様な事ことをあたしに言った。

 何ともよくないバグとはいかなるものか。
 
 それは教えてもらえないらしい。(※ 調べればわかるらしいが、その人は「そんなん面倒くさい」って調べなかったらしい。曰く「担当はいっぱいいるんよ。一人に構ってられへんわ」)
 これから10回の人生でそれを見つけて‥自分で反省して改善して行けなければ、この計画「代替人工魂計画」は頓挫する。
 何とも責任重大だなあ‥
 と‥しみじみ考えさせてもらえる時間も与えられずにあたしの人生はスタートし、終わり、また始まった。
 10回分。
 そして、今回が最後の10回目。
 今度ばかりは代理人ではなく神様本人があたしとお会いしてくださるようで‥あたしはその神々しい姿を見て感動した。
 そして‥
 自分の間違いに気付いた。
 憧れ‥誰もが憧れ、遠巻きに眺めるだけの高嶺の花的存在の美人になりたい。
 恋だって‥したい。
 あたしでも‥じゃなくて、あたしがいいって人と恋したい。
 大事にされたい。好きって言われたい。勿論あたしだって、大事にしたいし、好きっていっぱい言いたい。
 でもね、あたしは劣等感の塊だから‥「こんなあたしって思ってるあたし」だったら「好き」って言えないんだ‥。
 だからね、あたしは
 自分に自信が持ちたい。
 大丈夫、
 不美人だ‥否‥そこまでじゃなくても、「お前なんかが相手を選べる立場か。身の程をしれ」って思われてるんじゃ? って思わずに済むように‥「あたしはそんなん思われる顔じゃないぞ! 」 
 そう思ってたんだ。
 その為に誰にも文句言われないような‥美人になりたい。
 美人になったら誰にも「あんなのに好かれても嬉しくない」「あんなのじゃな‥可哀そう」って言われない。
 もう、誰にも容姿で差別されたくないんだ! 
 そう思ってた。
 
 でも、違った。

 あたしは見栄ばっかりだった‥
 容姿で差別してたのは‥あたしだった。
 あたしは‥
 どういえば良いのか分かんないんだけど‥
 何か考え違いをしていた‥

 それに‥いざあたしの理想の美人をリアルに目にして‥
 これは案外恋愛対象じゃないなって思ったって言うか‥やっぱね。最高級の芸術品は「見るもの」で「恋する対象」じゃないな~みたいな‥。

 だから‥待って待って!!

 そう思ったのに‥
 神様はあたしに「あたしの理想の容姿」をくれた。
 はあ‥とため息をついて、鏡を見た。
 んん??
 もう一度見返した。 
 んん??

 そこには見慣れた‥8回の人生を共にした‥
 あっさり平凡シンプル顔が映っていた。
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