今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

変化

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 あたし、なんか変だ。

 不安になったり、急に泣いちゃったり。
 他の(しかも、只の! )子供が怖いとか、容姿のことで何か言われるのが嫌だとか。今まで気にすらならなったことなかったのに。
 ‥は、嘘だな。
 気になってはいた。だけど、気にしない振りしてきた。
 あたしが我慢してれば何とかなったから。
 嫌なこと言う奴はいるけど、あたしには「絶対信頼できる家族」がいるから大丈夫~って、自分に言い聞かせて我慢してきた。そんなことに関わるだけ時間の無駄。勝手に言ってればいいわ~って。
 なんだかんだ言って、言いたくないこと‥言ってて面白くないこと‥は言いたくない。言ってて気分が悪いし、聞いてる人も嫌な気持ちになるじゃない。そういうの考えると‥言わないで皆が平和で暮らせるなら「折角楽しい時間を過ごしてる時にそんな話する必要ないんじゃない? 」って思っちゃうんだよね。
 でも、今回は変だ。
 我慢できなくなった? 急に弱くなった?
 まるで‥蓋をしてしまいこんできた箱が急に開けられたみたいに、堰が切れたみたいに‥ 
 勢いよく感情が流れ出してしまった。
 何故だ?
 ‥理由は分からないけど、今まで思って来たこと我慢してきたこと‥全部吐き出したらびっくりするほど楽になった。家族も嫌な顔せずにあたしの話を聞いてくれた。
 初めっから信じていた。家族はあたしの話を真剣に聞いてくれるって。信じているというより、もはや疑いすらしてなかった。
 今までの転生だってそれはそう。家族の対応については、あたしは何の心配もしてなかった。こんな話をしても家族は「面倒な話をし始めた」とか、「他人にそんなこと言われて恥ずかしい」とか思わない。きっと、あたしの為に怒ってくれる。それは、あたしの中で「絶対」だった。
 だけど、‥だから、何。
 あたしは思ってたんだ。あたしが泣いて訴えて、家族が怒って、例えばあたしをばかにした子供に罰を与えたらあたしはそれで満足なのか? そうして‥腫れ物に触るみたいな扱いをしてもらえば満足なのか? 
 貴族じゃないときもあった。そのときは家族に権力なんてなかった。だけど、愛は確かにあった。きっと彼らはあたしに嫌なことを言ったであろう(内容は覚えてないんだけどね)相手に対して怒ってくれただろうし、「引っ越そう」って‥あたしの為に出来る限りのことをしてくれただろう。
 でも、だからこそ‥言えなかった。
 そもそも、家族にそんな話をすること自分が嫌だった。
 なのに‥ 
 今は違う。
 あたしは変わった。変われた。
 我慢が出来なくなって突発的に‥とは違う。弱くなったわけでもない。

 これは‥成長だ。

 今まで漠然とこころのなかでモヤモヤして‥だけど、上手く言葉に出すことが出来なかったことを言葉に出来た。することが出来た。
 そういう成長。
 今まで「言ったら皆を苦しめる」「気まずい空気になるのは嫌だ」とか「言うの恥ずかしい」とか思って、逃げて先延ばしにして来たことを言おうと思えた。それは、皆のことをちゃんと信用することが出来たって証拠だし、「そのことについて話をする」覚悟ができたって証拠だ。
 そういう成長。
 すんごいささやかだけど、でもあたしにとっては大きな成長。
 辛い思いを皆に吐き出して、「ローブで隠したい」って自分の気持ちをちゃんと伝えられた。(対処法は「逃げ」だけどね)
 ああそうだ‥今までだってそう「思って来た」ことはあった。でもそんなこと言ったら母親(歴代全員の)はきっと「そんな顔に産んでしまってごめんね‥」って思う。きっと傷ついて自分を責める。‥そういうことが容易に想像できた。だから、言えなかったんだ。 

 でも‥あたしが母親の立場なら‥子供が気を遣って、言いたいことを言えずに我慢してる方が嫌じゃないか?
 
 初めて、そういうことも思った。

 父親としても、自分の置かれた「よくない現状」に対して対処策を考えず、ただ辛い思いをしているだけの子供は心配じゃないか?
 
 とも。
 
 今の空気は正直居心地悪いし、泣いてる母親とか使用人とか、怒ってる父親とか兄とか‥恥ずかしいし、気まずいし、「言うんじゃなかった~」って後悔の方が大きいのはまあ‥そうだけど、でも反面「やり切った」感も大きい。自分の勇気を素直に誇らしく思えるし、「言ってよかった」「言えてよかった」とも思ってる。
 ‥少なくとも「言わなきゃよかった」とは思ってない。(それは、聞いてくれたみんなのお陰だよね)
 新しい一歩を踏み出せた。って思えた。
 
 
 さて、今日の出来事。
 今までみたいに「ハヅキの認識」が「世間の評価」と殆ど同じだったら、皆の考えもハヅキの予想通り「ハヅキはこれから苦労をするだろうが、一緒に‥励ましあって世間の荒波に対抗していこう」って思っただろうが、今は「ハヅキの認識」≠「世間の評価」だ。
 つまり‥
 ハヅキの認識 自分は不美人
 世間の評価  ハヅキは女神級に美人
 なのだ。
 だから、皆はハヅキの話を聞いてハヅキに同情し、心配したのではなく、
「ハヅキはああいっているが、ハヅキをやっかんだ『誰か』が居て、ハヅキは傷付いたんだ(許せん‥)」
 こう思った。
 怒ったのだ。勘違いで。
 だけど、
「でも‥ローブは悪くないかも。あれだけ可愛すぎるのだ。移動するだけで「誘拐されるかも‥(身代金目的ではなく)」とか思わなくても済むし‥それこそやっかまれて何か事件に巻き込まれる心配もなくなる‥無くなりはしないが、減る」
 とも思った。
 でもまさかそんなこと子供に言えない
「‥外はそんなに怖いの?? 」
 って悪戯に驚かすのはよくない。
 結果
「(理由云々は隠して)ローブを許可すればいいんじゃない? 」
 ってことになった。
(大人の事情(暗黙の了解)終了)


「ハヅキが人の目を気にせずに自由に動けるようになるならば、良いと思う」
 と父親が言って、ハヅキに「誰が見てもよくわかる」質のいいローブを買い与えた。
 つまり‥
 ローブを被っているのは貴族だ。それも、こんな凄いものを用意できる様な貴族だって周りを牽制するのが目的だ。勿論、護衛も付ける。ハヅキには分からないように、だけど、いざとなったらすぐ動ける様な優秀な人材を。
「でも、ローブを被るのはお外だけね。
 お母様たちは可愛いハヅキのお顔見たいわ」
 って母親が言い、ハヅキのローブデビューは学校に行くようになってから、ということになった。
 ハヅキはまだ3歳。
 学校に行って魔法を学ぶのは、まだ三年後のことなのだ。
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