今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

あたしはあたしのすることをする。

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 もし、リタが望むならば‥の話だけど、あたしのメイクの技術でリタに「この国風」のメイクをしてあげてもいい。
 ‥って、上から目線だな。
 あたしはこっそり苦笑いして肩を竦めた。
 そもそも‥人の好みに合わせるってのはあたしの本意ではない。リタが、あたしがメイクすることによって「好きな顔になったらテンション上がる」っていうならいくらだって協力する。でも、それが「人の好みに合わせるため」で「自分の本意じゃない」とかだったら‥正直やりたくない。 
 そもそも、この国の趣味とか‥(あたし的に)おかしい。あたしの趣味にはとてもじゃないけど合わない。リタの顔が好きじゃないとか‥全然共感できない。でも、それを言うと‥「リタの顔を好きだ」ってのも所詮は「あたしの好み」だ。どっちも‥変わらないんだろう。
 だから、そのことについては「この国が間違ってる」「あたしが正しい」ということは出来ない。するべきではない。
 価値観の強要はよくないし‥きっと一生無理なんじゃないかなって思う。リタを外見的コンプレックスから解放させられることは無理。だけど、だからといって腐ってていいわけがない。幸せになっちゃいけない人間なんて、いていいはずがない。
 そして、それはあたしも同じだ。あたしだって幸せになるのを絶対あきらめない。
 良い友達と家族がいるあたしは今だって十分幸せだ。いっぱい生きてきて、やっとそれに気付くことが出来た。
 自分だけ幸せになるんじゃなくて、自分と、そして自分の周りの人も幸せにしたい。 
 大それたことは出来ないけど‥あたしの周りの人だけでも‥少しでも幸せになってくれたらいいなって思う。
 まずは、あたしが「顔に気を取られず、あたしはあたしの好きなようにやってるよ」「やれてるよ」ってリタに証明したい。いや、せねばならない。それが、有言実行って奴でしょ? 口だけじゃダメでしょ?

 あたしは、幼いころからの計画を実行に移すことにした。


 治療師は実力が全て。
 どんなに期待されていようと、どんなに前評判が高かろうと、どんなに容姿が良くって人気があろうと、実力がない奴は役立たずだ。
 学校で魔法の使い方(実際のところは、元から知ってたんだけどね)を習うと、あたしは寮を抜け出してこっそり(学校近くの)教会でボランティアを始めた。将来は地元で就職したいから、ここはまあ‥修行の場所ってところかな。
 魔法だってなんだって、実戦‥鍛錬あるのみ、だ。
 初めはあたしが子供だってことで、併設の孤児院(この教会には孤児院があった)の子供の相手しか任せてくれなかった。「それじゃ治療魔法の練習にならんがな‥」って思ったけど、なかなかどうして。子供は凄く怪我をする。病気にだってすぐなる。小さな怪我だって放っておいたら大変なことにもなりかねない。で、こっそり‥「小さなことでもコツコツと」と怪我を治療し、病気を治していたらシスターに「この子、頑張ってるわよ。治療師の手伝いをさせてあげたら? 小さな怪我くらいなら任せても大丈夫なんじゃない? 」って治療師のエライさんに口利きをしてもらえた。
 で、治療師(見習い)生活が始まった。
 あたしが任された患者さんは平民(子供しかも、ローブを被ってる子に貴族様を任せられるわけないってことなんだろう)ばかりで、正直な彼らにあたしは(ローブを被っていることで)初めは嫌な顔されたんだけど今では
「ちっこいローブの治療師さん」
 って呼ばれて可愛がられるようになった。
 平民は貴族より総じて口が悪い。あたし(正確にはあたしのローブ)を見た時の不快感を隠さないような人が多い(礼儀がなってないってか‥「(出世の足を引っ張りかねないからって理由の)そういう教育を受けてない」んだな)んだけど、懐に入ってしまえば見掛けより実力‥って感じで受け入れてもらえたようだ。
 そのうち怪我だけじゃなくて
「腰を痛めた‥」
 とか
「酷いせきが‥」
 にも対応させてもらえるようになった。
 学校(~PM4:00)→教会(~PM6:00)→そのあと寮に帰って夕飯、入浴、明日の準備と宿題をして就寝って生活は決して楽ではなかったけど、あたしは(自分でも気付かなかったんだけど)結構魔力量が多かったらしく、体力、魔力共に問題なかったようだった。
 土曜日や日曜日に終日手伝いに行くようになると、流石に地元組やリタは心配したけど、あたしのやる気全開の顔を見たら反対するのをやめたらしい。時々包帯を巻く手伝いやなんかをしてくれるようになった。
 え、治癒魔法で治すなら包帯いらなくない? って? そりゃ違う。自己治癒能力で治せる傷は包帯だ。因みに治癒魔法もなんでもかんでも全回復させるわけじゃない。そんな不自然なことをすると身体に負担がかかるから。だから、免疫力を上げたりとか‥自己治療能力で回復出来できるお手伝いをする。
 だけど、手足の欠損や内臓の損傷等々、そういったものは自己治癒能力じゃ何ともならない。そんなのをチートで治すのが「奇跡の領域」と言われている「SS級上級治療師」だ。彼らは何と‥「患者が死んでない限り何とか出来る」クラスの超ウルトラ凄い人たち(興奮MAXで零れ落ちた語彙力)なのだ!! 
 はあ‥憧れる‥っ。
 因みにあたしはまだ、駆け出し治療師(見習いはこの度卒業した)だ。
 ちっこいお手手で一生懸命「ヒール!! 」とかやってるあたしに皆癒されて、治療効果以上に「ほんわか~」って顔して帰って行く。
 うん。分かる。可愛いよね。ちっこいお手手。

 ちっこいものはたいてい可愛い。

 ちいさいのが一生懸命頑張ってるの、可愛い。
 今しかできない「うちの孫可愛い♡」枠で老人とかを癒しまくりますよ!!


 そんなあたしもあれから3年。もう10歳になっています。
 ちっこかった背もすっかり大きくなって(‥すみません、見栄を張りました。ほんのちょっとです)子供子供したちっこい手はすらりとした大人の手‥とはいかないけど、(ちょっとぽっちゃりした)大人の手になりました。もう「ちっこいの可愛い」枠から卒業して久しい。だけど、今でも最年少治療師(ただし、あくまでボランティア。小学生だからね)です。でもボランティア歴3年のベテラン。そこそこ後輩的な人たちも出来てるわけだけど‥そういう人たちは認めないんだよ。自分の方が後輩だとは。治療師は実力が全てで学歴や容姿なんて役に立たないっていうのに‥
「僕らはちゃんと魔法学校を卒業して‥ちゃんと就職してここに来てるんだし? 君みたいなお手伝いとは違うんだし? 」
「立場もだけど‥なにより責任感がちがうよね。君とはわけが違う」
 とか言っちゃってはじめっからあたしの事下に見てる。
 あたしが小学生で、只のお手伝いで、ローブを着てるからって馬鹿にしていい対象って決めつけている。
 そんな馬鹿にしているあたしだから、あたしの実力を見ても(認めたくなくって)
「見せられない顔の癖に偉そうに‥」
 なんて言ってる。(負け惜しみだよね。ほんと、バッカみたい)
 でもさ、そんなの相手にするだけ損じゃない。あたしは無視してたんだ。
 そんなある時。
 親のコネで入ったらしい‥いかにも箱入りの「綺麗な子(多分この世界的にはそう? )」が教会に入って来た。
 正規の雇用じゃない。花嫁修業としての箔付で来た「聖女見習い」って奴だ。(※ 聖女や教会経験者は花嫁として人気物件だからね)
 彼女はあたしに嘲笑するような視線を向けて、
「意識のない人だけ見てあげたほうがいんじゃないですか? ほら、やっぱり怪我を治してもらうのも美人の方がいいじゃないですか。
 ‥余計具合が悪くなりそう」
 って言った。
 あたしに意地悪を言ってやるって感じじゃない。この感じは‥「本気でそう思ってます」って目だ。自分の言っていることは寧ろ人の為であって、醜い容姿のに人前に出ているあたしがおかしい、悪いって‥本気で言ってるんだ。
 ‥うわぁ‥ヤバい奴来た‥。
 流石にこれには、長年一緒にやってきたあたしの同僚がキレて、その子は結局教会を追われることとなった(つまり、クビになったんだな)
 その子は反省した様子も見せず「お父様がこのこと知ったら寄付を取りやめるって言うんだから! 」ってここでも親の威光をかざして強気の姿勢だったんだけど、今まで会ったこともなかったような高貴な方(司教って言うんだっけ? 大神官? 偉過ぎて分からない。兎に角‥この教会で一番偉い人)が奥から出てきて厳かな口調で「神様のいらっしゃるところでそんなことを言う人に働いてもらうわけにはいきません」ってぴしゃりって言った。
 かっくい~!!
 流石教会! 感動した!
 だけど、貴族に喧嘩売って大丈夫かな。教会的にも、‥あたし的にも? って心配だったんだけど、同僚(といっても、勿論凄く年上)が
「小学校では習わないかな。
 三権力の分立っていって、法律をつかさどる「司法」と政治を行う「行政」、そして医療をつかさどる「教会」の権力は独立してるんだ」
 って教えてくれた。
「習った‥けど、結局行政を行っている城‥王家そして貴族が一番偉いわけだから、権利の独立も何もないんじゃないか? って思ったんだけど‥」
 あたしが質問すると、
「だけど、貴族だってそれこそ王族だって、怪我をすれば教会で治療を受ける。その時には「貴族だから」「王族だから」はないだろ? 貴族だから怪我しないわけじゃないわけだし」
 ‥でも‥
 あたしが眉を寄せて黙っていると、同僚が苦笑いして、
「こんな子供にまで心配されちゃうようじゃ俺たち大人もまだまだだな~。大丈夫だよ。この国はそんなに悪い国じゃない」
 って言った。
 ‥大丈夫なのかな‥。お父様にご迷惑はお掛けしたくないな‥。
 そんな風に思っていたら、後日あの子があたしに対する侮辱罪で罰金刑と魔力封印刑(結構重い罰)を受けたことを風の噂で聞いた。
 ‥風の噂と言うか‥あの子のパパンの手下があたしに「お礼参り」に来たとき‥そいつらの口からきいた。
「お嬢様は何も間違っていないのに! 」
 手下もまた、何の迷いもなくそう言い放った。 
 自分の行動に欠片の疑問も感じていない、そして自分の雇用主を尊敬し、多分‥あのお嬢様に憧憬しきっている男どもは怖かった。あたしは咄嗟に(ホントに無意識のうちに)最大出力の光魔法(つまり、超目くらまし)を発動させてしまった。
 男たちに直接怪我はなかったが、大の男5人が地面を激しく転がりまわりながら「目が‥目が‥」って呻いているっていう‥超壮絶な光景が繰り広げられた。(アレは‥凄かった。駆け付けたワトソンなんか、あたしのことを心配するのを一瞬忘れてドン引きしてたもん)
 結局そのことは「正当防衛」が認められ、あたしが罪に問われることはなかった。
 それにしても‥
 完璧な逆恨みだ。あの子が受けた罰については厳し過ぎるか? とは思うが、襲われた今となっては同情心も湧かない。もう一生関わり合いになりたくないな、‥そう思うだけだ。
「あれ、どうやったんだ? 目くらましビーム。光魔法の暴走? 」
 ワトソンは(それでもさすがにちょっと落ち込んでいる)あたしを励まそうとして、彼らのことに触れずにそう聞いた。
「(目くらましビーム?? ださww)多分そう」
 あたしが頷くと「かっけーな。俺も練習しようかな」ってワトソンが呟いた。
「いや、あれ別に必殺技とかじゃないから。咄嗟のことで出ちゃった「火事場の馬鹿力」的な奴だから‥」
 あたしは苦笑いだ。
 あ。光魔法ってのは、自分の属性にプラスして使う「無属性」の魔法なんだ。光魔法と闇魔法の二つがあって、二つを同時に持ってる人間はいないんだって。(ちなみに持ってない人間の方が多い)
 火魔法プラス光魔法で「灯りの魔法」とか、水魔法プラス闇魔法で「氷の魔法」とかそういう風に使う。あたしの場合は聖魔法プラス光魔法で「患部サーチ」って風に普段は使ってる。単体で光魔法を使えるとは考えたことなかったけど‥使えるんだねえ‥。
 その後光魔法が攻撃魔法として、主に対魔物戦で使われるようになったとかならなかったとか。それはあたしの専門分野じゃないから知らない。

 因みに‥
 あの後トーマスやリタに今日のことを知られて
「ホント‥もう教会のボランティアやめろよ‥」
 って(何度目かの)説教を食らったのは言うまでもないことなのだった。(勿論辞める気はないが‥)心配してくれる仲間には感謝、だね! 
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