今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

運命の出会いまであと一歩。

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 ハヅキは実は隠れ美人だった。
 それも‥
 半端ない。
 ローブで隠してる顔なんだ。見られたくないんだろう。それをわざわざ見るとか、今まで考えたことなかった。
 だって、本人が見せたくないから隠してるんだろ?
 なら、‥可哀そうじゃないか。
 そもそも、見たらさ、‥決まづくなるじゃん。
「いや‥人間顔じゃない」
 とか言うわけにもいかないしさ、でも、でもね? かといってそこで
「別に俺は嫌いじゃないぞ、その顔」
 とか適当なこと言って‥変な話‥惚れられても困るわけじゃん? 
 言い方悪いけど‥そういうこともあり得るわけじゃない?
 そりゃさ、俺もそう褒められた顔じゃないけど、隠さなきゃいけない程でもないからさ‥ほら‥贅沢は言わないから‥せめて並みの顔の女と結婚したいかなって。
 そりゃ! 顔だけが問題じゃないよ!? 寧ろ、一生一緒に暮らしていくんだ。そりゃ、性格の方が重要だよ。でも、ね? ‥分かるでしょ? 俺なんて所詮、その程度の男だよ。
 でも、人を傷つけるわけじゃないし‥。そう悪い人間でもないでしょ? 人の顔見て顔色変える様な無様なことしない様な、「人並みの社会性」位もってる。それで十分じゃない? 普通の人間にどれ程の物を要求するのさ。教会で働く治療師って言っても、そんな清廉潔白な人間じゃないよ? ‥そこまで期待して、要求されても困るよ。ってか、それっ位許されてもよくない?
 そんな風に思ってた。
 まあ、結局‥どんな出会いもなくこの年なんだけど? (社会って残酷だよね~)
 まあ‥そういうことに時間を割いて来なかったってのは‥認めざるをえない。一番若くて(そういう恋愛の)「可能性」があった時、俺がしてきたことは女の子に対するアピールじゃなくて魔術のスキルアップだった。あの頃は、もっと忙しい教会で働いてたんだ。だけどさ、もうそろそろ年だし‥お嫁さん貰うならもうちょっと給料高いところかな~なんて考えてマリエール教会にはいったのが23歳位の時だっけ? まあ‥結局そんな出会いもなかったわけだけど。
 出会いは、俺に限らず治療師にはないね。
 そもそもさ、治療師って収入もそんなに(その中でもマリエール教会は破格といえるんだけど、他の職業と比べたら高いとはいいがたい)‥だし、知名度もそんなに‥だし(神官と区別がついてない人はおおい。女の治療師は聖女と間違えられて得してるけど)、再三言ってきた通り出会いもない。(さらに)俺のおかんは「何が何でも結婚」「知り合いのおばさんに女の子紹介してもらったから見合いしなさい」ってタイプじゃない。「ロウがしたいようにすればいい」ってタイプなんだ。
 若い頃は正直それが楽だったんだけど、25歳超えたころから‥正直焦りはあった。「もしかして一生独身? 母ちゃん‥一人くらい居るだろ? 知り合い紹介してくれる人」って正直、正直ね、思ってた。だけど28歳も過ぎたら「まあ‥もういっか」って諦められることが出来てたんだ。
 だけど‥あれはない。
 今まで結婚しなかったのは彼女に会うためだったのか? 
 とか‥思っちゃったよ一瞬。
 目の前がぱあって明るくなった。天使かなっておもった。
 この子が俺の運命の人じゃね? って。
 ‥ないよね。
 だって、ハヅキは18歳、俺は30歳。いくら何でも、ないよね。
 うん、わかってた。
 だからダンさんリュックさん。そんな怖い顔で「他言無用だ」とか言わないで。怖いから。これからも職場仲間として仲良くやってくださいよ‥。
 ロウがそんなことを頭の中でぐるぐる考えているとき、ロアルもまた
 ‥28歳と18歳は10歳しか変わらんくない? 有りじゃない?
 とか考えてた。
 ハヅキが顔を隠してたのは、将来の結婚相手以外に恋情を抱かれたら困るからってことじゃない? そりゃ、あれだけの美貌だ。日常生活も送り辛いだろう。そして、ハヅキは治療師に強い想いがあった。
 彼女の望みは上級治療師になることだ。
 それまで結婚はしないって決めているんだろう。だけど、あの顔だ。本人の意思関係なく無理やり結婚を迫る者が現れるのは必然だろう。
 もし、彼女が断り辛いような‥例えば高位貴族の男から結婚を迫られたら? 
 ‥そういうことがない様に、彼女はローブを被っていたのだろ。
 ああ、なんて意思が強い。 
 容姿以上に、志が美しい。
 素晴らしい。
 私はハヅキのことが‥
 好きになってしまった! 
 そんな私の想いを、ダン先輩リュック先輩が砕こうとしてくる。あの‥鬼のような顔で「他言無用だ」は怖いだろう。
 うん、怖い‥。正直「すみません! 」って言っちゃいそう。でも、負けないぞ‥
 そんな私の想いに気付いたのか、リュック先輩はわざわざ私を別室に呼び出して、「ハヅキはあのレオンバートル伯爵の娘だ。彼女の家は伯爵家で貴方の侯爵家に比べて爵位的には下だけど、財力で言えば負けてないだろうと思う。そして、ここではレオンバートル伯爵の権力は絶大だ。ここどころか‥だろうと私は思っている。そんな彼女と結婚するのに身分をかさに来て‥とか出来ると思うな」って言った。
 アレだ。説教。
 いや。脅迫? 牽制? アレ相手が「分かりました。もう馬鹿なこと考えません‥」って言うまでねちねち言い続ける耐久レースみたいな奴だ。
 ‥わかりました、(とにかく今だけは)
「分かりました。もう馬鹿なこと考えません‥」
 って言っておこう。
 リュック先輩がニヤリと笑い
「分かったならいい」
 って言ったんだ。
 ほっとした私にリュック先輩が
「取り敢えずやり過ごした、と思うなよ? 見てるからな。コールさんの意思も我々と同じだということを忘れない方がいい」
 と付け加えた。‥悪い笑顔で。

 それから、少したってロウとロアルとハヅキという、元マリエール教会組が集まってご飯を食べに行くことになった。
 ロウとロアルにハヅキは
「少しは職場に慣れました? 」
 って笑いかけた。勿論ローブを被って、だ。
 ロウとロアルはちょっと赤くなって、「ああ」って頷いた。
 今までとは違う。 
 だって、ハヅキが実は美人だってことを知ってしまったから。二人はローブの向こうのハヅキの麗しい顔を想像してほっこりした。 
 だけど、それを口に出すことはない。
 出したらきっとハヅキが嫌がるだろうから。ハヅキに嫌われるなんて‥考えただけで嫌だ。
 この店自慢の料理に舌鼓をうちながら、
「なあ‥ハヅキ。 
 ハヅキはなんで聖属性なのに治療師になりたかったんだ? 」
 って聞いたのは、ロウだ。ロアルが「確かに」って頷く。
「う~ん。理由の一つは聖属性で出来る治療より治療師で出来る治療の方が多いじゃないですか。だから‥かな。聖属性を使って治療するのは聖女じゃないですか。聖女にはなりたくないですよ。聖女とかガラじゃないし」
 聖属性を使う聖女が行う「ヒール」はあくまで「治癒」だ。
 大聖女と呼ばれる人だったら、それこそ「反魂以外ならなんでも」って位チートなんだけど、普通の聖女はそんなこと出来ない。‥出来る程修行する時間が取れない。だって、聖女は教会の象徴でアイドルだから。
 聖女はただいて、ちょっと手を翳して怪我や病気を治すだけで皆が「ありがたい~!! 」って言う存在なのだ。
「あたしの夢はあくまで上級治療師ですよ! 」
 拳をぎゅっと握りしめてあつく語るハヅキにロウもロアルもふふっと微笑んだ。
 ああ、コイツは昔っからこうだな。
 真面目で、脳筋で、‥イイ奴だ。
 貴族で、大金持ちで、顔もイイのに、コイツはそんなものを誇るような素振りも見せない。
 どちらかというと「魔法の才能に溢れてる」ってタイプじゃない(どちらかというと平凡の部類だ)のに、小さい頃からボランティアでずっと頑張ってきたんだ。彼女の今を作っているのは、100%彼女の努力なんだ。
 それを彼女はしっかり自覚していて、
「やったらやっただけ結果に出ますから! 」
 って言った。
「才能がない分、努力するしかないじゃないですか~」
 とも。
 その情熱は全部「上級治療師になりたいから」それだけの為だ。(※ 二人はこのハヅキの高尚な(笑)夢の続きが「上級治療師になって瀕死のイケメンを助け、恩をうって結婚したいから」だとは知らない)
 金の為とか、名誉とかどうでもいいんだ。(※ 確かにハヅキに出世欲はないし、実家がお金持ちだからそうお金に執着していない)


 そんなハヅキの「運命の人」に会うまであと少し。

「こりゃダメだ。大怪我じゃないか‥」
 朝早く仲間たちに抱えられ、治療院に運び込まれた患者さんは‥「人格者」揃いのシャリナールの治療師たちもつい一瞬顔をしかめる位の‥凄く醜い容姿(イケメン)の騎士様だった。
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