今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

接点なんて、ない。(side オズワルド)

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 例えどんな事情や背景があっても、ランドルフとカイトは俺の仲間だ。
 一生、それは変わらない。
 いつか、勤務地が変わっても、立場が変わっても、だ。(二人もそう思ってくれてたらいいんだけどな)
 でも、
 ハヅキさんは‥違う。
 ハヅキさんは治療師で(それも、希少な中級治療師だ)そして、‥あんなに美しい。
 何故顔を隠しているのか知らないが、彼女はずっと光の下を歩いていく人間だ。
 獣人で、醜い俺とは違う。
 この先、彼女と俺との間に接点なんてない。

 時間がない。
 何とかしなければ。

 驚いたことに、今の俺には「なら仕方がない、と諦める」という選択肢は微塵もないのだった。


 でも、思えば今までの俺の人生に「なら仕方がない‥」は無かった。
 仕方がないって諦めたら、負けだと思ってた。
 諦めて、我慢して、その場を凌いでも、何の解決にもならない。
 暴言を吐かれて泣いたら、暴言を吐いた奴を喜ばせるだけだし、家の権力を使ったら「自分一人で何も出来ない情けない奴」って思われる‥かもしれない。いや、実際はそういうことは当たり前にあるんだ。貴族の子息に対する侮辱は、その家に対する侮辱ととらえられる。だけどさ、平民だった父さんはそんなことしてこなかった訳じゃない。昔からずっと「そんな目」に遭って来ていたのに‥だ。
 なら、息子の俺が「嫌なこと言われたの~あいつらに仕返しして~」とか‥恥ずかしくない? 考えただけでゾッとするよ。
 父さんの息子として恥ずかしくない行いをしなければ、否、したい。
 でも、子供の頃の俺にはそうするだけの力がなかったんだ。
 俺を悪く言う奴が一人なら、殴って言うことを聞かせればいい。(※ よくはない)二人でも‥まあ、頑張ればなんとかなるだろう。 
 まずはそう思ったんだ。
 俺は喧嘩に勝てるように努力して身体を鍛えた。
 その結果、俺は何と三対一での喧嘩に勝利したんだ。
 小学生の喧嘩だ、殴られた相手が泣いて逃げ出して終わりだったんだけどね。
 でも、喧嘩して帰ってきたら、相手の親が全員家に来ていた。泣いている子供‥俺に暴言を言って来ていた子供をそれぞれ連れてだ。
 父さんは仕事で不在で、母さんが一人そいつらの話を聞いていた。
 わめく有象無象。静かに話を聞く母さん。そしてそれは、一目で、力の差が分かり過ぎる光景だった。
 なんてかな、格が違う。大人と子供よりもっと違うって感じ。
 それでも数で押し切ろうとわめきたてる親たちに対し、母さんは落ち着いていて、静かに話を聞き終わると、すっと顔を上げた。
 その迫力と、美しさに全員が黙った。
「あなた方の言い分は分かりました。今度はわたくしの息子の話を聞きます」
 俺は、そこですっと冷静になった。 
 奇跡的に。
 ホント良かった。あそこで「は~!? てめぇらが先に俺に文句言って来てたんじゃねぇか。しかも、三対一とかだっせぇ! 」って言ってたら、俺もこいつらと「同じ穴の狢」になってただろう。
 俺は母親に
「彼らに容姿のことで悪し様に言われて、かっとなって手が出てしまいました。だけど、私は彼らが言う様に急に殴りかかったわけでも、常日頃から彼らを苛めていたという事実はありません。だけど、今回のことに限れば、暴力を振るってしまったのは事実です」
 と言って母さんに「貴族らしからぬことをして、家に迷惑をかけました。申し訳ありませんでした」と謝った。
「謝るべきはうちの息子たちにだろう! 」
 三馬鹿の親が吠える。
「では、彼らが私に毎日毎日執拗に暴言を吐いてきたことについても謝ってもらいたい」 
 俺が彼らを見ると、彼らが固まった。
 俺の気迫が怖がったというより‥見たくない物を見てしまって嫌って顔で目を背ける。
「一方的な被害者面とか、恥ずかしくないの」
 俺が苦笑いして同級生を見ると、同級生は真っ赤になって俯いた。
 そこで「は~」という母さんの小さなため息が聞こえた。
「まず、オズワルド。貴方は身体が大きく、彼らより身体能力も高いのに、彼らを殴ったことは謝りなさい。それと、気に入らないことがあるからといって、安易に暴力で解決させようとしたことを反省しなさい。
 そして、同級生のダイ君、ラワン君、ノイ君。
 ‥君たちは私に対して虚偽の報告をしたことをまず謝罪して欲しい」
 ひぃっと三馬鹿たちが震える。
 美人に睨まれると、怖いからな。
「息子が初等科に入学して以来、小さな傷を負って帰ったり、物をよく紛失していることで、当家は息子に内緒で監視をつけさせていたんだ。
 君等の息子に対する誹謗中傷や暴行も勿論報告を受けている。‥何なら、映像石(映像を録画しておく魔道具)の映像を見てもらってもいい」
 三馬鹿はガタガタと震えて、うつむいたまま泣きだした。
「親御さんたちは、自分の息子たちが可愛いのは分かりますが、だからといって息子の言い分だけを鵜吞みにすることがない様にしていただきたい。
 そもそも、被害者が三人という地点で「一人に対して三人がかりで? おかしくないか? 」とは思いませんでしたか。卑怯だって思いませんでしたか? まあそもそも、「三人でかかっていって、一人に負けるとかだせぇ」って思いませんでした? それを、全員で我が家に苦情を言いに来て‥その上慰謝料を請求するとか‥もう、恐喝に来られたとしか思えませんわね」
 にこりと微笑む、天女の様な母さん。
 その場にいた全員が恥ずかしいのと、天女に微笑まれて恥ずかしいのとで真っ赤になる。
 俺はふぅとため息をついて、自分のすべきことをすることにした。
 つまり、
「殴ってすみませんでした」
 と三馬鹿に謝ることと、
「これからは、腹が立っても暴力で解決するようなことがない様にします」
 と母さんに「反省した旨」を伝えることだ。
 母さんがゆったりと頷いて、チラリと三馬鹿を見る。
 三馬鹿が慌てて母さんに
「嘘を言ってすみませんでしたっ!! 」
 ってあやまって、三馬鹿の親共も
「息子の言うことだけを一方的に過信して‥すみませんでしたっ! 」
 って真っ青な顔で謝った。
 俺に対する謝罪はやっぱりなかったから「こいつらと、この先仲良くなることなんて万に一つもないな」って思ったのは確か。ありえないよな! 
 夜、学園から帰宅してその話を聞いた兄さんたちは苦笑いして、「ったく、母さんは大人気がないな」って呟いて、
「自分の側に人から言われて困るような過失は作ってはいけない。相手に付け入られる隙は作るな」(長兄、当時10歳。同じく初等部だけど、生徒会所属で帰宅が遅くなった)
「腹が立つ気持ちはわかるけど‥そもそも、怒る価値もないようなクズに構うのとか時間の無駄でしょ。放っておきなよ」(次兄、当時9歳。同じく初等部だけど、放課後は魔塔に出入りしている)
 って言われた。
 母さんはボロボロ涙を流しながら、「こんなかわいいオズに‥」ってギュウギュウ俺を抱きしめた。(あの時も泣きたかったけど我慢していたらしい。‥ホントかなあ)
 もう! 俺は7歳なんだよ! 恥ずかしいな!
 俺はそう言って、母親の腕から逃げ出した。
 ‥そんなことがあって、俺は「暴力で解決するのはよくないな。後々面倒がおこるようなことはよくない」って反省して、「時間の無駄」って放っておいて‥だけど、相手は俺を放っておいてくれなく‥
 ああそうだ。
 俺は「あまりに煩わしくて」ローブを買って被ってたんだ。(辛かったってのも、確かにあったけど、それより‥当時はとにかく煩わしかった。‥思えば)
 全然心は折れてなかった。
 だから、「俺がしたいこと(=騎士団に入る)」に向けて準備をすることだけに集中できた。
 両親が、兄たちが愛してくれたから、俺は腐らずに済んだ。「仕方がない」って諦めずに済んだ。つまんないことで体力気力をすり減らさなかったから、諦めない気力を持ち続けることが出来た。騎士団に入るだけの剣術の腕があったのもよかった。
 俺は‥ツイてる。
 だから‥俺は、諦めない。

 ハヅキさんを、‥俺の幸せを諦めない。
 その為には、何とかしてここを出た後も彼女との縁を繋ぎたい。
 そう決心した。
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