悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第二十六話 移動開始(ミーシャ視点)

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 寿命がいくらか縮まるような思いをして、どうにか、フィオナちゃんをなだめることに成功した私は、そういえば、お姉様達を味方につければ良かったのだと気づき、今の今まで、何も話してこなかったお姉様の方を見て……後悔する。


「はい、イリアス。あーん」

「あーん。……ん、美味しいよ、ユレイラ」


 そこには、砂を吐きそうになるほどにあっまーい空気が漂っていた。ついでに、ルクレチアさんは、その二人の様子を楽しそうに眺めていて、こちらへ意識が向いていない。


(……まともなのは、ラルフ君だけ、か……)


 いきなり人間に絡まれたことで動揺している様子のラルフ君だけが、唯一まとも……そう、思っていた私は、次の瞬間、それも違うと認識することとなる。


「フィー、さっきの人、僕に気があったのかな? でも、僕、ああいう人は好みじゃなくて」

「ラルフ? 私が居るのですから、ダメ、ですヨ?」

「うーん、でも、なぁ……」

(セイーっ! 早くっ、早く帰ってきてーっ!!)


 様々なショックで混乱している私は、その時、完全に見落としていた。どうやら、お姉様の方にもラルフ君達が絡まれている時と同じ時に絡んできた当たり屋が居たこと。そして、現在、その当たり屋はお姉様とイリアスに瞬殺(一応、死んではいない)されて、その財布の中身を迷惑料としてせしめ、屋台の料理を楽しんでいたということを。


「お姉様……」

「ん? ミーシャ、どうしたの? 色々あり過ぎて疲れたサラリーマンみたいな顔になってるよ?」

「あ、あはは……とりあえず、移動するので、そろそろ切り上げてください」


 こうなれば、同じところに留まって、同じような危険を冒すことのないように、別の、もっと落ち着いた区画へ行くしかない。


「次は、どちらへ向かうんですか?」

「ルクレチアさん……えっとですね。今居る場所は、庶民向けの商業区画なんですけど、この奥が、貴族とまではいかずとも、それなりの富裕層向けの商業区画なんです。とりあえず、そちらの方が落ち着けるかなと思いまして」


 まごうことなき本心で、私は計画を話す。セイならば、私達の反応を追って合流するくらい容易いはずなので、移動したところで問題はなにもない。ただ、次のルクレチアさんの言葉に、私は目を丸くすることとなる。


「確かに、ここは人が多いですものね。当たり屋だって横行しているみたいですし」

「っ、分かってたん、ですか?」

「もちろん」


 分かっていたのならなぜ、という問いは、喉から出かかって、そのまま止まる。


(そりゃあ、そうか。神が、人間の生死なんて気にしたりはしないものね)


 ルクレチアからすれば、あれでフィオナがあの当たり屋達を殺そうとも、問題があるならば記憶を書き換えれば良いくらいにしか思っていないはずだ。そのくらい、このメンバーにとって、人の命は軽い。


(……お願い、セイ、一刻も早く、戻ってきて!!)


 こんなことならば、鋼も魔王も竜神様やエイリーンも巻き込むのであったと思えど、後の祭りだ。ちなみに、神様仲間としてネシスという少年姿の神も居るのだが……彼は、別件で外せない用事があったため、しばらく帰ることはない。


「富裕層の区画かぁ……たまに遊びに行ったなぁ」

「そうなの? 僕、知らないんだけど?」

「遊んだって言っても、ちょっとしたお買い物程度で……そこで、イリアスへのプレゼントを見つけたこともあったんだよ?」


 背後で、イチャイチャしながら思い出を語り始めたお姉様達へ、はぐれないようにしっかり念押しした私は、安全区画……じゃなかった、富裕層向けの商業区画へと急いだ。
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