悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第五十四話 正常で異常(セイ視点)

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 城の中を調べてみると、そこには、至って普通の光景が広がっていた。使用人達が行き交う使用人用の通路には多くの使用人が忙しなく動き回り、王族の護衛は、ちゃんと騎士達が担っている。そう、先程までとは異なる、普通の光景。
 最初の光景を僕一人が見ていたのであれば、きっと、あれは白昼夢か何かだったのだと思うくらいに、落差が激しい。


「……どういうことだろう?」


 なぜ、こんなことになっているのか。そもそも、先程まで居なかったはずの騎士やら使用人やらは、いったいどこから湧いてきたのか。何もかもが分からないことだらけの中、ふと、コウが足を止めていることに気づく。


「コウ?」

「……セイ、ここ、危険」

「危険? でも、危険な存在の気配なんて感じないけど?」

「そう。だけど、危険」


 険しい表情で唸るように告げるコウの言葉が間違いだとは思わない。だから、僕は何が危険なのかを気配を探りながら確認しようする。


「……やっぱり、分からない。コウ、何が危険だと思うの?」

「……多分、増えたの、人間じゃない。いや、生きてない」

「っ!?」


 そんなコウの言葉で、僕は慌てて、気配という形ではなく、明確な生体反応という方面で探知を行う。


「な、ぁ……」


 コウの言葉は正しかった。確かに、増えた人間には、人としての気配が宿っている。しかし、中身は空っぽ。そこにあるのは、人間に見える人形のみ。城の半分は、人形に占拠され、人間達はその事実に気づかない。それが、今のこの城の状態だということを、僕は気づいてしまった。


「……意識、もしくは、記憶に干渉できる邪神……? それに、人形……?」


 もちろん、僕でも人間の意識や記憶に介入する魔法を扱うことはできる。しかし、恐らくは、そういった性質の魔法ともまた違うことが起こっている。


「人形……人形遣い?」


 コウが引き継いだその言葉に、僕は、コウが訴える危険性をありありと感じ取ってしまう。


(僕達はいったい、どれだけの糸を巻きつけた……?)


 人形遣いと呼ばれる神は、正確には操り人形を司る神だ。彼らの得意とするものは、人形だけでなく、生き物をも操ること。たくさんの糸を張り巡らせて、それらを操り、弄ぶこと。もし、この場所に糸が張り巡らされているのであれば、僕達は、目に見えない大量の糸で絡め取られてしまったかもしれない。


「すぐに脱出をっ」


 そう言いかけたところだった。見えなかったはずの糸が熱を持ち、声を、行動を、奪ってしまったのは。コウを見れば、どうやら、コウも同じ状態らしく、立ったまま全く動かない。


(ごめ、ん……ミーシャ……)


 意識が消える直前、僕は、ミーシャの身を一番に案じた。
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