私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

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第一章

プロローグ

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 昔から、私が異端・・である自覚はあった。
 異様に強い力。オリンピック選手もびっくりな身体能力。耳も目も鼻、良すぎるくらいに良くて、とても、とても、気味が悪いモノとして見られていた。


「おとーさん」

「来るな! 化け物めっ!」


 父親という存在は、私を毛嫌いした。


「お、おかーさん」

「どうして、どうして、あんたみたいな化け物がっ!! あんたなんて、生まれてこなければ良かったのにっ!!」


 母親という存在は、私を産んだことを悔やみ続けた。


「菜々……」

「ひっ! いやぁ! お父さん! お母さん! 化け物がっ!!」


 妹の菜々は、私が側に寄るだけで叫んだ。


 どうして、どうして、どうして、どうして……。


 何も、悪いことなんてしてはいない。この力が異常だと気づいてからは、ずっと、ずっと、隠そうと努力し続けてきた。そのはずなのに……。


「化け物が来たぞ!」

「に、逃げろ!」


 それは、子供同士のお遊びの声ではない。本気で、恐怖に怯える者の声だった。
 私はただ、一緒にボール遊びに加わりたかっただけなのに……。


「化け物だっ!」

「なんで、化け物がこんなところにっ」

「いやぁ、化け物よっ!!」


 ねぇ、私の名前、化け物じゃあないよ?


 そう、言いたくとも、それ以上の言葉が続かないことも、彼らが聞こうともせずに逃げ出すことも知っていた。


「私の、名前……」


 私は、自分の名前を呼んでくれる人が居ないという事実を誰よりも理解していたから。私が側に居るだけで、誰もが恐怖を覚えることを知っていたから。

 毎日、学校から帰ると、公園へ逃げ込んだ。私が来るまでは人で賑わっていたそこも、私が毎日訪れるようになってからは、誰一人として近づかない。
 学校では、別の教室に隔離されて、DVDで一人、授業を受けた。家でも私だけ、別の部屋を与えられて、そこでじっと過ごすしかなかった。

 寂しい、と感じたところで、誰も私を見てはくれない。


「一人部屋、全然、嬉しくないよ……」


 学校の中でのお喋りは、参加できなくても聞こえてはくる。『一人部屋があるって良いなぁ』と、誰かが言っていたことに対して、一人呟いて、駆け出す。
 体を動かしている時だけは、何も考えなくて済む。走り回って、飛び上がって、回転して、縦横無尽に公園を駆け巡るのが、私の日課だ。それは、ずっと、ずっと……幼い頃から、十六歳まで続く日課となる。ただし……。


「うっ……」


 最近、胸がとても痛かった。これまで、十六年間、ずっと風邪一つ引いたことのない私は、それが病気だという頭はなかった。それでも、何度も何度も続けば、その可能性が過ぎる。


「……あの人達に、頼まなきゃいけない、のかなぁ」


 すでに、両親のことを『お父さん』や『お母さん』と呼ぶことはない。
 十六年の月日の間に、妹だけでなく弟も生まれて、彼らはとても幸せそうだった。私一人を除いた四人家族で、とても楽しそうだった。
 義務教育だけでなく、高校にまで通わせてもらえていることには感謝しなければならない。一緒に食べることは叶わずとも、食事を与えられるだけ、感謝しなければならない。そう、理解はしていても、この積もりに積もった寂しさが薄れることはない。

 その日のうちに、私は手紙を書いた。病院に行きたいという内容を認めたものを、両親に向けて。それが、さらなる地獄の始まりとも知らずに。


「ど、して……」


 怯えながらも医者が下した診断は、原因不明の病であり、後僅かな余命しか残されていないこと。絶対安静が必要であり、隔離するということ。
 私はそれを、治療のためだと眠らされた後、全身をベッドに拘束された状態で聞くこととなった。


「ご両親も同意済みです」


 その言葉に、頭を殴られたような衝撃を受けた。
 親として接して来なかった癖に、私に干渉する権利だけは持っている彼ら。きっと、化け物である私から離れられるチャンスとばかりに、拘束を許可したのだろう。


「そんな……」


 逃げ出そうと思えばできるかもしれない。しかし、その後はと考えると、行動には移せなかった。
 拘束具を引き千切るなど、漫画やアニメでもないのだから、やったら最後、私は本格的に化け物として追われることになるかもしれない。平和な日本でそれはない、と言いたいところだが、現在、こうして拘束することすらも両親からの許可だけで可能となったのだ。

 私に、人権はない。

 そう思い知るに十分な状況が、目の前に存在していた。


 動きたい、走りたい。


 そう思っても、ここから抜け出すわけにはいかない。


 外に、出たい。


 そう訴えたところで、彼らがうなずくことはなく、ただただ、体が衰弱していくのを自覚する。
 これではきっと、本当に抜け出すこともできない。


 助けて……。


 最期の最後に、そんな言葉が浮かんで、それでも、助けてくれる人を誰一人として思い浮かべることができなくて……私は、長い息を吐き出した。






「あぁあっ! ごめんなさい! やっと、見つけたと思ったのにっ! でも、もう大丈夫。今度はちゃんと……」


 どこかで、誰かのそんな声が聞こえた気がして、次の瞬間、全身に激痛が駆け巡る。


「ほぎゃあ、おぎゃあっ」


 大きな泣き声で目を覚ますと、私はなぜか、赤子になっていた。
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