私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
21 / 74
第二章

第二十話 エスコート役

しおりを挟む
 生誕祭は、当然、国王の誕生日を祝うものであり、毎年、貴族達は生誕祭へ参加する。
 ただし、デビュタント以前の子供に関しては参加を免除されたり、運命の番に求婚中や運命の番の危機、運命の番が妊娠中などという、獣人にとって重大な時期に関しては免除されたりと、そこまで強制力の強い催しではない。
 生誕祭は専ら、滅多に会えない他領の貴族との交流の場だったり、番探しの場だったりと、社交の面を備えつつも、フリーダムに動けるお祭りという感覚だ。


「……お、お父様、お母様……」

「ふ、ふふっ、随分と、舐めた真似をしてくれる」

「うふふふふふふっ、リコ、大丈夫よ? ちゃあんと、わたくし達で対処はしてあるから」


 その生誕祭当日、ゼラフがエスコートのために訪れるはずなのに、一向にその気配がないということで、お父様とお母様の顔は恐ろしいことになっていた。

 笑顔、ではあるものの、その背後に背負うのは神話の中に登場するドラゴンではなかろうか?
 それも、一頭なんていう可愛い数ではなく、複数の……いや、無数のドラゴンが、今にもその牙を剥こうとしているようにしか見えない。


「リコ、ケイン君とは仲が良かっただろう? 彼には、万が一の時のために、リコのエスコートを頼んでおいたんだ」

「え?」

「何もなければ良かったけれど、獣人の中ではそういうこともあるから、基本的にエスコート役はスペアとなる人を選んでおくものなの。……まぁ、運命の番が見つかった時のための処置ではあるけど、あちらにその様子はないようだし、責める材料としては十分よ」


 何が何だか分からないものの、どうやら、ゼラフは敵に回してはいけない人達を敵に回したらしい、ということだけは、はっきりと理解できた。


「こんにちはー。えっと、この度は、その……」

「こんにちは、ケイン君。ドーマック家とはほとんど付き合いもないことだし、気遣いは不要だ」

「ア、ハイ、ワカリマシタ」


 ゼラフが来ないことですぐに遣いが出され、ケインがやってくる。ただし、お父様の怒りの笑顔を直視してしまったケインは、その尻尾をクルンと股に挟んで、耳を垂れる。


 うん、怖いよね。


 自分が怒られているわけではないものの、その怒りはあまりにも恐ろしい。
 改めて、正式にお父様がケインへとエスコートの依頼をして、ケインがそれを承諾している様子を眺めていると、ふいに、ケインが私の方へと顔を向けて、駆け寄ってくる。


「そ、その、一ヶ月前は、ごめん。俺、その時はまだ何も知らなくて、リコと婚約者の関係が悪いなんて思ってもみなくて、無神経なこと、言った」


 何のことだろうか、と思っていると、ケインは、私が思い出せてないことに気づいたらしく、『婚約者との生誕祭が楽しみだなって、言って、ごめん』と謝ってくる。


「気にしてない……。どっちも」

「どっちも……? あっ、そっか。よしっ、それなら、俺にも可能性があるってことだよなっ!」

「?」


 ケインからの言葉を気にしていないというのと、婚約者であるゼラフそのものも気にしていないという意味で『どっちも』と言えば、ケインは喜んで……最後に意味不明な言葉を呟く。


「あ、い、いや、何でもない!」


 ただ、それについて追求されたくないらしいケインの様子に、私はただ、うなずいた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

処理中です...