私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
28 / 74
第二章

第二十七話 愛しい片翼(セイン視点)

しおりを挟む
 ヴァイラン魔国の近衛騎士。それが、俺の立ち位置であり、誇りだ。そして、魔族の大半が願う片翼への想いだって、ちゃんとある。
 片翼とは、魔族にとってかけがえのない存在であり、獣人で言うところの番に良く似ている。違うのは、片翼は生まれ変わるとされていることと、一人以上の魔族にとっての片翼が存在することもあること、片翼を失った魔族は、絶望に苛まれて死んだり狂ったりすることもあれど、そのまま生き残る者も居るということ。


 さて、俺もそろそろ片翼を見つけたいところですが……いったい、どこに……?


 ついでに、片翼を中々見つけられない魔族は、一定の年齢を迎えると、無翼とされる。つまりは、そもそも片翼を見つける本能なり何なりに欠陥を抱えているか、自分に相応しい片翼が存在しないのだと結論付けられるというわけだ。


 その無翼に片足を突っ込みかけてるなんて、昔は考えもしませんでしたね……。


 片翼への憧れは、当然存在する。しかし、ここまできてしまうと、もう無理なのではないか、という思考の方が強い。


 俺の、片翼……。ひと目でも良いから、見たかったですね……。


 片翼を見つけられないまま、ひたすら、まだ見ぬ片翼のための自分磨きに精を出した結果、俺は近衛騎士の騎士団長なんていう地位にまで辿り着いていた。
 仕事は充実しているし、生活そのものも問題ない。ただただ、片翼が、俺の唯一が見つからないということ以外は、全てが順調だった。


「特別講師、ですか?」


 そんな時だった。我らヴァイラン魔国の魔王、ジークフリート陛下がそんな提案を持ちかけてこられたのは。
 片翼捜しのために、様々な国に赴く魔族は多い。俺も昔は様々な国を巡った口ではあるものの、ここ百年くらいは自国の中でしか生活していなかった。きっと、陛下のその言葉は、俺を思ってのことだったのだろう。
 モビア獣国での会談のついでに引き受けた、騎士科に通う生徒への特別な授業。まさか、そこで、本当に片翼に出会えるなどとは、思ってもみなかった。


「リコ……俺の、片翼……」


 愛しい彼女の姿を思い浮かべるだけで、心が浮き立つ。羽など生えてはいないのに、今ならば空に飛び立つくらい簡単にできそうだ。


「彼女の運命の番が、俺であれば良いのに……」


 さすがに、そこまでの運が自分にあるとは思えない。きっと、リコにとっては、一応名前を知っている魔族、くらいの認識でしかないだろう。


「……運命の番になんて、渡すつもりはさらさらありませんけど、ね?」


 どんな手を使ってでも、リコを手に入れる。一番は、リコが自分の意志で俺を選んでくれることだが、それがどうしても叶わないのであれば、手段など選んでいられない。俺には、リコだけしか、見えないのだから。初めて片翼を見つけた俺は、きっと、リコとの未来が描けなくなれば、生きてはいられないのだから。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

処理中です...