私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
73 / 74
第二章

第七十二話 幸せです

しおりを挟む
 店の中では、私達はとても歓迎された。それこそ、全てのものを無料で提供しますと言わんばかりの様子に、さすがにタジタジになり、セインさんが丁寧に断ってくれている様子を見て、さらにセインさんのことが好きになる。
 案内された席は、外の景色が良く見える席で、気遣ってもらえているのか、他の客は周囲の席には居ない。


「俺達は、この店では有名人になってしまったようですね」

「セインさん、が、お店の、英雄、ですから、ね」


 そう、セインさんは、英雄だ。もしくは、救世主。


「そんな大層なものではないのですが……まぁ、今は、言っても仕方ないのでしょうね」


 特にそれを誇るようなこともなく、小さく息を吐くセインさんを眺めながら、私は、今、湧き上がるその感情を抑えようとして……そういえば、素直になるのだったと思い出す。


「セイン、さん……今は、私を、見て、欲しいです」


 きっと、この感情は嫉妬だ。セインさんは、私の番なのに、他に目を向けてほしくない、という、恐ろしく狭量な心ゆえの嫉妬。
 言った直後に、セインさんはグリンッと私の方に首を回して、目を見開く。そんな反応に、やはり、言わなければ良かったと、後悔が広がって――。


「リコ、さん。その、もしかしたら、返事を、期待しても、良いのでしょうか……?」


 ゴクリ、とツバを飲み込んて、緊張した面持ちで告げるセインさんに、私は、セインさんに引かれなかった安堵とともに、本題を話す覚悟を決める。
 逃さないようにと、私はセインさんの手を両手でガシッと掴む。


「セイン、さん。私の、運命の番は、セインさん、です。結婚してください」

「…………」


 てっきり、すぐに返事が来るものだと思っていたのに、返ってきたのは沈黙。


「…………」

「…………」


 しかも、長い。


 まさか、片翼というのは、嘘だった……?


 そんな、最悪な予想が頭の中に過った直後だった。


「俺が、リコの、最愛の、片翼の、番……? いや、待て、その前に、俺、今、プロポーズされた……?」


 思わず、といった具合にセインさんの口からこぼれた言葉達。それによって、最悪の予想は回避された。だから……。


「結婚、式は、いつに、しましょう、か? あっ、その、前に、セインさん、の、ご家族にも、お会い、したいです」

「ちょっ、リコさん!?」

「ずっと、我慢、して、いました。監禁、されたくなかったら、うなずいて、ください」


 今すぐにでも襲って、セインさんを私のものだとアピールしたい。しかし、できることなら合意の上で、順序立ててその段階に進みたい。


「……リコさんに先にプロポーズされるとは思っていませんでした。改めて、リコさん。あなたのことが、出会った時から大好きで、愛しています。どうか、俺と結婚してください」

「っ、はいっ!」


 そう、答えた直後だった。


「「「おめでとうございます!!!」」」


 店内に居た店員全員から祝福の言葉と、どこから調達したのか、大量の花弁が風の魔法によって降り注ぐ。


「これ、は……?」

「予定より早くて、ここまでしか準備ができていませんでしたが、本来は、俺が、リコさんの信頼を勝ち取った後、リコさんをここに連れてきて、プロポーズするつもりだったんです」


 つまりは、私が勢い良くプロポーズしたせいで、サプライズが台無しになった、ということなのだろう。


「ご、ごめん、なさい」

「いいえ、これは、俺の予想が悪かっただけです。ですが、この先、改めてリコさんにプレゼントしたかったものをプレゼントさせてもらっても良いですか?」

「は、はいっ」


 その二週間後、私は、セインさんから指輪をプレゼントされた。それは、大きなアメジストに金の細工が装飾された婚約指輪。セインさんの色の指輪。
 それから一月後、セインさんの家族にも挨拶を済ませた私は、セインさんと、幸せな結婚式を挙げる。
 途中、我慢の限界が来て、セインさんを閉じ込めたこともあったが、無事に式を挙げて、私は今、とても幸せだ。


「セイン、さん。子供は、五人、以上、ほしい、です」

「はい、愛していますよ。リコ」

「私、も。愛して、います」


 その後、宣言通りに五人の子供が産まれることになるのだが、それはまた、別のお話。


 ありがとうございます。女神様。

 私は今、幸せです。



(完)
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

処理中です...