大事なことなので、もう一度言います。メインヒロインはあちらにいるのでこっちに来ないでください!!

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授業が終わり、ようやく放課後になった。

リリィとロザリアと一緒に帰ろうと、教室を見渡す。

……あれ?

リリィはいるのに、ロザリアの姿がない。

どこ行ったんだろう。

そう思いながら、リリィの席へ向かった。



「ねぇ~リリィ、一緒に帰ろう~」
「あっ、ごめんねニコ。スピカ先生に花の水やり頼まれちゃって」

「え、なんで? 美化係とかいなかったっけ?」
「それがね、もうみんな帰っちゃったみたいで~」

「そうなの? じゃあ私も手伝うよ!」
「ううん! 大丈夫! 先に帰ってていいよ~」

「でも……」

「大丈夫だよ~心配しないで!」

そこまできっぱり言われると、引き下がるしかない。

リリィが“平気”って言うなら、本当に平気なんだろう。

「うん、わかった。気をつけてね」
「うん!」
「そういえばロザリアは?」
「飼育係の仕事で、飼育小屋に行ったと思うよ?」
「そっか~」

……今日は一人で帰るのか。

ちょっとだけ、寂しい。


「それじゃあ先に帰るね、またねニコ!」

「う、うん!またね!」

リリィが廊下へ向かうのを見送りながら、ふと胸がざわつく。

……あれ?

花の水やり。
人がいない時間。
温室。

――思い出した。

これ、イベントだ。

確か、エリクが人目を避けて花を見に来て、そこに水やりに来たリリィと鉢合わせするシーン。
そして発動する、人見知りモード。

でも。

待って?

ゲームでは「初対面」だったはず。

……でも今の現実。

エリクと普通に朝食一緒に食べたよね?

初対面、とは?

大丈夫?
イベント、破綻しない?

うーん……気になる。

見たい。

でも「先に帰ってて」って言われたし。

堂々と覗くのはさすがにまずい。

その時、ひらめいた。

――保健室。

私はそっと踵を返した。

「しっつれいしまーす!」

「はいは~い、今日はどうしたの~?」

相変わらず間延びした声。
ローズ先生は窓際で紅茶を飲んでいる。

「先生、少しここにいていいですか?」

「いいけど~どうしたの~?」

私はそっと窓際へ歩み寄り、外を指差す。

「実は~あれ、見てくださいよ」

温室の近く。
花壇の前に、1人佇む白色の髪。

「うーん……あれはエリク様?」

「そうなんですよ~」

少しして、バケツを持ったリリィが現れる。

……来た。

「今から、たぶん会うんですよね~」

「会う?」

「い、いえ!なんでもないです!青春イベントというか!」

ローズ先生がくすくす笑う。

「若いねぇ~」

でも私はそれどころじゃない。

――これ、どうなる?

ゲームでは、ここでぎこちない自己紹介が始まる。

でも今は?

エリクはリリィを知っている。
リリィもエリクを知っている。

初対面補正、ない。

イベント、発動する?

花壇の前で、二人の視線が重なる。

エリクの肩が、わずかに強張った。

……あ。

人見知り、発動してる。

よかった。イベントはあるみたい。

でも、なんで?

朝食だって一緒だった。
みんなでいれば、普通に話してた。

……あ。

一対一は、まだ別問題とか?



花壇の前で、リリィが何か話しかける。
エリクは少し間を置いて、ぎこちなく答えている。

ちゃんと会話はしてるみたい。

ゲームよりは、少しだけ距離が近い。

でも、やっぱりどこか不器用で。

……うん。

イベントは発動してる。

形は違うけど、壊れてはいない。

それなら、まぁいっか。


並んで立つ二人は、思った以上に絵になっていた。
 ――尊いって、こういうことかもしれない。


推したちのイベントが無事に見られた喜びと、
世界がちゃんと動いていることへの安堵。

胸の奥がじんわり温かい。

「大丈夫そうだね~」
「そうですね。よかった~」

思わず力が抜けた声が出る。

ローズ先生が、くすっと笑った。

「ニコちゃんもしっかり青春してるの~?」
「もちろん、できてますよ!」

即答すると、先生は少しだけ目を細める。

「そう。それならよかった~。何か困ったことがあったら、私かスピカくんにちゃんと話すんだよ~?」
「はい! ……って、スピカくん?」

「あー、ごめんね。スピカ先生に、だよ~」
「お二人って知り合いなんですか?」

「うん、クラスメイトで仲がよかったんだ~……今も、ね」

さらりと言う。

「へぇ~……知らなかった」

スピカ先生の“先生じゃない姿”が、想像できないな~

「ほらほら~もう時間が遅いから帰りなさい」
「はーい、お邪魔しましたー」

保健室を出ると、夕暮れの光が廊下を染めていた。

さっきまで“イベント”だったはずの光景が、
今はただの放課後の風景に戻っている。

推しイベント、無事回収。
世界、バグなし。

明日も頑張るぞー!

そう意気込みながら校門に向かった。






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