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4.王太子ロベルト
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「何言ってるんだ、良い提案じゃないか。受ければいいだろう」
「……ロベルト」
「お前は幸せになれる、それでいいだろ」
「……じゃあアンリの幸せはどうなる」
「それはお前が決めることじゃない。お前が、彼の幸せを決めるな。彼が幸せだっていうならそれでいいだろ」
「でも俺はそう思えない」
「勝手な男だな。お前が、婚約破棄をしたいって言ったんだ。その時点で彼の幸せをお前が決めるべきじゃない」
「っ……」
あの日、アンリも驚くほどの大声を出して、そのままアンリを家に帰した。
それ以来アンリの訪問を断っている。
けれどこんな情けない話を、国内の誰かには聞かせられなくて、仕方なく、仕方なく、仕方なく、隣国の王太子に会いに来た。ロベルト・スティーリア・グラディウスは、ラクリーマ王国という、この世界の始まりの国の王太子だ。
フェリクスより七歳年上だが、昔から若い王太子同士で、定期的に会う事があり、今ではすっかり気の置けない友人だ。他の国の跡継ぎはロベルトよりもさらに年上だったり、遊び人だったり、固定観念に囚われすぎていたりして、フェリクスとは話が合わない。
ロベルトは唯一、跡継ぎとしては立派な地位を持ちながら、真面目じゃないと言うか、気が抜けているというか、居心地の良い存在だった。
「お前が悪いんだろう、フェリクス。何もかもお前が悪い。それでいてお前が悪くない事がない。どうだ? 気が済んだか? どうせお前は、結局誰かに叱られたいんだろう。叱ってやるさ、お望みならな」
「…………ロベルトに叱られたいんじゃない」
「アンリに叱られたいんだろう。お前は、アンリに叱られて、泣かれて、なんでって責められて、自分の価値を実感したいんだろう。甘えたの赤ちゃんめ」
ロベルトの言う事は何もかもが的を射ていた。図星だ。
そのせいでフェリクスは顔もあげられない。
「……俺はっ……、アイツにも幸せになって欲しいだけだよ……」
罵られたっていい。お前なんかいらないと、罵られて、フェリクスから離れて、もっとアンリが笑い合える相手と一緒になればいい。本気でそう思っている。フェリクスといて笑いも泣きもしないのだというなら、きっと興味がないのだろう。だったらもっと、アンリが興味を持てる相手を探せばいい。好きになればいい。それで相手にも想って貰えたなら、今度こそ、アンリを選ばなかったフェリクスのような男は見限って、幸せになればいい。
それなのに、何だってあんな、自分を犠牲にするような提案が出るのだろう。
「……アンリ自身は別にもともと王妃になりたかったわけじゃない。俺が、王になるから、必要だから頑張ってたんだ。ここまでずっと努力してきていた。それなのに、俺は隣にいるのに、アンリの事を想ってないとか、可哀想だろ、そんなの」
仕事だけさせられて、仕事が終われば夫は別の女と過ごしてるなんて、そんなのは、フェリクスだけが得をする。
「じゃあアンリにも好きな相手と過ごせるようにしてやったらいい」
「は?」
ロベルトの言葉の意味がわからなくて思わず顔をあげた。
大きな窓を背にして、夕暮れの日差しを背負って、笑顔で笑う男はまるで新しいおもちゃを見つけたかのようで楽しそうだった。
「仕事が終わったら、それぞれ好きな相手と過ごせばいいだろう。アンリだって、好きな相手がいれば王城に住まわせていいと言ってやればいい。愛人がいる貴族なんかいくらでもいるし、表向きは世話係にでもしておけばいい」
「…………」
「フェリクス、お前は馬鹿正直に感情を顔に出すのをやめた方がいい王になるよ」
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