ドラゴン☆マドリガーレ

月齢

文字の大きさ
176 / 228
第10唱 王都へ行こう

師弟のみに通じる会話

しおりを挟む
「ラピんこは、騎士たちにかけられた呪法を聖魔法で解いたんだよな」

 ラピスがクロヴィスの問いに答えるより先に、ジークが答えた。

「そうです。おかげで仲間の命が救われました。――ラピス。改めて我ら一同、心より礼を言う」

 ラピスはまだ師にその話を――ドロシアが連れてきた騎士たちにかけられた呪法を解いた話を、していなかったのだが。どうやら騎士団長が先に報告していたらしい。
 さらにその場に居合わせた騎士たちも一斉に片膝をつき、「騎士の誇りに懸けて、このご恩に必ず報いることを誓います」と頭を下げてきたので、ラピスはあわあわと両手を振った。

「お世話になっているのは僕も一緒ですから! 立ってくださいぃ」
「いや、たいしたもんだぞ。さすが俺の弟子だ。素晴らしくよくやった」
「……えへへ~」

 師に褒められると、素直に嬉しい。
 思わずへらへらニヤけていたら、髪をくしゃくしゃ撫でられた。

「これからやることも、そのときと基本は一緒だ。『こうなってほしい』と強くイメージすること。俺はこれから水源の河や湖をあちこち回って、水から穢れが取り除かれるよう働きかける。上手く運べば、王都中の地下水も反応するはずだ。それを感じたら、ラピんこは大神殿ここから、地下水が井戸の水源に戻るよう、導いてくれるか? ここにいれば集中しやすいはずだから」

「えーと……うん…………はい、わかりましたっ!」

 ラピスが大きくうなずくと、ジークの青い瞳が丸くなった。

「い、今ので理解わかったのか?」
「はい、わかりました! ザバーッ! と洗ってよいしょーっ! となったら、じわじわドーン! と元に戻ってもらうんですよね!?」
「まさにその通り。さすが俺の弟子。天才か」
「えへへへ~」

 にこにこ顔のラピスとクロヴィスを交互に見ながら、ジークが「ザバーッでよいしょで、じわじわドーン……」と額を押さえている。
 彼の部下たちも、「団長、しっかり!」「大丈夫です、あれで理解できるのはあのお二人だけです、団長が普通です!」などと一緒に混乱していたが、ジークはすぐに平常心を取り戻した。

「とにかく、グレゴワール様が出て行かれるのでしたら、我らで護衛させていただきます」
「いらねえよ。ラピんこを守れ」
「それはもちろんです! が、グレゴワール様のことも、です。魔法のお役には立てませんが、人払いと雑用くらいはできます」
「そうですよぅ、お師匠様。お師匠様がひとりでいたら、『あの月の精のような人は誰?』ってうっとりした人が集まってきて、魔法に集中できなくなりますよ!」
「そう、その通り」

 加勢したラピスとうなずき合うジークに、クロヴィスは「こいつ、ラピんこの天然を利用しやがって」と悔しそうだったものの、結局ジークのみ伴って行くということで話がついた。例によって“近道”をするので、多くは連れていけないらしい。

 大神殿は普段から警備体制が厳しいので、ラピスがこれから籠る祈祷の間に一般人が入ってくることはまずないようだ。が、ジークはさらに直属の部下たちを厳選して警護にあたらせてくれた。
 その中には、あのシグナス森林に同行してくれた騎士たちや、ロックス町で知り合ったカーマン、プレヒトらもいる。気心の知れた者を選んでくれたのだろう。

「じゃ、あとでなラピんこ。くれぐれも無理はするな。力まず、無茶せず頑張る。これを厳守しろ」
「わかりました!」

 こくこくうなずくと、白皙に綺麗な微笑みが浮かんだ。
 するとラピスばかりか周囲の騎士たちまで、「あれで大祭司長と同い年はないわ」と赤くなった。 

「そういえばお師匠様。コンラートさんを呼んでましたけど、一緒に行くのですか?」

 皆に聞こえないよう屈んでもらい、小声で尋ねると、「ああ……そうだな」と、笑みを消した表情に憂いの色が浮かんだ。

「実はどうしようか迷っている。同行させるつもりだったが、ジークの野郎がうるさそうだしな」

 そうだった。ジークやギュンターたちは、すぐにもコンラートを捕まえたがっていたのだ。

「あ。そういえば、ミロちゃんに乗ってたとき、コンラートさんから聞いたのですけど」
「そういやお前、やけに長々喋ってたな」
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

処理中です...