さよなら、あいしていたひと

鳴宮鶉子

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許されない関係でも今が幸せ side 恵

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パパとママは海外に出張でいない。
家政婦さんも家に帰って、ここには、わたしと翔しかいない。

日が暮れ寝静まる時間。
わたしと翔は、わたしの部屋のわたしのベッドの上にいた。

パパとママが出張でいない日。

翔兄の許嫁の美香さんが来ない日、翔はわたしを抱いてくれる。

細くても引き締まった身体で、そこら辺の俳優さんよりも格段にカッコいい翔。

翔がわたしに覆い被さり、舌を絡ませ、キスをする。
お互いの唾液が交わり、それをお互い飲み合う。

翔の手はわたしの胸の膨らみを掴み、太腿を撫でる。
そして、翔の唇がわたしの胸の頂に口づけし、むしゃぶりつくように吸い、歯を立てる。
その行為に刺激され、わたしの子宮から、愛液が放出され、翔の逸物を欲しがる。

そんなわたしを焦らすように、わたしの胸を口で刺激しながら、指で脚の付け根をこじ開け刺激する。

なかなか、挿れてくれない翔。

「…翔、挿れて、欲しい」

わたしがそう言うと、枕元に置いてたゴムの封を開けて、逸物につけ、わたしの中に埋める。

わたしの気持ちいい角度に、何度も何度も突いてくる翔に、鳴されるわたし。

後、何回、翔と、この愛をぶつけ合う行為ができるんだろう…。


大学を卒業して、ベッセルリッチホテルグループ本社の受付で勤務しているわたし。

人の顔を覚えるのは得意だから、来客されるお客様の対応はなんとか卒なく熟てる。

見てくれしか評価されないわたし。

社長の血の繋がらない娘だから、従業員から嫌がらせとかはされてない。

でも、男性社員からは大事に扱われても、女性社員からは距離を開けられてるような打ち解けられない関係で、息がつまる日々を送ってた。

受付は定時に退社できるから、勤務が終われば後は自由。
だから、勤務時間の間は、社内で笑顔を見せてた。

修士課程を修了して同期入社した翔は、経営企画戦略部の最前線で勤めてる。

多忙な日々を送ってる。

定時退社のわたしは、受付の女性社員と会社の外で別れ、1人で帰宅する。
彼女達はコンパや女子会などで毎日アフター5を楽しんでるらしい。
わたしは、一応社長の娘だからか、誘われない。

勤務が終わったら、家政婦の山本さんが作ったご飯を食べた後、ネットフリックスを見たり、漫画や小説を読んで過ごすのが、平日のアフター5のルーチン。

翔は仕事が多忙で、いつも日付が変わる間際にならないと帰ってこない。

パパとママがいる日は、関係が疑われないよう、翔と会わないようにしてる。

朝早くから日付が変わる間際まで、働いてる翔。
翔と平日に全く会わない日もある。

それが、とても寂しく思う。



大学を卒業し、翔の婚約者の美香さんは、学校で翔に会えないからと、土曜日の午前中に我が家に来て、日曜日の夜までいる。

結婚秒読み段階ではと言われてる。

同じ家にわたしがいるのが気になるのか、翔は美香さんを連れて出て、食事も外で済まし、どこかのホテルで泊まって、日曜日の夜遅くに帰ってくる。

だから、週末も翔に会えない。
会えても、美香さんと一緒にいる事が多くて、切なかった。

「恵ちゃん、翔は?」

土曜日の午前9時過ぎ。
昨晩、翔と熱い夜を過ごしたわたし。
バレる事はないと思いつつも気まずい。

家政婦の山本さんが、リビングに招き入れた美香さんにコーヒーを出した。

「知らないです。部屋に居るんじゃないですか?」

「それがいないの。昨日、帰って来てた?」

「わたし、部屋でネットフリックス見てたからわからないです」

ダイニングテーブルに置かれた山本さんが作ってくれたサラダとフルーツを食べる。

さっさと食べて、部屋に戻って、ネットフリックスを見て過ごす根暗女に戻らないと。

わたしは、美香さんにそういう子だと思われてる。

高校1年の冬に、翔と関係を持ってからは、翔とへんに仲良い所を見られるのが怖くて、誰かがいる時は、距離を開けるようにした。

元々、1人でいる事が多かったわたし。
翔から離れたら、本だけが友達な寂しい子になった。


わたしが部屋に戻った頃合いに、翔は家に戻ってきて、美香さんを連れて出て行った。

2人は婚約者。将来、夫婦になり、子を作り家族になる。
それだけでなく、ベッセルリッチホテルグループの社長と、建設を請け負う大宮建設の娘だから、結婚し、結びつきをつよくし、会社を大きくし、社員を守らないといけない。

ネットフリックスで、東映アニメや邦画を観ていたわたし。
その後、YouTubeで大好きなネットアーティストが他のアーティストの愛の曲を歌っている【歌ってみた】シリーズを聞いていた。

今頃、翔は、美香さんと肌を合わせてるのかな…。

昨日の夜、あんなに、わたしの身体にむしゃぶりつき、何度もわたしの中に埋め混んで、突いて、ゴムの中に、白い遺伝子のエッセンスを放出したのに。

情事の後の腰の怠さと、中々寝かして貰えなくて、疲れてる身体。

気がついたら、また眠ってしまっていた。

引きこもる生活も不健康だから、家政婦の山本さんが作ってくれたお昼ご飯を食べてから、スポーツジムに行く事にした。


土日の午後はスポーツジムで汗を流すようにしてる。
ホテル業界の本社の受付業務は、あまり客も来ず、椅子に座ってるだけの時間が長い。
5人社員がいて、2人がカウンター、3人がバックルームで電話番をする。

あまりに身体を動かさないのは良くないから、土日だけスポーツジムで、エアロバイクとジョギングマシーンを中心に運動をする事にした。

「恵ちゃん、頑張ってるね」

いつも週末のこの時間に一緒になる、翔の親友の滝川朔弥(たきがわさくや)さん。
中高一貫校時代に、翔と一緒に、あれこれわたしのお世話をしてくれた。

翔と滝川さんと美香さんは、学部は違うけど同じ大学に通った。

わたしは頭が悪いからT大には行けなくて、それでもなんとか偏差値そこそこの女子大に通った。

翔は経営学部で、美香さんは国際学部、滝川さんは法学部。

ちなみに、わたしは文学部の心理学科。趣味を極めるために進学した。

暇なわたしと違い、滝川さんは多忙だ。

平日は、オーバーワーク気味で、受け持っている案件も多く、法的書類の作成と、依頼者との面会で、深夜過ぎまで働いてるらしい。
土日は呼び出しが無いから、午後の2~3時間だけは、スポーツジムで身体を動かして、ストレス発散をしてると言ってた。


「こんにちは、滝川さん」

いつものジョギングマシーンで、イヤホンをつけて、東映アニメを見ながら走ってるわたし。

ただ、走ってるだけだと飽きるから、テレビを見ながら運動できるマシンでついつい運動してしまう。

エアロバイクもジョギングマシーンも市販されてるから購入して、自分の部屋でしたらいいんだけど、運動で汗をかいてる姿を翔に見られたくなくてできないわたし。

「今日、この後、翔達と飲みに行くけど、恵ちゃんも行かない?」

「行きません。せっかくカロリーを消費したのに、なんでそれを台無ししに行かないといけないんですか」

土曜日の夜。翔は、滝川さんを誘い、美香さんと3人でよく飲みに行ってる。

「あいつらといるの嫌なんだよな。俺、独り身だしさ。」

「兄がいちゃつくのを見る趣味ないです。断ればいいじゃないですか」

「まっ、そうなんだけど…」

わたしの隣のジョギングマシーンで走り出す滝川さん。

土日はたわいない話すを少しして、午後2時から午後6時ぐらいまでしっかり運動をする。
今日はいつもより遅くに来たから、午後6時半まで頑張った。

わたしの隣に常に滝川さんがいる。

運動を終え、シャワーを浴びて、薄くメイクして着替え室を出ると、滝川さんが待ってる。

これも、いつもの事。



「滝川さん、時間は大丈夫なんですか?」

「バカップルなんて、ほっとけばいいよ。送っていく」

車の鍵を見せ、わたしの腰に手を添え、エスコートしてくれる。
大人だから1人で帰れあるけど、スポーツジムで、身体を酷使し過ぎて、筋肉痛で身体が痛いから、車で送ってくれるのは嬉しい。

「明日の夜、ご飯行かない?月曜日に必要な法的書類は片付いたからさ。太らない店を予約するからさ」

「バカップルがついてこないなら行きます」

「あいつらには秘密にするから大丈夫」

日曜日はたまに、滝川さんと夕ご飯に行く。
月曜日は多忙になるから、それに備えて、前の日の日曜日、スポーツジムの後に法律事務所に行き働いてるらしい。

弁護士の先生も大変なんだなと思う。

翔も、週末に美香さんとの交際を優先させて仕事を入れないようにしてるからか、平日は寝る暇もなく働いてる。

滝川さんに家まで送って貰い、帰ってから、家政婦の山本さんが作ってくれた野菜多めの低脂肪高タンパク質のヘルシーメニューを食べる。

そして、浴槽に湯を溜めて貰い、高めの入浴剤を入れて、ゆっくり入浴した。

わたし、誰のために、身体を綺麗に維持してるんだろう…。
暇つぶしで、運動と身体の手入れをしてるだけと思う事にした。


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