Cinderella story 〜天涯孤独なわたしの王子様〜

鳴宮鶉子

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バレちゃったけどなんでそうなる?

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営業部と商品企画部は絡みがあり、新商品開発の会議で、どうしても、週2~3回、如月と接触してしまう。

いまだに、社内で【蝶々】の百合を探してるらしい……。

「葉瀬、今日中に他社の高級マンション向けのシステムキッチンのデータを集めてまとめろ」

それ、営業事務の仕事じゃないっと思いつつ、データは頭の中にあるから、30分ぐらいで関東圏の高級マンションの備え付けシステムキッチンの型式と商品の資料をつけて、如月のデスクに投げた。

「おまえ、これは確かなデータか。早くねぇか、仕事」

「関東圏のデータは集めてますから」

腹立つから、資料を投げて、自分の部署に戻ろうとしたら、こけてしまい、眼鏡が吹っ飛んだ。

伊達眼鏡だから、無くても困らないけど、如月に素顔を見られたくない。

顔を左手で隠して、眼鏡を拾おうとしたら、如月に左手を掴まれ、素顔をじっと見られた。

「何より……」

「おまえ、【蝶々】のゆりだろ?」

「はっ、何それ?意味わかんない」

落ちた眼鏡を拾いかける。

「他にやる仕事あるから」

逃げるように商品企画部のマーケティング課に戻った。

たぶん、バレた。絶対に、バレた。

どうしようか……、悩む。

「おまえ、これ、落としただろ?」

7時過ぎにオフィスビルを出ようとしたら、如月に捕まり、わたしが落としたペンダントを見せられた。

わたしが取ろうとしたら、ペンダントを如月がポケットの中に入れた。

「返して下さい」

「嫌だね」

如月を睨みつける。

「今日は副業は無いだろっ。食事に付き合え。そしたら、返す」

如月に手首を掴まれ、引っ張られるように連行される。

タクシーに押し込まれ、プリンセスホテルの最上階の三つ星フレンチ料理の店に連れて行かれた。

「ペンダント、返して」

「食事が終わったら返す」

コース料理をワインを飲みながら食べ進める。

「なあ、おまえ、椎名工務店の1人娘だろ……」


食事中に、突然、如月に言われ、戸惑う……。
わたし、父と母が自殺し、建築関係の仕事に就くなら、父の子だとバレるのはマイナスになるから、名義変更して、母の姓を名乗ってた。

「ペンダントの中身を見た。お前の親父には……昔、お世話になった。お前の両親を救えなかった事を、親父はずっと気に病んでた。俺の親父とお前の親父は、大学時代の親友で、俺の会社、親族経営で色々あって、お前の親父は独立した。今、【TATA】が存続しているのはお前の親父のおかげもある」

突然の如月の話に、唖然となる。
わたしの父のは、【TATA】と絡んで仕事をしてた気はしてた。
リフォーム案件が、キッチンやバス、トイレの水回りの住居施設が主だった。

「親父が、お前の親父を役員として【TATA】に招き入れようとして、それて、常務をしていた叔父さんの策略で、お前の実家の会社は倒産した」

なぜ、協力会社が仕事を放棄したのか、受注してないのに莫大の製品が納品されたのか、倒産する前にトラブルが立て続けに起きた。

それは、誰かからの陰謀な気はした。

でも、どうすることもできず、気がついたら負債が5000万円になり
父と母は命をたった。

3ヶ月ほどで起きた状況悪化からの悲劇だった。


「てかさ、俺とお前、昔によく遊んでたの覚えてない?
俺、芋ルックなお前はあまりにも劣化酷くて気づかなかったけど、【蝶々】のゆりを見て、懐かしい感じがした。で、前に赤坂のタワマンの内覧会で、キッチンに釘付けのお前を見て、椎名の1人娘だって気づいた。
で、だな、お前が天涯孤独になったのは俺の会社のお家騒動の巻き添えもあるし、俺はお前をいいなって思ってた。
だから、結婚しないか?」

話の内容がトンチンカンで理解できない。

なんで……そうなる。

父と母が自殺した原因が、【TATA】のお家騒動。
如月の父親はわたしの父と親友で、父を役員として【TATA】に招き入れようとしていた。
それを妨害しようとした専務によって、死に追いやられた。

「……絶対に嫌。わたしまで死に追いやられかねない」

「専務は会社から追い出した。今は赤字経営の工務店を経営して苦しんでる。何も心配いらない。親父も、椎名の1人娘との結婚を熱望してる」

意味がわからない。
だから、なんで、いきなり、結婚しろっとなるのか……。

「お断りします。絶対に嫌です。ご馳走様でした。ペンダントを返して下さい」

最後の〆のコーヒーを飲み干し、ペンダントを催促する。

「結婚を承諾しないと返さない」

「はっ、食事の後に返してくれるって言うたよね?」

「俺がプロポーズしてやってるのに断るおまえが悪い。とにかく、お前は半年以内に、俺の嫁にする。その時に返してやる。帰るなら帰れ」

不機嫌になる如月。

ペンダントをすぐに取り返したかったけれど、不機嫌な如月が怖くて、そのまま、帰宅する事にした。





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