認知しろとは言ってない〜ヤンデレ化した元カレに溺愛されちゃいました〜

鳴宮鶉子

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人事異動

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「はっ、アメリカ本社に異動って、私情挟みましたよね」

お別れ会を兼ねてネズミーランドとネズミーシーの宿泊を伴う想い出作りを計画したのに、アメリカ本社への異動を言い渡され、苛立ちを感じる。

「お断りします」

このご時世、海外で働きたいと希望する人は多い。

「結衣、海外で働きたいって言ってたじゃん。チャンスだろ」

公務員をしている両親は海外で働けるよう交換留学ができる私立大学に通わせてくれた。
だから、交換留学中、将来のために大企業でのインターンプロジェクトに参加し、大学卒業後にアメリカで働けるよう模索した。
シングルマザーだからではないと思うけど叶わず、外資系企業の日本支社に絞って就活した。

「私情ではなく、結衣の能力が認められたからだ。マイクラソフトの共同開発の案件もあって本社にヘッドハンティングされた」

チャンスではあるけど、葛城部長との関係が続く。

「俺は結衣と翔琉を連れて行く気だから。もう2度と離れたくない」

私情で押し進めたとしか思えない。

「結衣、結婚しよう。この1年間、俺たち、上手くいってただろう。翔琉のためにもその方がいい」

表面上合わせていただけで、私は葛城部長の事を受け入れてない。
だから、昔みたいに『英翔』と名前で読んでない。


「嫌です。アメリカ本社に異動しろというなら退職させて頂きます」

年収がかなり下がり、雇用条件が悪くなるが致し方がない。

元々そのつもりでいた。

「結衣、なんで、そんなに頑なに拒否る。もう、……許して俺を受け入れてくれよ」

泣きながら葛城部長は私を抱きしめた。
辞令通達のために翔琉が幼稚園から帰ってくる前に訪ねてきていた葛城部長。

「や、……辞めてください。セクハラ通り越して性犯罪ですよ」

「な、……なんで、そんな事を言うんだ」

1年間、罪滅ぼしなのか葛城部長は必要以上に誠意を見せてくれた。
私と翔琉がちょっと風邪をひいただけで大げさに看病し、多忙なのに終業後にうちに訪ねてきて翔琉のお風呂の時間まで滞在し時間を共にした。

「結衣……、好きだ。愛してる。2度と離れたくない」

葛城部長は私を抱きしめる腕を緩めてくれない。

「翔琉が帰ってくる時間なんだけど。バスくるから下に降りないといけないから、離して」

バスの時間を理由に抜け出し、葛城部長を置いてマンションの下に降りる。

情に流されて、葛城部長を受け入れそうになっていた。
離れ離れにならなければ関係は壊れる事はなかったと思う。

あの時の別れを引きずって素直になれないだけで、葛城部長、英翔の事をいまだに愛してると気づく。


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