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御曹司は懲り懲り
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地元京都に逃げ帰り、しばらく実家でのんびり暮らそうと思った。
だけど、両親、兄と医師をしていて、多忙極まりない3人を見ていたら落ち着かず、兄の口利きで電気機器メーカーのオメガルの中途採用の面接を受けた。
オメガルは医療機器メーカーとしてオリパスと業界No.1を競い合ってる会社で、電気機器メーカーとしては日本で3本の指に入るぐらいの最大手企業。
父から話を貰った際、即答で尻尾を振って履歴書書き、面接を受けにいった私。
オリパスに一生を捧げるつもりだったから、他の企業については、私は社名ぐらいしか知らなかった。
オメガルに関しても地元最大手企業の1社という知識しか知らず、面接を受るにあたり取り組んでる事業について調べ、社会貢献を軸に掲げて製品開発をしてると知り、勤めたいと思った。
制御機器事業で、センサ、コントローラをはじめ20万点に及ぶ幅広い製品を通じて「オートメーション(自動化)」を実現させ、モノづくり現場に革新をもたらし、医療機器事業では、体温計、血圧計をはじめ、ネブライザ、低周波治療器が有名だけど、それ以外にも循環器事業、呼吸器事業、ペインマネジメント事業の3つの事業領域でコアに革新的な商品やサービスを創造してた。
他に、「交通」「エネルギー」「生活サービス」「コミュニティ」の4つの軸を中心とした「ソーシャルオートメーション」の実現を推進していて、交通管理システムやインフラモニタリングシステムなどを通して、社会インフラの安全性と利便性、強靭さを追求したり、また、太陽光発電システム用のパワーコンディショナーや蓄電システムを提供し、温室効果ガスの削減につながる再生可能エネルギーを普及させ、低炭素社会の実現を目指すという社会貢献的な社会システム事業に着手していて、電気機器メーカーだから、最先端の高機能、高品質の先進的な電子部品や電子デバイスを開発して、モバイル機器や家電機器、自動車、産業機器、バイオテクノロジー関連製品の高機能化、高精度化や小型化に貢献し、日本だけでなく海外の大企業からも深い信頼を得て多くの仕事を任されてた。
会社の規模は資本金額からオリパスより小規模だという事がわかる。
だけど、オリパスより売上高が多く、純利益も赤字でなく大きな利益を得てる所に安心感を感じ、仕事も恋人も失い、人生どん底に落ちた私だったけど、捨てる神あれば拾う神ありで、超優良企業に再就職できた幸運に、小躍りをして、人生の再スタートに胸を弾ませてた。
転職して3年が経った。
医療手術支援ロボット開発チームに配属された私。
大学時代から研究していてオリパスでも携わっていた領域の開発業務につき、やりがいのある仕事に従事してるはずだった。
*****
「瀬崎ゼネラルマネージャーは?」
「京都大学病院にオペしに行きました」
アメリカ帰りの医師免許を持つオメガルのオメガルの次期CEO。
瀬崎創真 35歳。
放射線治療ロボット、心血管カテーテルロボット、腫瘍手術カテーテルロボット、などを次々と開発してる天才発明家だけど……。
「……将生兄、そっちにうちの瀬崎ゼネラルマネージャーいない?」
『2時間前までいた。オペを5件、サッサと終わらせて帰っていったぞ!!』
京都大学病院で心臓外科医をしてる将生兄にLINE通話をかけた。
奴らスケットでオペを終わらせて、人として最低極まりない行為を愉しんでる。
「AI機能を搭載した腹腔鏡手術ロボットの開発が進んでないのに、他社に先越されても知らないから!!」
医療手術支援ロボット開発部最高責任者不在により、システム開発が全く進んでいない最優先開発プロジェクト。
「……辻井リーダーが相手をしてあげないから、他所にむらむら解消しに行くんですよ。減るもんじゃないんですから、付き合ってあげて下さいよ!!」
「金戸くん、セクハラ委員会に通報しようか?」
「ーー瀬崎ゼネラルマネージャーの発言を引用しただけです!!」
後輩の金子くんが焦って椅子から転げ落ちて、捨てられた犬のような瞳をして私に詫びる。
毎日のように瀬崎ゼネラルマネージャーから耳元で『結芽ちゃん、俺の相手をしてくれないかな?5分で終わらすからやらせて』と囁かれ、イラッとして急所に思いっきり蹴りを入れる。
『サージカルインテリジェンスのダビンチが特許切れるから類似品で高性能な腹腔鏡手術支援ロボットを開発しないといけないのに、何、ふざけてるんですか!!システムは天才外科医だった貴方にしかできないんですから、ちゃんと仕事をして下さい!!」
結婚詐欺紛いな事をしたオリパス次期社長の東條遼佑も最低だけど、この発情期の野良犬みたいなオメガルの次期社長の瀬崎創真も負けず劣らず最低だ。
夕方にスッキリした顔して医療機器開発部のオフィスに戻ってきた瀬崎ゼネラルマネージャーに、苦すぎるコーヒーを出し、自動オペ機能のシステムデータを出せと脅す。
「結芽ちゃん、溜まってる?俺、上手いよ!!相手しようか!?ヘマしないから、ちゃんと避妊するから!!」
熱々のコーヒーを頭上にかけてやりたい衝動にかられるも、なんとか抑え、席に戻る。
やらないといけない仕事はたくさんある。画像処理から自動手術を行うAIシステムを手がけていて、最高レベルのオペのビデオを観ながら作成していく作業に早朝から深夜まで働き詰めだった。
「父さん、将生兄、術式のデータ、他にない?」
大阪国立循環器センターに勤務してる父と京都大学病院で外科医のスペシャリストを目指してる将生兄。
ちなみに母は循環器内科専門の小児科医をしてる。
土曜日の夜に久しぶりに家族揃って東山にある料亭草月に食事へいく。
外科医の父と将生兄からオペに関する知識を教えて貰い、手術支援ロボットのAIシステムを開発してる。
腹腔鏡手術は手先が器用な日本と韓国のドクターは実際にオペ術として執刀するが、海外では主流ではない。
外科的手術はお腹や胸などを縦や横に大きく切って開き手を入れて施術す開腹手術(開胸手術)と、お腹に複数の比較的小さい穴を開け、内視鏡と鉗子やピンセット、尖刀等のアームをその穴からお腹などに入れて、カメラとアームを使って手術を腹腔鏡手術がある。
開腹手術は手術による傷跡が大きく残り、手術による傷が回復するのに時間もかかることから、手術による傷の大きさを最小限に抑え、術後の回復期間が短い腹腔鏡手術が主流になってる。
しかし、腹腔鏡手術には特別なスキルが必要とされていて完璧に執刀できる外科医はあまりいない。
鉗子や尖刀等の手術用の器具は真っ直ぐな棒状で内視鏡カメラで見えるモニターの限られた視界の中で、基本的には真っ直ぐな棒のアームを駆使して、血管など大切な周囲の組織を傷つけずに患部を切ったり縫ったりするのは繊細さが必要で、そのため、腹腔鏡手術を行ったものの、状況によって手術の続行が困難だと医師が判断した際は、開腹手術に移行する。
細かで繊細なスキルが必要な医師の手による腹腔鏡手術はその難易度の高さから、海外では医師が執刀する際は開腹手術で行ってる。
アメリカのサージカルインテリジェンスが20年前に医療手術支援ロボットダビンチを開発した。
患部の周辺が狭すぎるなど従来の手術では困難だと考えられていたケースもダビンチだとアームの先に関節があって曲げられるから自由度が高く、更に3Dで立体視できるカメラシステム、手ぶれ防止機構など、さまざまな最新技術が組み込まれている事から、人の手では不可能な腹腔鏡手術を可能にした。
IT技術の向上により難易度の高い腹腔鏡手術を安全に正確に行えるようになった事で、海外では現在、外科手術はロボット操作で行うのが当たり前になりつつある。
「医者になって欲しかったが、結芽は創薬研究員か医療手術ロボット開発者になりたいって言ってたからなぁ」
父が招かざる客に澤屋まつもと 守破離 山田錦をお酌する。
私は苛々しながら、月の桂 大極上中汲本醸造にごり酒をひたすら口にしてた。
「天才外科医で発明家の瀬崎創真くんにウチの結芽を奥さんに下さいといわれるなんて有り難い申し出だ」
ヤケ酒のように京都の銘酒を水のように飲んでた私。
父のその言葉に、思わずグフっと日本酒を噴水しそうになる。
「オメガルの会長が挨拶に来て下さってビックリしたわ」
先週の土日。瀬崎ゼネラルマネージャーに東京大学病院や星天堂大学病院などの大病院に医療機器ロボットのデータ収集に行かされた。
なんで週末に行かされないといけないんだと思ってたら、私にサプライズと称して瀬崎ゼネラルマネージャーは父親のCEOと専務の母親と祖父の会長を連れて、実家に挨拶にきたらしい。
花嫁本人仕事による不在で勝手に結納を交わされたと知り、顔が引きつる。
「……オメガルは政略結婚とかないの?医者家系の娘なんかと結婚しても会社の利益ならないよ!!」
「政略結婚?そんな世代錯誤な事してる会社、今時あるの?俺の奥さんに相応しい女性は結芽しかいない。結婚して、俺の子を産んで」
IQ250以上を出したギフテッドな瀬崎ゼネラルマネージャーは頭脳明晰なだけでなく、見た目も極上に整ってる。
彫刻のよう造り物のような美しい顔立ちに長身で引き締まった身体付きをしてる。
それ故にモテる。でも、社の女性には手を出してない。
縁談も多数寄せられるも、仕事が多忙と言って断ってる。
でも、京都で活躍してるモデルさんや女子大生と援交してる。
週末の夜は格式の高いホテルの最上階にあるBARで独りできてる女性を口説き落とし、その場限りのアバンチュールな関係を持ってる。
「私、瀬崎ゼネラルマネージャーと結婚に承諾してない!!こんな奴と夫婦になるなんてあり得ない!!子供なんて気持ち悪くて作れない!!」
「コラっ、結芽、オメガルのCEOと専務と会長が挨拶にきてはったのに、今さら、結婚取り止めなんてできひん!!」
母が私に怖い顔をして諭す。
瀬崎ゼネラルマネージャーは私の恋人ではないし、毛嫌してる相手なのに、なんで結婚しないといけないんだと腹ただしさを感じる。
「瀬崎はモテるから女性関係見境なかったから、結芽が嫌がるのもわかる。変な病気貰ってたり、隠し子いたりはしないから」
将生兄と瀬崎ゼネラルマネージャーは国内最高峰の私立男子中高一貫校時代の同級生で大親友だったりする。
3年間連続高校生クイズに出場して優勝し、兄もハンサムな部類だから、2人で関西圏の綺麗系可愛い系の女子達を喰い物にしてた。
「私は絶対に瀬崎ゼネラルマネージャーとは結婚しないから!!先に帰る!!」
浴びるように日本酒を飲みながら、美味しいお造りやすき焼、豆腐料理を堪能した私は、席を立ち、帰る事にした。
両親も兄も私を不誠実な男に嫁がせようとする。
婚約者がいる御曹司に遊ばれ捨てられ、今度は無理矢理婚約者にされた。
御曹司は懲り懲り。
週明けに出勤すると、私と瀬崎ゼネラルマネージャーが婚約したという噂がもう立っていて最悪だった。
退職して逃亡する事が頭に過ぎってしまった。
だけど、両親、兄と医師をしていて、多忙極まりない3人を見ていたら落ち着かず、兄の口利きで電気機器メーカーのオメガルの中途採用の面接を受けた。
オメガルは医療機器メーカーとしてオリパスと業界No.1を競い合ってる会社で、電気機器メーカーとしては日本で3本の指に入るぐらいの最大手企業。
父から話を貰った際、即答で尻尾を振って履歴書書き、面接を受けにいった私。
オリパスに一生を捧げるつもりだったから、他の企業については、私は社名ぐらいしか知らなかった。
オメガルに関しても地元最大手企業の1社という知識しか知らず、面接を受るにあたり取り組んでる事業について調べ、社会貢献を軸に掲げて製品開発をしてると知り、勤めたいと思った。
制御機器事業で、センサ、コントローラをはじめ20万点に及ぶ幅広い製品を通じて「オートメーション(自動化)」を実現させ、モノづくり現場に革新をもたらし、医療機器事業では、体温計、血圧計をはじめ、ネブライザ、低周波治療器が有名だけど、それ以外にも循環器事業、呼吸器事業、ペインマネジメント事業の3つの事業領域でコアに革新的な商品やサービスを創造してた。
他に、「交通」「エネルギー」「生活サービス」「コミュニティ」の4つの軸を中心とした「ソーシャルオートメーション」の実現を推進していて、交通管理システムやインフラモニタリングシステムなどを通して、社会インフラの安全性と利便性、強靭さを追求したり、また、太陽光発電システム用のパワーコンディショナーや蓄電システムを提供し、温室効果ガスの削減につながる再生可能エネルギーを普及させ、低炭素社会の実現を目指すという社会貢献的な社会システム事業に着手していて、電気機器メーカーだから、最先端の高機能、高品質の先進的な電子部品や電子デバイスを開発して、モバイル機器や家電機器、自動車、産業機器、バイオテクノロジー関連製品の高機能化、高精度化や小型化に貢献し、日本だけでなく海外の大企業からも深い信頼を得て多くの仕事を任されてた。
会社の規模は資本金額からオリパスより小規模だという事がわかる。
だけど、オリパスより売上高が多く、純利益も赤字でなく大きな利益を得てる所に安心感を感じ、仕事も恋人も失い、人生どん底に落ちた私だったけど、捨てる神あれば拾う神ありで、超優良企業に再就職できた幸運に、小躍りをして、人生の再スタートに胸を弾ませてた。
転職して3年が経った。
医療手術支援ロボット開発チームに配属された私。
大学時代から研究していてオリパスでも携わっていた領域の開発業務につき、やりがいのある仕事に従事してるはずだった。
*****
「瀬崎ゼネラルマネージャーは?」
「京都大学病院にオペしに行きました」
アメリカ帰りの医師免許を持つオメガルのオメガルの次期CEO。
瀬崎創真 35歳。
放射線治療ロボット、心血管カテーテルロボット、腫瘍手術カテーテルロボット、などを次々と開発してる天才発明家だけど……。
「……将生兄、そっちにうちの瀬崎ゼネラルマネージャーいない?」
『2時間前までいた。オペを5件、サッサと終わらせて帰っていったぞ!!』
京都大学病院で心臓外科医をしてる将生兄にLINE通話をかけた。
奴らスケットでオペを終わらせて、人として最低極まりない行為を愉しんでる。
「AI機能を搭載した腹腔鏡手術ロボットの開発が進んでないのに、他社に先越されても知らないから!!」
医療手術支援ロボット開発部最高責任者不在により、システム開発が全く進んでいない最優先開発プロジェクト。
「……辻井リーダーが相手をしてあげないから、他所にむらむら解消しに行くんですよ。減るもんじゃないんですから、付き合ってあげて下さいよ!!」
「金戸くん、セクハラ委員会に通報しようか?」
「ーー瀬崎ゼネラルマネージャーの発言を引用しただけです!!」
後輩の金子くんが焦って椅子から転げ落ちて、捨てられた犬のような瞳をして私に詫びる。
毎日のように瀬崎ゼネラルマネージャーから耳元で『結芽ちゃん、俺の相手をしてくれないかな?5分で終わらすからやらせて』と囁かれ、イラッとして急所に思いっきり蹴りを入れる。
『サージカルインテリジェンスのダビンチが特許切れるから類似品で高性能な腹腔鏡手術支援ロボットを開発しないといけないのに、何、ふざけてるんですか!!システムは天才外科医だった貴方にしかできないんですから、ちゃんと仕事をして下さい!!」
結婚詐欺紛いな事をしたオリパス次期社長の東條遼佑も最低だけど、この発情期の野良犬みたいなオメガルの次期社長の瀬崎創真も負けず劣らず最低だ。
夕方にスッキリした顔して医療機器開発部のオフィスに戻ってきた瀬崎ゼネラルマネージャーに、苦すぎるコーヒーを出し、自動オペ機能のシステムデータを出せと脅す。
「結芽ちゃん、溜まってる?俺、上手いよ!!相手しようか!?ヘマしないから、ちゃんと避妊するから!!」
熱々のコーヒーを頭上にかけてやりたい衝動にかられるも、なんとか抑え、席に戻る。
やらないといけない仕事はたくさんある。画像処理から自動手術を行うAIシステムを手がけていて、最高レベルのオペのビデオを観ながら作成していく作業に早朝から深夜まで働き詰めだった。
「父さん、将生兄、術式のデータ、他にない?」
大阪国立循環器センターに勤務してる父と京都大学病院で外科医のスペシャリストを目指してる将生兄。
ちなみに母は循環器内科専門の小児科医をしてる。
土曜日の夜に久しぶりに家族揃って東山にある料亭草月に食事へいく。
外科医の父と将生兄からオペに関する知識を教えて貰い、手術支援ロボットのAIシステムを開発してる。
腹腔鏡手術は手先が器用な日本と韓国のドクターは実際にオペ術として執刀するが、海外では主流ではない。
外科的手術はお腹や胸などを縦や横に大きく切って開き手を入れて施術す開腹手術(開胸手術)と、お腹に複数の比較的小さい穴を開け、内視鏡と鉗子やピンセット、尖刀等のアームをその穴からお腹などに入れて、カメラとアームを使って手術を腹腔鏡手術がある。
開腹手術は手術による傷跡が大きく残り、手術による傷が回復するのに時間もかかることから、手術による傷の大きさを最小限に抑え、術後の回復期間が短い腹腔鏡手術が主流になってる。
しかし、腹腔鏡手術には特別なスキルが必要とされていて完璧に執刀できる外科医はあまりいない。
鉗子や尖刀等の手術用の器具は真っ直ぐな棒状で内視鏡カメラで見えるモニターの限られた視界の中で、基本的には真っ直ぐな棒のアームを駆使して、血管など大切な周囲の組織を傷つけずに患部を切ったり縫ったりするのは繊細さが必要で、そのため、腹腔鏡手術を行ったものの、状況によって手術の続行が困難だと医師が判断した際は、開腹手術に移行する。
細かで繊細なスキルが必要な医師の手による腹腔鏡手術はその難易度の高さから、海外では医師が執刀する際は開腹手術で行ってる。
アメリカのサージカルインテリジェンスが20年前に医療手術支援ロボットダビンチを開発した。
患部の周辺が狭すぎるなど従来の手術では困難だと考えられていたケースもダビンチだとアームの先に関節があって曲げられるから自由度が高く、更に3Dで立体視できるカメラシステム、手ぶれ防止機構など、さまざまな最新技術が組み込まれている事から、人の手では不可能な腹腔鏡手術を可能にした。
IT技術の向上により難易度の高い腹腔鏡手術を安全に正確に行えるようになった事で、海外では現在、外科手術はロボット操作で行うのが当たり前になりつつある。
「医者になって欲しかったが、結芽は創薬研究員か医療手術ロボット開発者になりたいって言ってたからなぁ」
父が招かざる客に澤屋まつもと 守破離 山田錦をお酌する。
私は苛々しながら、月の桂 大極上中汲本醸造にごり酒をひたすら口にしてた。
「天才外科医で発明家の瀬崎創真くんにウチの結芽を奥さんに下さいといわれるなんて有り難い申し出だ」
ヤケ酒のように京都の銘酒を水のように飲んでた私。
父のその言葉に、思わずグフっと日本酒を噴水しそうになる。
「オメガルの会長が挨拶に来て下さってビックリしたわ」
先週の土日。瀬崎ゼネラルマネージャーに東京大学病院や星天堂大学病院などの大病院に医療機器ロボットのデータ収集に行かされた。
なんで週末に行かされないといけないんだと思ってたら、私にサプライズと称して瀬崎ゼネラルマネージャーは父親のCEOと専務の母親と祖父の会長を連れて、実家に挨拶にきたらしい。
花嫁本人仕事による不在で勝手に結納を交わされたと知り、顔が引きつる。
「……オメガルは政略結婚とかないの?医者家系の娘なんかと結婚しても会社の利益ならないよ!!」
「政略結婚?そんな世代錯誤な事してる会社、今時あるの?俺の奥さんに相応しい女性は結芽しかいない。結婚して、俺の子を産んで」
IQ250以上を出したギフテッドな瀬崎ゼネラルマネージャーは頭脳明晰なだけでなく、見た目も極上に整ってる。
彫刻のよう造り物のような美しい顔立ちに長身で引き締まった身体付きをしてる。
それ故にモテる。でも、社の女性には手を出してない。
縁談も多数寄せられるも、仕事が多忙と言って断ってる。
でも、京都で活躍してるモデルさんや女子大生と援交してる。
週末の夜は格式の高いホテルの最上階にあるBARで独りできてる女性を口説き落とし、その場限りのアバンチュールな関係を持ってる。
「私、瀬崎ゼネラルマネージャーと結婚に承諾してない!!こんな奴と夫婦になるなんてあり得ない!!子供なんて気持ち悪くて作れない!!」
「コラっ、結芽、オメガルのCEOと専務と会長が挨拶にきてはったのに、今さら、結婚取り止めなんてできひん!!」
母が私に怖い顔をして諭す。
瀬崎ゼネラルマネージャーは私の恋人ではないし、毛嫌してる相手なのに、なんで結婚しないといけないんだと腹ただしさを感じる。
「瀬崎はモテるから女性関係見境なかったから、結芽が嫌がるのもわかる。変な病気貰ってたり、隠し子いたりはしないから」
将生兄と瀬崎ゼネラルマネージャーは国内最高峰の私立男子中高一貫校時代の同級生で大親友だったりする。
3年間連続高校生クイズに出場して優勝し、兄もハンサムな部類だから、2人で関西圏の綺麗系可愛い系の女子達を喰い物にしてた。
「私は絶対に瀬崎ゼネラルマネージャーとは結婚しないから!!先に帰る!!」
浴びるように日本酒を飲みながら、美味しいお造りやすき焼、豆腐料理を堪能した私は、席を立ち、帰る事にした。
両親も兄も私を不誠実な男に嫁がせようとする。
婚約者がいる御曹司に遊ばれ捨てられ、今度は無理矢理婚約者にされた。
御曹司は懲り懲り。
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