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負けてはいられない
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結城だけでなく結花よりも仕事に関して劣ってると気づいたわたし。
このままではいけない。
だから、トミタで過去3年間に製造した車種のエンジン関連の設計図とエンジン開発に関する論文を読み漁った。
そして、他の自動車メーカーのエンジンに関する情報も調べ、独学で分析をした。
「天沢、最近冴えてるな」
「結城にも結花にも負けていられないからね」
エンジンなどの駆動系の制御に関する仕様書の作成がわたしの仕事。
土曜日に結花から秘密保持があるから他社メーカーについては聞けないけれど、今まで引き受けたトミタのエンジン制御ECUのプログラムについて教えて貰ったりもした。
結花の方がわたしより遥かに知識を持っていて、恥ずかしく感じだけど、できる親友に教われる心強さを感じた。
「車体の重さを考えると燃料噴射量を減してもいい気がする。どこまで減らせるかな?」
ガソリンの値段の高騰とエコカー減税で低燃費の自動車が求められてるこのご時世。
車体を軽くしでも強度は疎かにせずで自動車開発をしてる。
「……エンジンが止まった方が問題だから安全面も考えろ」
人が乗るとその分車体が重くなるからそれを考慮しながらシステム設計の仕様書を作成するのは難しいけれど、最近、楽しいと思えるようになった。
「結花はハイブリッドの制御ECUシステムの担当なの?」
「ハイブリッド、ガソリン、ディーゼルで担当は違うけどハイブリッドは年間にそう仕事来ないからガソリンの仕事も受けるよ」
土曜日。結花に誘われてスパガーデン名古屋にやってきた。
季節は7月の半ばで温泉の季節ではないけど、施設内の空調は心地よく、ゆっくり湯に浸かって結花とおしゃべりを楽しみながらのんびり過ごす。
「ハイブリッドは複雑だよね。しかもメーカーによってハイブリッドの仕組みが違うからね。トミタが1番、複雑な気はする」
ハイブリッドエンジンの方式は3種類ある。
トミタが開発したシリーズ方式はモーターのみで走行し、エンジンは発電機として機能するタイプと、ホンタが開発したパラレル方式ら基本はエンジン駆動であり、モーターが補助的な役割をする仕組み。でも、モーターが発電機も兼ねているため、「エンジン補助」か「発電」のどちらか一方しか行うことができない。
そして、最近トミタで開発実現した、シリーズ・パラレル方式は上記の「シリーズ方式」と「パラレル方式」を組み合わせたタイプで、エンジンとモーター、発電機を搭載して、常に発電してモーターに電力を送ることができ、燃費効率が非常に高いというメリットがある。
シリーズ・パラレル方式のエンジンシステム開発は桐谷部長が実現させた。
シリーズ・パラレル方式の第1号が結花がやらかしたプリセスだった。
結花は制御ECUシステムのプログラムを3年間手がけてる。
『仕様書通りに入力するだけ』と結花は言うけれど、結花が担当した制御ECUシステムは完成度が高い。
要求仕様通りにプログラムを組んではいるけど、さらに良くなる案があればさりげなく伝えてくれてより良い制御ECUを手がけてる。
だから結花に担当になって欲しいと同僚達は口を揃えていう。
結花が絶世の美女だからではなく、仕事ができるから。
結花が桐谷部長の彼女だという事は桐谷部長がオープンにしてるから知れ渡ってる。
桐谷部長の彼女だから仕事ができるわけじゃない。
でも、結花が桐谷部長にサポートされてると思ってる同僚は多い。
結花の努力の賜物なのに。
「ビッツのハイブリッドのシステム、わたしにさせて下さい」
アクアスより小さい小型車のビッツのマイナーチェンジでハイブリッド仕様を追加にする事になった。
ハイブリッドエンジンのシステムは複雑で誰も立候補してまで取り組みたくない。
ビッツはプリセスとアクアスと違ってパラレル方式を採用し、ユニットをコンパクトにまとめてバッテリーを後部席下に配置する事でガソリンエンジン仕様と変わらない室内空間を確保する事が決まってる。
「結城に任せるつもりだったが、天宮に任す。結城、天宮をサポートしてくれ」
パワートレイン開発部システム課の斎藤課長に指名して貰えてガッツポーズをする。
エンジンとモーターの出力軸は同じで、発進時や加速時などパワーが必要なときにモーターがエンジンをサポートする仕組みで、それプラスモーターだけで走るモードを備えたシステムに仕上げるための仕様書を作成していく。
「……軽量車のコンパクトカーだから低速走行時はモーターで発電させたエネルギーだけで動くのは可能なのか」
土曜日に結花ちゃんの家にお邪魔させて貰って相談にのって貰った。
「モーターでどれだけエネルギーができて、バッテリーにどれだけエネルギーを蓄積できるかによるかわからないとなんとも言えない。
先行研究で可能だから量産設計でそう指示がおりてるんだと思うから、ビッツで速度によってどれだけのエネルギーが必要か調べてそれでエンジンとモーターで切り替える速度を決めたらいいと思う」
結花とエンジン制御ECUシステムの論文や専門書を読みながら、どうシステム構築していくかを考えていく。
新型ビッツのハイブリッド仕様エンジン制御ECUシステムの担当が結花に決まり、結花に頼ってしまうわたし。
「ホンタで似たような方式で制御ECUシステムをかいたことあるけど、モーターとバッテリーの機能がわからないとシステムを組めないよ」
9時から18時過ぎまで結花と頭を抱える。
「天沢さん、いらっしゃっい」
長居をしてしまい桐谷部長が帰ってきてしまった。
「新型ビッツのハイブリッド仕様のエンジン制御システム、天沢さんが担当するんだっけ。まだモーターとバッテリーのデータが届いてないからやりようがないだろ」
パワートレイン制御システムの最高責任者の部長に言われた。
「19時前だし、結花、夕ご飯の支度はまだだろ?せっかくだから食べに行こうか。天沢さん、鉄板焼きの店でいい?」
現段階では仕様書を作成するのは無理で作成に必要な情報と判断に関して結花から色々教わった。
そして、桐谷部長が車を走らせ鉄板焼きの美味しい店に連れて行ってくれて、それでモーターとバッテリーの開発に関して話を伺った。
黒毛和牛や鮑や帆立など高級な鉄板焼きを御馳走になり、家まで送って貰った。
桐谷部長は結花を溺愛してる。
結花の親友だからとわたしに仕事に関しての情報を教えて下さったり、夕ご飯を御馳走してくれて家まで送り届けてくれた。
結花に優しく笑みを浮かべる桐谷部長を見て、結花の事が羨ましく思った。
このままではいけない。
だから、トミタで過去3年間に製造した車種のエンジン関連の設計図とエンジン開発に関する論文を読み漁った。
そして、他の自動車メーカーのエンジンに関する情報も調べ、独学で分析をした。
「天沢、最近冴えてるな」
「結城にも結花にも負けていられないからね」
エンジンなどの駆動系の制御に関する仕様書の作成がわたしの仕事。
土曜日に結花から秘密保持があるから他社メーカーについては聞けないけれど、今まで引き受けたトミタのエンジン制御ECUのプログラムについて教えて貰ったりもした。
結花の方がわたしより遥かに知識を持っていて、恥ずかしく感じだけど、できる親友に教われる心強さを感じた。
「車体の重さを考えると燃料噴射量を減してもいい気がする。どこまで減らせるかな?」
ガソリンの値段の高騰とエコカー減税で低燃費の自動車が求められてるこのご時世。
車体を軽くしでも強度は疎かにせずで自動車開発をしてる。
「……エンジンが止まった方が問題だから安全面も考えろ」
人が乗るとその分車体が重くなるからそれを考慮しながらシステム設計の仕様書を作成するのは難しいけれど、最近、楽しいと思えるようになった。
「結花はハイブリッドの制御ECUシステムの担当なの?」
「ハイブリッド、ガソリン、ディーゼルで担当は違うけどハイブリッドは年間にそう仕事来ないからガソリンの仕事も受けるよ」
土曜日。結花に誘われてスパガーデン名古屋にやってきた。
季節は7月の半ばで温泉の季節ではないけど、施設内の空調は心地よく、ゆっくり湯に浸かって結花とおしゃべりを楽しみながらのんびり過ごす。
「ハイブリッドは複雑だよね。しかもメーカーによってハイブリッドの仕組みが違うからね。トミタが1番、複雑な気はする」
ハイブリッドエンジンの方式は3種類ある。
トミタが開発したシリーズ方式はモーターのみで走行し、エンジンは発電機として機能するタイプと、ホンタが開発したパラレル方式ら基本はエンジン駆動であり、モーターが補助的な役割をする仕組み。でも、モーターが発電機も兼ねているため、「エンジン補助」か「発電」のどちらか一方しか行うことができない。
そして、最近トミタで開発実現した、シリーズ・パラレル方式は上記の「シリーズ方式」と「パラレル方式」を組み合わせたタイプで、エンジンとモーター、発電機を搭載して、常に発電してモーターに電力を送ることができ、燃費効率が非常に高いというメリットがある。
シリーズ・パラレル方式のエンジンシステム開発は桐谷部長が実現させた。
シリーズ・パラレル方式の第1号が結花がやらかしたプリセスだった。
結花は制御ECUシステムのプログラムを3年間手がけてる。
『仕様書通りに入力するだけ』と結花は言うけれど、結花が担当した制御ECUシステムは完成度が高い。
要求仕様通りにプログラムを組んではいるけど、さらに良くなる案があればさりげなく伝えてくれてより良い制御ECUを手がけてる。
だから結花に担当になって欲しいと同僚達は口を揃えていう。
結花が絶世の美女だからではなく、仕事ができるから。
結花が桐谷部長の彼女だという事は桐谷部長がオープンにしてるから知れ渡ってる。
桐谷部長の彼女だから仕事ができるわけじゃない。
でも、結花が桐谷部長にサポートされてると思ってる同僚は多い。
結花の努力の賜物なのに。
「ビッツのハイブリッドのシステム、わたしにさせて下さい」
アクアスより小さい小型車のビッツのマイナーチェンジでハイブリッド仕様を追加にする事になった。
ハイブリッドエンジンのシステムは複雑で誰も立候補してまで取り組みたくない。
ビッツはプリセスとアクアスと違ってパラレル方式を採用し、ユニットをコンパクトにまとめてバッテリーを後部席下に配置する事でガソリンエンジン仕様と変わらない室内空間を確保する事が決まってる。
「結城に任せるつもりだったが、天宮に任す。結城、天宮をサポートしてくれ」
パワートレイン開発部システム課の斎藤課長に指名して貰えてガッツポーズをする。
エンジンとモーターの出力軸は同じで、発進時や加速時などパワーが必要なときにモーターがエンジンをサポートする仕組みで、それプラスモーターだけで走るモードを備えたシステムに仕上げるための仕様書を作成していく。
「……軽量車のコンパクトカーだから低速走行時はモーターで発電させたエネルギーだけで動くのは可能なのか」
土曜日に結花ちゃんの家にお邪魔させて貰って相談にのって貰った。
「モーターでどれだけエネルギーができて、バッテリーにどれだけエネルギーを蓄積できるかによるかわからないとなんとも言えない。
先行研究で可能だから量産設計でそう指示がおりてるんだと思うから、ビッツで速度によってどれだけのエネルギーが必要か調べてそれでエンジンとモーターで切り替える速度を決めたらいいと思う」
結花とエンジン制御ECUシステムの論文や専門書を読みながら、どうシステム構築していくかを考えていく。
新型ビッツのハイブリッド仕様エンジン制御ECUシステムの担当が結花に決まり、結花に頼ってしまうわたし。
「ホンタで似たような方式で制御ECUシステムをかいたことあるけど、モーターとバッテリーの機能がわからないとシステムを組めないよ」
9時から18時過ぎまで結花と頭を抱える。
「天沢さん、いらっしゃっい」
長居をしてしまい桐谷部長が帰ってきてしまった。
「新型ビッツのハイブリッド仕様のエンジン制御システム、天沢さんが担当するんだっけ。まだモーターとバッテリーのデータが届いてないからやりようがないだろ」
パワートレイン制御システムの最高責任者の部長に言われた。
「19時前だし、結花、夕ご飯の支度はまだだろ?せっかくだから食べに行こうか。天沢さん、鉄板焼きの店でいい?」
現段階では仕様書を作成するのは無理で作成に必要な情報と判断に関して結花から色々教わった。
そして、桐谷部長が車を走らせ鉄板焼きの美味しい店に連れて行ってくれて、それでモーターとバッテリーの開発に関して話を伺った。
黒毛和牛や鮑や帆立など高級な鉄板焼きを御馳走になり、家まで送って貰った。
桐谷部長は結花を溺愛してる。
結花の親友だからとわたしに仕事に関しての情報を教えて下さったり、夕ご飯を御馳走してくれて家まで送り届けてくれた。
結花に優しく笑みを浮かべる桐谷部長を見て、結花の事が羨ましく思った。
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