LOVE marriage

鳴宮鶉子

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友人の結婚披露宴

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結城拓馬鬼畜課長が溜め込んだ内装デザインの案件を2ヶ月で終わらせたわたし。

とはいえ、その後は鬼畜課長とクライアント周りをさせられ、内装デザインの要望を聞いたりと営業的な仕事に付き合わされる。

わたしが仕事が早いとわかったからか、納期が間に合わない課の内装デザインの案件を締め切りギリギリにわたしのデスクに投げてきて、

「今日の17時までにやれ」

建築第一課に配属され、わたしは2ヶ月で5Kgも痩せてしまった。

それほど過酷で、元の部署に戻りたいと心の中で叫んだ。

毎日、月~土曜日は早朝6時半から深夜2時まで働くわたしは、働き蟻ならまだしも社畜扱い。

鬼畜課長に社畜女

社内できる男、結婚したい男ランキング1位が結城拓馬鬼畜課長なんてありえない。

月曜日は多少はまともでも、土曜日になるとぼろぼろになってるわたし。

過労死しちゃう??

まずいと思いつつも、真面目な性格だから、鬼畜課長に『やれっ』と指示された仕事を全てこなした。

そしてなんとか、1日2時間だけ建築デザインコンペに向けてのデザインを描いた。

「結城課長、これに判子と提出をお願いします」

第1課に異動になり残業代は増えても、社内と社外の建築デザインコンペにデザインを出せてなくて収入がガクッと減った。

社畜だから、家にもあまりいなくて、食事もまともにとれてなくて、娯楽やお洒落にお金なんて違う暇はない。

だから、マイナスにはなってない。

でも、2ヶ月前よりも仕事が多忙なのに月収が10万円も減った事実に焦った。


「へぇ…香坂、仕事にまだ余裕あるんだ。こんなに建築デザインを描く時間があるぐらい。
……かなり微妙だけど、こんなのが、コンペ通るか?
一応、出すけど……」

微妙なデザインしか描けてないのはわかってる。
時間がない中、なるべくたくさんのコンペにデザインを出したくて、無理をした。

結果…12点出して5点選ばれた。
そのおかげで12万円の報酬を得れた。

完全に仕事人間でワーカーホリップな社畜化したわたし。

でも、仕事をしている時は、長く付き合っていた結婚を考えていた 成宮結翔の事を考えないで済んだから、気持ち的に救われてた。


建築デザイン第1課に異動になってから、半年が経とうとしていた。

大学時代の数少ない友人の牧野沙也加ちゃんが結婚をする。

3月25日の日曜日にたまたまだけど、わたしが建築デザインを手がけた結婚式場で結婚式を挙げる事になり、招待状を貰い出席する事にした。

半年で10kgも痩せてしまい、大学卒業時にフォーマルなドレスがぶかぶかで、式の前にレンタルする事にした。

大学時代、わたしは女友達とあまり関わる事はなかった。

ずっと恋人だった成宮結翔の隣にいたから。
大学修士課程まで進んだのも、結翔と離れたくなかったから。

同じゼネコンに就職できなかった事をどんなに嘆いたか……。

わたしは大島建設に就職し、結翔は大宮建設に就職をした。

スーパーゼネコンと言われてる最大手企業にわたしも、結翔も就職した。

今のわたしには、その、いつも一緒にいた結翔がもういない。

そして、数少ない友人の1人が結婚して福岡へ行く。

自分が手がけた結婚式場の中に入る。

大学時代に、それなりに仲が良かった、友人を見つけて駆け寄る。

「香坂さんも呼ばれてたんだ」

大学時代の友人の招待客の中に苦手な吉岡美樹(よしおか みき)さんもいた。
呼ばれてる子の大半はゼミ仲間で癖のある意地の悪い子だけど、呼ばないと後で何かを言われたら嫌だから、沙也加ちゃんは声をかけたのだろう……。

「ここって、香坂さんが社外コンペで建築デザインを勝ち取って建てた結婚式場だっけ?
なんか、柱ばかりで居心地悪いわ」

吉岡さんは、大学を卒業後、内装デザインのインテリアプランナーをしてる。
建築の構造強度とかを考えずに、あれこれダメ出しをした。
ローマの神殿のようなイメージで建築デザインをしたこの結婚式場は、柱のデザインにも凝っていて、斬新なデザインにニュース等で話題になった。

招待客は身内以外は建築関係の設計士が多い。

吉岡さんの言動に、冷たい目線を向けてる気がした。

僻みや妬みに慣れてるから、聞こえてないようににこっとスルーする。

隣接された教会での挙式は身内だけで挙げ、大ホールでの披露宴にだけ呼ばれた。

200人ぐらい呼ばないとかなりの赤字になるからか、かなりの人数が呼ばれていて驚く。

席順表を渡されたけど、個人情報保護のためか自分の席の場所にしか名前が書かれてない。

吉岡さんと席が離れてる事を願った。

広々とした空間に、円状の白いテーブルクロスがかかった机がぎっしり並んでる。

机の上には料理が並べられてる。
自分の席に座る。

なぜか、大学時代の友人達のテーブルから離されていて、見たら別れた恋人の成宮結翔がいた。

隣には、奥さんらしい人。
お腹が大きくて、予定日間近なのかもしれない……。
結翔と幸せそうに、笑みを浮かべてた。

「おいっ」

ふと、隣を見たらなぜか結城拓馬鬼畜課長がいて、このテーブルは大島建設の社員がズラッと並んで座っていた。

「香坂は、堀田の奥さんの大学の同級生とか?」

「そうです。結城課長は?」

「俺らは中高一貫校時代のよしみ。席順、ここだけ大島建設で固めてるな。堀田は鳩山組に勤務してたっけ?
他のゼネコンから嫌味とか言われたら気分悪くなるから、会社でまとめてくれて良かったわ」

披露宴が始まり、真っ白のふわふわしたお姫様のようなウェディングドレスを身にまとった沙也加ちゃんがご主人と会場に入ってきた。

1階が広々とした結婚式場で、2階部分は控え室や厨房等があり、真ん中は突き抜けて太陽の光が入るような設計をした。
そして、2階から式の主役の2人がお城によくあるような階段を下りて登場する。

「この結婚式場、香坂がデザインしたんだっけ?」

「そうですけど……」

「やるじゃん」

花嫁と花婿の登場に大歓声が上がる中、わたしに結城課長が小声で話しかけてきた。
そして、わたしのデザインしたこの結婚式場の設計を誉めてくれた。

結城課長の中高一貫校時代の大島建設に勤める友人達は、設計部の社員は居なかった。
営業や施工管理の部署の社員で、気さくな人達で、わたしに優しく話しかけてくれた。

「香坂さん、コイツにこき使われてはか大変だろっ」

「はい、毎日、月から土曜日まで、朝の6時半から深夜2時まで仕事をさせて頂いてます」

「うわっ、ひでー、若い女の子をこき使うなんておまえ鬼畜だな。ここまで働かせてるとは思わなかったわ」

結城課長の友人達に、結城課長の鬼畜さを暴露する。

「おまえ、涼しい顔して泣き言言わずにやるから任せるんだろうが」

「結城課長が怖くて、できません、なんて言えないですよ…」

会話が弾む中、美味しいご馳走に舌鼓する。
久しぶりに、食事を楽しんでる。
最近は、餓死しないようエネルギー補給として最低限の食事しかしてなかった。

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