マンネリダーリンと もう一度熱愛します

鳴宮鶉子

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愛されるという気持ちと何かが違う

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「咲香ちゃん、アクアスの制御ECUのシステムなんだけど、テストでエンジンに繋げてみたんだけどエラー多発で動かないの。システムは問題無いと思う。エンジンの部品がどこかサイズがおかしいんだと思う……」

初の親友の咲香ちゃんとの仕事。

ハイブリッドカーのプリセスに乗せてるエンジンを小型化させてハイブリッドカーのアクアスに乗せるエンジンを開発してるとかで、制御ECUも20%小型化させて開発をした。
そしてテスト用にトミタから借りたエンジンに制御ECUをつけて動かしてみたところエラーが多発した。
エンジンの構造に違和感を感じる。

実験部署でエンジンを分解して部品をチェックして貰った。
いくつか20%小型化させないといけないのにプリセスに乗せてるエンジンの部品のままのがあり、だからか……と思った。

トミタの担当が親友だからそれとなく伝え、3日後に実験部署に視察に来る事になりホッとする。

トミタのプリセス以外にも、ホンタのツイストとピットと日創のセレアの制御ECUのシステム開発を任されていて納期の関係で3日後に視察に来て貰う事にした。

 わたしが勤務してるパワートレインシステム開発のオフィスビルの受付付近で2人を待つ。
いつもは受付勤務の女性社員がエンジン制御ECUシステム開発課まで案内してくれるけど、2人に会いたくて受付まで迎えに行った。

咲香ちゃんとは毎週土曜日に会ってるけど結城くんには1年ぶりぐらいに会う。

2人がオフィスビルの中に入ってきた。
咲香ちゃんはINDIVIのコンサバだけどカジュアルなパンツスーツを着こなしていてカッコいい。
すらっとしていて背が高く、長い黒髪をポニーテールにしていてカッコいい。
隣にいる結城くんも相変わらず爽やか系のイケメンで仕立てのいいスーツを着てできる男のオーラが漂う。

2人をオフィスビルから出て、実験工場に案内する。
実験の永嶺さんと試作のエンジン制御ECUのハードにノートパソコンを繋いでシステムを入れ込み、咲香ちゃんと結城くんに動作を確認して貰う。

「初瀬のいう通り、エンジン本体に問題があるな。ここの部品のサイズを小さくしてみたらどうなるかやってみよう」

結城くんが手慣れた手つきでエンジンを分解し、原因と思われる部品を持参してきたふた回り小さい部品と交換した。

「動いた!!良かった!!」

エンジンの問題だった。
とにかく、部品の改良で制御ECUが問題なく動く。

安心した。

「……ここの部品の改良を担当部署に伝えるから1週間ぐらいこのままにしてて」

結城くんが照れてた。
大学時代の時とかわずシャイな結城くん。

咲香ちゃんと結城くんを誘って社外にランチを食べに行った。
やっぱり大学時代の友人とご飯を食べると美味しい。

優秀な2人はトミタに就職した。
わたしも自動車部品メーカーで制御ECUを開発してるデンタに採用されたけど、2人と同じトミタで働きたかった。

「今日だったよな、制御ECUの納品でトミタに来るの」

「うん。10時に試作工場に行って制御ECUの動作確認する事になってる」

7時15分、昨日の夜ご飯の残りのマカロニサラダと目玉焼きとサラダにごはんの朝食を理人さんととってたら聞かれた。

「時間がとれそうだったら様子を見に行く。ご馳走さま」

わたしの頭に手をポンと手を置き、理人さんは食べ終わった食器を流しに持っていった。

エンジン制御ECUは、エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイエンジンコンピュータで、ハイブリッドカー用の制御ECUはガソリンエンジンと電気モータの2動力を最適に制御し、そして、燃費向上、および排出ガスの低減を実現させるシステムに仕上げないといけなくて、依頼された仕様書通りに制御ECUが機能するかいつも不安だったりする。

わたしが不安に感じてるのを気づかってくれる理人さんは優しい。

玄関で水筒をわたし、行ってらっしゃいのキスをして、出勤準備を始める。

今日はトミタに伺うからナチュラルビューティーベーシックのコンサバな紺地のスーツに水色のフリルが可愛いブラウスを合わせて着た。

トミタで行われる走行動作試験に立ち会うのは5度目で、トミタの正面受付から入り、お客様駐車場に車を置き、社内循環バスでパワートレイン開発部実験工場へ向かった。

トミタの敷地面積はトミタ町と町名になるぐらい広い。

バスに揺られて20分。目的に着き、中に入り、結花ちゃんと結城くんを見つけて駆け寄った。

エンジンルームを開き、エンジンに制御ECUを取り付け、走行動作試験を開始する。

「……要求仕様はクリアーしてるけどもう少し燃費が上がらないかな。プリンスよりエンジンの最高熱効率が5%低い」

「エンジンが小型化させてるからそこは仕方がないかなと思ったんだけど、やっぱり気になるか……」

要求仕様に基づくコーディング、シミュレータ及び実際のデバッグ環境を使用した動作検証、検査結果報告書の作成し、事前に報告してる。

制御システムではこれが限界と思いたいけれど、プリセスと同じエンジンを小型化させた改良版。
プリセスと同等かそれ以上の燃費向上を求められる。

「ちょっとプログラムいじらせて」

制御ECUシステムのプログラムを結城くんが確認していく。

ガソリンの燃焼で出たエネルギー無駄なくバッテリー充電し活用できるようにし、燃料噴射量の数値を下げた。

「……これで3%ぐらい向上するはず……」

ガソリンの燃焼量を減す事で車を走行させるエネルギーが不足し車が止まるのでと思った。


「ちょっと見せてくれる?」

結城くんとエンジンECUのシステムが入ったノートパソコンをいじっていたら理人さんの声が聞こえた。

理人さんが時間を作ってきてくれた。

結城くんがノートパソコンから離れて理人さんが走行動作試験のデータを見ながらシステムのプログラムを確認していく。

「エンジンを小型化させるとこんなもんだよな……。結城のこの変更で3%上がればいいが」

ひとまず走行動作確認を行い訂正を入れる判断をし、11時半と少し早いけれどお昼休憩に入る事にした。

理人さん、トミタで若くして役職があり容姿もいい。
だから社内で1番のモテ男で、この場には咲香ちゃん以外は男性社員しかいないけどプライベートと同じ感じでわたしに話しかけて接してくるから焦る。
トミタの女性社員から嫌がらせをされたら自動車部品メーカーのわたしは溜まったもんじゃない。

理人さんが、咲香ちゃんと結城くんにも声をかけてくれ一緒にひつまぶしの有名店へ連れて行ってくれた。

大学時代に学んだエンジンECUシステムについてなど仕事に関する話題で盛り上がり、休憩時間が終わるぎりぎりの時間にトミタの実験工場へ戻った。

戻ってすぐに走行動作試験のデータを見る。
最高熱効率がプログラムを書き換える前より8%上がってた。
プリセスより3%向上していて、理人さんの判断でこのままエンジンとエンジンECUを量産に回す事にした。

無事にアクアスのハイブリッド車用エンジンの制御ECUが量産に回す事ができてホッとした。

要求仕様書にそってプログラムをかくのがわたしの仕事で、運転状況に応じて燃料噴射量と点火時期を最適に制御し、燃費向上、および排出ガスの低減を実現させるシステムを設計するために自動車メーカーの担当者に提案してきた。

でも、自動車メーカーでパワートレインシステム開発の仕事をしてる人には全体の知識量で負けるから敵わない。

結城くんの変更したシステムだとエネルギーが足りなくて走行しないと思ってた。

結城くんも理人さんも走行は可能とみてた。

トミタでの仕事を終え帰社し、報告書を提出して急ぎの仕事がないから退社した。

ふと気づく。
わたしが理人さんに惹かれたのは仕事で助けられた事がきっかけだった。

大学時代も制御ECUシステム開発を研究してる生徒の中で1番博識な結城くんに惹かれてた事があった。

わたし、理人さんの事を好きになったのはトミタのパワートレイン開発部長でエンジン制御ECUシステムに詳しかったからなのかもしれない。

理人さんの事を愛してるというより尊敬してる。

もしかしたら心底では理人さんの事を愛してないのかもしれない……。

エンジン制御ECUシステム開発のエンジニアになって3年が経ち、自分の知識のなさと発想の乏しさが情けなくなる。
経験から学んで活かしていけばいい。

 帰宅後、夕ご飯の支度をしながら物思いにふけってしまった。


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