料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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ブラッドは遠い

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 朝目覚めて俺が一番気にしたのは勿論、メリィとリュウグの事だった。

 リュウグは服を持っていたのか、起きるといなくなっていた。問題はメリィだ・・・。こいつはパンツ一枚だからな・・・。昨夜は体を拭いて、裸のままベッドに入ったら、寒かったので俺のところに来たのだろう。俺のところに来るまでが一番寒いだろうに・・・。

 サーカはまだ俺に絡みつくようにして寝ている。思わずハグしてほっぺにキスをしたくなる気持ちを、ぐっと堪えて体を離すと、後ろを振り向いてメリィを見た。

(さてどうやってメリィを宿屋まで連れていくかだ・・・)

 むっちむちの地走り族修道女様のおっぱいが良く見える。
 
 で、でかい・・・。サヴェリフェ姉妹といい、地走り族は胸がでかいのかなと思ったが、たまたまだよなぁ。他の地走り族はぺったんこだったりするし。身長も地走り族にしては大きいから、昔の地球人みたいに見えてしょうがない。

 なので劣情という名の蛇君が、むくむくと首をもたげてきた。

 ええーーい! しずまれーい! しずまれ、しずまれーい! この紋所が目に入らぬかーっ!

 自分の気持ちを落ち着かせる為に、デイジーさんに全裸で土下座していたピーターを思い出す。そう、俺は野郎の肛門を思い出していたのだ。紋所ならぬ肛門所な・・・。おえぇ!

 よし速攻でいやらしい気持ちは静まった。

 ピーターの肛門の効果はばつぐんだ! これからはムラムラしたらピーターの肛門を思い出そう・・・。いや、待てよ? エッチな事=ピーターの肛門って感じで、脳に刷り込んでしまうかもしれないぞ! それは危険だ! そしたら俺はピーターにときめいてしまうようになるかもしれない。多用は避けよう・・・。

 毛布の上にかけていた黒いマントを手に取ると羽織り、メリィを抱いてマントの下に隠した。滅茶苦茶不自然だし、誰かを抱いているのが丸わかりだ。

 服を着たかったが、そんな時間は無い。小屋を出るとメリィに声を掛けた。

「おい、起きろ! 取り敢えず鬼の寝床からは抜け出せた。お前も起きて、宿屋に帰る準備をしろ!」

 腕の中でフニャフニャのメリィは、やもするとスルリと落ちてしまいそうで怖い。早く起きてもらわなければ困るのだが・・・。

「ふにゃ? あー! 宿屋ねぇ? わかったぁ・・・。スース―」

「わかってねぇだろ! 早く起きろ。起きて俺にしがみつけよ。そしたらマントの膨らみも減るし、歩きやすくなるからさ!」

「ふぁーい」

 メリィは目を擦った後、俺にしがみ付いた。

「おい! 普通は俺の方を向いてしがみつくもんだろ。なんで船の穂先にいる女神像みたいになってんだよ。寧ろその方が力がいるから大変だろ!」

 抱っこの姿勢から、いつの間にそんな形態になったんだ?

 肩や脚の筋肉がぷるぷるしてんじゃんか。しかも俺のパンツを掴んでるから脱げそうだ・・・。早く下りろ!

「えへへぇ」

 メリィは地面に着地すると照れ笑いした。

 くぅ! マントの中で頭掻いて恥ずかしそうにするメリィはアホ可愛い。

「じゃあ、ちゃんと抱きつくよ? オビオ!」

 ピョンとジャンプしてメリィは俺に抱き着いてきた。胸の辺りに顔があり、腹の辺りにおっぱいが当たる。ぐぉぉ、たまんねぇ。

 しがみ付いたとしてもやっぱ不自然にマントが膨らんでいるな。まぁでも歩きやすいし、早朝だから人には出会わないだろ。急ごう。




 なんとか人に出会わずに宿屋までついた。宿屋自体には入れるけど小さい部屋の中までは無理だな。部屋の前まで行くか。

「あれ? なんでオビオが宿屋にいんの?」

 げぇぇぇ! ピーター! 一番会ってはいけない奴に会ったような気がする。

「どうしたんだ? マントが異様に膨らんでるけど・・・」

「ん? ああ、なんか急に大きな水膨れみたいなのが出来てな。ぐっちょぐちょで、グロいから見ない方が良いぞ」

「で、修道騎士様に治してもらおうってわけか?」

「そういう事・・・」

「ふーん・・・」

 うわぁぁ。めっちゃ怪しんでる。こいつに今の状況がバレたら大変だぞ。あちこちで喋りまくるだろう。俺は別に良いのだが、メリィは修道女。下手すりゃ修道院から破門されるかもしれない。

「なんだよ、傷が痛いんだから、俺はもう行くぞ」

「あれ? 水膨れじゃないのか? 普通水膨れは傷なんて言わないだろ」

「(一々うるせぇな、コイツ!)水膨れが破裂して、傷みたいになってる場所もあるんだよ。邪魔するな」

「そっか・・・。ん? ちょい待ち! オビオ・・・。お前からメスの匂いがする」

 凄く真剣な顔をしているじゃないか。冒険の時もそんな顔見せた事ないよな? いつも怯えているか、陰に潜んでいるかだし。

「そりゃあ、サーカと寝ていたからな。匂いぐらい付くだろ」

「チッ! 羨ましいな・・・。でもこれは、サーカの匂いじゃないね」

 ピーターは犬のように空中をスンスン匂っている。どんだけ女の匂いに敏感なんだよ、こいつ!

「お前こそ、オスの匂いがするぞ。昨夜なんかしてたんだろ」

「う、煩い馬鹿!」

「おい! ズボンに白い染みが付いてんぞ!」

 ピーターは青い顔をして、自分の股間を見た。

「付いてねぇし! シコってねぇし!」

「いや、俺はそこまで言ってない。もう行くからな。さっさとパンツ洗えよ」

「シコってねぇしっ!」

 大声でそう叫ぶ方が恥ずかしいだろ・・・。

 俺は宿屋の二階に上がってメリィの部屋を探す。

「何号室だ? メリィ」

「105~」

「一階じゃねぇかよ!」

 勝手にメリィの部屋は二階だと思った俺が悪いのだけども。

 俺は階段を下りて、105号室を探した。一階の奥には水場があり、魔法かなんかの力で、お湯が出ていた。もくもくと湯気が立ち上っている。このお湯を、桶に取って部屋に戻る客もいる。なるほど、これで顔や体を拭くわけか。

 105号室はその水場の向かいにあった。いや、こりゃベッドが湿気るのもわかるわ。湯気が漂ってるしな。カビたりしてないのが不思議なくらいだ。

 部屋のドアを開け、メリィを下すと、彼女はなぜかトロンとした顔をしていた。なんだ? ドキドキするからやめてください。

「あのねぇ、オビオ・・・。オビオに抱き着いていたら、お腹の辺りがキューっとして不思議な気持ちになったのぉ。これ何かなぁ?」

 えぇぇ! それって俺に悶々としてくれたって事? 嬉しい。でもメリィはそれがどういう事かも知らないまま今まで生きてきたんだ? 修道院はどういう教育してんだ?

「それは普通の事さ。男女が肌を合わせるとそうなっちゃうんだぞ。でも・・・、うまく言えないけど、誰とでもそうなっちゃ駄目だぜ? 好きな人とだけそうなるよう気を付けるんだ」

「え? オビオの事はぁ、好きだよぉ? だからいいよね?」

 ぐぉぉぉ! 愛の告白キターーー!

「それからサーカちゃんもトウスさんもピーターも。それからリュウグちゃんもぉ!」

 愛の告白じゃなかったーーー!

「ははは・・・。あ! でもピーターには絶対そんな気持ちになっちゃだめだからな! あいつは危ない!」

「危ない?」

「とにかく危ない! だから抱き着いたりしちゃ駄目だぞ?」

 何となく湯気の向こうで人の気配がした。

 ピーターの小さな背中が見える。しゃがんで恥ずかしそうにしながら何か洗ってるな・・・。パンツ洗ってんじゃねぇか! やっぱシコってたんじゃねぇかよ!

「わかったぁ。気を付けるぅ。お部屋まで送ってくれてありがとうね、オビオ」

 チュッ!

 おほーーー! ほっぺにちゅうキターーー! ありがとうございまーす!

「次にベッドに来る時はちゃんと服を着て、サーカにも断って入った方がいいぞ。わかったな?」

「はーぃ」

 これで一安心だ。サーカは筋を通せば何も言わない。拗ねるかもしれないが・・・。もう今回のように死と隣り合わせの就寝なんて嫌だ・・・。

 俺は宿屋から出ると、精神的な疲れでフラフラする足を、集会所へと向けた。

「オビオーーー!」

 後ろで声がする。

 宿屋の二階の窓からリュウグが嬉しそうに手を振っていた。昨夜の出来事を、ちょっとしたイベントか何かだと思ってそうだな。いい笑顔で手を振りやがって・・・。

 俺は手を振り返して集会所へ向かうと、既にサーカが起きて鎧を着ていた。

「朝食の用意はできているのか?」

「今やるよ・・・」

 はぁ・・・。毎晩変な出来事が起こるようなら俺の身が持たないな・・・。

 なんだろう? ブラッド領までが遠く感じるなぁ。馬車で何日何夜だっけ? はぁ・・・。
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