料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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少し成長したサーカ

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 このパーティの燃費の悪さはなんだろうか。用意していた食材が凄い速さで減る。作った鶏の香草焼きがもうない。一人二羽ずつ食べた事になる。

 ・・・そう、前から薄々気が付いていたが、皆大食いなのだ。

 亜空間ポケットにあったチキンやら野菜やらの半分は、もうすでに彼らの胃袋に収まっている。

(サーカですら大食いを隠そうとしない)

 俺は焚火の向こうで器用にナイフとフォークを使って、骨から肉を分離する彼女をぼんやりと見ている。分離した肉を美味しそうな顔をして咀嚼している。

(もりもり食べてくれるのは良い事だ。料理人冥利に尽きるじゃないか)

 次に俺はトウスさんを見る。彼は強力な顎で、骨ごとバリバリと鶏肉を食べている。豪快だ。

 ピーターは、俺が見ると餌を取られそうになった犬みたいな顔をしたので見るのをやめた。昼間に死にかけたのだからしょうがない。治癒の祈りを受けた者は、大幅に回復する代わりに腹が減る。なので腹が減っているだろうし、そのせいで気も立ってる。

 メリィは良く煮込んだ野菜たっぷりのチキンスープを飲んで「美味しいね~」と俺に笑顔を向けている。顎からスープが滴っていたのでハンカチで拭いてあげた。

 リュウグは無表情で食べている。多分両親の事を考えているのだろう。あれは料理を味わってない顔だ。まぁ仕方ないか・・・。

「それにしても、通報してから騎士が来るのが早かったな」

 皆が夢中になって晩御飯を食べてくれるのは嬉しいが、会話がないのは寂しいので話題を振った。

「使い魔がいれば連絡を取るのは容易で早い。その後にどの騎士団がやって来るのかが問題だった。神学庁にはモティの息がかかった者が多い。その息のかかった者が根回しをして、神殿騎士や神官戦士が来ていたら、面倒くさい事になっていただろう。まぁシルビィ隊の隊員が来てくれて、何も疑う必要はなくなったがな」

「へー。サーカには使い魔がいるのか?」

「ああ。最近になって土の精霊を使い魔にした。戦闘では弱くて使えないが、土のある場所に具現化するから遠く離れていても、シルビィ様に報告ができるようになった」

「まじか。使い魔見せてくれよ」

「いいだろう」

 サーカは汚れた手を俺の渡した紙ナプキンで拭くと指を鳴らした。

 すると土から子犬ぐらいの小さなゴーレムがむくむくと現れた。

「ビキビキィ」

 オッサンみたいな声でゴーレムはそう言った。くっそ可愛くねぇわ・・・。

「どうだ、可愛いだろう?」

 土でできているので、食事中のサーカはゴーレムを触ろうとはしないが、愛おしそうに見つめている。

「え? ああ・・・。そうだな」

 よく読むラノベには、パーティに幼竜だったり小動物系のモンスターが、マスコットキャラクター的な感じでいるが、こいつはどう足掻いても無理だ。顔がないからだ。しかも声がオッサンだし。

「あ、ありがとうな。もういいぞ」

 サーカは満足そうに頷くと、ゴーレムを土に返した。

「皆も使い魔っているのか?」

「使い魔はメイジや召喚士だけだよぉ」

 サーカに物知らずだと罵られる前に、メリィが教えてくれた。

「なーんだ。じゃあ俺には使い魔は無理か。でも可愛らしくて賢い動物とかが、パーティにいたら和むかもな」

「オビオは、股間に可愛いモンスターがいるじゃん」

 飯時に下ネタぶっこんでくるなよ、ピーター。

「あれ、可愛いかなぁ? デスワーム並みにでかいで」

 リュウグが余計な事を言ったので、ピーターが絶望的な顔をして立ち上がった。

「オビオは、いつリュウグちゃんにピーーーを見せたんだよ!」

「見せてねぇし。服の上から想像して言ってんだろ」

 こないだ夜這いをしてきた時に、俺のナニを下着の上から観察してやがったのか、リュウグは。エロノームめ。あれ、エロノームってなんかエピローグと似てるな・・・。今夜あたり俺のエロいエピローグが始まるって事?

「まぁデカいなりして、モノが小さかったら恥ずかしいわな。オーガにしては普通くらいだろ」

 トウスさんも話に加わらなくていい。大人なんだから話題の方向修正をしてくれよ。

「オビオの股間についてるものの話ぃ? ふわっふわで柔らかかったよぉ?」

 メリィさんの言葉でピシリと空気が固まる。

「おびっ、おおびゅっ、どぴゅっ、おび、オビオはキリマルと戦う少し前までメリィに、へへへ変な事させてたからな!」

(どぴゅってなんだよ。動揺するとサーカはとんでもねぇ言葉を発するな・・・)

「だからあれは演技だって言ってんだろ」

「演技で咥えさせる奴がいるか!」

「めんどくせぇな! これだよ、これ! これをメリィに食べさせてたの!」

 俺は亜空間ポケットから魚肉ソーセージを出す。地球から持ってきた最後の一本だ。

「いやらしい奴め・・・。そんな張形を持ち歩いているのか!」

「張形? 張形って・・・。ああ・・・あれか・・・。馬鹿! そんなんじゃないわ! これは食べ物! たーべーもの! この場に下ネタ嫌いのタスネ子爵がいたら、俺ら全員怒られてるぞ!」

 俺は憤慨しながら貴重な最後の一本を剥いて、魚肉ソーセージを齧った。食べ物と証明するためにだ。

「それ、美味しかったよぉ」

 メリィさんが物欲しそうにして俺のソーセージを見ている。

「齧りかけだけど、一口食べる?」

「ありがとうぉ」

 メリィさんは髪を耳にかけてソーセージを齧った。鶏肉の脂で艶々になった唇が、ソーセージを吸いながら齧り取るので、ピーターが前屈みになって座った。

「美味しい!」

 ああ、ほんわかした笑顔、可愛い。

「な? 食う?」

 俺はサーカにもソーセージを向ける。

「いらん。まぁそういう事にしておいてやろう」

 何が、そういうことにしておいてやろうだよ。ったく。

「それにしても神聖国モティの誰が俺らを狙っているんだろうな・・・。盗賊団を雇ってまで俺らに差し向けるなんて、ばっかじゃなかろうか。雇い賃だけでも結構な金額になるだろうに。そこまでして対費用効果はあるのかな?」

 俺は一本足の魔法のテーブルに、ソーセージを置いて丸太で作った椅子に座る。

「どうだろうな・・・。まぁでも法王フローレスが、我らのようなどこにでもいそうなパーティなど気にする事はないだろう。彼は現人神様しか見てない気がする。なので恐らくではあるが、もう少し下位の司祭が我らを狙っているのではないかな。忙しい法王と違って、端の者にまで目を光らせる暇ぐらいはある誰かだ」

「厄介な奴らだなぁ」

「彼らが樹族国に拠点を置く、騎士修道会のように清貧を貫いていれば、私も尊敬したのだがな・・・。神聖国モティのように利権に塗れた奴らが、どんなに清い言葉を吐こうが空々しく聞こえる」

 同意だ。サーカは神自体は信じているが、人の作り出した宗教をあまり信用していないようだな。

「モティの奴らめ、いつかケジメつけさせてやっからな・・・。まぁこの話は、この辺にしてと・・・。明日は途中の村に寄ったらまた食材を買わないと。皆、滅茶苦茶飯を食うからな」

「俺らはそんなに食ってるか? まぁあれだ。オビオの料理は美味しいから、皆手が止まらねぇんだよ」

 トウスさんはいつも俺を喜ばせる。俺ってもしかしてチョロい?

「さて腹もくちくなったし、ベッドの用意するかな・・・。そういやリュウグは野宿用の寝具あるの? 確か無限鞄持ってたよな? 寝袋とか入ってる?」

「ないねん・・・。持っててんけど、朝起きて顔を洗いに川に行って、帰ってきたら盗まれてなくなっててん。だからオビオに会うまでの何日かはマントに包まって、震えながら寝てたんや」

「そっか。じゃあエアベッドでサーカと一緒に寝なよ。俺はトウスさんみたいに焚火の近くで寝るし。明日、寝袋買おう」

「え? そんな、悪いわ。騎士様の湯たんぽクマちゃんがいなくなるやん」

 おい! それ言っちゃ駄目!

「なななな、なんでその事をリュウグが知っているのだ・・・・!」

 サーカが俺の事をクマちゃんって呼ぶのは、2人きりの時だけなんだぞ!

「さぁ~。なんでやろな~」

「おおおお、オビオォ! お前が喋ったのか!」

 おわぁ! 【雷の手】を発動させるな! っていうか昼間に結構魔法を使ってたけど大丈夫か? 幼児化するんじゃないの?

「ふえぇぇ!」

 ほーらみい! 言わんこっちゃない!

「クマちゃんが一緒じゃなきゃやだ!」

 ぎょっとした顔でリュウグがサーカを見ている。

「なに? どうしたの? これが本来の騎士様なん?」

「いや、なんといえばいいのか。こういう体質というか。魔法が尽きると弱気になって、幼児化するんだ、サーカは」

「へぇ・・・。じゃあ騎士様・・・。いや、サーカちゃん。お姉ちゃんもオビオと一緒に寝てええかな?」

「駄目!」

「でもお姉ちゃん、寝袋持ってないねん。今日だけやから。な? お願い」

 リュウグは手を合わせてお願いしている。しかしサーカは口を尖らせて黙っている。

「サーカちゃん、リュウグちゃんね、ベッドを貸してあげないと寒くて、死んじゃうかもしれないよぉ? だから今日だけ一緒に寝てあげようね?」

 メリィが優しくそういうとサーカは渋々承諾した。

「今日だけだから・・・」

「メリィお姉ちゃんも一緒に寝ていい? みんなで寝たら楽しいかもしれないよ?」

 ピーターがそれを聞いてガタっと椅子を引いて立ち上がった。

「じゃあ僕も」

「ピーターはだめぇ! だってお尻触るんだもん!」

 ピーター君、サーカにおもっくそ拒否られてるし。笑える。日頃の行いって大事だな。早く俺のように紳士になれよ?

「ちぇーー! いいなぁ! オビオは・・・」

 拗ねて椅子に座ってから、なぜかピーターは俺を邪悪な顔で睨んだ。

 俺に八つ当たりすんなよ。その顔、段々面白く思えてきたよ。

「じゃあメリィはエアベッド膨らましといて。まぁ放り投げれば勝手に膨らむけど。俺は食器を洗って、片付けたりしないと駄目だから先に寝ててよ」

「は~い。サーカちゃん、川に行って歯を磨こう?」

 メリィはサーカに手を差し出した。

「うん!」

 お、メリィに心を開いたか? 手を繋いで行ってしまったぞ。

「よしよし、サーカも成長してきたな。前は俺だけに心を開いていたのに・・・。あれ? なんだろう? ちょっと寂しい・・・」

「ほな、その心の隙間、私で埋めたろか?」

 リュウグが生意気な事を言うのでからかってやる。

「埋められるのか? 寧ろ俺が埋められるだろうか? その小さな胸に顔を・・・」

 チャキっと音がしてリュウグのリップルレーザー銃が火を噴いた。幾ら発射速度が遅いとはいえ、刹那の種割れ覚醒をして、回避していなければ俺は死んでいただろう。

 そしてその夜、キャッキャウフフのハーレムを期待したベッドの上で、俺のエロいエピローグ(略してエロローグ)が始まる事はなかった。

 なぜなら女子同士が固まって、眠たくなるまでお喋りが続いたからだ・・・。
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