料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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サーカの指揮

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 果たして、に脳があるのだろうか? 知性があれば、回避行動くらいはとるはずだ。先程から「おーい! 皆!」と言って手をふるばかりで、気味が悪い!

「じゃあ撃つぞ。あれが本物だったら、責任はサーカにあるんだからな」

 ――――ガチャ、シュン!

 私はピーターが放った短矢の行く先を見守った。

 ――――トス!

「おぉぉい! 皆ぁぁぁ!」

 偽オビオの声が低く濁る。

 短矢が突き刺さった顔の真ん中が、円形に溶け始め、穴が開いた。

「ぼぉぉぉぉ! ぼぉぉぉ!」

 偽オビオの声は、最早言葉になっていない。なんなのだ、あれは? あんな魔物がいただろうか?

「はて? あんな魔物がいたかな?」

 同じことを考えていたウィングが、首を捻り、知識を探っている。

 多分、正解の魔物は出てこんだろう。なにせ、我々はダンジョン専門の冒険者ではないからな。私に至っては冒険者だという自覚すらない。騎士なのだから。

「ダメージを受けたようには見えないから、あれあ疑似餌だね」

 ピーターがもっともらしい事を言う。

「常駐させている【魔法探知】にも、特に反応はないね。あれは魔法生物でもない」

 エペを構えたままの司祭兼戦士が、警戒を続けながらそう言った。

「若干、生臭いな」

 獅子人が鼻を鳴らす。

「俺じゃねぇよ! シコッてねぇよ!」

 下賤なるピーターめ! 貴様の一人遊びの事など、どうでもいいわ!

「いや、そんな匂いじゃねぇんだわ、ピーター。もっと血生臭いというか」

「あれが疑似餌となると、本体はどこにどう隠れているんだ? 暗視魔法で見ても姿は見えんぞ?」

 私は誰に言うでもなく、パーティ全体に疑問を投げかけた。

 最初に応じたのがウィングだった。

「そもそも、疑似餌を使う魔物自体、そんなに知らないね」

「博識な司祭でも知らねぇなら、誰も知らないという事だな。どうする? 誰が仕掛ける?」

 白獅子が迷っているな。誰かの知恵を期待しているのだろう。甘えるな。

「お前に決まっているだろう。トウス。このパーティにおいて、正統な盾とは誰か?」

「俺か・・・。頼られてるねぇ・・・」

 トウスの皮肉か。フッ! 珍しいな。

 とはいえ、獅子人が盾として要なのは確かだ。初期こそ回避盾だったが、今やちょっとやそっとのダメージでは沈まない生命力も兼ね備えている。攻撃しても良し、回避しても良し、防御しても良し。

 ほぼ無尽蔵にダメージを受け続けられるオビオも、盾としては頼りになるが、あれを見るのは痛々しい。

「じゃあ仕掛けるぜ? 敵がどんな形をしているか、しっかり見定めてくれ」

「待ってぇ。このナメクジを投げて反応を確かめてみたらぁ? 食材にしないなら、勿体ないし~」

 粘液でヌメヌメヌチョヌチョのメリィが、大ナメクジの伸びた目を引っ張って持ってきた。白いスカートがぴっちりと太ももに張り付いている。ここに濡れ透けフェチのド変態オビオがいれば、大喜びするだろう。

「そ、それを持ち上げろと?」

「うん!」

 屈託のない笑顔でトウスを困らせているな、メリィ。フハハ!

「仕方ねぇな。その策に期待するぜぇ? 修道騎士様」

 トウスが爪を最大限にまで伸ばして、ナメクジを串刺しにして持ち上げた。途端に、ナメクジの死体から寄生虫がウネウネと顔を出し、身動ぎする。

「どぅわぁ~。きめぇ!」

 白獅子の長い髭が全て上を向いている。正体不明の敵よりも、滴り落ちるナメクジの体液と寄生虫の方が気になるようだ。フン、意外と小心者だな。

「せーの!」

 ナメクジは粘液を撒き散らしながら、弧を描いて飛んでいく。

 丁度疑似餌の辺りに落ちただろうか? 途端にナメクジは消えて無くなった。

「誰か見たか?」

 私の問いに、皆は首を横に振るばかりだ。

「役立たずどもめ・・・。オビオなら見極めているぞ?」

 あのオーガは動体視力が良い。時々体を光らせて、素早く動くこともある。

「もしかしたら、この敵はよぉ。動体視力が良くて、フェイントが得意なオビオ向きの敵なんじゃねぇかな?」

 確かにトウスの言う通りだ。

 フェイントなどは地走り族のスカウトが得意とするが、うちのピーターは盗賊。スカウトと似て非なる者。どちらかというと、罠を外すのが得意な暗殺者に近い。正面切って戦うのが苦手なのだ。

 だから前衛に立たせてフェイントなんかさせようものなら、ピーターはすぐに死ぬだろう。

「取り敢えず、トウスが前に立って敵の注意を引きつけろ。ピーターは影に潜んで、待機だ」

「その作戦、いつもと変わらねぇじゃん」

「馬鹿を言え、ピーター。いつもはオビオとトウスの二枚盾で戦っているから、お前は気楽に潜めるのだ。今回はそうではないぞ。一度でも仕留め損ねたら、トウスは死ぬ。敵が姿を見せたら、直ぐにバックスタブを決めろ!」

「そんな! 俺には荷が重いよ!」

「うるさい! やれ! メリィは【閃光】の準備をしておけ」

「あい!」

「ウィングは・・・。何が残っている?」

「【吹雪】と【衝撃の塊】だけだね。回復の祈りなら、集中力が途切れるまで何度でも」

「では即氷魔法が放てるようにしておけ。敵の姿が見えたら【吹雪】で、動きを鈍化させるのだ」

「了解」

「なんだか頼りないなぁ。うちの副リーダーは・・・。型通りの戦い方じゃん」

「文句を言うなら、お前が案を出せ、ピーター。正体不明の魔物相手に、有効な戦い方があるのならばな!」

「ちぃー! 無いよ!」

 ふん、不貞腐れて邪悪顔をしよって。そんな脅迫スキルが通じるのは、所見の者だけだ。

「全員、配置に付けーー!」

 フッ! 配置に付け、か。騎士団にいた頃を思い出すな。

 エリムス兄様は元気にしているだろうか?
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