料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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メリィ消える

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 階段を上がると、四方を壁に遮られた部屋だった。

「なんだこれ、どうやって出るんだ?」

 コンコンと壁を叩くと、石膏ボードのような薄い音が返ってくる。

「これぐらいなら筋力値13の俺でも、なんとかなる!」

 ちょっと調子に乗りながら、思いっきり拳で叩くと、壁は思いの外硬かった。

「いってぇ~!」

 俺が悶絶しながら拳を擦っていると、ムクと、赤ちゃんの霊がキャッキャと笑っている。

「面白かった? なら良かったぜ」

 カッコ悪ぅ。ふーんだ。いいもんね。拗ねるもんね。

 拗ねていると、赤ちゃんが階段を上がった正面の壁を開いた。隠し扉だったのだ。うわっ! 俺、恥ずかしい~!

 隠し扉から一歩出ると、結構明るい。

 右にも左にも、遠くに出口が見えるからだ。

「やった! これで外に出られる!」

 いやいや、待て。仲間を置いて外に出る気か。まだ喜ぶのは早い。

 何気なく、目の前の壁を見ると『ポルモテ新道』と書いてある。ポルロンドとモティを繋ぐ道だからポルモテか。安直過ぎる。

 ん? 新道って事は・・・。もしかしたら、俺達は旧道を通ってたのか。

 俺は新道を行き交う旅人に、声をかけてみることにした。

「すいませーん」

 俺の呼びかけに、人の良さそうな猫人が足を止めてくれた。オーガの俺を見ても驚かない辺りが、樹族国とは違う。

「旧道ってどうなったんですか?」

「ああ、旧道? 閉鎖するから立ち入り禁止の立て札があったはずだよ。なにせ攻撃魔法で、出入り口を塞ぐっていう荒っぽいやり方だったからね」

 立て札なんてあったかなぁ?

「閉鎖? いつですか?」

「昨日の夕方頃だったと思うよ」

 俺らが洞窟に入った後だな。タイミング悪いなぁ。

「情報、ありがとうございました!」

 俺はお礼の鬼イノシシジャーキーを、一枚(といっても大きい)渡した。

「え? 大した情報じゃないのに、こんなに貰っていいのかい? 悪いねぇ! ・・・やや!? 待てよ? 君はもしかして! バトルコック団の?」

「あ、はい」

「わぁ! これはいい旅の話になる! ジャーキーはお土産にして、家族で楽しむとするよ! ありがとう、オビオさん!」

 さん付けされたよ。照れくさいなぁ、もう。ウヒヒ。

 猫人の背中を見送りながら、もう一つ質問をするのを忘れていたことに気づく。

「旧道にどうやって入ればいいんだ・・・?」

 俺が呆然としていると、赤ちゃんが右斜向いの壁を、ペシペシと叩いていた。ムチムチの手が可愛い。

「オビオお兄ちゃん、ここに一方通行の扉があるんだって!」

「一方通行か・・・。それは困るな。入ったら俺たちも出られなくなるし」

 取り敢えず、壁と同じ模様をした扉を押してみた。当然開く。でも中に入って閉じたら終わりだ。

「う~ん、どうしたものか」

 俺が腕を組んで悩んでいると、扉の下部の隙間を埋めるには丁度良い、鋭利な三角形の石を、赤ちゃんが見つけてきた。

「でかした! 赤ちゃん!」

 樹族の赤ちゃんも可愛いなぁ。お利口さんなのが凄い。耳が長いのも、可愛さを際立たせている。

「これで、よーし!」

 隙間に石を挟んで、大きく扉を開けたまま、俺たちは旧道へ続く短い道を進んだ。




「おぉぉい! みんなぁぁ! おおおおい! おおおおい!」

 疑似餌の呼ぶ声が、更に煩くなった。

 ――――ブチン!

 私の頭の中で、血管が切れたような気がする。

 許せん! 許せんぞ! その姿は止めろ! 私のくまちゃんを侮辱されているようで、許せん!

「こぉぉんの、くそ魔物があぁ!」

 魔防貫通スキル発動。この一撃に賭ける!

「疑似餌ごと焼け死ね! 【大火球】!!」

 最後の魔法だとわかっているが、感情を抑えきれなかった。

 なぜオビオの疑似餌なのだ! なぜオビオの形をとる? 

 もしかしたら、あれはオビオの死体? 傷が回復したのも、そういう事か? だったら尚更、許せん!

「魔法が正解。あの魔物相手に、接近戦なんて愚の骨頂」

 ウィングが私を見てニヤリとしている。

 なんだ? まさか連携を狙っているのか? お前に残っている魔法は、【吹雪】と【衝撃の塊】だ。どちらを撃つ?

「弾け散れ!【衝撃の塊】!」

 幼児退行化する私の知能でも、この連携で何が起きるかはわかりゅ。

「大爆発だぁ~~!」

 そう叫んでいると、メリィちゃんが、私の前に立って防御スキルを使ってくぇた。

 疑似餌の回りで、衝撃によって砕けだ火球が、花火のように爆発して綺麗。これなら魔物はどこにいても、逃げられないんだかだ!

 音が収まって、煙がナイナイになった。

「魔物、死んだかな? 死んだかな? きゅふふ!」

 私はメリィにジャンプしながら訊いてみた。

「きっと死んだよぉ。サーカちゃん、頑張ったもんねぇ~」

 うん! うんと頑張った! 私は偉いの!

「おぉ~い、皆ぁ~!」

「!!」

 やだ! 死んでない! 直ぐ近くの脇道から、疑似餌が飛び出してきた!

「サーカちゃん、危ない!」

 メリィちゃんが私を疑似餌から遠ざけてくれたけど、ナメクジのヌルヌルで転んで、さっきまで爆発のあった方まで滑っていった!

 ――――バクン!

 なんで? 疑似餌の無いところでメリィちゃんが急に消えた!

「しょんなあぁぁぁ! メリィちゃーーん!!」

「うわぁ! 急にメリィが消えたぞ!」

 えっ? くまちゃんの声だ! 脇道から出てきたのは、私のくまちゃんだった! じゃあメリィちゃんは、無駄死にだよぉ!

「おまっ! オビオか? 本物のオビオか?」

 獅子人のおじちゃんが、剣をオビオに向けて疑いつつ、匂いで確認していりゅ。

「そうだよ! これは私のくまちゃんだよ!」

 私はくまちゃんの前で大きく手を広げた。

「あぁ、確かに。この匂いはオビオだ。香辛料やハーブの匂いが微かにする。いや! そんな事よりよぉ、オビオ!  見てたと思うが、メリィが魔物に食われた。あ、でも食われたって表現が正しいのかは判らねぇ。なんせ姿が見えねぇからな」

「マンマーーー!」

 近くに突然現れた赤ん坊の幽霊が急に叫んだので、私は驚いて尻もちをついた。

「おばけ!」

 でも赤ちゃんお化けは、襲ってこない。襲うどころか、何もない場所を指差して泣き始めた。

「お兄ちゃん! あそこに、この子のお母さんがいるんだって! 魔物に魂を取られたままなんだって!」

 私の知らないところで、ムクちゃんとくまちゃんだけの話をしている! 許せないんだから!

「なに! ムクはあの魔物が見える?」

「ううん、見えないけよ・・・。でも、あの魔物は普通じゃないよ!」

「そっか(俺が今まで、敵と戦った事があったろうか? 否!初戦で霧の向こう側から来たゴブリンだぞ! あの矢の雨の中を進むのが、どんなに怖かった事か! それに歴史上最強だろう化け物とも戦っている。実力値666という“反逆”の悪魔だぞ! その悪魔に、俺たちは手も足も出なかった! それに比べたら、これくらい!)」

「なーに! お兄ちゃんが、なんとかしてやるさ! 直ぐにメリィを腹から引きずり出すからな! さぁ聞け! 魔物! 今からお前をッ! 美味しく料理してやるーーー!」
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