料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

文字の大きさ
211 / 331

濃いマナの中の悪魔

しおりを挟む
 ラケルに場所を教えてもらいながら、食料集めをしていると、あっという間に、大食漢共を黙らせるだけの量が集まった。

「こんだけあればダンジョン攻略中に、飢える事もないな。魚、肉、葉物野菜、キノコ、ハーブ、岩塩、サトウキビ、小麦、米、小豆」

 米があったのは嬉しい。途中で出会った、日本妖怪様様だ。

 俺がホクホク顔で、集まった食材を亜空間ポケットに放り込んでいると、サーカが青ざめた顔で、とある白い肉を見ている。

「まさか肉人の肉を、ああやって取っているとはな・・・」

 現地人でも、肉人からの肉の取り方を知らないのかよ。

「わかる。俺も初めて見たけど、正直気持ち悪かった」

 ピーターもサーカと同じような顔をして、ゲンナリしていた。

「でも取ってあげないと本人達も困るらしいし、気にするなよ」

 気にしているのはサーカとピーターだけだ。鋼のメンタルを持つトウスさんと、のんびり屋(&闇抱え)のメリィは、食材を亜空間ポケットに放り込むのを手伝ってくれている。

「オビオも聞いただろ? 肉を切り取る時のあの声! 男も女も野太い声で呻くんだぞ? しかも身悶えして頭の先っちょから、白い汁を飛ばすしさぁ!」

 ピーターだって夜中に、こっそりと白い汁を飛ばしているだろ。満月の光に照らされて煌めく、お前の放り出す飛沫が、とてもロマンチックでしたって、そんなわけあるか! バカ!

 と、下ネタでツッコんでやろうかと考えたが、サーカの手前格好つけて、グッと堪えてピーターに返事をする。

「でも取ってあげないと、彼らはブクブク太るだろ? そしてこっちは上質な肉が欲しい。ウィンウィンの関係じゃんか」

 お前らは屠殺の現場を知らないで、肉は切り身のまま売られていると思いこんでいる子供か!

 ・・・まぁ俺もこの星に来た当初、小動物を手慣れた手付きで捌くお前らを見てショックを受けていたけど。なにせ地球じゃ、人工肉ばかりだからな。リアル肉は珍しい。

「この真実を知ってたら、私は食べなかっただろう」

 サーカよ・・・。お前は肉人の肉は上等だとか言ってなかったか? 今まで美味い美味いつって食ってたじゃんか。

「食い物があるだけ、ありがてぇこったな。文句は言うもんじゃねぇぞ、二人とも」

 流石はパーティのお父さん。ピシャリとサーカとピーターを黙らせる。難民として誰からの援助も得られず、飢えていた事のある獅子人の言葉は重みが違う。

「そうだぞ! 食べ物に、ンッ! ハッ! 感謝、感謝!」

 もう一度、田中邦衛さんの物真似をしてみる。

「さっきからそれ、誰の真似してんだよ! いい加減にしろ!」

 とうとうピーターがツッコんでくれた。ありがとう、ピーター。でも、お前、妖怪ノズチに飲み込まれかけてるぞ・・・。

「死に際にツッコんでくるなよ! ちゃんと助けを求めろ!」

「皆、今までありがとな・・・。嗚呼、メリィの大きなおっぱいやら、サーカのプリケツが走馬灯のように・・・」

 ノズチの口の中から顔だけを出して飲み込まれていくピーターは、最期まで欲望に忠実だった。

「何やってんだよ、もぉ~」

 俺はジャイアントワームに似た、小型のノズチの体を掴んでしごき、ピーターを吐き出させる。

「胎内回帰の疑似体験を経て、俺、ただいま再誕! ビュッ!」

 ピーターがノズチの体内から、勢いよく射出し、わけのわからん事を言いながら、木の洞に頭からビーンと突き刺さった。

 ノズチは何でもかんでも吸い込む妖怪なので、俺たちに悪意はない。ピーターを吐き出すと、のそのそと体をくねらせて、何処かへ去っていった。

「ブフォォ! ウブブブ! カパッ! カパパパパ!」

 ラケルが一連のやり取りを見て吹き出した。なにその笑い方・・・。カパパパパって・・・。

 腹を抱えて、地面に横たわるラケルは、背中の甲羅の側面を軸にして、地面の上を行進し円を描いている。余程面白かったのだろう。

「からの! ブリッジ!」

 カッパは何の前触れもなく勢いよく、ビシィ! っとブリッジをした。なんで?

 それを見たパーティメンバーも、ラケルに合わせてボケたいのか、ソワソワしだしたので、俺は九頭身カッパをお姫様抱っこしてから立たせ、顔の前で握りこぶしを作って、周りに喚いた。

「もうこれ以上、ボケさせねぇからな! めんどくさい!」

 棒を持って何かしらのモノボケをしようとするトウスさんや、喉をチューニングしてシルビィさんの「逮捕だぁー!」の声真似をしようとするサーカ、何も思いつかず絶望し、青ざめた顔で立ち尽くすメリィを見て、俺は手を水平に薙ぎ払ってそれらを制止した。

「人の話を聞け! 小ボケ大会を始めようとすなっ!」

 ったく、ラケルまでボケるとは思わなかったぜ・・・。油断ならねぇなぁ。

「ほら、出口に向かうぞ。隠し扉まで競争~!」

 さり気なくトトロに出てくる、五月とメイのお父さんの物真似をしてボケてみると、心の中で「お前もかよ!」と俺自身がツッコんだ。




 名残惜しそうに手を振るラケルに「色々ありがとう! またな!」と礼を言って手を振り返した。さようならとは言わない。そのうち、また来る予定だし。面白そうな食材が他にも色々ありそうだから。

 俺たちは隠し扉をくぐり、螺旋階段を降りていく。

「一段とマナが濃くなったのに、敵が出てこないな」

 穴を上昇するマナの激流の音と、俺たちのブーツの音以外は何も聞こえてこない螺旋階段に、サーカが怪しんでメイスの柄に手をかけた。不意打ちがあっても、メイスで応戦できるように構えているのだ。

「そろそろ、悪魔の類が出てきても、おかしくはない深さだな」

 悪魔ねぇ・・・。俺ら、最低最悪最強の悪魔と戦って死んだ事があるからさ、今更感はあるんよ、トウスさん。まぁトウスさんに言うまでもないけど。

「ホホホ、マナが渦巻くこの大穴において、考えや言葉は具現化する。発言には気をつけたほうが良いですよ、冒険者たち」

 で、出たー! イオンコート! じゃなくて、悪魔!

「チィ! フラックか・・・。厄介だな」

 トウスさんが鼻にしわを寄せた。

 鎌を持つピエロは、ナンベルさんのような歌舞伎役者のようなメイクではなく、白塗りに涙の雫メイクをしているだけなので、気味が悪い。

「俺もいるぞ!」

 ん? 猫人か? 猫人がフラックの後ろから出てきたぞ。なんで悪魔とつるんでいるんだ?

「なぁ、サーカ。あれって、夕方五時頃に魔法水晶で放送されているドキュメント番組、『よろしくネコキャット』の主役なんじゃないの?」

 ドキュメント番組なのに主役がいるってのは変だが、送信用魔法水晶を持つ観察者ウォッチャーは、いつも義賊ネコキャットをメインに映すので、主役と言っても差し支えない。

 因みにこの番組ではシルビィさんも、かなりの頻度で出ている。

 いつもネコキャットを目前にして、「逮捕だぁー!!」と言いつつも取逃してしまうので、我らが独立部隊隊長さんは子供たちから、“逮捕だオバサン”と呼ばれているのだ。

 そう。子供からしてみれば、シルビィさんは義賊を捕まえようとする悪者に近い。だから呼び方に悪意がある。ちょっと笑える話だけども。

 それにしても、裏側や独立部隊の優秀な捜査網を掻い潜って、ずっと義賊を続けていられるネコキャットは純粋に凄いな。

 等と考えていると、サーカが軽くため息をついて、物知らずの俺に教えてくれた。

「あれは、猫人などではない。ケットシーだ。猫の悪魔な? よく見ろ、尻尾が二本もある」

「なんだ、猫又か」

 俺がそう言うと、ケットシーは憤慨し、被っていた羽根帽子を地面に叩きつけた。

「俺はケットシーだつってんだろ! 日本妖怪の猫又なんかと一緒にするな! 無礼者め!」

 知らんがな。日本じゃ尻尾が複数ある猫は猫又って相場が決まっているんだよ!

「なんなら妖怪すねこすりと呼んでやろうか?」

「なにぃー!!」

「これこれ、挑発に乗ってはいけませんよ、ケットシーさん。ホホホ」

「おっと! ハハッ! 中々やるじゃないか、人間」

 ん? ケットシーは身長二メーター五十センチもある俺を見て人間と言った。悪魔は様々な世界に行くので、人間とオーガの違いを見分けられるのか?

 まだ戦闘は始まりそうにないので、俺は悪魔二人を観察した。

 ケットシーはやんちゃな子猫っぽい可愛いさがあるが、フラックは強キャラ感が出ていて半端なく怖い。なんでピエロって不気味なのが多いのだろうか? アメリカ人のピエロ恐怖症が少しは共感できるようになってきた。

「俺らの行く手を邪魔するってぇのか? おめぇら」

 トウスさんが凄んだ。吠える事はあっても凄む事はあまりない彼だが、それだけ虚勢を張らないとヤバい相手って事か・・・。

「もしもし? 貴方、気は確かですか? 我々悪魔は基本的に光の子である貴方達の敵。邪魔をして当然でしょう? さぁさぁ、その魂、大人しく差し出すのであれば良し! 抗うというのならば! 苦痛と共に! 刈り取ってあげましょう。覚悟なさい! 冒険者!」

 フラックは鈴の付いた鎌をシャンと鳴らして、こちらに向けた。

「試合だ! 死合いだ! 修道騎士もいるぞ! ズタズタにして殺さないと!」

 ケットシーもノリノリだな。レイピアを掲げて変な踊りを踊っている。

 潤沢なマナの中で、自立できる悪魔というものは、誰も彼もが好戦的なのだろうか?

 うちのパーティに召喚士がいればなぁ・・・。この二人と交渉して仲間にできてたかも知れないのに。

 仕方がない。戦うか・・・。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜

たや
ファンタジー
その勇者は、休日のみ地球のバス停から異世界に旅立つ 幼い頃に家族で異世界“ハーモラル”を巡っていた日向凛斗がこちらの世界に帰還して10年が過ぎていた。 しかし最近、ハーモラルの魔獣が頻繁に現実世界に姿を現し始める異変が起こった。 高校生となった凛斗は夜な夜な魔獣討伐の為に街を駆け巡っていたがある日、原因はハーモラルにあると言う祖父から一枚のチケットを渡される。 「バス!?」 なんとハーモラルに向かう手段は何故かバスしかないらしい。 おまけにハーモラルに滞在できるのは地球時間で金曜日の夜から日曜日の夜の48時間ピッタリで時間になるとどこからかバスがお迎えに来てしまう。 おまけに祖父はせめて高校は卒業しろと言うので休日だけハーモラルで旅をしつつ、平日は普通の高校生として過ごすことになった凛斗の運命はいかに? 第二章 シンヘルキ編 センタレアから出発したリントとスノウは旅に必須の荷車とそれを引く魔獣を取り扱っているシンヘルキへと向かう。 しかし地球に戻ってくるとなんと魔王が異世界から地球に襲来したり、たどり着いたシンヘルキでは子を持つ親が攫われているようだったり…? 第三章 ナフィコ編 シンヘルキの親攫い事件を解決し、リント達は新たな仲間と荷車とそれを引く魔獣を手にして新たなギルド【昇る太陽】を立ち上げた。 アレタの要望で学院都市とも呼ばれる国のナフィコへ向かうが滞在中に雷獄の雨が発生してしまう。 それを発生させたのはこの国の学生だそうで…? ※カクヨム、小説家になろうにも同時掲載しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

処理中です...