料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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謎のコスプレ集団

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 草色のフルフェイスにを睨みつけ、涙を目に滲ませる。

(もうすぐ、私は死ぬんだ。悔しい)

 こんなに悔しい思いをしたのはいつの日か。合宿で男女混合の柔道試合をして、あと一歩のところで男子に負けた時ぐらいか。

 いや、今はそれ以上だ。なにせ、この先はないのだから・・・。

「ゴボゴボ」

 喉を掻き斬られたせいで、口と傷口から泡立つ血が出てくる。

 それを見て余裕な態度を取る中国兵が、私は憎かった。

 フラフラと揺らめいて、地面に膝をつき、後は死を待つだけとなったその時。

「メリィ! 彼女に致命傷の癒やしを! 急げ! そう長くは持たない!」

 どこかで優し気な男の声がした。

「はぁい!」

 背後で間の抜けた女の声が聞こえる。

 暫くすると、切れた喉に光が集まり、血が止まった。と同時に猛烈に、お腹が減った。

「あ、干しリンゴ忘れちゃったぁ!」

 私の傷を治してくれたであろう銀髪の少女が、腰袋の中身を探って目を丸くしている。

「この世界にはどこにでも食べ物があるから気にしなくてもいい、メリィ。トウスさん、あの兵士を戦闘不能にしてくれ! 情報を聞き出せるかもしれない」

「わかった!」

 今すぐにでも消えようとする中国兵に、白獅子のコスプレをした男が襲いかかる。

「一般人は危険だから・・・。ゴホゴホっ!」

 私の喉は完全に治っていないようだ。というか、どういった原理でここまで治ったのだろうか?

「手加減ってぇのは、難しいな」

 コスプレ用の玩具に見える長剣の鞘で、あっという間に中国兵の四肢を殴り、動けなくしたライオンの男がそう言う。

「大丈夫ですか? お姉さん」

 なんだ、この男は。やたら大きい。身長はゆうに二メートルを超えている。でも変にアンバランスでもなく、スタイルも良い。でも上半身が裸エプロン姿なのはなぜだ?

 妙な色気が私の女の部分を揺さぶったせいで、声が上ずる。

「はい・・・。でも、貴方達は一体・・・」

「今はそれどころじゃないんです。俺たちのことは気にしないで下さい」

 子供が三人、耳の長いエルフのコスプレをした少女が一人、筋骨隆々の獅子男、それに異様に背の高い日本人が一人。

「せぇんぱぁ~い! 大丈夫ですか! お、お、お、お前ら! 先輩から離れろ! あわわわ!」

 今頃、モヤシが銃を構えて現れる。間違えて銃を撃ちかねないな、やれやれ。

「止めな、モヤシ。この人達は命の恩人だ」

「へ? このコスプレ集団が?」

「そうだ。中国兵は必ず国旗のワッペンをどこかに付けているだろ? 彼らはつけていないし、何より瀕死の私を救ってくれた」

 勿論、このコスプレ集団がオタクだとは思えない。傷を治した事といい、とんでもない身体能力といい、中国軍同様、オーバーテクノロジーの所持者であると考えられる。

「君たちは、こんな所で何をしているんだい?」

 モヤシ・・・。本名は藻香具師と書いてモヤシ。名前は猛と書いてタケル。モヤシなのか猛々しいのかどっちなんだい? と言いたい名前だ。――――が、コスプレ集団に質問をした。

「人を探しているんです。近くの西急ホテルに泊まっているはずなんですが・・・。誰かそこの兵士に西急ホテルの周辺はどうなっているか、聞いてくれないか? 俺は翻訳の魔法をかけてもらってないんだ。今更、サーカに翻訳の魔法を使わせるのは勿体ないしな」

「俺がやるよ」

 小さな子供が名乗り出た。どんぐりの先のような髪型をしたその彼が、四肢の折れた兵士に馬乗りになって襟首を掴んだ。

西急にしきゅうホテルの周囲はどんな様子なんだ? え? 吐いたほうが身の為だぞ!」

 子供は中国兵のフルフェイスを取って、脅している。

「ウォーブンナンジャォニー!」

「なにぃ!? コノヤロー!」

 子供は兵士の目玉を潰そうと、親指でグリグリと押している。以外に粗野で凶暴だ。

「アイヤー!! トン!! トン!!」

「うるせー!」

「ピーターお兄ちゃん、そんな事しなくても、私、その人の心、読めるよ?」

「まじ? すげぇじゃん! さすが、神をも下僕にするタスネ子爵が師匠なだけあるな、ムク! じゃあ俺が今、何を考えているか当ててみ?」

 今、そのやり取りは必要か?

「そこの制服を着た女の人に、格好の良いところを見せたいと思ってるよ」

「大正解!」

「恥ずかしいやつだな、お前は。もういい、下がれ。後はムクに任せよう」

 耳の長い少女が諫めると、どんぐりの子供は私に近づいてきた。

「ねぇ! 俺、今、格好良かった? ねぇ! ねぇ!」

「え? あぁ・・・。(う、うざい)」

「やっぱり? デュフフ」

 変な子供だな。子供なのに大人のような邪さを感じる・・・。

「大変だよ! オビオお兄ちゃん! 西急ホテルにはね、なんか敵の重要な設備があって、厳重に守られているんだって!」

 なんだ、この寸劇を見せられているような気分は。あんなオカッパの子供に何が解るというのだ。

「くっそー! 運が悪い。これじゃあ、中国兵との戦闘は不可避じゃねぇか」

「そんな事より、コズミック・ペンの身が心配だ。人質になっていいのだがな」

 エルフ耳の少女がそう言うと、長身の男の顔に絶望が走る。

「縁起でもない事言うなよ、サーカ! もし彼女が死んでいたりしたら、俺らの世界は消されるんだぞ!」

 そういう設定なのか? この非常時にごっこ遊びかと言いたいが、彼らの実力を考えると何か裏事情があるとおもんぱかりたくなる。

「君たちにどんな事情が?」

「西急ホテルにいる探し人が死ぬと、俺らの世界は悪魔に滅ぼされるのさ」

 どんぐり坊やの説明はいまいち理解できないが、彼らが異世界から来たのではないかと思える何かを感じるな。

「君たちが何をやり遂げようとしているのはわからん。できれば、お礼に他の警官を呼んで支援したいところだが、なにせ通信手段がないのでね。ただ西急ホテルの場所は教えることができる。ほら、あそこだ」

 私は彼らを信じる事にした。当然こんな事をすれば始末書では済まない。それでも私は、西急ホテルの看板を指差さずにはいられなかった。

 ここから三百メートル西辺りのビルの上にデカデカと西急と書いてあるが、彼らの位置からはビルが邪魔をして見えない。

「あ、結構近かったんだ?」

「オビオ、何か良い策はあるか?」

「あるわけないよ、トウスさん。俺だってこの時代の事に詳しいわけじゃない。ただ一つ言えることは・・・」

「言えることは?」

「あそこの店先に飾ってある包丁が、俺の時代では凄く貴重だって事さ」

 オビオと呼ばれた大男が、地団駄を踏んで、包丁屋のショーケースを指さしていた。

 それを見たエルフの少女が、オビオ君の尻を叩く。

「今はそれどころじゃない! さぁ行くぞ!」
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