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23 適性、大事ですわ
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「では適性の話を改めていたします。これは実際にやってみるのが分かりやすいですね。マリーさん、お願いできますか?」
「わ、私ですか?」
「これを持ってください」
慌てるマリーに手渡されたのは、一本のマッチだ。
「マリーさんは火の適性が全くありません。ですのでこのマッチに火を灯すには、こちらの呪文が必要となります」
空中に一枚の羊皮紙が現れる。そこには細かい文字が上から下まで、隙間なくびっしりと書き込まれていた。
「一語一句、違わず読み上げてください」
一瞬、マリーの顔が引きつる。アリシアも内心「うわぁ」と思ったが、辛うじて声には出さなかった。
数分後、苦労してマリーが読み上げると、マッチは自然発火したが……ものの数秒で消えてしまう。
「適性が無いというのは、こういうことです。ではアリシア様」
「私もですか……これを?」
今度はアリシアが呼ばれるが、ヨゼフから手渡されたのはマッチではなくただの木の枝だった。
「最初の一行を、黙読してください」
「黙読ですか」
「はい。アリシア様がこの呪文を読み上げると、この部屋が火の海になってしまいます」
まさか、と思いつつアリシアは宙に浮かんでいる羊皮紙の一行目を目で追う。と、突然枝先から炎が吹き出た。
天井にまで達しそうな火柱と、すぐ側で燃えさかる炎はアリシア自身にも襲いかかりそうだ。
「アリシア、目を瞑れ!」
エリアスが叫び、咄嗟にアリシアは彼の言うとおりに両目を固く瞑った。
すると炎は一瞬で消え去る。呆然としているアリシアに、ヨゼフが急いで冷気の魔術をほどこし枝を握っていた手を冷やす。
「申し訳ございません、アリシア様。貴女の持っている魔力と資質を見誤っておりました」
「いえ、ちょっと驚いたけど大丈夫です。それよりマリーを……」
座ったまま気絶しているマリーには、エリアスがそっと背に手を当て短い呪文を唱えた。
すると触れている部分に円形の魔方陣か浮かび上がる。
「これは回復魔術の一種。慣れればアリシアも使えるようになるよ」
程なくマリーは意識を取り戻し、きょろきょろと周囲を見回す。
「……私、目の前に炎……夢?」
「夢じゃなくてよ、マリー。あなた、私の出した炎が恐ろしくて気絶してたのよ。ごめんなさいね。それでエリアスが、回復魔術で起こしてくれたのよ」
「お嬢様、エリアス様。申し訳ございません」
頭を下げるマリーに、アリシアは笑って首を横に振った。
「いきなりあんな火柱を見たら驚いちゃうわよ。……マリー、怖いなら一般教養の授業だけにして、魔術の勉強はやめる?」
幸い自分は気絶しなかっただけで、かなり驚いたのは事実だ。これから魔術を学ぶのであれば、似たような事は度々起こるだろう。
けれどマリーは一切の迷いなく、アリシアを見つめる。
「いいえ、お嬢様。私いまの出来事で決心がつきました。このような危険な魔術を使うのでしたら、ポーションは必須。必ずやお役に立てるよう、魔術の勉強に励みます」
「強い信念は、とても大切ですよ、マリーさん。――さてアリシア様、今の火柱でご理解して頂けたかと思いますが、貴女の持つ魔力はとても強い。一方マリーさんは、魔力は平均ですが、火属性には全く適性がありません」
羊皮紙が空間から消え、ヨゼフが正面の大きな紙を叩く。
すると様々な文様や魔方陣が浮かび上がった。
「わ、私ですか?」
「これを持ってください」
慌てるマリーに手渡されたのは、一本のマッチだ。
「マリーさんは火の適性が全くありません。ですのでこのマッチに火を灯すには、こちらの呪文が必要となります」
空中に一枚の羊皮紙が現れる。そこには細かい文字が上から下まで、隙間なくびっしりと書き込まれていた。
「一語一句、違わず読み上げてください」
一瞬、マリーの顔が引きつる。アリシアも内心「うわぁ」と思ったが、辛うじて声には出さなかった。
数分後、苦労してマリーが読み上げると、マッチは自然発火したが……ものの数秒で消えてしまう。
「適性が無いというのは、こういうことです。ではアリシア様」
「私もですか……これを?」
今度はアリシアが呼ばれるが、ヨゼフから手渡されたのはマッチではなくただの木の枝だった。
「最初の一行を、黙読してください」
「黙読ですか」
「はい。アリシア様がこの呪文を読み上げると、この部屋が火の海になってしまいます」
まさか、と思いつつアリシアは宙に浮かんでいる羊皮紙の一行目を目で追う。と、突然枝先から炎が吹き出た。
天井にまで達しそうな火柱と、すぐ側で燃えさかる炎はアリシア自身にも襲いかかりそうだ。
「アリシア、目を瞑れ!」
エリアスが叫び、咄嗟にアリシアは彼の言うとおりに両目を固く瞑った。
すると炎は一瞬で消え去る。呆然としているアリシアに、ヨゼフが急いで冷気の魔術をほどこし枝を握っていた手を冷やす。
「申し訳ございません、アリシア様。貴女の持っている魔力と資質を見誤っておりました」
「いえ、ちょっと驚いたけど大丈夫です。それよりマリーを……」
座ったまま気絶しているマリーには、エリアスがそっと背に手を当て短い呪文を唱えた。
すると触れている部分に円形の魔方陣か浮かび上がる。
「これは回復魔術の一種。慣れればアリシアも使えるようになるよ」
程なくマリーは意識を取り戻し、きょろきょろと周囲を見回す。
「……私、目の前に炎……夢?」
「夢じゃなくてよ、マリー。あなた、私の出した炎が恐ろしくて気絶してたのよ。ごめんなさいね。それでエリアスが、回復魔術で起こしてくれたのよ」
「お嬢様、エリアス様。申し訳ございません」
頭を下げるマリーに、アリシアは笑って首を横に振った。
「いきなりあんな火柱を見たら驚いちゃうわよ。……マリー、怖いなら一般教養の授業だけにして、魔術の勉強はやめる?」
幸い自分は気絶しなかっただけで、かなり驚いたのは事実だ。これから魔術を学ぶのであれば、似たような事は度々起こるだろう。
けれどマリーは一切の迷いなく、アリシアを見つめる。
「いいえ、お嬢様。私いまの出来事で決心がつきました。このような危険な魔術を使うのでしたら、ポーションは必須。必ずやお役に立てるよう、魔術の勉強に励みます」
「強い信念は、とても大切ですよ、マリーさん。――さてアリシア様、今の火柱でご理解して頂けたかと思いますが、貴女の持つ魔力はとても強い。一方マリーさんは、魔力は平均ですが、火属性には全く適性がありません」
羊皮紙が空間から消え、ヨゼフが正面の大きな紙を叩く。
すると様々な文様や魔方陣が浮かび上がった。
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