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39 ローゼ様って大胆
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グリフォンの乗り心地は、想像していたよりもずっと快適だった。
「ありがとう、エリアス。よい気分転換になりました」
「それは良かった」
城の中庭に降り立つと、グリフォンもエリアスに同意するように高らかに鳴く。
「アリシアお嬢様! 一体何が……もう、私……心配で、心配で……」
「ごめんなさいマリー。詳しい事は、後で話すわ」
どうやら帰りを待っていたらしいマリーが駆け寄ってきて、今にも泣き出しそうな顔でアリシアに抱きついた。
アリシアはマリーを宥めつつ、エリアスに視線を向ける。
(父……いいえ、父であったあの男は、一体どうしてラサ皇国から手配されているの?)
聞きたいことは山ほどある。
自分がレンホルム家から追い出されたこともショックだけど、母に関する事情の方が気にかかる。
エリアスが話し出すより先に、控えていた執事が彼に耳打ちした。
「そうか……分かった。本来なら兄上、王から伝えられる話だが。急用が入って暫く城には戻れないようだ」
「ローゼ王妃もですか?」
困った様子で頷くエリアスに、アリシアも不安を隠せない。
これでは事情を聞くことは、いつになるか分からない。
「俺の主観も入るけど。それでもいいなら話すが……」
「ええ、かまいません。もしエリアスの話に納得できなければ、ヨゼフ先生やローゼ王妃に直接伺いますのでご安心を」
にこりと微笑むと、エリアスはほっとしたように息を吐く。
「君は本当に面白い人だ。普通は思っても言わないぞ」
「マリーも同席させてよろしいかしら」
「ああ、君の従者でいるのなら知っておくべき事だからね。ついておいで」
エリアスの後に従いアリシアとマリーは連れだって歩く。
始めて城に入り王と王妃に謁見した部屋ではなく、更に奥の王家の私的な部屋へと招かれた。
壁には歴代の肖像画が飾られているのは最初に通された部屋と同じだが、こちらはいくらか狭く調度品も家庭的なものが多い。
(完全に私的なお部屋じゃない。いいのかしら)
親族だけが使う歓談部屋に、流石にアリシアも萎縮してしまう。
けれどエリアスは気にせず適当に座るよう二人を促した。
メイド達が軽食のサンドイッチとスコーン、紅茶を運んできてテーブルに置くと、サーブもせずにすぐ退室する。
「ここは俺が呼ぶまで誰も立ち入ることはないから、気楽にしてくれ」
「……そう言われても緊張します」
「あの、本当に私も同席してよろしいのでしょうか」
マリーの呟きに、エリアスが微笑む。
「君はアリシアの家族同然だからね。それに今後も深く関わる事になるだろうから、知っておいた方が良い。紅茶もスコーンも、好きに食べてくれ。マナーは気にしなくていい」
それぞれソファに腰を落ち着けると、エリアスは慣れた様子で三人のカップに紅茶を淹れると話を始めた。
「まず、ラサ皇国の事情から簡単に説明しよう。かの国では、他国に嫁いだ者に関してはたとえ皇族であっても干渉することはない。手紙の遣り取りすら禁じている――義姉さんはこっそり送ってたみたいだけどな」
「なんて大胆なこと……」
「問題はここから。本来君の母上は、バイガル王家に嫁ぐ筈だったのに何故かレンホルム公爵と結婚したと伝えられた。君が生まれたこともね」
「勝手に結婚相手を違えるなんて。外交問題になりますよね」
「どういう遣り取りが為されたか分からないが、君が王子と結婚する事でレアーナ様の件は不問になったらしい。ここで強く抗議していれば、色々と変わっていたんだろうけど」
嫁ぎ先に馴染むべきというラサ皇国の考えが、今回の事件を招いたともいえる。
「他国に嫁いだ者同士が連絡を取りあうのは禁じられてないから、兄さんと結婚して国を出た義姉さんは、すぐレアーナ様に手紙を出した。……が、返事は来なかった」
「ありがとう、エリアス。よい気分転換になりました」
「それは良かった」
城の中庭に降り立つと、グリフォンもエリアスに同意するように高らかに鳴く。
「アリシアお嬢様! 一体何が……もう、私……心配で、心配で……」
「ごめんなさいマリー。詳しい事は、後で話すわ」
どうやら帰りを待っていたらしいマリーが駆け寄ってきて、今にも泣き出しそうな顔でアリシアに抱きついた。
アリシアはマリーを宥めつつ、エリアスに視線を向ける。
(父……いいえ、父であったあの男は、一体どうしてラサ皇国から手配されているの?)
聞きたいことは山ほどある。
自分がレンホルム家から追い出されたこともショックだけど、母に関する事情の方が気にかかる。
エリアスが話し出すより先に、控えていた執事が彼に耳打ちした。
「そうか……分かった。本来なら兄上、王から伝えられる話だが。急用が入って暫く城には戻れないようだ」
「ローゼ王妃もですか?」
困った様子で頷くエリアスに、アリシアも不安を隠せない。
これでは事情を聞くことは、いつになるか分からない。
「俺の主観も入るけど。それでもいいなら話すが……」
「ええ、かまいません。もしエリアスの話に納得できなければ、ヨゼフ先生やローゼ王妃に直接伺いますのでご安心を」
にこりと微笑むと、エリアスはほっとしたように息を吐く。
「君は本当に面白い人だ。普通は思っても言わないぞ」
「マリーも同席させてよろしいかしら」
「ああ、君の従者でいるのなら知っておくべき事だからね。ついておいで」
エリアスの後に従いアリシアとマリーは連れだって歩く。
始めて城に入り王と王妃に謁見した部屋ではなく、更に奥の王家の私的な部屋へと招かれた。
壁には歴代の肖像画が飾られているのは最初に通された部屋と同じだが、こちらはいくらか狭く調度品も家庭的なものが多い。
(完全に私的なお部屋じゃない。いいのかしら)
親族だけが使う歓談部屋に、流石にアリシアも萎縮してしまう。
けれどエリアスは気にせず適当に座るよう二人を促した。
メイド達が軽食のサンドイッチとスコーン、紅茶を運んできてテーブルに置くと、サーブもせずにすぐ退室する。
「ここは俺が呼ぶまで誰も立ち入ることはないから、気楽にしてくれ」
「……そう言われても緊張します」
「あの、本当に私も同席してよろしいのでしょうか」
マリーの呟きに、エリアスが微笑む。
「君はアリシアの家族同然だからね。それに今後も深く関わる事になるだろうから、知っておいた方が良い。紅茶もスコーンも、好きに食べてくれ。マナーは気にしなくていい」
それぞれソファに腰を落ち着けると、エリアスは慣れた様子で三人のカップに紅茶を淹れると話を始めた。
「まず、ラサ皇国の事情から簡単に説明しよう。かの国では、他国に嫁いだ者に関してはたとえ皇族であっても干渉することはない。手紙の遣り取りすら禁じている――義姉さんはこっそり送ってたみたいだけどな」
「なんて大胆なこと……」
「問題はここから。本来君の母上は、バイガル王家に嫁ぐ筈だったのに何故かレンホルム公爵と結婚したと伝えられた。君が生まれたこともね」
「勝手に結婚相手を違えるなんて。外交問題になりますよね」
「どういう遣り取りが為されたか分からないが、君が王子と結婚する事でレアーナ様の件は不問になったらしい。ここで強く抗議していれば、色々と変わっていたんだろうけど」
嫁ぎ先に馴染むべきというラサ皇国の考えが、今回の事件を招いたともいえる。
「他国に嫁いだ者同士が連絡を取りあうのは禁じられてないから、兄さんと結婚して国を出た義姉さんは、すぐレアーナ様に手紙を出した。……が、返事は来なかった」
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