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50 恥ずかしいですよ
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二度目の召喚に応じたという事で、アリシアとホワイトの契約は正式に成立した。
「これらからよろしくお願いしますね。ホワイト」
「以後は取り決め通りに」
クルクルと軽やかな鳴き声を上げると、ホワイトはその巨体に似合わない身軽さで宙へと浮かび上がる。そして瞬く間に空の彼方へ飛び去った。
「ドラゴンの飛翔能力は素晴らしいわ」
ホワイトの飛び去った方角をうっとりと眺めていると、エリアスがアリシアの側へ歩み寄り顔を覗き込む。
「エリアス?」
「ところでアリシア。答えは出たかな?」
「なんの事でしょう」
「君が俺をどう思っているのか知りたい」
こうはっきりと問われては、誤魔化すこともできない。
アリシアとしては彼に対して好意的な感情があると自覚している。
しかし今の自分は、彼の想いに応えられる身分ではない。
(皇帝の孫であっても、正式に認めて頂いたわけではないし……)
母がラサ皇帝の娘という事実があっても、バイガル国で生まれたアリシアは「元レンホルム令嬢」という立場が強い。
「エリアス。貴方の気持ちは嬉しいけど、私は……」
「俺では君に並び立つには相応しくないと分かっているが……諦めきれないんだ」
突然エリアスが片膝をつき、アリシアの言葉を遮った。
その行動と内容に、アリシアは動揺する。
「なぜそんな卑下した物言いをするのですか。エリアスらしくありません!」
「君は素晴らしい魔術師だ。生まれ持った魔力だけで、魔術師の力は決まらない。能力、探究心、そして魔術に対する敬意。君は大魔術師としての資質を備えている」
「……流石に褒め殺しです。エリアスだって、王族として立派に務めを果たしているではありませんか。貴方こそ魔術の才は私よりずっと秀でてます」
確かにエリアスの指導は理解しづらいが、それは本人が天才肌故の事だ。
「君は俺を認めてくれるのか?」
「勿論です! 私の方こそ、貴方に相応しい女性ではありません。自分の好きに生きる為に、召喚魔術に傾倒して……容姿も見栄えが良くないと自覚があります」
母譲りの茶色の髪と瞳は誇りではある。けれど、誇りと見栄えとは別問題だ。
「頭だってよくありません。記憶を無くす前の方が、ずっと知識も豊富だったのに。こんな使い物にならない私を好いてくださっても、エリアスに何の利益も無いではないですか」
「俺は今の君を愛している。だから君が君自身を侮辱することは許さないよ」
立ち上がったエリアスが、アリシアをそっと抱き寄せた。
「俺はねアリシア、今の君が本来の姿だと思うんだ。自由で、好きなことに前向きで。生き生きと魔術を使う君はとても美しい。アリシア、どうか俺と結婚してほしい」
至近距離で瞳を覗き込まれ、アリシアは赤面する。
「一目惚れだったんだ。アリシア。俺は君を見た瞬間、恋に落ちた」
「待ってエリアス、恥ずかしいこと言わないで」
「答えてくれアリシア。君の素直な気持ちを聞きたい」
もう誤魔化すことなどできなかった。
でもアリシアはエリアスの情熱を帯びた視線を真っ直ぐに受け止める勇気がなく、顔を伏せる。
「……私も……エリアスと同じ想いです」
恥ずかしくて声が震えてしまう。
それでもエリアスはアリシアの告白を聞き取ってくれたらしい。
「良かった。嫌いだと言われたら、心臓が止まっていたよ」
「大げさ――」
思わず笑うと、背に回されていた片方の手がアリシアの頬に触れ上向かせる。
そして優しく、唇が重ねられた。
*****
「エリアス様、アリシア様。先程王ご夫妻が戻られまして、すぐに歓談室に来るようにとの事です」
エリアスと共に城に戻ったアリシアは、王族が使う専用の門の前で待ち構えていた侍従長に王の帰還を告げられる。
帰り道はなんとなく互いに気恥ずかしくて言葉少なだったが、侍従長の慌てた様子に顔を見合わせた。
身支度を整えるのもそこそこに、二人は歓談室へ向かう。
「お久しぶりですラゲル王、ローゼ王妃」
「アリシア、元気そうで良かったわ」
レンホルム公爵の騒ぎのがあった日から、二人は急用とのことで城を出ていたのだ。
ラゲル王とローゼ王妃も少し前に戻ったばかりのようで、ドレスも長旅用の身軽なものを纏っている。
「勉強熱心なのはいいけれど、無理をしたら駄目よ」
「そのことなのですが兄上、義姉上。お伝えしたい事があります」
エリアスに促され、アリシアは召喚魔術が成功した事と二人に伝えた。
「これらからよろしくお願いしますね。ホワイト」
「以後は取り決め通りに」
クルクルと軽やかな鳴き声を上げると、ホワイトはその巨体に似合わない身軽さで宙へと浮かび上がる。そして瞬く間に空の彼方へ飛び去った。
「ドラゴンの飛翔能力は素晴らしいわ」
ホワイトの飛び去った方角をうっとりと眺めていると、エリアスがアリシアの側へ歩み寄り顔を覗き込む。
「エリアス?」
「ところでアリシア。答えは出たかな?」
「なんの事でしょう」
「君が俺をどう思っているのか知りたい」
こうはっきりと問われては、誤魔化すこともできない。
アリシアとしては彼に対して好意的な感情があると自覚している。
しかし今の自分は、彼の想いに応えられる身分ではない。
(皇帝の孫であっても、正式に認めて頂いたわけではないし……)
母がラサ皇帝の娘という事実があっても、バイガル国で生まれたアリシアは「元レンホルム令嬢」という立場が強い。
「エリアス。貴方の気持ちは嬉しいけど、私は……」
「俺では君に並び立つには相応しくないと分かっているが……諦めきれないんだ」
突然エリアスが片膝をつき、アリシアの言葉を遮った。
その行動と内容に、アリシアは動揺する。
「なぜそんな卑下した物言いをするのですか。エリアスらしくありません!」
「君は素晴らしい魔術師だ。生まれ持った魔力だけで、魔術師の力は決まらない。能力、探究心、そして魔術に対する敬意。君は大魔術師としての資質を備えている」
「……流石に褒め殺しです。エリアスだって、王族として立派に務めを果たしているではありませんか。貴方こそ魔術の才は私よりずっと秀でてます」
確かにエリアスの指導は理解しづらいが、それは本人が天才肌故の事だ。
「君は俺を認めてくれるのか?」
「勿論です! 私の方こそ、貴方に相応しい女性ではありません。自分の好きに生きる為に、召喚魔術に傾倒して……容姿も見栄えが良くないと自覚があります」
母譲りの茶色の髪と瞳は誇りではある。けれど、誇りと見栄えとは別問題だ。
「頭だってよくありません。記憶を無くす前の方が、ずっと知識も豊富だったのに。こんな使い物にならない私を好いてくださっても、エリアスに何の利益も無いではないですか」
「俺は今の君を愛している。だから君が君自身を侮辱することは許さないよ」
立ち上がったエリアスが、アリシアをそっと抱き寄せた。
「俺はねアリシア、今の君が本来の姿だと思うんだ。自由で、好きなことに前向きで。生き生きと魔術を使う君はとても美しい。アリシア、どうか俺と結婚してほしい」
至近距離で瞳を覗き込まれ、アリシアは赤面する。
「一目惚れだったんだ。アリシア。俺は君を見た瞬間、恋に落ちた」
「待ってエリアス、恥ずかしいこと言わないで」
「答えてくれアリシア。君の素直な気持ちを聞きたい」
もう誤魔化すことなどできなかった。
でもアリシアはエリアスの情熱を帯びた視線を真っ直ぐに受け止める勇気がなく、顔を伏せる。
「……私も……エリアスと同じ想いです」
恥ずかしくて声が震えてしまう。
それでもエリアスはアリシアの告白を聞き取ってくれたらしい。
「良かった。嫌いだと言われたら、心臓が止まっていたよ」
「大げさ――」
思わず笑うと、背に回されていた片方の手がアリシアの頬に触れ上向かせる。
そして優しく、唇が重ねられた。
*****
「エリアス様、アリシア様。先程王ご夫妻が戻られまして、すぐに歓談室に来るようにとの事です」
エリアスと共に城に戻ったアリシアは、王族が使う専用の門の前で待ち構えていた侍従長に王の帰還を告げられる。
帰り道はなんとなく互いに気恥ずかしくて言葉少なだったが、侍従長の慌てた様子に顔を見合わせた。
身支度を整えるのもそこそこに、二人は歓談室へ向かう。
「お久しぶりですラゲル王、ローゼ王妃」
「アリシア、元気そうで良かったわ」
レンホルム公爵の騒ぎのがあった日から、二人は急用とのことで城を出ていたのだ。
ラゲル王とローゼ王妃も少し前に戻ったばかりのようで、ドレスも長旅用の身軽なものを纏っている。
「勉強熱心なのはいいけれど、無理をしたら駄目よ」
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エリアスに促され、アリシアは召喚魔術が成功した事と二人に伝えた。
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