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41話。あれ? ブヒヒヒヒヒッて2頭、言ってない?
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山を中心にした時計盤に見立てると、ニュルンが6時で、エナの村が7時。そこから俺たちは9時の位置を目指す。綺麗な円ではないが、俺の実家を中心にして周囲に村や街があり、12時のところにも大きめの街がある。
急げば一日で山を1周できるが、エナみたいな困っている人を見落とすかもしれないし、住民の様子を見ながら1個ずつ回っていく。
急ぐ旅でもないし、日が沈む前に9時の位置までいければいいかなー、くらいのノリだ。
カポカポ。
馬たちの蹄の音がリズム良くて、長閑(のどか)さが倍増する。
俺、馬、女性陣のフォーメーションだ。
ぼっちになるから、ちょっと寂しい。
かといって、シャルロットかサフィのどっちかを俺の隣にすると、もう一方がボッチだし……。
逃げないとは思うけど、馬は挟んでおきたいしなあ。
俺は最後尾のシャルに向かって声を大きくする。
「ねえ、シャルロットのことシャルって呼んでいい? 途中からエナがシャルって呼んでいてさ。俺、ちょっと嫉妬した」
「ん? もちろんだ」
「シャルがエーデルワイスでエナがヒマワリなら、サフィは?」
「サフィはたんぽぽだな」
「みゃ~」
「俺は?」
「……豚足かな?」
「……?! 豚足?! 植物ですらない」
「ふふっ」
「あははっ」
「みゃはははっ」
「ブヒヒヒヒッ!」 × 2
「……えっ?!」
ガバッ!
俺は何か恐ろしいものを聞いた気がして慌てて振り返る。
「え? メルディ……? ブヒヒヒヒヒッって笑ったのメルディだよな? 他にもブヒヒヒッって笑った?」
「ブルルルル……」 × 4
「そ、そうだよな。気のせいだよな……。あんな変な笑い方する馬、他にいないよな」
ガブッ!
メルディが俺の髪の毛を噛んできた。怒らせてしまったようだ。
やはり馬は賢い。
「ごめん、ごめんて!」
「どうした。アーサー。前方に何かあったのか?」
「なんでもない」
「そうか。ところで、私もお前を愛称で呼びたい」
「いいよ。……え?」
「アー」
「そこはきゅんとかつけようぜ!」
「あはははっ。冗談だ。アーサーはアーサーだ」
「ブヒヒヒヒッ!」 × 2
「ッ?!」
ガバッ!
俺は急いで振り返る。馬をさっと見渡し、不自然な態度や変な顔をしているやつを探す。
「絶対、もう1頭、ブヒヒヒヒッて笑っただろ!」
「ブルルルル……」 × 4
馬はみんな普通の顔だ。馬って感じの顔をして落ち着いた様子で歩いている。
「ランディ?」
「ブルルルル……」
「クルディ?」
「ブルルルル……」
「メルディ?」
「ブルルルル……」
「ブランシュ・ネージュ?」
「……」 ← 俺の馬じゃないから、返事はしてくれない。
「笑うことはいいんだ。ただ、ブヒヒヒッて笑い方が気になるだけなんだ。誰だ?」
「アーサー、本当にどうしたんだ? さっきから何度も振り返って馬の様子を気にしているようだ」
「あ、ああ。なんでもない。馬は可愛いな、って。それはそうと――」
紋章を見せつけてざまぁするときに、いちいち借りているとテンポが悪いから――。
「なんでもいいから、紋章がついているものひとつ、(貸して)くれないかな(※)」
※:借りるつもり。他意はない。水戸黄門だって、助さんか角さんかどっちか知らないけど、護衛の人が印籠(将軍家の紋章が刻まれている道具)を預かっている。
「も、紋章がほしいのか!(※)」
※:紋章は家や個人を特定するためのもの。例えば、結婚したら紋章を縦に分割して相手の紋章を取り入れるようにして、デザインが変わり続けて、その所有者がどういう家柄なのかが分かるようになっている。つまり「紋章をくれ」とは、「結婚しよう」という意味になる。日本語で言うところの「同じ墓に入ろう」に近いかも知れない。
「ああ。(悪人をざまぁするとき)俺が最初から持っていた方が手っ取り早いだろ」
「そ、そうだな(いずれ結婚するんだから、教会への報告は早いほうがいいな)。だが、お前は追放された身……(半分こする紋章を持っていないだろ?)」
「ん? 駄目か?(いまそれ関係ある?)」
「いや、駄目ではない!(つまり、お前が入り婿になるということだな! 身分の差を超えよう!)」
「ああ」
シャルロットは馬の横を通り抜けて、俺の前にやってくると、立ち塞がるようにして急に速度を落とした。
「アーサー!」
「え? あ?」
ちゅっ!
抱きつかれてキスされて、俺は意識を失った。
急げば一日で山を1周できるが、エナみたいな困っている人を見落とすかもしれないし、住民の様子を見ながら1個ずつ回っていく。
急ぐ旅でもないし、日が沈む前に9時の位置までいければいいかなー、くらいのノリだ。
カポカポ。
馬たちの蹄の音がリズム良くて、長閑(のどか)さが倍増する。
俺、馬、女性陣のフォーメーションだ。
ぼっちになるから、ちょっと寂しい。
かといって、シャルロットかサフィのどっちかを俺の隣にすると、もう一方がボッチだし……。
逃げないとは思うけど、馬は挟んでおきたいしなあ。
俺は最後尾のシャルに向かって声を大きくする。
「ねえ、シャルロットのことシャルって呼んでいい? 途中からエナがシャルって呼んでいてさ。俺、ちょっと嫉妬した」
「ん? もちろんだ」
「シャルがエーデルワイスでエナがヒマワリなら、サフィは?」
「サフィはたんぽぽだな」
「みゃ~」
「俺は?」
「……豚足かな?」
「……?! 豚足?! 植物ですらない」
「ふふっ」
「あははっ」
「みゃはははっ」
「ブヒヒヒヒッ!」 × 2
「……えっ?!」
ガバッ!
俺は何か恐ろしいものを聞いた気がして慌てて振り返る。
「え? メルディ……? ブヒヒヒヒヒッって笑ったのメルディだよな? 他にもブヒヒヒッって笑った?」
「ブルルルル……」 × 4
「そ、そうだよな。気のせいだよな……。あんな変な笑い方する馬、他にいないよな」
ガブッ!
メルディが俺の髪の毛を噛んできた。怒らせてしまったようだ。
やはり馬は賢い。
「ごめん、ごめんて!」
「どうした。アーサー。前方に何かあったのか?」
「なんでもない」
「そうか。ところで、私もお前を愛称で呼びたい」
「いいよ。……え?」
「アー」
「そこはきゅんとかつけようぜ!」
「あはははっ。冗談だ。アーサーはアーサーだ」
「ブヒヒヒヒッ!」 × 2
「ッ?!」
ガバッ!
俺は急いで振り返る。馬をさっと見渡し、不自然な態度や変な顔をしているやつを探す。
「絶対、もう1頭、ブヒヒヒヒッて笑っただろ!」
「ブルルルル……」 × 4
馬はみんな普通の顔だ。馬って感じの顔をして落ち着いた様子で歩いている。
「ランディ?」
「ブルルルル……」
「クルディ?」
「ブルルルル……」
「メルディ?」
「ブルルルル……」
「ブランシュ・ネージュ?」
「……」 ← 俺の馬じゃないから、返事はしてくれない。
「笑うことはいいんだ。ただ、ブヒヒヒッて笑い方が気になるだけなんだ。誰だ?」
「アーサー、本当にどうしたんだ? さっきから何度も振り返って馬の様子を気にしているようだ」
「あ、ああ。なんでもない。馬は可愛いな、って。それはそうと――」
紋章を見せつけてざまぁするときに、いちいち借りているとテンポが悪いから――。
「なんでもいいから、紋章がついているものひとつ、(貸して)くれないかな(※)」
※:借りるつもり。他意はない。水戸黄門だって、助さんか角さんかどっちか知らないけど、護衛の人が印籠(将軍家の紋章が刻まれている道具)を預かっている。
「も、紋章がほしいのか!(※)」
※:紋章は家や個人を特定するためのもの。例えば、結婚したら紋章を縦に分割して相手の紋章を取り入れるようにして、デザインが変わり続けて、その所有者がどういう家柄なのかが分かるようになっている。つまり「紋章をくれ」とは、「結婚しよう」という意味になる。日本語で言うところの「同じ墓に入ろう」に近いかも知れない。
「ああ。(悪人をざまぁするとき)俺が最初から持っていた方が手っ取り早いだろ」
「そ、そうだな(いずれ結婚するんだから、教会への報告は早いほうがいいな)。だが、お前は追放された身……(半分こする紋章を持っていないだろ?)」
「ん? 駄目か?(いまそれ関係ある?)」
「いや、駄目ではない!(つまり、お前が入り婿になるということだな! 身分の差を超えよう!)」
「ああ」
シャルロットは馬の横を通り抜けて、俺の前にやってくると、立ち塞がるようにして急に速度を落とした。
「アーサー!」
「え? あ?」
ちゅっ!
抱きつかれてキスされて、俺は意識を失った。
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