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74話。愛と信頼の勝利! アーサーはシャルロットとイチャイチャラブラブセッ――
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「我が名はシャルロット・リュミエール! 『閃光』の二つ名を抱きし元王国騎士団第一団長! 慈愛の女神に祝福されし大地に、貴様の居場所はないぞ! 殺戮魔王!」
ギャラララランッ!
甲高い音とともにシャルロットが発光。両肩に重なるように、光の球体が出現。
スキル公転するふたつの綺羅星で作りだした、攻撃用の衛星上弦の月と防御用の衛星下弦の月だ。
さらに足下が輝き、何かしらの魔法アイテムによる効果だと思うが、ブランシュ・ネージュが出現する。
彼女の騎馬は青白い輝きに包まれている。
そして、シャルロットの右腕にはいつの間にか、突撃槍が装備されている。
素人の俺でも、槍から神聖な力を感じる。
……!
こ、これだ!
これならワンチャンいける!
だ、だが、シャルロットの輝きは、世界を覆い尽くすほどの殺戮魔王の闇の力に比べると、1本の蝋燭のように心許ない。
「閃光の名は今日まで! 明日からは殺戮魔王討滅の英雄を名乗らせてもらうぞ!」
突撃開始位置を探し求めて、ブランシュ・ネージュがゆっくりと歩く。
「無謀だシャル! 逃げろ!」
「くくくっ。リュミエールを名乗ったな。人間にしてはなかなか強い気を持っているようだ。300年前を思いだすぞ。くくくっ。ステータスオープン」
殺戮魔王の手元にステータスウインドウが出現した。
それをみて、魔法はにたりと笑う。
「ほう。シャルロット・リュミーエル。17歳という若さでレベル44まで鍛え上げたか。驚嘆に値するぞ。くくくっ」
「……む」
「私が貴様のステータスを開いたことが不思議か? 我にとってはこのようなこと、造作もない。くっくっくっ。脚を怪我していてステータスが大幅に下がっている。それで不利を補うために、騎馬特攻の一撃にかけようというのか? 無駄だ」
「無駄かどうか試すまで分からぬ。我が衣は慈愛の女神ラルムに祝福され、我が槍は戦神リュテに祝福されている。聖別されし馬衣は我が力と愛馬の力をひとつにする!」
魔王はシャルロットの言葉を適当に聞き流し、ステータスを見ながらニヤニヤ笑いを続ける。
「くっくっくっ。なんだ。貴様、見目は良いのに処女か? これは愉快。我が愚息アーサーに惚れているのか。男の尻を触ることで,軽く興奮する変態とは面白い。ほう。アーサーの尻は、女の尻と異なる弾力で、叩きがいがあったか」
くっ。やつのステータスウインドウはそんな情報まで読み取れるのか!
「よかろう。貴様は殺さず、我が妻としてやろう。新たな肉体となる子を産ませてやるぞ。好きなだけ我が尻を触らせてやろう。くっくっくっ。正気を失うようなおぞましき愛をたっぷり注いでやろう。愚息の死体と、我が愚息で、二穴を同時に攻めてやろう。けひひひひっ! 人垣が邪魔で突撃がしづらいか? さあ、絶望を与えてやろう。貴様の全力を見せてみよ」
くんっ!
魔王が右手の中指を上に向けた。
ただそれだけで突風が地底を走り、倒れていた人々を吹き飛ばし、魔王とシャルロットの間に一本の道を作った。
「さあ、これで貴様は騎馬による全力突撃ができるようになった。敗北の言い訳はできんぞ。ふはははっ! 貴様の股の中央も、こうして我が中指ひとつでくぱあっと開いてやる!」
パカラ、パカラ……。
ブランシュ・ネージュがゆっくりと歩調を緩めて移動をやめると、鼻先を魔王へ向けた。
騎馬を包む輝きが減り、わずかに落ち着く。
シン……。
一瞬、地下のよどんだ空気が張り詰める。
「行くぞ! 閃光の一番槍、受けてみよ!」
ドウッ!
閃光の速さでブランシュ・ネージュが駈けだす。
地下空間を一直線に引き裂く光だ。
そして、それを上回る速度で、闇の線が引かれる。
魔王は圧倒的な闇の力を周囲にまき散らし、疾駆するその軌跡の周辺が墨汁のようににじむ。
俺は天井にめりこんだまま動けない。
「シャル! ……ありがとう。楽勝だったな」
シャルロットが会話で殺戮魔王の意識をひいてくれていたおかげで、俺はこっそりとブランシュ・ネージュの周囲にステータスウインドウの枠を表示して、立ち位置を移動させることに成功。
これにより、シャルロットの突撃と魔王の攻撃の位置を限定できた。
スキル準備完了だ。
殺戮魔王が俺の真下に来た瞬間、スキル発動。
俺は穴に埋まっていても手は動くから、真下、つまり魔王を指さす。
「スキル『レベル1固定』発動! 1000年の修行、お疲れさん。完全に無駄だったな」
「なにっ?!」
ブランシュ・ネージュ鋭角に進路を変え、シャルロットが身を低くした。
騎馬をかすめるようにして、殺戮魔王が直進する。
「なんだ?!」
レベル343の勢いで踏みだして途中でレベル1になったから、体の制御ができなくなり暴走。でも既に加速しきったから勢いは死なずに、風圧かなんかの都合で体が浮きあがった。
次の瞬間、入口側の壁の方で、パァンという音がして、小汚い染みになった。
「へっ。圧倒的な身体能力を逆手に取った自爆は、お前が教えてくれたやり方だぜ」
300年生きた魔王にしては、あっけない最後だった。
もう、肉片というレベルですらなく、赤い液体と気体になってしまった。
「アーサー。ありがとう。助かったぞ」
「お礼なら、ステータスウインドウの枠に気づいて移動したブランシュ・ネージュを褒めてやってくれ。俺がメルディ達にやっていたのを見て覚えていた」
「ああ。ブランシュ・ネージュもありがとう」
「ブルルルル……」
「アーサー。どうした? 早く降りてこい」
「いや、俺が穴から出たらここは崩落するんだ。シャルだけなら抱きしめて護ることができるけど、その他大勢が埋まってしまう。だから非難してくれないか? 俺は最後に出る」
「分かった」
「どこかに上に行く階段があるはず。屋敷から離れてニュルンにでも避難しておいてくれ」
「ああ。時間がかかると思う。待ってていてくれ」
「頼むよ。おしっこ漏れる前になんとかしてくれ」
「ふふ。急ぐつもりだが、漏らせ」
「えええ……」
「安心しろ。失禁したからといって、お前を嫌いはしない」
こうして、世界の危機は去った。
さいわいなことに俺がおしっこを漏らす前に、人々の避難は終わった。
獣人の子供はもちろん、穴にはめておいたゴロツキも解放した。
醜悪顔地底人やリザードマンなどの亜人も、人を襲わないという約束をして解放した。
いちおう、奴等も魔王の支配による犠牲者だ。魔王がいなくなった今、人類と共存できる可能性がないとはいえない。
さて。
最後にシャルロットが「避難完了した。地上で待ってる」と言ってから、そこそこ時間が経った。脱出するか。
「ダヴィンチの人体図!(※)」
※:正式名称、ウィトルウィウス的人体図。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた絵。全裸のおっさんが、円形の中で両手足を開いて大の字になっている。
俺は人体図っぽい可動域で腕を上下に振り、脚を開閉する。
ボコオッ……。
隙間ができて俺は落下した。
ゴゴ、ゴゴゴゴゴ……。
頭上からヤバい感じの音が聞こえる。崩落しそうだ。
俺は走って地上を目指す。階段をかけあがり、地上に出るが、それでも振動は収まらず周囲の地面が下がっていく。
巨大な穴に地面ごと飲まれつつある。
俺は走り――!
「アーサー! 急げ! 穴に呑みこまれるぞ」
「うおおおっ!」
「跳べ!」
シャルロットが穴の外で手を伸ばしてくれている。
俺は跳びつき、抱きあい。
一緒に地面を転がる。
シャルロットの頬が俺の頬に振れ、揺れる髪の毛が頬をくすぐり、胸の弾力が俺の胸に伝わり、俺は意識を失った。
…。
……。
…………はっ!
なんだ。
とても、嬉しくて気持ちいい気分が全身と全身を包んでいる。
まるで、長い幸せな夢を見ていたかのようだ。
目を開けると見慣れた天井。
ここは俺、アーサー・ザマーサレルクーズの自室だ。
当たり前のことだが、夢から覚めた直後の俺は俺は自室のベッドで寝ていた。
全部、夢か――。
そうだよな。
とんでもない美少女と知りあって仲良くなるなんて、そんな都合のいいことが起こるはずが――。
「ふふっ。ようやく目が覚めたか。私の、愛しのアーサー」
……!
甘い声がするから俺はそちらに首を向ける。
美少女がいた。
シャルロットだ!
なんか、肩が露出している。
夢じゃなかったのか!
というか、上半身、裸じゃないか?
急な緊張が全身をこわばらせてしまい、視線を動かせない。
俺は全裸な気がする。
それじゃあ、シャルロットも全裸?!
そ、そうだ思いだした。
やはりここは俺の部屋だ。
俺の親父が実は300年の前のなんとか魔王で、奴隷スキルで生き延びていて国を滅ぼそうと企んでいたんだ。
シャルロットが奴隷問題を調査していたことがきっかけで、俺たちは魔王の野望を知り、地下空洞の戦いで勝利した。
そして、地下空洞から出たらそこは、俺が追放されるまで暮らしていた屋敷からは少しだけ離れていた。おかげで屋敷は崩落しなかった。
多分、300年前、地下空洞を作ったときに直下堀りではなく、斜め掘りしていたのだろう。広い土地が必要になるが、真下に掘るより斜めに掘る方が、簡単で安全なのだ。
俺たちが無事だったことをサフィたちに魔法伝書鳩で伝えて、地下から解放した人たちは、野宿種族には野宿してもらい、屋根があるところで寝たい種族には屋敷の空き部屋や通路に滞在してもらうことにした。
俺とシャルロットはニュルンに行ってマルシャンディに頼んで可能な限りの食事を手配してもらった。
そうこうするうちに良い感じの時間になった。
サフィたちと合流するために村に戻ろうかとも思ったが、シャルロットが『ふたりきりになれる機会は、そんなにないかもしれないから……』と言い、えっと、つまり、その、俺たちは、俺の部屋でふたりきりになり、愛しあった。
男女の関係になった。
いや、なろうとした。
俺がシャルロットの柔肌に触れた瞬間、意識が飛んでいてて、今、目が覚めたところだ。
「私ばかり意識のないお前を愛していてるんだぞ。ほら。お前も私を愛してくれ」
「あ、ああ」
「ふふっ。また乳房に触れただけで意識を失ったりするなよ」
「あ、ああ。が、ばんがる。お、俺れだってだって、シャルルルの胸の柔ららっかさを、堪能し、しし――」
「緊張しすぎだ。馬鹿――」
シャルロットがもぞりと動いて顔を俺に近づけ――。
チュッ――。
<完>
◆ あとがき
ここで完結です。
よろしければ、感想やポイント評価お願い致します。
先のことを考えずん第一話を書いたと同時に投稿しましたが、なんとかなりました。
投稿の5分前まで書いていたときもありましたが、無事に終えてほっとしています。
良い感じ乗らすボスと、戦う理由を用意できたと思いましたが、どうだったでしょうか。
感想お待ちしています。
ギャラララランッ!
甲高い音とともにシャルロットが発光。両肩に重なるように、光の球体が出現。
スキル公転するふたつの綺羅星で作りだした、攻撃用の衛星上弦の月と防御用の衛星下弦の月だ。
さらに足下が輝き、何かしらの魔法アイテムによる効果だと思うが、ブランシュ・ネージュが出現する。
彼女の騎馬は青白い輝きに包まれている。
そして、シャルロットの右腕にはいつの間にか、突撃槍が装備されている。
素人の俺でも、槍から神聖な力を感じる。
……!
こ、これだ!
これならワンチャンいける!
だ、だが、シャルロットの輝きは、世界を覆い尽くすほどの殺戮魔王の闇の力に比べると、1本の蝋燭のように心許ない。
「閃光の名は今日まで! 明日からは殺戮魔王討滅の英雄を名乗らせてもらうぞ!」
突撃開始位置を探し求めて、ブランシュ・ネージュがゆっくりと歩く。
「無謀だシャル! 逃げろ!」
「くくくっ。リュミエールを名乗ったな。人間にしてはなかなか強い気を持っているようだ。300年前を思いだすぞ。くくくっ。ステータスオープン」
殺戮魔王の手元にステータスウインドウが出現した。
それをみて、魔法はにたりと笑う。
「ほう。シャルロット・リュミーエル。17歳という若さでレベル44まで鍛え上げたか。驚嘆に値するぞ。くくくっ」
「……む」
「私が貴様のステータスを開いたことが不思議か? 我にとってはこのようなこと、造作もない。くっくっくっ。脚を怪我していてステータスが大幅に下がっている。それで不利を補うために、騎馬特攻の一撃にかけようというのか? 無駄だ」
「無駄かどうか試すまで分からぬ。我が衣は慈愛の女神ラルムに祝福され、我が槍は戦神リュテに祝福されている。聖別されし馬衣は我が力と愛馬の力をひとつにする!」
魔王はシャルロットの言葉を適当に聞き流し、ステータスを見ながらニヤニヤ笑いを続ける。
「くっくっくっ。なんだ。貴様、見目は良いのに処女か? これは愉快。我が愚息アーサーに惚れているのか。男の尻を触ることで,軽く興奮する変態とは面白い。ほう。アーサーの尻は、女の尻と異なる弾力で、叩きがいがあったか」
くっ。やつのステータスウインドウはそんな情報まで読み取れるのか!
「よかろう。貴様は殺さず、我が妻としてやろう。新たな肉体となる子を産ませてやるぞ。好きなだけ我が尻を触らせてやろう。くっくっくっ。正気を失うようなおぞましき愛をたっぷり注いでやろう。愚息の死体と、我が愚息で、二穴を同時に攻めてやろう。けひひひひっ! 人垣が邪魔で突撃がしづらいか? さあ、絶望を与えてやろう。貴様の全力を見せてみよ」
くんっ!
魔王が右手の中指を上に向けた。
ただそれだけで突風が地底を走り、倒れていた人々を吹き飛ばし、魔王とシャルロットの間に一本の道を作った。
「さあ、これで貴様は騎馬による全力突撃ができるようになった。敗北の言い訳はできんぞ。ふはははっ! 貴様の股の中央も、こうして我が中指ひとつでくぱあっと開いてやる!」
パカラ、パカラ……。
ブランシュ・ネージュがゆっくりと歩調を緩めて移動をやめると、鼻先を魔王へ向けた。
騎馬を包む輝きが減り、わずかに落ち着く。
シン……。
一瞬、地下のよどんだ空気が張り詰める。
「行くぞ! 閃光の一番槍、受けてみよ!」
ドウッ!
閃光の速さでブランシュ・ネージュが駈けだす。
地下空間を一直線に引き裂く光だ。
そして、それを上回る速度で、闇の線が引かれる。
魔王は圧倒的な闇の力を周囲にまき散らし、疾駆するその軌跡の周辺が墨汁のようににじむ。
俺は天井にめりこんだまま動けない。
「シャル! ……ありがとう。楽勝だったな」
シャルロットが会話で殺戮魔王の意識をひいてくれていたおかげで、俺はこっそりとブランシュ・ネージュの周囲にステータスウインドウの枠を表示して、立ち位置を移動させることに成功。
これにより、シャルロットの突撃と魔王の攻撃の位置を限定できた。
スキル準備完了だ。
殺戮魔王が俺の真下に来た瞬間、スキル発動。
俺は穴に埋まっていても手は動くから、真下、つまり魔王を指さす。
「スキル『レベル1固定』発動! 1000年の修行、お疲れさん。完全に無駄だったな」
「なにっ?!」
ブランシュ・ネージュ鋭角に進路を変え、シャルロットが身を低くした。
騎馬をかすめるようにして、殺戮魔王が直進する。
「なんだ?!」
レベル343の勢いで踏みだして途中でレベル1になったから、体の制御ができなくなり暴走。でも既に加速しきったから勢いは死なずに、風圧かなんかの都合で体が浮きあがった。
次の瞬間、入口側の壁の方で、パァンという音がして、小汚い染みになった。
「へっ。圧倒的な身体能力を逆手に取った自爆は、お前が教えてくれたやり方だぜ」
300年生きた魔王にしては、あっけない最後だった。
もう、肉片というレベルですらなく、赤い液体と気体になってしまった。
「アーサー。ありがとう。助かったぞ」
「お礼なら、ステータスウインドウの枠に気づいて移動したブランシュ・ネージュを褒めてやってくれ。俺がメルディ達にやっていたのを見て覚えていた」
「ああ。ブランシュ・ネージュもありがとう」
「ブルルルル……」
「アーサー。どうした? 早く降りてこい」
「いや、俺が穴から出たらここは崩落するんだ。シャルだけなら抱きしめて護ることができるけど、その他大勢が埋まってしまう。だから非難してくれないか? 俺は最後に出る」
「分かった」
「どこかに上に行く階段があるはず。屋敷から離れてニュルンにでも避難しておいてくれ」
「ああ。時間がかかると思う。待ってていてくれ」
「頼むよ。おしっこ漏れる前になんとかしてくれ」
「ふふ。急ぐつもりだが、漏らせ」
「えええ……」
「安心しろ。失禁したからといって、お前を嫌いはしない」
こうして、世界の危機は去った。
さいわいなことに俺がおしっこを漏らす前に、人々の避難は終わった。
獣人の子供はもちろん、穴にはめておいたゴロツキも解放した。
醜悪顔地底人やリザードマンなどの亜人も、人を襲わないという約束をして解放した。
いちおう、奴等も魔王の支配による犠牲者だ。魔王がいなくなった今、人類と共存できる可能性がないとはいえない。
さて。
最後にシャルロットが「避難完了した。地上で待ってる」と言ってから、そこそこ時間が経った。脱出するか。
「ダヴィンチの人体図!(※)」
※:正式名称、ウィトルウィウス的人体図。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた絵。全裸のおっさんが、円形の中で両手足を開いて大の字になっている。
俺は人体図っぽい可動域で腕を上下に振り、脚を開閉する。
ボコオッ……。
隙間ができて俺は落下した。
ゴゴ、ゴゴゴゴゴ……。
頭上からヤバい感じの音が聞こえる。崩落しそうだ。
俺は走って地上を目指す。階段をかけあがり、地上に出るが、それでも振動は収まらず周囲の地面が下がっていく。
巨大な穴に地面ごと飲まれつつある。
俺は走り――!
「アーサー! 急げ! 穴に呑みこまれるぞ」
「うおおおっ!」
「跳べ!」
シャルロットが穴の外で手を伸ばしてくれている。
俺は跳びつき、抱きあい。
一緒に地面を転がる。
シャルロットの頬が俺の頬に振れ、揺れる髪の毛が頬をくすぐり、胸の弾力が俺の胸に伝わり、俺は意識を失った。
…。
……。
…………はっ!
なんだ。
とても、嬉しくて気持ちいい気分が全身と全身を包んでいる。
まるで、長い幸せな夢を見ていたかのようだ。
目を開けると見慣れた天井。
ここは俺、アーサー・ザマーサレルクーズの自室だ。
当たり前のことだが、夢から覚めた直後の俺は俺は自室のベッドで寝ていた。
全部、夢か――。
そうだよな。
とんでもない美少女と知りあって仲良くなるなんて、そんな都合のいいことが起こるはずが――。
「ふふっ。ようやく目が覚めたか。私の、愛しのアーサー」
……!
甘い声がするから俺はそちらに首を向ける。
美少女がいた。
シャルロットだ!
なんか、肩が露出している。
夢じゃなかったのか!
というか、上半身、裸じゃないか?
急な緊張が全身をこわばらせてしまい、視線を動かせない。
俺は全裸な気がする。
それじゃあ、シャルロットも全裸?!
そ、そうだ思いだした。
やはりここは俺の部屋だ。
俺の親父が実は300年の前のなんとか魔王で、奴隷スキルで生き延びていて国を滅ぼそうと企んでいたんだ。
シャルロットが奴隷問題を調査していたことがきっかけで、俺たちは魔王の野望を知り、地下空洞の戦いで勝利した。
そして、地下空洞から出たらそこは、俺が追放されるまで暮らしていた屋敷からは少しだけ離れていた。おかげで屋敷は崩落しなかった。
多分、300年前、地下空洞を作ったときに直下堀りではなく、斜め掘りしていたのだろう。広い土地が必要になるが、真下に掘るより斜めに掘る方が、簡単で安全なのだ。
俺たちが無事だったことをサフィたちに魔法伝書鳩で伝えて、地下から解放した人たちは、野宿種族には野宿してもらい、屋根があるところで寝たい種族には屋敷の空き部屋や通路に滞在してもらうことにした。
俺とシャルロットはニュルンに行ってマルシャンディに頼んで可能な限りの食事を手配してもらった。
そうこうするうちに良い感じの時間になった。
サフィたちと合流するために村に戻ろうかとも思ったが、シャルロットが『ふたりきりになれる機会は、そんなにないかもしれないから……』と言い、えっと、つまり、その、俺たちは、俺の部屋でふたりきりになり、愛しあった。
男女の関係になった。
いや、なろうとした。
俺がシャルロットの柔肌に触れた瞬間、意識が飛んでいてて、今、目が覚めたところだ。
「私ばかり意識のないお前を愛していてるんだぞ。ほら。お前も私を愛してくれ」
「あ、ああ」
「ふふっ。また乳房に触れただけで意識を失ったりするなよ」
「あ、ああ。が、ばんがる。お、俺れだってだって、シャルルルの胸の柔ららっかさを、堪能し、しし――」
「緊張しすぎだ。馬鹿――」
シャルロットがもぞりと動いて顔を俺に近づけ――。
チュッ――。
<完>
◆ あとがき
ここで完結です。
よろしければ、感想やポイント評価お願い致します。
先のことを考えずん第一話を書いたと同時に投稿しましたが、なんとかなりました。
投稿の5分前まで書いていたときもありましたが、無事に終えてほっとしています。
良い感じ乗らすボスと、戦う理由を用意できたと思いましたが、どうだったでしょうか。
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水曜日 メルクルディ
なんじゃないかな〜?と思いました
そうです。
最初はメルクルディにしていたんですけど、想定外の自己主張を始めてギャグ要員になっていったので、ちょっと名前を調整しました。
ふと気づくと、異世界に転生すると貴族になり、そんなのも束の間、家族から追放され、最期にざまぁをかましていくという流行りが詰め込まれた作品。
「今までこんな主人公は居た?」と思わず口に出してしまったキャラクターで、生い立ちやスキルも斬新です。
その斬新なスキルから「えっ、そんなのってあり!!?」という最強への成り方も驚きと納得感がありました。
また、ポツポツと出てくるフランス語にへぇ〜そんな意味だったんだと、ちょっとしたフランス語勉強になっています。
感想ありがとうございます。
自画自賛しますが、この設定の主人公はいなかったんじゃないかなあと思っています(多分…)。
(フランス語じゃなく単なる適当な言葉が混じっているなんて言えねえ……)