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【名有】不感症な受けは単なる開発不足でした♡
1話 嚙み合わない温度
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出会いは大学の時だった。
「好きだ」
友達の少ない自分に、友達の多い浅海がやたらと親しく交流してくれる事を珍しく思っていた矢先だった。
返事は今すぐにでなくてもいい、ただ考えて欲しい、とだけ言ってその日は去っていった。
ぽかんとして頭の処理が追い付かないまま、その場に立ち尽くしていた事を覚えている。
それからというもの、まだ返事もしていないのに頻繁に浅海は話しかけてくれていた。
告白はされたが、変わらず友達として接してくれる浅海に徐々に信頼感が生まれ、同性ではあるが付き合ってみてもいいかもしれないと思うようになり───了承の返事をしたのだった。
その時の嬉しそうな浅海の表情がとても印象に残っている。
こちらもつい嬉しくなって、返事をしてよかったと思えた。
もっと一緒にいる時間を増やしたい話し合った結果、社会人になったら同居する約束をした。
一緒に住み始め、距離が縮まっていくと少しずつ違和感、というか困惑することが芽生え始めた。
恋人って何をしていけばいいのだろう。
自分はずっと友達作りの時点で消極的で、積極的に取り組むといえば勉強ばかりだった。
答えの用意されたものを、その通りに解き、時に気付き、理解を深めていく事が楽しかったからだ。
人間関係に答えはない。
それぞれ思惑が違うのが当たり前だからだ。誰かにとっての正解は誰かの間違い。そんな事がありきたりにあって、いちいち気にしてたらきりがない程だ。
だから都合が合えば協力しあったり、遊べば良い。その位の意識でいたせいか、気づけばこの年齢まで恋人というのを意識した事もなかった。
いつかそういう時期になったら自然に出来て、自然にわかっていくと思っていた。
けれど今、そういう関係が出来たけれど何を、いつ、どうすればいいかわからない。
同居生活は幸せだった。浅海も変わらず良くしてくれているのはわかっている。
しかし日に日に、一方的に自分ばかり与えられていて何も浅海に返せてない気がしてきて、どこか心にわだかまりが溜まりつつあった。
そんなこちらの様子を察してか浅海の様子もどこかぎこちなくなっていっているような気がしてきた頃、それは起きた。
───ある日の夜。ふと身体に違和感を感じて目を覚ました。
目が覚めたといっても、目を開けずに意識だけ浮上しただけの状態から違和感の正体を探った。
すると自分が後ろから抱きしめられている事に気づいた。同じベッドにいるのは浅海しかいない。
しかし自分を抱きしめている相手が、浅海と思えない雰囲気があった。
耳元に寄せられたその吐息は荒々しく、抱きしめている手は自分の身体を寝巻きの上から緩やかにまさぐり続けていて、普段の温厚で優しい浅海の面影がなく、そのギャップに一瞬別人かと思うほどだった。
自身の身体をここまで接触され続けていることも初めてで、その行為は恐怖でしかなく戦慄が走った。
浅海は一体どうしてしまったのか。
普段なら了解も得ずにこんな事する人柄ではない。
混乱しつつも、寝たふりを続けながら様子をうかがっていると、態度こそ今まで見た事がなかった側面であるとはいえ浅海で間違いない。
その浅海の手は段々と大胆になっていき、ついには寝巻きの中にまで侵入してきた。
「っ……」
反射的に声が出そうになるのを堪える。
その手つきは伺いつつも、遠慮のなく肌を滑らせ、しかしそれでも優しく触れてくるそれに余計に混乱する。
「深鳥…」
突然うわ言のように名前を呼ばれ、身体が硬直する。起きているのがバレたのだろうか。そうだとしたら何故こんな事をするのか説明して欲しい気持ちと、早くこの行為を止めて欲しい気持ちがせめぎ合う。
そんなこちらの葛藤に気付く様子もなく、手はどんどんエスカレートして性急なものになっていく。
胸の突起を指先でこねくるように撫でられて、段々とそこに固さが表れ始めると浅海はより興奮した様子で夢中にそこを擦る。
こちらが感じ始めていると思われたのかもしれない。こちらからすると、そこが固くなり始めているのは刺激による生理反応でしかなく、寒さで固くなることと変わりがない体感だった。
臀部に固くて熱いものが押し付けられている事にも気づいた。
そこの凹凸を確かめるように、熱を孕んだそこでぐりぐりとなぞる様に押し付けている。
浅海が何をしたくてこんな事をしているのか、段々とわかってくると、余計に身体に緊張が走る。
こういう目的をもって、そういう関係になったハズなのに、いざ求められると身体が動かない。
浅海の興奮した吐息だけが頭の中にこだまして、浅海の手がついに下着に入り込もうとした瞬間───
「───やめろ!」
自分でも驚くほど瞬発的に、浅海の手を振り払い、押しのけて飛び起きた。
それまでされるがままで固まっていたというのに。
浅海にこんな強い拒絶をしたのは初めてで、こんな怒鳴るような声を出したのも人生で初めてだったかもしれない。
起き上がった矢先、目に入ってきたのは
───今にも泣き崩れそうな顔をしている浅海だった。
「好きだ」
友達の少ない自分に、友達の多い浅海がやたらと親しく交流してくれる事を珍しく思っていた矢先だった。
返事は今すぐにでなくてもいい、ただ考えて欲しい、とだけ言ってその日は去っていった。
ぽかんとして頭の処理が追い付かないまま、その場に立ち尽くしていた事を覚えている。
それからというもの、まだ返事もしていないのに頻繁に浅海は話しかけてくれていた。
告白はされたが、変わらず友達として接してくれる浅海に徐々に信頼感が生まれ、同性ではあるが付き合ってみてもいいかもしれないと思うようになり───了承の返事をしたのだった。
その時の嬉しそうな浅海の表情がとても印象に残っている。
こちらもつい嬉しくなって、返事をしてよかったと思えた。
もっと一緒にいる時間を増やしたい話し合った結果、社会人になったら同居する約束をした。
一緒に住み始め、距離が縮まっていくと少しずつ違和感、というか困惑することが芽生え始めた。
恋人って何をしていけばいいのだろう。
自分はずっと友達作りの時点で消極的で、積極的に取り組むといえば勉強ばかりだった。
答えの用意されたものを、その通りに解き、時に気付き、理解を深めていく事が楽しかったからだ。
人間関係に答えはない。
それぞれ思惑が違うのが当たり前だからだ。誰かにとっての正解は誰かの間違い。そんな事がありきたりにあって、いちいち気にしてたらきりがない程だ。
だから都合が合えば協力しあったり、遊べば良い。その位の意識でいたせいか、気づけばこの年齢まで恋人というのを意識した事もなかった。
いつかそういう時期になったら自然に出来て、自然にわかっていくと思っていた。
けれど今、そういう関係が出来たけれど何を、いつ、どうすればいいかわからない。
同居生活は幸せだった。浅海も変わらず良くしてくれているのはわかっている。
しかし日に日に、一方的に自分ばかり与えられていて何も浅海に返せてない気がしてきて、どこか心にわだかまりが溜まりつつあった。
そんなこちらの様子を察してか浅海の様子もどこかぎこちなくなっていっているような気がしてきた頃、それは起きた。
───ある日の夜。ふと身体に違和感を感じて目を覚ました。
目が覚めたといっても、目を開けずに意識だけ浮上しただけの状態から違和感の正体を探った。
すると自分が後ろから抱きしめられている事に気づいた。同じベッドにいるのは浅海しかいない。
しかし自分を抱きしめている相手が、浅海と思えない雰囲気があった。
耳元に寄せられたその吐息は荒々しく、抱きしめている手は自分の身体を寝巻きの上から緩やかにまさぐり続けていて、普段の温厚で優しい浅海の面影がなく、そのギャップに一瞬別人かと思うほどだった。
自身の身体をここまで接触され続けていることも初めてで、その行為は恐怖でしかなく戦慄が走った。
浅海は一体どうしてしまったのか。
普段なら了解も得ずにこんな事する人柄ではない。
混乱しつつも、寝たふりを続けながら様子をうかがっていると、態度こそ今まで見た事がなかった側面であるとはいえ浅海で間違いない。
その浅海の手は段々と大胆になっていき、ついには寝巻きの中にまで侵入してきた。
「っ……」
反射的に声が出そうになるのを堪える。
その手つきは伺いつつも、遠慮のなく肌を滑らせ、しかしそれでも優しく触れてくるそれに余計に混乱する。
「深鳥…」
突然うわ言のように名前を呼ばれ、身体が硬直する。起きているのがバレたのだろうか。そうだとしたら何故こんな事をするのか説明して欲しい気持ちと、早くこの行為を止めて欲しい気持ちがせめぎ合う。
そんなこちらの葛藤に気付く様子もなく、手はどんどんエスカレートして性急なものになっていく。
胸の突起を指先でこねくるように撫でられて、段々とそこに固さが表れ始めると浅海はより興奮した様子で夢中にそこを擦る。
こちらが感じ始めていると思われたのかもしれない。こちらからすると、そこが固くなり始めているのは刺激による生理反応でしかなく、寒さで固くなることと変わりがない体感だった。
臀部に固くて熱いものが押し付けられている事にも気づいた。
そこの凹凸を確かめるように、熱を孕んだそこでぐりぐりとなぞる様に押し付けている。
浅海が何をしたくてこんな事をしているのか、段々とわかってくると、余計に身体に緊張が走る。
こういう目的をもって、そういう関係になったハズなのに、いざ求められると身体が動かない。
浅海の興奮した吐息だけが頭の中にこだまして、浅海の手がついに下着に入り込もうとした瞬間───
「───やめろ!」
自分でも驚くほど瞬発的に、浅海の手を振り払い、押しのけて飛び起きた。
それまでされるがままで固まっていたというのに。
浅海にこんな強い拒絶をしたのは初めてで、こんな怒鳴るような声を出したのも人生で初めてだったかもしれない。
起き上がった矢先、目に入ってきたのは
───今にも泣き崩れそうな顔をしている浅海だった。
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