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【名有】不感症な受けは単なる開発不足でした♡
5話 触れ合う唇
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───そしてまた次の夜。
昨日は言葉通りにただ一緒に、恋人っぽく寝ただけだった。今日は、もうちょっと進むのかな、何をされるのか、期待と不安でソワソワして迎えた夜。
「あ、あの、これは……どうすればいいのかな」
「ん?大丈夫、今日も慣れるだけにしよう」
「これで慣れるって……な、何に……?」
「んー……こういう体位もある、し?」
夜になると、ベッドに座りながら「俺の膝においで」と言われ、そのままこうなっている。
浅海の膝に腰かけ、後ろから抱きしめられる形で、いま浅海はこちらの手を取って指の一本一本を愛し気になぞり、時折そこへ口づけを落とす。
「っ……!」
浅海の唇が指に触れる度、ぞくぞくと身体に駆けていくものがある。もしかしたら唇に慣れる訓練なのだろうか。
そういえば、キスさえも、まだだった。………今まで一緒にいた時間の大半を、本当に親友程度で過ごしてきてしまっている事にじわじわと後悔の念が押し寄せる。
………だからといって、どうすればいいのかわからず、切っ掛けもなく、そういう雰囲気に持ち込むのは本当に難しかった。どうしようもなかったのは事実だ。
「…ぅっ……ん……」
ただ手を触られているだけなのに、その触れる手のなぞり方は妙に官能的な気分を刺激される。
触感を確かめるだけの行為は、気持ちが妙に空回りしてしまうし、かといって何もせず、されるがままというのは何か持て余した気分になる。でもどこか心地の良くて、その相反した気持ちに整理がつかず、どこかいたたまれない。
「深鳥、今何考えてる?」
「……っ!」
手に神経を集中していたせいか、耳元から囁かれた言葉にビクリと肩を震わせてしまった。
「あ……ごめんね。でもいい兆候かも、手気持ちいい?」
「……ん……わかんない、けど、気持ちいい……のかな……」
「ふふ、いいね。そのまま触れる事に意識を集中していってみて」
「う……うん……」
耳元に掛かる浅海の息がとても擽ったい。浅海はそんなに大した事をしていないのに、ぞわぞわとした甘い痺れる感覚はどんどん増して、触れられる事に意識をいやでも集中させてしまう。
「だいぶ身体の緊張も解れてきたかな……どう?体勢変えてみようか」
その言葉にドキリとする。いよいよなのだろうか、と期待に胸が高鳴ってしまう。
何に?何を?
自分が何に期待し始めているのかわからないまま、促されるまま、今度は浅海と向き合う形で膝に座った。
妙に気恥ずかしくなって浅海の目を見れず、少しナナメ下に視線を落とす。昨日の夜も、なんだかんだ恥ずかしかったが、寝そべってた時より恥ずかしいかもしれない。
「ふふ……」
そんなこちらを察したのか、浅海は微笑をこぼし、猫のように頬に額を擦り寄せる。
「ん……浅海、くすぐったい……」
その仕草に、妙な緊張が解れたのか、こちらも少し笑みがこぼれる。浅海はまだ、何もしてこない。じゃれるように触れ合っているだけだ。じれったくもあるが、このただの触れ合いは幸せも感じてしまう。
「唇、触ってみていい?」
じゃれあいだけの行為から、急に性的な接触の交渉にドキリとする。
「う、うん…」
そろりと伺うような仕草から、そっと唇に浅海の指が触れる。指先でその感触を確かめるようになぞり、時折ふにふにとさせながら。
「………して、みる?」
「っ……」
ぶわ、と鼓動が高鳴り顔が熱くなる。
なにより、身体が欲し始めているのがわかる。あの襲われた夜とは違い、浅海ともっと接触したい欲求が確実に芽生え始めている。
気持ちが思い余って喉が詰まり、こくり、と首を縦に振るのがやっとだった。
ふわりと浅海が微笑んだのが空気で伝わった。
緊張しながらも、浅海の唇が触れてくるのを心待ちにしている自分がいる。浅海はこちらの顎に手を添えて、ゆっくりと顔を近づけてきた。
(あ……される)
そう直感すると心臓がバクバクと高鳴り始める。そしてついに唇が触れ合った。
「ん……」
ただ触れるだけの唇は温かくて柔らかい感触に満たされる。その感触を確かめるように、何度もついばむように唇を合わせていくと、次第に口づけが深くなっていく。
「ん……ふ……」
唇の隙間から吐息が漏れる。その息すらも飲み込むように浅海は唇を重ね、やがてどちらともなく舌を絡ませた。
「んっ……ちゅ、ぅ」
(あ……舌、入ってきた)
口内に侵入してきた舌に驚くも、すぐに受け入れるよう、ぎこちなく自分も舌を出す。すると舌先同士が触れ合い、ぬるりとした感触にぞくりと背中が震えた。
そのまま舌を絡めながら互いの唾液を交換し合うように深く口づけ、夢中になってお互いの唇に溺れていった。
「ん……ちゅ、ふ……っ」
舌先で上あごをなぞられると、擽ったいようなゾクゾクとした感覚に襲われる。それが気持ち良くてもっと味わいたくて、浅海の首に手を回しより深い口づけを求めた。
「は……んむ……」
(あ……気持ちいい)
互いに求め合うように舌を絡め合い、口内を貪るように激しい口づけを繰り返す。唇が離れると銀色の糸が引き、ぷつりと切れて落ちるのを互いに見つめ合って眺めていた。
昨日は言葉通りにただ一緒に、恋人っぽく寝ただけだった。今日は、もうちょっと進むのかな、何をされるのか、期待と不安でソワソワして迎えた夜。
「あ、あの、これは……どうすればいいのかな」
「ん?大丈夫、今日も慣れるだけにしよう」
「これで慣れるって……な、何に……?」
「んー……こういう体位もある、し?」
夜になると、ベッドに座りながら「俺の膝においで」と言われ、そのままこうなっている。
浅海の膝に腰かけ、後ろから抱きしめられる形で、いま浅海はこちらの手を取って指の一本一本を愛し気になぞり、時折そこへ口づけを落とす。
「っ……!」
浅海の唇が指に触れる度、ぞくぞくと身体に駆けていくものがある。もしかしたら唇に慣れる訓練なのだろうか。
そういえば、キスさえも、まだだった。………今まで一緒にいた時間の大半を、本当に親友程度で過ごしてきてしまっている事にじわじわと後悔の念が押し寄せる。
………だからといって、どうすればいいのかわからず、切っ掛けもなく、そういう雰囲気に持ち込むのは本当に難しかった。どうしようもなかったのは事実だ。
「…ぅっ……ん……」
ただ手を触られているだけなのに、その触れる手のなぞり方は妙に官能的な気分を刺激される。
触感を確かめるだけの行為は、気持ちが妙に空回りしてしまうし、かといって何もせず、されるがままというのは何か持て余した気分になる。でもどこか心地の良くて、その相反した気持ちに整理がつかず、どこかいたたまれない。
「深鳥、今何考えてる?」
「……っ!」
手に神経を集中していたせいか、耳元から囁かれた言葉にビクリと肩を震わせてしまった。
「あ……ごめんね。でもいい兆候かも、手気持ちいい?」
「……ん……わかんない、けど、気持ちいい……のかな……」
「ふふ、いいね。そのまま触れる事に意識を集中していってみて」
「う……うん……」
耳元に掛かる浅海の息がとても擽ったい。浅海はそんなに大した事をしていないのに、ぞわぞわとした甘い痺れる感覚はどんどん増して、触れられる事に意識をいやでも集中させてしまう。
「だいぶ身体の緊張も解れてきたかな……どう?体勢変えてみようか」
その言葉にドキリとする。いよいよなのだろうか、と期待に胸が高鳴ってしまう。
何に?何を?
自分が何に期待し始めているのかわからないまま、促されるまま、今度は浅海と向き合う形で膝に座った。
妙に気恥ずかしくなって浅海の目を見れず、少しナナメ下に視線を落とす。昨日の夜も、なんだかんだ恥ずかしかったが、寝そべってた時より恥ずかしいかもしれない。
「ふふ……」
そんなこちらを察したのか、浅海は微笑をこぼし、猫のように頬に額を擦り寄せる。
「ん……浅海、くすぐったい……」
その仕草に、妙な緊張が解れたのか、こちらも少し笑みがこぼれる。浅海はまだ、何もしてこない。じゃれるように触れ合っているだけだ。じれったくもあるが、このただの触れ合いは幸せも感じてしまう。
「唇、触ってみていい?」
じゃれあいだけの行為から、急に性的な接触の交渉にドキリとする。
「う、うん…」
そろりと伺うような仕草から、そっと唇に浅海の指が触れる。指先でその感触を確かめるようになぞり、時折ふにふにとさせながら。
「………して、みる?」
「っ……」
ぶわ、と鼓動が高鳴り顔が熱くなる。
なにより、身体が欲し始めているのがわかる。あの襲われた夜とは違い、浅海ともっと接触したい欲求が確実に芽生え始めている。
気持ちが思い余って喉が詰まり、こくり、と首を縦に振るのがやっとだった。
ふわりと浅海が微笑んだのが空気で伝わった。
緊張しながらも、浅海の唇が触れてくるのを心待ちにしている自分がいる。浅海はこちらの顎に手を添えて、ゆっくりと顔を近づけてきた。
(あ……される)
そう直感すると心臓がバクバクと高鳴り始める。そしてついに唇が触れ合った。
「ん……」
ただ触れるだけの唇は温かくて柔らかい感触に満たされる。その感触を確かめるように、何度もついばむように唇を合わせていくと、次第に口づけが深くなっていく。
「ん……ふ……」
唇の隙間から吐息が漏れる。その息すらも飲み込むように浅海は唇を重ね、やがてどちらともなく舌を絡ませた。
「んっ……ちゅ、ぅ」
(あ……舌、入ってきた)
口内に侵入してきた舌に驚くも、すぐに受け入れるよう、ぎこちなく自分も舌を出す。すると舌先同士が触れ合い、ぬるりとした感触にぞくりと背中が震えた。
そのまま舌を絡めながら互いの唾液を交換し合うように深く口づけ、夢中になってお互いの唇に溺れていった。
「ん……ちゅ、ふ……っ」
舌先で上あごをなぞられると、擽ったいようなゾクゾクとした感覚に襲われる。それが気持ち良くてもっと味わいたくて、浅海の首に手を回しより深い口づけを求めた。
「は……んむ……」
(あ……気持ちいい)
互いに求め合うように舌を絡め合い、口内を貪るように激しい口づけを繰り返す。唇が離れると銀色の糸が引き、ぷつりと切れて落ちるのを互いに見つめ合って眺めていた。
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