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【オメガバース】α嫌いのΩとオメガ嫌いのαが番になった話
4話 正体【攻め視点】
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もう少し早く気づいていれば
そう思いながらもどこか
これは───"チャンスではないか"
そんな相反した気持ちを川上の家まで急ぎながら感じていた。
───川上のマンションに到着する。勿論、合鍵など持つ仲ではない。
大家に身分証明を示し、事情を説明して合鍵を貰う。
同行と救急車を呼ぶかどうかを聞かれたが、本人がとてもプライドが高く、万が一なにかあればすぐにこちらから連絡する事を伝え、貰った鍵で川上の部屋へと急ぐ。
鍵を開けて部屋に入ると、むせ返るような甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「……っ」
───間違いない、この香りは知っている。
そう、嫌になるほど、この香りを覚えさせられたのだから。
"今の俺にすら"強烈に感じるほど、酷い状況なのだと理解する。
カチャリとオートロックがしっかりと掛かったのを確認すると部屋の様子を確認する。
大家を連れてこなくて正解だった。少し怪しい素振りだったかもしれないが、同僚が前もって大家に連絡していてくれたお陰で信用してくれたみたいだ。
この部屋の主は間違いなくいるハズなのに、人が生活している素振りがない。
そう。時間帯は昼なのに、カーテンは閉められていて薄暗く、部屋の様子がよく見えない。
耳を澄ませると、奥から吐息が微かに聞こえる。
静かに、そろりそろりと歩みを進めると、何かしら足にぶつかった。まるで泥棒に荒された後の様で、少しばかり最悪の想定が過る。
そうでない事を祈りながら、固唾を飲みこみ、念のため周囲を警戒しながら歩みを進めた。
寝室であろう部屋に辿り着くと、吐息の音がはっきりと聞こえる。苦しんでいるようにも聞こえる。ゆっくりと慎重にそのドアノブを握り、静かにその扉を開いていく。
カーテンに遮られながらも、漏れ出る光がぼんやりとその輪郭を映し出す。
その輪郭は、弱弱しく、震え、藻掻き、自身の衣服を引き裂きながら、己の毒に悶えていた。
「……っ、はぁっ……はあっ……」
息を切らせつつ、部屋に入ると、そこには
「……ぅ……っ、……っ」
ベッドの上で苦しげに喘ぎ声を上げている川上の姿があった。
「……っ、おい……っ大丈夫か……っ」
「……ッ……!!」
俺の声に反応したのか、ビクリと身体が跳ね上がる。
そして、怯えた表情を浮かべ、必死に威嚇するように睨みつけてきた。
「……っ……!……っ」
「落ち着け……俺だ……っ」
「……くッ……るなっ」
川上のその様子は実に悩ましく、必死に気を紛らわせようとベットのシーツ、自分の衣服を引き裂き、その肢体がその隙間から見えている。
まるで誘っているかのような姿でありながら、辛うじて残っている理性では必死に拒絶を示している。
「………お前、オメガだったんだな」
「───ッッ……オレ、はもう、薬が……効かない。近づくとベータであっても……!」
そう、オメガのヒートは最悪ベータすら狂わせる。それほどオメガのヒートによるフェロモンは強い。だから薬が効かなくなれば、もはや隔離以上の事は出来ない。
こうなった場合はオメガヒート用の特殊部隊へ通報する。ベータで構成され、フェロモンを遮断する特殊な防護服を着込んだ者たちによって的確に回収される。
川上が悶える周りを目を凝らして見ると、服用していただろう薬の残骸が見て取れる。
ヒートが抑えられなくなったオメガは隔離施設に送られ、その後どうなるのかは語られない。しかし俺は知っていた。アルファを安定して排出してきた名家だからこそ。
川上の懇願を無視し、俺は一歩一歩、近づいていく。
「やめろっ!来るなって……言っているだろ!」
「俺なら、なんとか出来るかもしれん」
「……頼むから……来るな……っ!」
「俺なら、お前の苦しみを取り除いてやる事が出来る」
「ッ!何を根拠にそんなこと!」
「………だって」
川上を押し倒し、ベットに縫い付けてると耳元で囁いた。
「俺はアルファだから」
それを聞いた川上の瞳孔が開いていくのを見て、俺は口の端を釣り上げた。
そう思いながらもどこか
これは───"チャンスではないか"
そんな相反した気持ちを川上の家まで急ぎながら感じていた。
───川上のマンションに到着する。勿論、合鍵など持つ仲ではない。
大家に身分証明を示し、事情を説明して合鍵を貰う。
同行と救急車を呼ぶかどうかを聞かれたが、本人がとてもプライドが高く、万が一なにかあればすぐにこちらから連絡する事を伝え、貰った鍵で川上の部屋へと急ぐ。
鍵を開けて部屋に入ると、むせ返るような甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「……っ」
───間違いない、この香りは知っている。
そう、嫌になるほど、この香りを覚えさせられたのだから。
"今の俺にすら"強烈に感じるほど、酷い状況なのだと理解する。
カチャリとオートロックがしっかりと掛かったのを確認すると部屋の様子を確認する。
大家を連れてこなくて正解だった。少し怪しい素振りだったかもしれないが、同僚が前もって大家に連絡していてくれたお陰で信用してくれたみたいだ。
この部屋の主は間違いなくいるハズなのに、人が生活している素振りがない。
そう。時間帯は昼なのに、カーテンは閉められていて薄暗く、部屋の様子がよく見えない。
耳を澄ませると、奥から吐息が微かに聞こえる。
静かに、そろりそろりと歩みを進めると、何かしら足にぶつかった。まるで泥棒に荒された後の様で、少しばかり最悪の想定が過る。
そうでない事を祈りながら、固唾を飲みこみ、念のため周囲を警戒しながら歩みを進めた。
寝室であろう部屋に辿り着くと、吐息の音がはっきりと聞こえる。苦しんでいるようにも聞こえる。ゆっくりと慎重にそのドアノブを握り、静かにその扉を開いていく。
カーテンに遮られながらも、漏れ出る光がぼんやりとその輪郭を映し出す。
その輪郭は、弱弱しく、震え、藻掻き、自身の衣服を引き裂きながら、己の毒に悶えていた。
「……っ、はぁっ……はあっ……」
息を切らせつつ、部屋に入ると、そこには
「……ぅ……っ、……っ」
ベッドの上で苦しげに喘ぎ声を上げている川上の姿があった。
「……っ、おい……っ大丈夫か……っ」
「……ッ……!!」
俺の声に反応したのか、ビクリと身体が跳ね上がる。
そして、怯えた表情を浮かべ、必死に威嚇するように睨みつけてきた。
「……っ……!……っ」
「落ち着け……俺だ……っ」
「……くッ……るなっ」
川上のその様子は実に悩ましく、必死に気を紛らわせようとベットのシーツ、自分の衣服を引き裂き、その肢体がその隙間から見えている。
まるで誘っているかのような姿でありながら、辛うじて残っている理性では必死に拒絶を示している。
「………お前、オメガだったんだな」
「───ッッ……オレ、はもう、薬が……効かない。近づくとベータであっても……!」
そう、オメガのヒートは最悪ベータすら狂わせる。それほどオメガのヒートによるフェロモンは強い。だから薬が効かなくなれば、もはや隔離以上の事は出来ない。
こうなった場合はオメガヒート用の特殊部隊へ通報する。ベータで構成され、フェロモンを遮断する特殊な防護服を着込んだ者たちによって的確に回収される。
川上が悶える周りを目を凝らして見ると、服用していただろう薬の残骸が見て取れる。
ヒートが抑えられなくなったオメガは隔離施設に送られ、その後どうなるのかは語られない。しかし俺は知っていた。アルファを安定して排出してきた名家だからこそ。
川上の懇願を無視し、俺は一歩一歩、近づいていく。
「やめろっ!来るなって……言っているだろ!」
「俺なら、なんとか出来るかもしれん」
「……頼むから……来るな……っ!」
「俺なら、お前の苦しみを取り除いてやる事が出来る」
「ッ!何を根拠にそんなこと!」
「………だって」
川上を押し倒し、ベットに縫い付けてると耳元で囁いた。
「俺はアルファだから」
それを聞いた川上の瞳孔が開いていくのを見て、俺は口の端を釣り上げた。
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