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【オメガバース】α嫌いのΩとオメガ嫌いのαが番になった話
6話 閑話①【受け視点】
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「過労ですね。脱水も見られているので、少し危険な状態かもしれない。30分ほど点滴していきましょう」
医師にそう告げられ、カーテンでベットごとに遮られた大部屋へ案内される。
ヒートがやっと落ち着き、源に促される形で、渋々と病院に行くために外に出ると予想以上のふらつきと足元のおぼつかなさに襲われた。
情けないながらも、源に支えられる形で近場の病院に行くと、思っていた以上に危ない状態だったようだ。
「まあ、そりゃ二晩ロクに飲み食いもできずに寝たきりしてりゃそうなるよな」
「……誰かさんに無体を強いられたしな」
点滴処置が施されて落ちる点滴を見ながら聞かされる源の正論に、なんとなく悔しさに見舞われ、ふてくされた態度で返す。
「おいおい、俺は命の恩人サマだぜ?なにより過労も認められちゃ自己管理がなってませんなあ?」
ぐうの音も出ず源をにらみつけると、物ともせずへらへらしているのが余計に腹立たしい。
「ま、命には別状なくてよかったよ」
「っ!………」
先ほどまでのへらへらとしていた態度を一変させて、耳元で優しい囁きを告げる。
そのギャップに腹を立てていた気持ちが吹っ飛び、一気にバツが悪くなって顔をそらした。すると顔を耳元に近づけたまま、源は声をひそめ続ける。
「あとは念のため、抑制剤貰ってた病院にも診てもらうぞ。俺にはヒートを起こすんだから、ピルとか必要なものもあるだろ」
「……うん」
今さらながら、本当に番になってしまったんだなと痛感してしまう。
ゆうべまでの事はヒートのせいもあって夢のようで、現実感がなかった。
「………なんだか気持ち悪い」
「ん、コールするか?」
「いや、お前が」
「ええ~……俺恩人なのに蔑まされてる」
できるだけ他に聞こえないよう小声で会話を続け、点滴が終わるまでの退屈を紛らわす。
「だっておかしいだろ……オメガなんて今の時代、厄介者でしかない」
「仮にも保護されてる対象なんだから手段は選ばずに生きるべきだぜ?」
「………なあ、教えてくれないか」
「ん?」
「………隔離施設送りのオメガはどうなるのかお前は知っているのか」
源が息をのむのを感じた。言いにくいのはわかる。
こちらも本心では、知りたくない。しかし、自分がこうなった以上、知らずにはいられなかった。
「………アルファはオメガ居ずには成立しない。そして俺の家は安定してアルファを輩出している。出生数が1割以下のアルファが、だ。他にも名門アルファ家で、安定して続いている所は多い。………もっと聞くか?」
「………いや、すまない。聞いておいて、なんだが。今はそれだけで十分だ」
「………それがいい。身体に障るだろう」
オメガという体質がわかった時、自分を、運命を呪った。他人に悟られてはいけないと必死に走り続けてきた。オメガは平均能力が低く、どうしても普通の努力では社会に受け入れられるものではない。補助があろうと、アルファどころかベータにはどうしても劣ってしまう。
"普通を装う"だけで倍以上の努力を強いられた。
オメガの顛末を恐れたからだ。それは明確に目にしたものではないが、想像はできた。
そしてその想像が、第三者によって明確なものとして匂わせられるだけで、血の気が引いてしまった。
「お前はベータを自称していたが、それは兄弟へのコンプレックスだったのか?」
「…………」
「すまない、無理に聞くつもりはない」
「いや、いい。そうだな、それもあるんだが、幼心にオメガに苦手意識が芽生えてな」
「…………」
「すまん、この話はさっきの話と同じになる。忘れてくれ」
「………いや……だけど」
「どうした?」
「なら、どうしてオレを助けてくれたんだ?」
「へっ!?」
話を聞いていて、浮かんだ疑問を口にすると源は素っ頓狂な声を上げ、寄せていた身を咄嗟に引いた。
「………あ、いや、その。オメガが苦手なのに、なんで……」
予想していなかった反応に、こちらも動揺する。昨日までの事は殆どうろ覚えだが、たしか”源の開発している薬への協力”だったはずだ。しかし、源が自分すら気づかない程ベータを装えるほど、オメガが苦手であるなら、釣り合うべきものなのだろうかと感じた。
「……そりゃ、その、なんだ。同僚だし!?お前はがいなきゃ仕事張り合いないっていうか───」
源が目を泳がせて、しどろもどろに答えている途中。点滴の確認に来た看護師が「失礼します」と言ってカーテンを開けて入ってきた。
こちらの空気に構い無しに点滴を確認すると、こちらの体調を簡単に確認する。
「はい、これで終わりになります。それではもし体調変化があったら、いつでも仰ってください。お大事に」
そのまま会計まで、妙な空気感は抜けないまま病院を後にした。
医師にそう告げられ、カーテンでベットごとに遮られた大部屋へ案内される。
ヒートがやっと落ち着き、源に促される形で、渋々と病院に行くために外に出ると予想以上のふらつきと足元のおぼつかなさに襲われた。
情けないながらも、源に支えられる形で近場の病院に行くと、思っていた以上に危ない状態だったようだ。
「まあ、そりゃ二晩ロクに飲み食いもできずに寝たきりしてりゃそうなるよな」
「……誰かさんに無体を強いられたしな」
点滴処置が施されて落ちる点滴を見ながら聞かされる源の正論に、なんとなく悔しさに見舞われ、ふてくされた態度で返す。
「おいおい、俺は命の恩人サマだぜ?なにより過労も認められちゃ自己管理がなってませんなあ?」
ぐうの音も出ず源をにらみつけると、物ともせずへらへらしているのが余計に腹立たしい。
「ま、命には別状なくてよかったよ」
「っ!………」
先ほどまでのへらへらとしていた態度を一変させて、耳元で優しい囁きを告げる。
そのギャップに腹を立てていた気持ちが吹っ飛び、一気にバツが悪くなって顔をそらした。すると顔を耳元に近づけたまま、源は声をひそめ続ける。
「あとは念のため、抑制剤貰ってた病院にも診てもらうぞ。俺にはヒートを起こすんだから、ピルとか必要なものもあるだろ」
「……うん」
今さらながら、本当に番になってしまったんだなと痛感してしまう。
ゆうべまでの事はヒートのせいもあって夢のようで、現実感がなかった。
「………なんだか気持ち悪い」
「ん、コールするか?」
「いや、お前が」
「ええ~……俺恩人なのに蔑まされてる」
できるだけ他に聞こえないよう小声で会話を続け、点滴が終わるまでの退屈を紛らわす。
「だっておかしいだろ……オメガなんて今の時代、厄介者でしかない」
「仮にも保護されてる対象なんだから手段は選ばずに生きるべきだぜ?」
「………なあ、教えてくれないか」
「ん?」
「………隔離施設送りのオメガはどうなるのかお前は知っているのか」
源が息をのむのを感じた。言いにくいのはわかる。
こちらも本心では、知りたくない。しかし、自分がこうなった以上、知らずにはいられなかった。
「………アルファはオメガ居ずには成立しない。そして俺の家は安定してアルファを輩出している。出生数が1割以下のアルファが、だ。他にも名門アルファ家で、安定して続いている所は多い。………もっと聞くか?」
「………いや、すまない。聞いておいて、なんだが。今はそれだけで十分だ」
「………それがいい。身体に障るだろう」
オメガという体質がわかった時、自分を、運命を呪った。他人に悟られてはいけないと必死に走り続けてきた。オメガは平均能力が低く、どうしても普通の努力では社会に受け入れられるものではない。補助があろうと、アルファどころかベータにはどうしても劣ってしまう。
"普通を装う"だけで倍以上の努力を強いられた。
オメガの顛末を恐れたからだ。それは明確に目にしたものではないが、想像はできた。
そしてその想像が、第三者によって明確なものとして匂わせられるだけで、血の気が引いてしまった。
「お前はベータを自称していたが、それは兄弟へのコンプレックスだったのか?」
「…………」
「すまない、無理に聞くつもりはない」
「いや、いい。そうだな、それもあるんだが、幼心にオメガに苦手意識が芽生えてな」
「…………」
「すまん、この話はさっきの話と同じになる。忘れてくれ」
「………いや……だけど」
「どうした?」
「なら、どうしてオレを助けてくれたんだ?」
「へっ!?」
話を聞いていて、浮かんだ疑問を口にすると源は素っ頓狂な声を上げ、寄せていた身を咄嗟に引いた。
「………あ、いや、その。オメガが苦手なのに、なんで……」
予想していなかった反応に、こちらも動揺する。昨日までの事は殆どうろ覚えだが、たしか”源の開発している薬への協力”だったはずだ。しかし、源が自分すら気づかない程ベータを装えるほど、オメガが苦手であるなら、釣り合うべきものなのだろうかと感じた。
「……そりゃ、その、なんだ。同僚だし!?お前はがいなきゃ仕事張り合いないっていうか───」
源が目を泳がせて、しどろもどろに答えている途中。点滴の確認に来た看護師が「失礼します」と言ってカーテンを開けて入ってきた。
こちらの空気に構い無しに点滴を確認すると、こちらの体調を簡単に確認する。
「はい、これで終わりになります。それではもし体調変化があったら、いつでも仰ってください。お大事に」
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