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1 突然の誘拐
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何気ない、いつも通りの朝だった。
俺はアラーム音を鳴らし続けるスマホに手を伸ばし、慣れた手つきでスヌーズボタンを押した。
その瞬間、寝室の扉が勢いよく開き、怒った顔の娘が顔を出す。
「パパ、二度寝しちゃだめ!今日は朝早いんでしょ!」
俺はハッとして目を開く。
そうだ、今日は朝からアポが入っていたんだった。
温かな布団のぬくもりに名残惜しさを感じながら、ゆっくりと起き上がる。
時刻は朝6時。
普段ならあと1時間は寝ていられるのに。
「起こしてくれてありがとう。二度寝してたら遅刻してたよ。」
立ち上がった俺を見て、ふっと娘が笑う。
「早く朝ごはん食べよう!ママが怒るよ。」
振り向いた後ろ姿は、妻によく似ている。
もう高校2年生。
いつの間にこんなに大きくなったのだろう。
微笑ましい気持ちになりつつ、大きなあくびを一つして、俺は娘のあとを追った。
※
「おはよう!早くごはん済ませちゃって。」
忙しない妻の声。
俺はもう一つあくびをして、小さくうなづいた。
「また夜ふかししたの?」
娘が呆れた声を漏らした。
言い訳のしようがない。
ううん、と言葉を濁して誤魔化す。
漫画好きな俺は、昨日の深夜に面白そうな漫画を見つけ、つい最後まで一気読みしてしまったのだ。
とはいえ、感想は散々たるものだったが。
後ろめたさを隠すため、並べられた朝食に箸をつける。
白ごはんに納豆、卵焼き、ウインナー、たくあんに豆腐とワカメの味噌汁。
日本人の朝は、やはりこうでなくては。
パン派の娘がかじっている食パンを眺めながら、一口、また一口と食べ進めていく。
結婚前は朝食をとる習慣がなかったが、今となっては朝しっかり食べないと昼まで持たない。
ずいぶんと健康的な生活になったのは、結婚したからというのはもちろん、娘が生まれたからでもある。
ただし、どうしても夜ふかしだけはやめられなかった。
翌日に響くとわかっていても、仕事終わりにゆったりと楽しむ漫画は格別なのだ。
「そろそろ出なくちゃ。」
時計にチラリとめをやって、娘が呟く。
三分の一ほど残ったカフェオレを一気に飲み干しながら立ち上がり、
「パパも!仕事に遅れちゃうよ!」
と厳しい声を飛ばす。
確かに、そろそろ家を出ないと間に合わない。
慌てて残りのごはんをかっこむと、水で流し込んで「ごちそうさま!」と妻に声をかけた。
はいはい、と気のない返事をしながら、妻は弁当箱に蓋をしている。
どうやら、あちらの準備も万端らしい。
リビングに置いていた鞄を手に取り、荷物の確認をしていると、
「いってきます!」
と娘の元気な声が聞こえた。
俺も慌てて後を追い、「駅までいっしょに行こう!」と娘の背中に呼びかける。
この部屋はマンションの六階。
娘が先にエレベーターに乗って出かけてしまうと、一階まで降りたエレベーターを待つ羽目になってしまう。
オンボロのエレベーターは動きが遅く、そうなると本格的に遅刻の可能性が出てきてしまう。
「早くしてよ!」
娘の急かす声とともに、チン!とエレベーターの到着を告げる音が聞こえた。
急いで玄関のドアを開けると、娘はすでにエレベーターに乗っていて、開くボタンを押しながら俺のことを待っている。
小走りでエレベーターに向かう俺を、妻が「お弁当!忘れてる!」と叫んで追いかけてきた。
しまった!と振り向いたその瞬間、背後から強い光を感じた。
「何だ?」
驚いてふりかえると、エレベーターの床に光る模様が浮かび上がっている。
幾何学的な模様は細かく、そして美しい。
模様の中心には、驚きと恐怖の表情をした娘が立っている。
どこかで見たような光景に、とてつもない嫌な予感がした。
とっさに娘に向かって手を伸ばしながら、エレベーターに駆け出した。
息を呑むような妻の小さな悲鳴が、嫌に耳に響いた。
「何これっ!パパ…!」
不安そうに娘もこちらへ駆け出そうとしたそのとき、娘の身体が光に包まれ、消え始めた。
一層眩い光に、思わず一瞬目を閉じた。
そして次に目を開けたときには、あの強い光も、娘の姿でさえ消えてしまっていた。
信じられない気持ちで妻を見ると、彼女もまた口をぽかんとあけて呆けていた。
どれくらいぼうっとしていただろう。
おそらく数秒のことだっただろうが、ハッとして俺は娘のスマホに電話をかけた。
とにかく、無事を確認しなくては…!
しかしいくら待ってもコールが鳴り響くばかりで、娘につながらない。
とまったままのエレベーターの中にはもちろん、一階のエントランスや非常階段、駅までの道もくまなく探したが、娘の姿は見つからない。
まさか、まさか!
戸惑いながらも、ある一つの言葉が脳裏に浮かび上がっていた。
異世界転移。
ありふれた漫画の設定だ。
それがまさか娘の身に降りかかるだなんて、信じられるはずがない。
俺はアラーム音を鳴らし続けるスマホに手を伸ばし、慣れた手つきでスヌーズボタンを押した。
その瞬間、寝室の扉が勢いよく開き、怒った顔の娘が顔を出す。
「パパ、二度寝しちゃだめ!今日は朝早いんでしょ!」
俺はハッとして目を開く。
そうだ、今日は朝からアポが入っていたんだった。
温かな布団のぬくもりに名残惜しさを感じながら、ゆっくりと起き上がる。
時刻は朝6時。
普段ならあと1時間は寝ていられるのに。
「起こしてくれてありがとう。二度寝してたら遅刻してたよ。」
立ち上がった俺を見て、ふっと娘が笑う。
「早く朝ごはん食べよう!ママが怒るよ。」
振り向いた後ろ姿は、妻によく似ている。
もう高校2年生。
いつの間にこんなに大きくなったのだろう。
微笑ましい気持ちになりつつ、大きなあくびを一つして、俺は娘のあとを追った。
※
「おはよう!早くごはん済ませちゃって。」
忙しない妻の声。
俺はもう一つあくびをして、小さくうなづいた。
「また夜ふかししたの?」
娘が呆れた声を漏らした。
言い訳のしようがない。
ううん、と言葉を濁して誤魔化す。
漫画好きな俺は、昨日の深夜に面白そうな漫画を見つけ、つい最後まで一気読みしてしまったのだ。
とはいえ、感想は散々たるものだったが。
後ろめたさを隠すため、並べられた朝食に箸をつける。
白ごはんに納豆、卵焼き、ウインナー、たくあんに豆腐とワカメの味噌汁。
日本人の朝は、やはりこうでなくては。
パン派の娘がかじっている食パンを眺めながら、一口、また一口と食べ進めていく。
結婚前は朝食をとる習慣がなかったが、今となっては朝しっかり食べないと昼まで持たない。
ずいぶんと健康的な生活になったのは、結婚したからというのはもちろん、娘が生まれたからでもある。
ただし、どうしても夜ふかしだけはやめられなかった。
翌日に響くとわかっていても、仕事終わりにゆったりと楽しむ漫画は格別なのだ。
「そろそろ出なくちゃ。」
時計にチラリとめをやって、娘が呟く。
三分の一ほど残ったカフェオレを一気に飲み干しながら立ち上がり、
「パパも!仕事に遅れちゃうよ!」
と厳しい声を飛ばす。
確かに、そろそろ家を出ないと間に合わない。
慌てて残りのごはんをかっこむと、水で流し込んで「ごちそうさま!」と妻に声をかけた。
はいはい、と気のない返事をしながら、妻は弁当箱に蓋をしている。
どうやら、あちらの準備も万端らしい。
リビングに置いていた鞄を手に取り、荷物の確認をしていると、
「いってきます!」
と娘の元気な声が聞こえた。
俺も慌てて後を追い、「駅までいっしょに行こう!」と娘の背中に呼びかける。
この部屋はマンションの六階。
娘が先にエレベーターに乗って出かけてしまうと、一階まで降りたエレベーターを待つ羽目になってしまう。
オンボロのエレベーターは動きが遅く、そうなると本格的に遅刻の可能性が出てきてしまう。
「早くしてよ!」
娘の急かす声とともに、チン!とエレベーターの到着を告げる音が聞こえた。
急いで玄関のドアを開けると、娘はすでにエレベーターに乗っていて、開くボタンを押しながら俺のことを待っている。
小走りでエレベーターに向かう俺を、妻が「お弁当!忘れてる!」と叫んで追いかけてきた。
しまった!と振り向いたその瞬間、背後から強い光を感じた。
「何だ?」
驚いてふりかえると、エレベーターの床に光る模様が浮かび上がっている。
幾何学的な模様は細かく、そして美しい。
模様の中心には、驚きと恐怖の表情をした娘が立っている。
どこかで見たような光景に、とてつもない嫌な予感がした。
とっさに娘に向かって手を伸ばしながら、エレベーターに駆け出した。
息を呑むような妻の小さな悲鳴が、嫌に耳に響いた。
「何これっ!パパ…!」
不安そうに娘もこちらへ駆け出そうとしたそのとき、娘の身体が光に包まれ、消え始めた。
一層眩い光に、思わず一瞬目を閉じた。
そして次に目を開けたときには、あの強い光も、娘の姿でさえ消えてしまっていた。
信じられない気持ちで妻を見ると、彼女もまた口をぽかんとあけて呆けていた。
どれくらいぼうっとしていただろう。
おそらく数秒のことだっただろうが、ハッとして俺は娘のスマホに電話をかけた。
とにかく、無事を確認しなくては…!
しかしいくら待ってもコールが鳴り響くばかりで、娘につながらない。
とまったままのエレベーターの中にはもちろん、一階のエントランスや非常階段、駅までの道もくまなく探したが、娘の姿は見つからない。
まさか、まさか!
戸惑いながらも、ある一つの言葉が脳裏に浮かび上がっていた。
異世界転移。
ありふれた漫画の設定だ。
それがまさか娘の身に降りかかるだなんて、信じられるはずがない。
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