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85 証拠
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「シャルロッテ嬢。ひとまず君の状態を確認したい。王宮医のもとに案内させるから、診てもらいなさい。必要な治療は必ず受けるように」
王の言葉に、シャルロッテは頭を下げる。
そしてメイドのあとをついて、部屋を退出していった。
シャルロッテの足跡が遠ざかるのを確認してから、王が険しい顔で話し始める。
「医師の診断により、彼女が虐待されていたのは明らかになるだろう。しかし犯人を特定する証拠が足りないな」
「……確かに。家族内のことですから、難しいでしょうね。侯爵家の使用人たちも虐待に加担していたとこのことですし、証言を得られるとは思いません」
考え込む二人に、俺は侯爵家の御者の話をした。
侯爵家の中にも、シャルロッテに同情的なものもいるのだと。
しかし御者が証言をしてくれるとは思えなかった。
少なくとも証言してしまえば、彼が侯爵家で働き続けることは難しいだろう。
「証拠ならあるよ?」
気の抜けた声で言ったのは、ノアだった。
驚く俺たちに、ノアは小さな丸いガラス球を差し出した。
一見ビー玉にしか見えないそれが何の証拠になるのか首をひねっていると、王とロエナが笑い出した。
どうやら彼らは、これが何かわかったらしい。
王が侍従に何かを指示する。
侍従は頷いて部屋を出て、すぐに戻ってきた。
彼の手には、小さな箱のようなものが握られている。
王は侍従から箱を受け取り、上のくぼみ部分にノアが差し出したガラス球を乗せた。
そして箱に魔力を流す。
箱の正面には、レンズのようなものがついているのがわかった。
不思議に思いながら様子を見ていると、レンズ部分から光があふれ、壁に向かって伸びていった。
そこまで見てようやく、その箱がプロジェクターのようなものだと気づいた。
そしておそらく、ノアが持っていたガラス玉は記録媒体なのだろう、とも。
壁に視線を向けると、侯爵邸で見たシャルロッテの悲惨な姿が映し出されている。
一度目にした光景とは言え、反吐が出そうだ。
いつの間にか着替えから戻ってきていた妻とロエナは口に手をあて、想像以上の惨状に目を見開いている。
王は取り乱すことなく、眉間にしわを寄せた。
「十分だな」
そう王が呟き、ガラス玉を箱から取りだした。
王は侍従に「厳重に保管するように」と命じ、侍従が頷く。
その後は、裁判の流れについて教えてもらった。
この世界には裁判所や裁判官は存在せず、その口の領主やその代理が裁判を執り行うことになっている。
しかしそれはあくまで平民に限った話であり、貴族の場合は基本的に王が裁きを下すことになる。
しかし王の一存で裁判が進められるかと言えばそうではなく、被告人には弁明の機会が与えられるという。
冤罪を避けるため、審理は数回にわけ、半年ほどの時間をかけて行われるのだそうだ。
「あちらも家名を汚さぬよう、虐待の事実は否認し、親権の剥奪も断固として受け入れないだろう。証拠の捏造を行う可能性もある。しかし映像記録と王宮医の診断という証拠を覆すほどのものは提出できまい」
その王の言葉に、俺は安堵した。
判決までに時間がかかったとしても、シャルロッテがあの地獄にもう戻らずに済むというだけで、嬉しかった。
「侯爵家から親権を剥奪したあとは、誰が彼女の親権を持つことになるのですか?」
ふと疑問に思い、質問する。
「ふむ。それはまだ未定だが……彼女はユージの妹の生まれ変わりのようなものだろう?それを公表しても構わないようなら、姫の後ろ盾を受け、王族の一員として迎え入れることもできるだろう。それか、侯爵家よりも有力な家門の養子にすることもできる。
折を見て、シャルロッテ嬢の希望を訊ねることにしよう。……仮に養子になることを選ぶなら、養子先は信頼できるところから厳選するから、心配はいらない」
裁判が終わった後のことも、王はしっかり考えていてくれているらしい。
一国の王として、そして一人の父親として、尊敬できる人だ。
そんなことを考えていると、ノアがポツリと呟いた。
「でもせっかくなら、家族にはいっしょに過ごしてもらいたいよね」
王の言葉に、シャルロッテは頭を下げる。
そしてメイドのあとをついて、部屋を退出していった。
シャルロッテの足跡が遠ざかるのを確認してから、王が険しい顔で話し始める。
「医師の診断により、彼女が虐待されていたのは明らかになるだろう。しかし犯人を特定する証拠が足りないな」
「……確かに。家族内のことですから、難しいでしょうね。侯爵家の使用人たちも虐待に加担していたとこのことですし、証言を得られるとは思いません」
考え込む二人に、俺は侯爵家の御者の話をした。
侯爵家の中にも、シャルロッテに同情的なものもいるのだと。
しかし御者が証言をしてくれるとは思えなかった。
少なくとも証言してしまえば、彼が侯爵家で働き続けることは難しいだろう。
「証拠ならあるよ?」
気の抜けた声で言ったのは、ノアだった。
驚く俺たちに、ノアは小さな丸いガラス球を差し出した。
一見ビー玉にしか見えないそれが何の証拠になるのか首をひねっていると、王とロエナが笑い出した。
どうやら彼らは、これが何かわかったらしい。
王が侍従に何かを指示する。
侍従は頷いて部屋を出て、すぐに戻ってきた。
彼の手には、小さな箱のようなものが握られている。
王は侍従から箱を受け取り、上のくぼみ部分にノアが差し出したガラス球を乗せた。
そして箱に魔力を流す。
箱の正面には、レンズのようなものがついているのがわかった。
不思議に思いながら様子を見ていると、レンズ部分から光があふれ、壁に向かって伸びていった。
そこまで見てようやく、その箱がプロジェクターのようなものだと気づいた。
そしておそらく、ノアが持っていたガラス玉は記録媒体なのだろう、とも。
壁に視線を向けると、侯爵邸で見たシャルロッテの悲惨な姿が映し出されている。
一度目にした光景とは言え、反吐が出そうだ。
いつの間にか着替えから戻ってきていた妻とロエナは口に手をあて、想像以上の惨状に目を見開いている。
王は取り乱すことなく、眉間にしわを寄せた。
「十分だな」
そう王が呟き、ガラス玉を箱から取りだした。
王は侍従に「厳重に保管するように」と命じ、侍従が頷く。
その後は、裁判の流れについて教えてもらった。
この世界には裁判所や裁判官は存在せず、その口の領主やその代理が裁判を執り行うことになっている。
しかしそれはあくまで平民に限った話であり、貴族の場合は基本的に王が裁きを下すことになる。
しかし王の一存で裁判が進められるかと言えばそうではなく、被告人には弁明の機会が与えられるという。
冤罪を避けるため、審理は数回にわけ、半年ほどの時間をかけて行われるのだそうだ。
「あちらも家名を汚さぬよう、虐待の事実は否認し、親権の剥奪も断固として受け入れないだろう。証拠の捏造を行う可能性もある。しかし映像記録と王宮医の診断という証拠を覆すほどのものは提出できまい」
その王の言葉に、俺は安堵した。
判決までに時間がかかったとしても、シャルロッテがあの地獄にもう戻らずに済むというだけで、嬉しかった。
「侯爵家から親権を剥奪したあとは、誰が彼女の親権を持つことになるのですか?」
ふと疑問に思い、質問する。
「ふむ。それはまだ未定だが……彼女はユージの妹の生まれ変わりのようなものだろう?それを公表しても構わないようなら、姫の後ろ盾を受け、王族の一員として迎え入れることもできるだろう。それか、侯爵家よりも有力な家門の養子にすることもできる。
折を見て、シャルロッテ嬢の希望を訊ねることにしよう。……仮に養子になることを選ぶなら、養子先は信頼できるところから厳選するから、心配はいらない」
裁判が終わった後のことも、王はしっかり考えていてくれているらしい。
一国の王として、そして一人の父親として、尊敬できる人だ。
そんなことを考えていると、ノアがポツリと呟いた。
「でもせっかくなら、家族にはいっしょに過ごしてもらいたいよね」
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