141 / 266
127 ルート
しおりを挟む
「歩きながら、ルートの確認をしておこうか」
ノアがそう言って、右のほうを指さした。
「あっちがロナリア帝国。そして反対側がオートラック王国だね。ユミュリエール教国に行くには、どちらのかの国を跨ぐ必要があるんだ」
「……ロナリア帝国……」
蓮とラウルは、かつて召喚された国の名前に顔を青くしている。
「大丈夫。今回はオートラック王国を通っていくから、ロナリア帝国には入らないよ。正晴くんは国を出て20年以上経ってるけど、2人はまだ追われて間もないからね。警備隊なんかに手配が回っていたら危ないし。ただ問題は、国境だね」
「国境か」
「そう。ロナリア帝国、オートラック王国、ユミュリエール教国は今、三つ巴状態なんだ。だから国境間の警備は厳しくなってる。主要な街道には兵士が常駐しているし、まず通れないだろうね」
「じゃあ、警備の薄いところを狙うのか?」
「うん。でも、巡回の警備がいる。巡回の隙を突かないと国境は越えられない」
「それなら探索魔法で……」
「いや、魔法はだめです」
きっぱりと言い切ったのは、斎藤だった。
理由を訊ねると「魔法は探知されるから」だという。
「この世界では、魔法の発動を探知する魔法道具が普及しています。世界のおよそ半数くらいの人が魔法を使える世界ですから、犯罪防止などを目的に開発されたそうです」
「なるほど……じゃあ、周囲を警戒しながら何とか……」
「それもリスクが高いでしょう。整備されていない国境沿いの道は、草木が生い茂り、視界の悪い場所が多い。巡回が接近しても気づかない可能性もあります」
しかし、それでもリスクを承知で挑むしかないだろう。
少しでも見晴らしの良い場所を探し、あとは運に身を任せるしかない。
いざとなったら、俺が先陣を切って戦おう。
そんな覚悟を人知れず決めるが……。
「なので、情報を買いに行きましょう」
そういう斎藤の言葉に、俺は出鼻をくじかれた。
「じょ、情報を……?」
戸惑いつつ問いかけると、斎藤は頷いて話を続ける。
「ええ。知り合いに独自の情報網を持つ情報屋がいます。やつなら、国境の巡回ルートも把握できるでしょう」
「そんな人が……」
「情報料はそれなりに吹っ掛けられるでしょうが、先日倉庫にためていた素材をまとめて売り払ったので、資金としては十分でしょう。やつには、魔王討伐時から世話になっているので」
「今でもお付き合いが?」
「ええ、時々」
そして斎藤は小声で「ロナリア帝国から逃げ出した転移者の消息とか」と呟いた。
俺は驚いて目を見開く。
それはつまり、蓮とラウルに関する情報だろう。
「やつも何の情報も得ていませんでした。ということはつまり、帝国側には行方は突き止められてないということです。帝国の情報網がやつのそれに勝るとは思えないので」
「……なるほど」
斎藤がそこまで言い切るということは、相当腕のいい情報屋なのだろう。
俺は感心しつつ、話の続きに耳を傾けた。
「やつはこれから向かう街の小さなバーにいます。正確には、バーの奥の隠し部屋に。やつに会うためには、バーで特定の酒を頼む必要があります」
「なんだかそれって……」
「スパイ映画みたいでしょう?」
「ええ。ちょっとテンション上がりますね」
「私もそうでした」
そういった斎藤は、どこか嬉しそうだった。
もしかしたら、好みが合うのかもしれない。
今度、元の世界の好きな映画や漫画なんかの話をしてみようか、などと俺は呑気に考えていた。
ノアがそう言って、右のほうを指さした。
「あっちがロナリア帝国。そして反対側がオートラック王国だね。ユミュリエール教国に行くには、どちらのかの国を跨ぐ必要があるんだ」
「……ロナリア帝国……」
蓮とラウルは、かつて召喚された国の名前に顔を青くしている。
「大丈夫。今回はオートラック王国を通っていくから、ロナリア帝国には入らないよ。正晴くんは国を出て20年以上経ってるけど、2人はまだ追われて間もないからね。警備隊なんかに手配が回っていたら危ないし。ただ問題は、国境だね」
「国境か」
「そう。ロナリア帝国、オートラック王国、ユミュリエール教国は今、三つ巴状態なんだ。だから国境間の警備は厳しくなってる。主要な街道には兵士が常駐しているし、まず通れないだろうね」
「じゃあ、警備の薄いところを狙うのか?」
「うん。でも、巡回の警備がいる。巡回の隙を突かないと国境は越えられない」
「それなら探索魔法で……」
「いや、魔法はだめです」
きっぱりと言い切ったのは、斎藤だった。
理由を訊ねると「魔法は探知されるから」だという。
「この世界では、魔法の発動を探知する魔法道具が普及しています。世界のおよそ半数くらいの人が魔法を使える世界ですから、犯罪防止などを目的に開発されたそうです」
「なるほど……じゃあ、周囲を警戒しながら何とか……」
「それもリスクが高いでしょう。整備されていない国境沿いの道は、草木が生い茂り、視界の悪い場所が多い。巡回が接近しても気づかない可能性もあります」
しかし、それでもリスクを承知で挑むしかないだろう。
少しでも見晴らしの良い場所を探し、あとは運に身を任せるしかない。
いざとなったら、俺が先陣を切って戦おう。
そんな覚悟を人知れず決めるが……。
「なので、情報を買いに行きましょう」
そういう斎藤の言葉に、俺は出鼻をくじかれた。
「じょ、情報を……?」
戸惑いつつ問いかけると、斎藤は頷いて話を続ける。
「ええ。知り合いに独自の情報網を持つ情報屋がいます。やつなら、国境の巡回ルートも把握できるでしょう」
「そんな人が……」
「情報料はそれなりに吹っ掛けられるでしょうが、先日倉庫にためていた素材をまとめて売り払ったので、資金としては十分でしょう。やつには、魔王討伐時から世話になっているので」
「今でもお付き合いが?」
「ええ、時々」
そして斎藤は小声で「ロナリア帝国から逃げ出した転移者の消息とか」と呟いた。
俺は驚いて目を見開く。
それはつまり、蓮とラウルに関する情報だろう。
「やつも何の情報も得ていませんでした。ということはつまり、帝国側には行方は突き止められてないということです。帝国の情報網がやつのそれに勝るとは思えないので」
「……なるほど」
斎藤がそこまで言い切るということは、相当腕のいい情報屋なのだろう。
俺は感心しつつ、話の続きに耳を傾けた。
「やつはこれから向かう街の小さなバーにいます。正確には、バーの奥の隠し部屋に。やつに会うためには、バーで特定の酒を頼む必要があります」
「なんだかそれって……」
「スパイ映画みたいでしょう?」
「ええ。ちょっとテンション上がりますね」
「私もそうでした」
そういった斎藤は、どこか嬉しそうだった。
もしかしたら、好みが合うのかもしれない。
今度、元の世界の好きな映画や漫画なんかの話をしてみようか、などと俺は呑気に考えていた。
11
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる