165 / 266
151 お約束
しおりを挟む
国境を越えるため、俺たちは身を潜めながら森の中を移動していた。
奈央の体力が心配だったが、転移者としての何らかの特典か、神の加護の影響かわからないが、奈央は意外と体力があり、回復も早かった。
そのため彼女のペースに合わせていても、案外スムーズに移動を進められた。
はじめのうちは息を切らして頻繁に休憩していた奈央だったが、時間がたつにつれ、涼しい顔で移動している。
元の世界では運動は苦手な方だったらしく、本人が一番驚いていた。
「自然の中って、気持ちがいいね」
奈央が背伸びをして言う。
最初は敬語を使っていた奈央だったが、慣れてきたのかずいぶん砕けた口調で話すようになった。
見た目のせいか、斎藤にだけは丁寧な敬語のままだが。
「伊月くんだけ、うちの人と会ったことがあるのよね?」
「ええ、被害者の会には妻は連れて行っていませんでしたから」
「妻……ね。伊月くんも詩織ちゃんもずいぶん若く見えるけど、本当に結婚してるの?」
不思議そうに奈央が首を傾げた。
確かに、日本人の感覚では、高校生くらいの見た目の俺たちが結婚しているというのは違和感があるだろう。
実は、と俺が説明しようとしたそのとき、満面の笑みで蓮とラウルが「待った!」と制止した。
そしていたずらっぽく笑いながら、奈央にクイズを出す。
「伊月と詩織には子どもがいるんだけど、何歳くらいの子だと思う?」
「ヒントは、予想よりずっと年上!」
奈央は困ったように「えぇ?」と声を上げつつも、しばらく考え込んで答える。
「うぅん、3歳くらい?詩織ちゃんの歳を考えると、それ以上は難しそうだし……。っていうか、それでも出産年齢としては早すぎるくらいよね。そもそも子どもがいることに驚きなんだけど」
「ぶぶー!」
「ハズレ!もっと上だよ」
「え、もっと?!」
驚愕の表情を俺に向けてくる奈央に申し訳なく思いつつ、俺は苦笑いをする。
妻も動揺する奈央の様子を見て、蓮やラウルたちと同じように楽しそうな笑みを浮かべていた。
「奈央ちゃん、詩織は子どもだけど子どもじゃないのよ」
なんてヒントにならないことまで言っている。
奈央はそんな詩織に疑いの眼差しを向けながら「……5歳?」と返した。
「残念、違います」
「ま、このふたりの見た目じゃわかんないよな」
「ね!わかんなくても仕方ないね」
三人はいかにも楽しそうにきゃっきゃと話している。
旅のはじめの頃の蓮とラウルは、女の子相手の会話に慣れていないとかで、妻とはろくに話もできなかったのに、ずいぶん仲良くなったもんだ。
そんな軽い嫉妬をしつつも、答えをなかなか教えてもらえない奈央がかわいそうになってきた。
「実は、俺たち異世界へ転移したときに少し若返っているんです」
「え、そうなの?!っていうか、そんなのありなの?……さすが異世界」
「いや、少しじゃないじゃん」
驚く奈央に、冷静なツッコミを入れる蓮。
俺は苦笑しつつも「確かに少しじゃないな」と蓮に同意する。
すると奈央は少し焦ったような顔になり、こっそりと「もしかして年上……じゃないですよね?」と俺に訊ねた。
「残念ながら……」
「えぇ……ご、ごめんなさい……てっきり年下だと思ってすごいタメ口で話しちゃって……」
「いやいや、お気になさらず。今まで通りの口調で大丈夫ですよ」
「そ、そう……?じゃあ、伊月くんももっと気楽に話して?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
奈央は、年齢を黙っていたことが申し訳なくなるほど恐縮している。
確かに、俺が逆の立場でも焦るだろう。
「で、結局何歳なの?」
奈央がそう問いかける。
俺は躊躇いつつも、そっと斎藤のほうを指さす。
「ん?斎藤さんがどうしたの?」
「……彼よりちょっと年上かな」
そう答えた俺に、奈央はしばらく口を開けて呆然としていた。
そして「ええええええ!」と驚愕の声を上げたのだった。
奈央の体力が心配だったが、転移者としての何らかの特典か、神の加護の影響かわからないが、奈央は意外と体力があり、回復も早かった。
そのため彼女のペースに合わせていても、案外スムーズに移動を進められた。
はじめのうちは息を切らして頻繁に休憩していた奈央だったが、時間がたつにつれ、涼しい顔で移動している。
元の世界では運動は苦手な方だったらしく、本人が一番驚いていた。
「自然の中って、気持ちがいいね」
奈央が背伸びをして言う。
最初は敬語を使っていた奈央だったが、慣れてきたのかずいぶん砕けた口調で話すようになった。
見た目のせいか、斎藤にだけは丁寧な敬語のままだが。
「伊月くんだけ、うちの人と会ったことがあるのよね?」
「ええ、被害者の会には妻は連れて行っていませんでしたから」
「妻……ね。伊月くんも詩織ちゃんもずいぶん若く見えるけど、本当に結婚してるの?」
不思議そうに奈央が首を傾げた。
確かに、日本人の感覚では、高校生くらいの見た目の俺たちが結婚しているというのは違和感があるだろう。
実は、と俺が説明しようとしたそのとき、満面の笑みで蓮とラウルが「待った!」と制止した。
そしていたずらっぽく笑いながら、奈央にクイズを出す。
「伊月と詩織には子どもがいるんだけど、何歳くらいの子だと思う?」
「ヒントは、予想よりずっと年上!」
奈央は困ったように「えぇ?」と声を上げつつも、しばらく考え込んで答える。
「うぅん、3歳くらい?詩織ちゃんの歳を考えると、それ以上は難しそうだし……。っていうか、それでも出産年齢としては早すぎるくらいよね。そもそも子どもがいることに驚きなんだけど」
「ぶぶー!」
「ハズレ!もっと上だよ」
「え、もっと?!」
驚愕の表情を俺に向けてくる奈央に申し訳なく思いつつ、俺は苦笑いをする。
妻も動揺する奈央の様子を見て、蓮やラウルたちと同じように楽しそうな笑みを浮かべていた。
「奈央ちゃん、詩織は子どもだけど子どもじゃないのよ」
なんてヒントにならないことまで言っている。
奈央はそんな詩織に疑いの眼差しを向けながら「……5歳?」と返した。
「残念、違います」
「ま、このふたりの見た目じゃわかんないよな」
「ね!わかんなくても仕方ないね」
三人はいかにも楽しそうにきゃっきゃと話している。
旅のはじめの頃の蓮とラウルは、女の子相手の会話に慣れていないとかで、妻とはろくに話もできなかったのに、ずいぶん仲良くなったもんだ。
そんな軽い嫉妬をしつつも、答えをなかなか教えてもらえない奈央がかわいそうになってきた。
「実は、俺たち異世界へ転移したときに少し若返っているんです」
「え、そうなの?!っていうか、そんなのありなの?……さすが異世界」
「いや、少しじゃないじゃん」
驚く奈央に、冷静なツッコミを入れる蓮。
俺は苦笑しつつも「確かに少しじゃないな」と蓮に同意する。
すると奈央は少し焦ったような顔になり、こっそりと「もしかして年上……じゃないですよね?」と俺に訊ねた。
「残念ながら……」
「えぇ……ご、ごめんなさい……てっきり年下だと思ってすごいタメ口で話しちゃって……」
「いやいや、お気になさらず。今まで通りの口調で大丈夫ですよ」
「そ、そう……?じゃあ、伊月くんももっと気楽に話して?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
奈央は、年齢を黙っていたことが申し訳なくなるほど恐縮している。
確かに、俺が逆の立場でも焦るだろう。
「で、結局何歳なの?」
奈央がそう問いかける。
俺は躊躇いつつも、そっと斎藤のほうを指さす。
「ん?斎藤さんがどうしたの?」
「……彼よりちょっと年上かな」
そう答えた俺に、奈央はしばらく口を開けて呆然としていた。
そして「ええええええ!」と驚愕の声を上げたのだった。
12
あなたにおすすめの小説
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる