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227 玉手箱
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「あとさ、この世界でも魔力って使えるのか?緊急時は魔力を流せって言ってたけど、この世界に魔法はないし……」
「そうだね。魔法は使えないけど、魔力を込めることはできる。異世界のときと同じように、体内の魔力を感じてみるといい」
「……魔力って、なくなったりしないのか?」
「しないよ。この世界に魔法はないけど、魔力が存在しないわけじゃない。……試しにやってみたらどうだい?」
俺は鍵に魔力を込めた。
全身の魔力を集めて、鍵に向かって流す。
するとノアの胸元で、アラーム音がけたたましく鳴り響いた。
「ね?」
にっこりと微笑むノアに、俺は安堵の笑みを浮かべて頷く。
「よかった。……ところで、元の姿にはいつ戻してくれるんだ?」
「あ……そういえば忘れていたね。さっそく戻そうか」
そう言ってノアが指を鳴らそうとした瞬間、妻が「待って!」と大声で叫んだ。
驚いた俺たちは、妻をぽかんと見つめる。
どうしたのかと問いかけると、着替える時間が欲しいという。
「この格好は素敵だけど、さすがに元の年齢でこれはちょっと……」
「そう?かわいいと思うけどな」
あっけらかんとノアは言うが、着替えたがる妻の気持ちは理解できる。
高校生の娘がいる年齢で、ショートパンツにニーハイソックスというのは抵抗があるだろう。
若返った姿でも、コスプレのようで最初は恥ずかしかったものだ。
「伊月くんも着替えてくるかい?」
ノアに問われ、俺は「そうする」と頷いた。
ゆっくり着替えておいで、と送り出され、リビングを出る。
背中越しに、義母が「お茶を淹れましょうか?」と問いかける声と、ノアの喜ぶ声が聞こえていた。
※
着替えを終えてリビングに戻ると、ノアは緑茶と煎餅を楽しんでいるところだった。
煎餅は初体験だったようだが、お気に召したようだ。
とくに海苔がついているのが気に入ったようで、積極的に手を伸ばしている。
「こんなものしかなくて、ごめんなさいね」
しばらく留守にしていたから、買い置きしていた煎餅くらいしかお茶請けがなかったようだ。
義母に気を遣わせたことを申し訳なく思っていると、妻も着替えが終わったようで戻ってきた。
「お母さん、用意させちゃってごめんね」
「いいのよ。でも、何も用意していなくて……」
「そうだよね、しばらく家も空けていたし」
「大丈夫。僕、お煎餅好きだよ」
にっこりとノアが言い「ならよかった」と妻が笑う。
俺たちが異世界へ旅立っているあいだ、日本では5ヶ月ほどの時間が経っていたらしい。
実際に旅をしていた時間と比べるとはるかに短いが、誤差の範囲内だとノアは言う。
「よし、じゃあ戻そうか」
ノアがにっこり笑って、指を鳴らす。
それにあわせて、目の前にいた妻の姿が見慣れた元の姿に戻った。
鏡を見ていないので自分の姿は見えないが、ずしりと身体が重くなったように感じる。
ずっと若い姿でいたから、そのギャップでより年を感じてしまう。
「まるで玉手箱を開けた気分ね」
ため息をつきながら、妻が言う。
俺は同意しつつも見慣れた妻の顔を見て、やっぱりこっちのほうが落ち着くな、なんて考えていた。
「そうだね。魔法は使えないけど、魔力を込めることはできる。異世界のときと同じように、体内の魔力を感じてみるといい」
「……魔力って、なくなったりしないのか?」
「しないよ。この世界に魔法はないけど、魔力が存在しないわけじゃない。……試しにやってみたらどうだい?」
俺は鍵に魔力を込めた。
全身の魔力を集めて、鍵に向かって流す。
するとノアの胸元で、アラーム音がけたたましく鳴り響いた。
「ね?」
にっこりと微笑むノアに、俺は安堵の笑みを浮かべて頷く。
「よかった。……ところで、元の姿にはいつ戻してくれるんだ?」
「あ……そういえば忘れていたね。さっそく戻そうか」
そう言ってノアが指を鳴らそうとした瞬間、妻が「待って!」と大声で叫んだ。
驚いた俺たちは、妻をぽかんと見つめる。
どうしたのかと問いかけると、着替える時間が欲しいという。
「この格好は素敵だけど、さすがに元の年齢でこれはちょっと……」
「そう?かわいいと思うけどな」
あっけらかんとノアは言うが、着替えたがる妻の気持ちは理解できる。
高校生の娘がいる年齢で、ショートパンツにニーハイソックスというのは抵抗があるだろう。
若返った姿でも、コスプレのようで最初は恥ずかしかったものだ。
「伊月くんも着替えてくるかい?」
ノアに問われ、俺は「そうする」と頷いた。
ゆっくり着替えておいで、と送り出され、リビングを出る。
背中越しに、義母が「お茶を淹れましょうか?」と問いかける声と、ノアの喜ぶ声が聞こえていた。
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着替えを終えてリビングに戻ると、ノアは緑茶と煎餅を楽しんでいるところだった。
煎餅は初体験だったようだが、お気に召したようだ。
とくに海苔がついているのが気に入ったようで、積極的に手を伸ばしている。
「こんなものしかなくて、ごめんなさいね」
しばらく留守にしていたから、買い置きしていた煎餅くらいしかお茶請けがなかったようだ。
義母に気を遣わせたことを申し訳なく思っていると、妻も着替えが終わったようで戻ってきた。
「お母さん、用意させちゃってごめんね」
「いいのよ。でも、何も用意していなくて……」
「そうだよね、しばらく家も空けていたし」
「大丈夫。僕、お煎餅好きだよ」
にっこりとノアが言い「ならよかった」と妻が笑う。
俺たちが異世界へ旅立っているあいだ、日本では5ヶ月ほどの時間が経っていたらしい。
実際に旅をしていた時間と比べるとはるかに短いが、誤差の範囲内だとノアは言う。
「よし、じゃあ戻そうか」
ノアがにっこり笑って、指を鳴らす。
それにあわせて、目の前にいた妻の姿が見慣れた元の姿に戻った。
鏡を見ていないので自分の姿は見えないが、ずしりと身体が重くなったように感じる。
ずっと若い姿でいたから、そのギャップでより年を感じてしまう。
「まるで玉手箱を開けた気分ね」
ため息をつきながら、妻が言う。
俺は同意しつつも見慣れた妻の顔を見て、やっぱりこっちのほうが落ち着くな、なんて考えていた。
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