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231 深刻
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護衛騎士は医師を引き連れ、すぐに戻ってきた。
神とサーシャもいっしょだ。
魔王にも使いを出したから、間もなく駆けつけるだろうとサーシャが言う。
脂汗をかきながら痛みに耐える娘を見て、すぐに医師が診察を開始した。
俺たちはいったん部屋の外に出され、娘の部屋には医師と神だけが残る。
そのまましばらく待っていると、慌てた様子で魔王がやってきて、開口一番「ユノは?!」と声を荒げた。
診察中だと聞いても落ち着かない様子で、部屋の前を行ったり来たりして、サーシャに窘められる。
そしてようやく俺と妻がこの場にいることに気づいたらしく「どうしてここに」と目を丸くした。
「コトラが知らせに来てくれたんだ」
「コトラが?」
「ああ。急に扉がつながったと思ったらコトラが出てきてな。不審に思って様子を窺ったら、柚乃が苦しんでいて」
「そんな……誰も気づかなかったとは、申し訳ない」
「いや、痛みで助けを求めることもできなかったらしい。気づかなかったことを責めるつもりはない」
魔王はそれでも、悔し気に眉間にしわを寄せている。
そんな中、震える声で娘の護衛騎士が「申し訳ございません」と謝罪を口にした。
「すぐに異変に気付くべきでしたのに、小用で持ち場を離れてしまいました……!」
「……なんだと?」
拳を握りしめ、絞り出すように言う護衛騎士を、魔王が鋭い眼光で睨みつける。
しかし魔王が次の言葉を口にする前に、娘の部屋の扉が開き、暗い顔をした神が顔を出した。
促されるまま部屋に入ると、娘はベッドの上で眠っていた。
しかし顔色は依然思わしくない。
「ユノ様は、麻酔効果のある薬草を使って眠っています。しかし、非常に危険な状態です」
重い口調で医師が告げる。
そして神が続けて『胎盤が剝がれかけているのだ』と言った。
「胎盤?」
『子宮内になる、母体と胎児をつなぐ器官だ』
「えっと……」
正直俺には、胎盤が剥がれそうになっている状態がどう危険なのかよくわからなかった。
しかし、ふと視線を向けた妻の横顔は真っ青になって震えている。
その表情を見て、より事態の深刻さを実感して血の気が引いた。
『とにかく、一刻も早く処置をしなくてはならない』
「処置というのは……」
『少しでも早く胎児を母体から取り出す必要がある』
「まさか……」
神の言葉の意図を察して、俺は拳を握る。
神は頷き『今から帝王切開を執り行う』と告げた。
「テイオウセッカイ?」
聞きなれない言葉なのか、魔王とサーシャたちが首を傾げる。
少なくとも、魔族の間では一般的でないのだろう。
『簡単に言うと、腹を切って胎児を取り出す手術だ』
神が告げると、魔王が「腹を?!」と声を上げる。
「そんなことをしたら、ユノが死んでしまう!父上は、ユノよりも子の命を優先するというのか!!」
怒りと落胆のまじりあった瞳で、魔王が神を非難する。
しかし神は首を横に振り『そうではない』と冷静に続けた。
『帝王切開は、人間の間では珍しくない出産方法だ。この世界でも、ユノの故郷でも』
「しかし……!」
『普通の出産よりもリスクはあるが、このまま放置する方が、母子ともに命を落とす可能性が高まる』
「……そ、その胎盤とやらを、再びくっつければ……」
『そんなことをしたら、ユノや胎児にどんな影響が出るかわからない』
きっぱりと言い切った神に、魔王はまだ何か言おうとしていたが言葉にならなかった。
俺は妻の震える肩をそっと抱いて、神と医師に「よろしくお願いします」と頭を下げた。
妻も同様に、俺の隣でうつむくように頭を下げている。
「イツキ殿……」
魔王は泣き出しそうな顔をしていた。
俺も泣きたくなったが、ぐっとこらえて「覚悟を決めろ」と魔王の背中をバシッと叩く。
魔王は唇を嚙みながら、それでも確かに頷いた。
神とサーシャもいっしょだ。
魔王にも使いを出したから、間もなく駆けつけるだろうとサーシャが言う。
脂汗をかきながら痛みに耐える娘を見て、すぐに医師が診察を開始した。
俺たちはいったん部屋の外に出され、娘の部屋には医師と神だけが残る。
そのまましばらく待っていると、慌てた様子で魔王がやってきて、開口一番「ユノは?!」と声を荒げた。
診察中だと聞いても落ち着かない様子で、部屋の前を行ったり来たりして、サーシャに窘められる。
そしてようやく俺と妻がこの場にいることに気づいたらしく「どうしてここに」と目を丸くした。
「コトラが知らせに来てくれたんだ」
「コトラが?」
「ああ。急に扉がつながったと思ったらコトラが出てきてな。不審に思って様子を窺ったら、柚乃が苦しんでいて」
「そんな……誰も気づかなかったとは、申し訳ない」
「いや、痛みで助けを求めることもできなかったらしい。気づかなかったことを責めるつもりはない」
魔王はそれでも、悔し気に眉間にしわを寄せている。
そんな中、震える声で娘の護衛騎士が「申し訳ございません」と謝罪を口にした。
「すぐに異変に気付くべきでしたのに、小用で持ち場を離れてしまいました……!」
「……なんだと?」
拳を握りしめ、絞り出すように言う護衛騎士を、魔王が鋭い眼光で睨みつける。
しかし魔王が次の言葉を口にする前に、娘の部屋の扉が開き、暗い顔をした神が顔を出した。
促されるまま部屋に入ると、娘はベッドの上で眠っていた。
しかし顔色は依然思わしくない。
「ユノ様は、麻酔効果のある薬草を使って眠っています。しかし、非常に危険な状態です」
重い口調で医師が告げる。
そして神が続けて『胎盤が剝がれかけているのだ』と言った。
「胎盤?」
『子宮内になる、母体と胎児をつなぐ器官だ』
「えっと……」
正直俺には、胎盤が剥がれそうになっている状態がどう危険なのかよくわからなかった。
しかし、ふと視線を向けた妻の横顔は真っ青になって震えている。
その表情を見て、より事態の深刻さを実感して血の気が引いた。
『とにかく、一刻も早く処置をしなくてはならない』
「処置というのは……」
『少しでも早く胎児を母体から取り出す必要がある』
「まさか……」
神の言葉の意図を察して、俺は拳を握る。
神は頷き『今から帝王切開を執り行う』と告げた。
「テイオウセッカイ?」
聞きなれない言葉なのか、魔王とサーシャたちが首を傾げる。
少なくとも、魔族の間では一般的でないのだろう。
『簡単に言うと、腹を切って胎児を取り出す手術だ』
神が告げると、魔王が「腹を?!」と声を上げる。
「そんなことをしたら、ユノが死んでしまう!父上は、ユノよりも子の命を優先するというのか!!」
怒りと落胆のまじりあった瞳で、魔王が神を非難する。
しかし神は首を横に振り『そうではない』と冷静に続けた。
『帝王切開は、人間の間では珍しくない出産方法だ。この世界でも、ユノの故郷でも』
「しかし……!」
『普通の出産よりもリスクはあるが、このまま放置する方が、母子ともに命を落とす可能性が高まる』
「……そ、その胎盤とやらを、再びくっつければ……」
『そんなことをしたら、ユノや胎児にどんな影響が出るかわからない』
きっぱりと言い切った神に、魔王はまだ何か言おうとしていたが言葉にならなかった。
俺は妻の震える肩をそっと抱いて、神と医師に「よろしくお願いします」と頭を下げた。
妻も同様に、俺の隣でうつむくように頭を下げている。
「イツキ殿……」
魔王は泣き出しそうな顔をしていた。
俺も泣きたくなったが、ぐっとこらえて「覚悟を決めろ」と魔王の背中をバシッと叩く。
魔王は唇を嚙みながら、それでも確かに頷いた。
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