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しおりを挟む「で~んかっ♡ あ~ん?」
「あ~ん……うん、旨い!」
「本当? 嬉しい!」
王族専用のバルコニーで、思わず二度見してしまうような光景が繰り広げられていた。
我が国の王子と……恋愛勝負に脱落したはずの侯爵令嬢が和気藹々……と言うよりもイチャイチャイチャイチャと昼食を摂っていたのである。
いつもは男爵令嬢がいたはずの王子の隣の席は、彼の婚約者である侯爵令嬢に取って代わられていたのだ。
これは一体どういうことかと、学園中が揺らいだ。
否、元々あの席は婚約者である侯爵令嬢のものだ……いやいや、おそらく身分を盾にして男爵令嬢から奪い取ったのだ……それにしては、王子の様子がおかしい、まるで自ら侯爵令嬢に寄り添っているような…………。
――と、様々な噂や憶測が飛び交う中、当の二人は周囲の視線など眼中になさそうに、凝縮した空間の中で甘いひと時を過ごしていた。
「今日は殿下の好きなローストビーフのサンドイッチをたくさん作ったの。いろんなアレンジをしているのよ。いっぱい食べてね?」
「俺が好きなものを覚えててくれたのか? シャーリーはなんて可愛いんだ!」
「だって、殿下の婚約者だもん! 当たり前よ」
「そうか、そうか。――ほら、殿下になっているぞ。エド、だろう?」
「あっ、いけない、わたくしったら。……エド様♡」
「シャーリー♡」
「はい、あ~ん♡」
「あ~ん♡」
バルコニーの外が一層ざわめいた。信じられないものを目の当たりにして、生徒たちは開いた口が塞がらない。
(わたくしが衆人環視の前でこんな真似をするなんて、屈辱だわ……)
シャルロッテは心の中で毒づく。馬鹿に合わせた己の馬鹿な姿を、身分の低い者たちにバルコニーの上からまるで演劇のように見せ付けてていることに羞恥心を覚えた。
だが、今は我慢だ。
これまで耐えてきたのだ。これくらい微風のように受け流さなければ。
(そうよ、まだ我慢のとき。王子を完全に籠絡するまでは……)
二人のバルコニーでの昼食会は終始甘過ぎる空気のまま、幕を閉じる。
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