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「こんな舞踏会を開いたところで、私を追い詰められると思わないでほしいわ」
華やかな音楽が流れる王宮の大舞踏会。その中心に現れたリリーナは、まるで勝利を確信しているかのごとく堂々としていた。きらびやかなドレスを纏い、美しく結い上げた髪には宝石が散りばめられている。周囲の貴族たちも、彼女の華麗さに目を奪われているようだった。
「すごい、リリーナ様……やっぱり圧倒的なオーラね」
そんな噂話が耳に入ってくるが、私の胸はざわつかない。むしろ、ライネルやエリオット殿下と立てた作戦を思い出し、冷静に対応しなくてはと自分に言い聞かせる。リリーナは必ず私を狙ってくるはず。それを逆手に取って、不正の証拠を公表するのだ。
しばらくして、大きな鐘の音が鳴り響き、エリオット殿下が舞踏会の中央へ進む。殿下の登場に、場がシンと静まる。さすが次期国王の風格といったところだ。殿下は一礼をしてから、ゆっくりと口を開く。
「本日は皆さま、お集まりいただき感謝します。王宮としても、こうして貴族の皆さまとの交流が深まることを喜ばしく思います」
丁寧な挨拶が終わると、殿下はちらりと私のほうへ視線を送ってくる。その合図だ。私はロザリーとともに静かに立ち上がり、周囲の目を気にしつつ、そっと前に進んだ。
すると、リリーナがそれを見逃さなかった。すかさず私に近寄り、甘い笑顔を浮かべる。
「まぁ、ソフィア・エヴァンス。あなた、まだこんな場に来るのね。公爵家に捨てられた身で、恥ずかしくないのかしら?」
会場がざわつく。リリーナはわざと大きな声で私を挑発しているのだろう。悪役令嬢としてのレッテルを再度貼りつけ、ここで私を恥じ入らせるつもりだ。私は震える胸を抑えながら、できるだけ落ち着いた声で返す。
「恥ずかしくはありません。むしろ、あなたこそ公爵家を利用しているのではありませんか?」
その言葉に、周囲から驚きの息が漏れる。リリーナは眉をひそめ、冷たい視線を私に浴びせる。
「私が利用? 何を根拠にそんなことを言うの?」
「根拠ならあります。あなたが密かに行ってきた取引、資金の流れ、それらを示す証拠を私たちは持っています。ここにいらっしゃるエリオット殿下やライネル様とともに、すでに調査済みです」
はっきりと宣言すると、リリーナの表情が一瞬だけ強張った。しかし、すぐに取り繕うように笑う。
「ソフィア、あなたが必死に虚偽の証拠を捏造しているんじゃなくて? 悪役令嬢としての名が欲しいなら、勝手に自滅してちょうだい」
その瞬間、エリオット殿下が静かに歩み出た。殿下の背後から近衛兵が書類の束を携えている。リリーナはさすがに動揺したように目を見開いた。
「リリーナ嬢、これがあなたの行った不正取引の一部始終を示す書類です。公爵家に紛れ込ませた協力者の名前、資金の出入り、全てが記録されています。あなたはこれをどう説明するつもりですか?」
殿下の厳しい声に、周囲の貴族たちが騒然とする。リリーナは青ざめるが、すぐに声を荒げて反論する。
「これは偽物よ! 王太子殿下といえど、こんな怪しげな書類をもって私を貶めようとするなんて許されないわ!」
彼女のヒステリックな叫びに、エリオット殿下は微動だにしない。
「あなたが協力していた貴族派閥の一部が、すでに我々に寝返っています。そこからの情報提供も含め、これは決定的な証拠だ。リリーナ嬢、あなたは公爵家を利用し、さらに王宮を支配しようと企んでいた。どう弁明する?」
リリーナは目を見開いたまま何か言い返そうとするが、言葉が出てこないようだ。周囲からは「ありえない」「本当なのか」と疑惑の声が上がり始め、彼女の美しい衣装がかえって哀れに見える。
「そんな……私が、そんなことをするわけがない」
必死に否定するが、殿下の近衛兵たちはすでにリリーナの協力者を確保しに動いているはず。いま、彼女を助けに飛び出せる味方は限られている。焦りに駆られたリリーナは、何を思ったか私に向かってすさまじい剣幕で詰め寄る。
「全部あなたのせいよ、ソフィア。あなたが余計なことをしなければ、私は……!」
その気迫に驚いた私が一瞬身を引くと、リリーナは私の腕を強く掴み、振りかぶった。手に持っていた扇で殴りかかろうとするのを、ライネルが瞬時に制止する。
「やめるんだ、リリーナ!」
ライネルが間に割って入り、リリーナを押さえ込む。リリーナは抵抗しようとするが、その力は弱々しく、目には涙が浮かんでいる。もしかすると、ここに至って初めて自分が完全に破綻したことを実感したのかもしれない。
「私の……計画が……こんな形で……」
リリーナは声にならない声を上げて、ついにその場に崩れ落ちる。王宮の大舞踏会という華の舞台で、彼女は自らの野望を砕かれたのだ。エリオット殿下は近衛兵に合図を送り、リリーナを取り押さえるよう指示する。彼女は必死に泣き叫んでいるが、もはやどうすることもできない。
「こうしてあなたの嘘は暴かれました。私を悪役令嬢に仕立てた代償は大きいですよ、リリーナ」
小さな声でそう告げると、リリーナはぎらりと私を睨みつける。しかし、もう彼女に自由はない。周囲の貴族たちは事の次第に唖然としながらも、次々とリリーナから距離を取る。今回の事件は、大勢の目の前で実行されたもの。言い逃れはもはや不可能だ。
こうして、リリーナの逆襲は最終的に破綻を迎える。彼女が抱えていた巨大な陰謀もまた、殿下やライネル、そして私たちの手によって陽の下にさらされたのだった。
華やかな音楽が流れる王宮の大舞踏会。その中心に現れたリリーナは、まるで勝利を確信しているかのごとく堂々としていた。きらびやかなドレスを纏い、美しく結い上げた髪には宝石が散りばめられている。周囲の貴族たちも、彼女の華麗さに目を奪われているようだった。
「すごい、リリーナ様……やっぱり圧倒的なオーラね」
そんな噂話が耳に入ってくるが、私の胸はざわつかない。むしろ、ライネルやエリオット殿下と立てた作戦を思い出し、冷静に対応しなくてはと自分に言い聞かせる。リリーナは必ず私を狙ってくるはず。それを逆手に取って、不正の証拠を公表するのだ。
しばらくして、大きな鐘の音が鳴り響き、エリオット殿下が舞踏会の中央へ進む。殿下の登場に、場がシンと静まる。さすが次期国王の風格といったところだ。殿下は一礼をしてから、ゆっくりと口を開く。
「本日は皆さま、お集まりいただき感謝します。王宮としても、こうして貴族の皆さまとの交流が深まることを喜ばしく思います」
丁寧な挨拶が終わると、殿下はちらりと私のほうへ視線を送ってくる。その合図だ。私はロザリーとともに静かに立ち上がり、周囲の目を気にしつつ、そっと前に進んだ。
すると、リリーナがそれを見逃さなかった。すかさず私に近寄り、甘い笑顔を浮かべる。
「まぁ、ソフィア・エヴァンス。あなた、まだこんな場に来るのね。公爵家に捨てられた身で、恥ずかしくないのかしら?」
会場がざわつく。リリーナはわざと大きな声で私を挑発しているのだろう。悪役令嬢としてのレッテルを再度貼りつけ、ここで私を恥じ入らせるつもりだ。私は震える胸を抑えながら、できるだけ落ち着いた声で返す。
「恥ずかしくはありません。むしろ、あなたこそ公爵家を利用しているのではありませんか?」
その言葉に、周囲から驚きの息が漏れる。リリーナは眉をひそめ、冷たい視線を私に浴びせる。
「私が利用? 何を根拠にそんなことを言うの?」
「根拠ならあります。あなたが密かに行ってきた取引、資金の流れ、それらを示す証拠を私たちは持っています。ここにいらっしゃるエリオット殿下やライネル様とともに、すでに調査済みです」
はっきりと宣言すると、リリーナの表情が一瞬だけ強張った。しかし、すぐに取り繕うように笑う。
「ソフィア、あなたが必死に虚偽の証拠を捏造しているんじゃなくて? 悪役令嬢としての名が欲しいなら、勝手に自滅してちょうだい」
その瞬間、エリオット殿下が静かに歩み出た。殿下の背後から近衛兵が書類の束を携えている。リリーナはさすがに動揺したように目を見開いた。
「リリーナ嬢、これがあなたの行った不正取引の一部始終を示す書類です。公爵家に紛れ込ませた協力者の名前、資金の出入り、全てが記録されています。あなたはこれをどう説明するつもりですか?」
殿下の厳しい声に、周囲の貴族たちが騒然とする。リリーナは青ざめるが、すぐに声を荒げて反論する。
「これは偽物よ! 王太子殿下といえど、こんな怪しげな書類をもって私を貶めようとするなんて許されないわ!」
彼女のヒステリックな叫びに、エリオット殿下は微動だにしない。
「あなたが協力していた貴族派閥の一部が、すでに我々に寝返っています。そこからの情報提供も含め、これは決定的な証拠だ。リリーナ嬢、あなたは公爵家を利用し、さらに王宮を支配しようと企んでいた。どう弁明する?」
リリーナは目を見開いたまま何か言い返そうとするが、言葉が出てこないようだ。周囲からは「ありえない」「本当なのか」と疑惑の声が上がり始め、彼女の美しい衣装がかえって哀れに見える。
「そんな……私が、そんなことをするわけがない」
必死に否定するが、殿下の近衛兵たちはすでにリリーナの協力者を確保しに動いているはず。いま、彼女を助けに飛び出せる味方は限られている。焦りに駆られたリリーナは、何を思ったか私に向かってすさまじい剣幕で詰め寄る。
「全部あなたのせいよ、ソフィア。あなたが余計なことをしなければ、私は……!」
その気迫に驚いた私が一瞬身を引くと、リリーナは私の腕を強く掴み、振りかぶった。手に持っていた扇で殴りかかろうとするのを、ライネルが瞬時に制止する。
「やめるんだ、リリーナ!」
ライネルが間に割って入り、リリーナを押さえ込む。リリーナは抵抗しようとするが、その力は弱々しく、目には涙が浮かんでいる。もしかすると、ここに至って初めて自分が完全に破綻したことを実感したのかもしれない。
「私の……計画が……こんな形で……」
リリーナは声にならない声を上げて、ついにその場に崩れ落ちる。王宮の大舞踏会という華の舞台で、彼女は自らの野望を砕かれたのだ。エリオット殿下は近衛兵に合図を送り、リリーナを取り押さえるよう指示する。彼女は必死に泣き叫んでいるが、もはやどうすることもできない。
「こうしてあなたの嘘は暴かれました。私を悪役令嬢に仕立てた代償は大きいですよ、リリーナ」
小さな声でそう告げると、リリーナはぎらりと私を睨みつける。しかし、もう彼女に自由はない。周囲の貴族たちは事の次第に唖然としながらも、次々とリリーナから距離を取る。今回の事件は、大勢の目の前で実行されたもの。言い逃れはもはや不可能だ。
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