【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季

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【幕間①】ヴァリシュ魔法学院の栄光

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かつて、ヴァリシュ魔法学院という教育機関があった。

今から100年ほど前の当時の国王の一大政策として開学した学院で、その新しいシステムや目指す校風は当時たいへんな話題になったという。

ヴァリシュ魔法学院に入学するために必要な条件はたったの3つだ。
まずは、魔法の素養があること。
次に、14歳以上であること。
最後に、親かそれに準ずる者の承諾。
それを満たせば誰でも入学試験を受けられて、しかも受験料も学費も無償だった。

何よりも人々を驚かせたのは、貴族だけでなく広く平民にもその門戸を開いていることだ。

もちろん、条件の中の『魔法の素養があること』という時点で、ほとんどの平民は弾かれてしまう。
魔法は、貴族の特権的な能力であったからだ。

だが、ごく稀にだが、平民の中にも魔法の力をもって産まれてくる者もいる。
そういった者たちは、よほど運が良ければ貴族に養子として拾ってもらえるものの、ほとんどはその力を活かせることなく埋没してしまっていた。
魔法立国を掲げようとしている国にとって、そういう貴重な人材を発掘することは急務だったのだ。

故に、型破りだが新しい学校の形は、貴族から平民にまで受け入れられることになった。


そしてそこから、ヴァリシュ魔法学院一強の時代が始まる。

当時の王の一大政策である。王族はその学院に通うのが慣例になった。
それに伴い、王族と縁を結びたい高位貴族も集まった。
そして、そうした高位貴族と縁を結びたい下位貴族がさらに殺到し⋯⋯という具合に、学院は活況を呈した。

しかも、入学試験が当時の最難関であったことは、ヴァリシュ魔法学院に箔をつけた。
貴族たちにとって、子供をかの学院に通わせること、かの学院を卒業していることがステータスとなった。

平民も、魔法の素養をもつ者─中には、魔法が使えると偽る者もいたらしい─は、駄目元でも受験してみるのが一般的だった。
幼い頃から高い教育を受ける貴族も苦戦する試験である。もとより、まともな教育を受ける機会に乏しい平民に歯が立つわけがない。
それでも、魔法の素養をもつことだけでも認めてもらえれば、国や貴族に拾ってもらえて、より豊かな生活を送れるようになるのは間違いなかった。

こうして、貴きも卑しきも、ヴァリシュ魔法学院を目指すことが当然のような風潮になった。


そしてそれは、開学から80年ほどが経っても変わらなかった。
そんなある年──ヴァリシュ魔法学院に、久しぶりに平民の入学者が出た。

そしてその入学者こそが、学院を転落させる起爆剤となったのだ。


平民の入学者は非常に珍しいが、今までいなかった訳ではない。
20年に一度くらいは、早い段階で貴族に見出され、教育を施された平民入学者が現れることがあった。
その入学者─マリアナという少女─も、その類だと思われた。

学院生となった者は、その出自に関わらず平等であるという原則があるため、表向きは平民であろうとも軽んじられることはない。
しかし、それはあくまで建前だ。学院内には、当然、純然たる身分階級が残っている。
そのため、学院唯一の平民であるマリアナは、孤立するはずだった。

だが、マリアナは大方の予想を裏切った。

平民ならではと言うべきなのか、奔放と紙一重の自由さと、不敬を飛び超えた無邪気さを彼女は発揮した。
そしてそれは、これまた予想外なことに、家のためにという名目のもと、自身の感情は押し込めることが美徳とされた貴族社会の中、本来ははしたないと軽蔑されるような率直な感情表現が、目新しく素晴らしいものに映ったのだ。

瞬く間にマリアナは、やんごとなき令息たちの心を射止めるに至った。


そしてそのことこそが──後に『ヴァリシュの断罪劇』と呼ばれる出来事を生み出すこととなった。
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