精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護023 バース伯爵様

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精霊の加護
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№23 バース伯爵様

 3日目、今日で定期馬車はバースに到着する。護衛任務として出動機会があったのは、ワイバーン3体の襲撃を撃退したときだけだった。
 定期馬車一行の団長からは、その後、再三復路の護衛も頼まれたが、バースを拠点に火の特大精霊を探すので丁重にお断りした。

 そしてとうとう湯の町バースに到着。火山エリアのこの界隈では至る所から温泉が出ており、バースは大きな公衆浴場がある。いわゆるテルマエだ。これが大人気らしい。

 俺たちは定期馬車一行と別れて冒険者ギルドに行った。そこでクエスト達成報告に、ワイバーンの素材と魔石を換金すると、金貨5枚、大銀貨8枚になった。ひとりの取り分は金貨1枚で、端数の大銀貨8枚はパーティ資金にした。

 で、俺はCランクに上がった。北府ギルドのみなしCと言う評価は、護衛確保のための苦肉の策ではなかったようだ。
 新たに受け取ったCランクのカードはブロンズカードだ。これまでのスチールカードとはひと味違う。

「さて、宿屋を探そうか?ベスさん、地元だよね?安くていい宿屋に心当たりはある?」
「ああ、あるぞ。案内しよう。」やはり地元の人がいると心強いな。

 ベスさんは町の中心を離れ、北へ向かった。中心から離れると宿も減るんじゃないのかな?と思ったが、地元だから穴場の宿とかを知っているのかもしれない。

 じきに大きなお屋敷が見えて来た。ベスさんはお屋敷に向かってずんずん歩いていく。これが宿屋なのか?
「待たれい。当家に何用か?」門番が誰何して来た。
「役目、大儀。」ベスさんが答えた。
「に、二の姫様?」門番が面食らっている。
 ベスさんが首飾りの紋章を出すと、門番詰所が蜂の巣を突いたような大騒ぎになって、伝令が屋敷に走る。

「ひょっとしてベスさんの実家?」
「うむ。皆は私の客人として当家に逗留すればよかろう。費用も掛からん。」
「いやいや、庶民が泊まれるとこじゃないんじゃないの?」
「遠慮は無用ぞ。ところでゲオルクどの、私の婚約者と言うことでよろしく頼む。」
「は?」
「Aランクになったら私を口説くのであろう?」
「確かにそう言ったけど…。」
「ゲオルクどのが私を口説いて、私がOKすれば夫婦ではないか。ゆえに現状は、婚約と言っても差し支えあるまい。
 父上様にお会いすれば、どうせ縁談が出るに決まっておるのだ。私は庶子で適齢期も過ぎておるゆえ、嫁ぎ先などたかが知れておる。汲々としておる貧乏下級貴族か、同列の貴族ならば好色爺の妾よな。
 ゲオルクどのを婚約者として認めさせ、縁談をすべて潰したいのだ。もちろん便宜上のことゆえ、深く考えることはないぞ。」
「そう言うことなら引き受けるよ。それにしても、ベスさんの縁談相手が貧乏貴族か爺さん貴族の妾だけってことはないんじゃないの?ベスさんは美人だし、それに、その…。」
「ふふふ、エロい体か?だからこその妾であろうな。騎士団にいたじゃじゃ馬など、誰が正妻にしたがるものか。」

「それに適齢期はまだ大丈夫よ。」
「リーゼ、貴族の女子はな、成人の15歳で社交界デビューすれば早々に嫁ぎ先が決まって行くのだ。20歳ともなると売れ残りよな。何かあると勘繰られることもしばしばある。」
「何を勘繰られますの?」
「様々だな。何かしら問題があるのだろうと噂の種になるのだ。私のように騎士団に入るなど、城勤めの職を持てば別だがな。」

「20歳過ぎたら年増扱いじゃ、貴族なんてやってられないねぇ。」
「カルメン、そうは言うが庶民だって25歳あたりがピークと聞くぞ。皆もそろそろ実家からの圧力があるのではないか?」
「ん?あたしはいい男がいるから平気だよ。」

「え?カルメンさん、そんな人いるの?」俺は思わず割り込んでしまった。
「いるよ。そいつはあたしを一途に想ってくれてる坊やだと思ってたんだが、実は気の多い奴だったんだ。あたしも含めて4人は確実に手を出してるねぇ。」
 おのれ、とんでもない奴だ!
「そんな奴、やめた方がいいよ!」ぷーすか怒っている俺を見て、女性陣4人が爆笑した。え?何で?

 ちょうどそこへ、屋敷へ伝令に行った門番が、家令っぽい人を連れて来た。
「二の姫様、お帰りなさいまし。」
「ああ、爺やか。元気そうで何よりだ。」
「こちらの皆様は?」
「私の客だ。今は冒険者をしていてこの方たちとパーティを組んでいる。こちらから順にリーゼどの、ジュヌどの、カルメンどの、ゲオルクどの、ゲオルクどのの連れ子のツリとクレだ。そして私はゲオルクどのと、先頃婚約した。」
「は?何ですと?旦那様はご存じで?」
「いや、まだ申し上げておらぬ。この度、父上様に紹介するためにゲオルクどのをお連れしたのだ。」
「ちょっと待って下さいまし。そのようなご勝手なことなど、旦那様がお許しになるか分かりませんぞ。」
「何を言う。父上様も御正室様も母上様も爺やも、会うたびにいい人はおらんのかとせっついて来たではないか?まぁそれは後でよい。長旅で疲れておる。早く皆様をご案内せぬか。」
「これは失礼致しました。ささ、皆様どうぞこちらへ。」

 俺たちは応接室に案内された。
「皆様、お部屋の準備をさせますのでしばらくお待ち下さい。」
「爺や、ゲオルクどのの部屋は私の部屋の隣にな。」
「何をおっしゃいます。」
「遠いと、ゲオルクどのが夜這いに来られぬではないか。」
「二の姫様、お戯れも大概になされませ。結婚前の男女が同衾などもっての外です。」
 ぎろりと俺を睨んだ顔がみるみる赤くなり、こめかみに血管が浮いて来た。そのお怒りは俺のせい?

「爺や、私はもう25歳ぞ。小娘ではないのだ。」
「いけませぬ。」顔が真っ赤だ。茹ダコだ。怒ってるなぁ。
「左様か。ゲオルクどの、相すまぬ。今宵の秘め事は我慢してくれ。」
 残りの女性陣3人が下を向いて震えている。必死に笑いを堪えているのだ。爺やさんの歯軋りの音が聞こえて来るぞ。

「ところで爺や。客人たちに当家自慢の温泉を振舞いたいのだが、大浴場は空いておるか?」
「空いております。」
「では皆、参ろうか?」
「二の姫様、ゲオルク様も一緒に行きますので?」
「もちろんだ。何か問題があるか?」ベスさんが当然のように答える。
「流石にそれは…。」
「爺や、何を勘繰っておる。安心せよ。他の3人と子供ふたりがいるのだぞ。まだ陽のあるうちから盛ったりなどするものか。」
「左様なことは申しておりませぬ。二の姫様のお肌を殿方の眼に晒してはいけませぬ。と申し上げているのです。」
「ゲオルクどのは婚約者であるし、すでに男女の仲。今更ではないか。って、おい、爺や、何と言うことを言わせるのだ。爺やは意外とむっつりスケベよな。あとで婆やに言うてやろうか?」
「二の姫様、お戯れが過ぎますぞ。」ベスさんって、さっきから爺やさんを揶揄い過ぎな気がする。苦笑

 しかし、結局ベスさんが押し切って混浴になった。浴室着を着ると言う条件は付いたけれども。
 もっとも浴室着を着て浴室に入ったベスさんは、湯に浸かる前にさっさと浴室着を脱ぎ捨てていたが…。笑

 ふぅ。いい湯だ。

 バース伯爵邸の大浴場は、敷地から自噴する火山性温泉で硫黄臭プンプンの白濁硫黄泉だ。初めて入るが、これぞ温泉と言う感じだな。非常に気に入った。
 ツリもクレも、入浴や水浴びの類が好きだから温泉も大好きだ。ふたりとも俺の両横にぴったりくっついてご機嫌である。

 正面を見ると温泉の湯気で霞んではいるが、4人のお姉さま方とたわわなメロン8個が眼に入る。白濁湯のため、メロンの上1/3しか見えないが、それがかえって想像を掻き立て、実にエロい。眼福眼福。

「相変わらず、ツリとクレはゲオルク君にべったりね。」
「わたくしたちにはなかなか心を開いてくれませんわね。」
「ま、あたしたちは普通なら、精霊たちを見ることができないからね、仕方ないさ。」
「確かにな。ゲオルクどのの契約精霊だからこそ、私たちは精霊たちを見ることができる訳だしな。」

 ふたりが両横からごにょごにょと耳打ちをして来る。なるほどね。
「ふたりとも、4人は仲間だと言ってるよ。」
「ほんと?」
 また両横からごにょごにょ言って来た。この内容は流石に伝えにくいな。
「今はなんて言ったんですの?」
「えーっと。」
「伝えにくいことのようだね。」
「まぁそんな感じかな。」
「いいよ、気にしないから言ってみな。」
「4人からは俺の魔力の匂いがするから好きなんだって。」
「え?私たちの体にゲオルク君の匂いが染みついてるの?」
「いえ、魔力の匂いだよ。匂いと言うと正確ではないけどね。精霊たちは魔力の存在を感じるからね。」
「つまり、一昨日の夜のせいなのだな?」
「すみません。」俺は顔を半分湯に沈めた。ぶくぶくぶく。

 すっかり寛いで大浴場から出ると、バース伯爵が帰館したと言う連絡が来た。これからみんなでご挨拶に行く。

 謁見の間とかに行くのかと思っていたら、食堂に案内された。夕餉にご招待されたようだ。まぁ娘とその友人に会うとなれば非公式な面会だからな。ここの領主の伯爵としてではなく、ベスさんの父親として会ってくれる訳だ。

 席について間もなく、バース伯爵が現れたので、俺たちは一旦立って出迎えた。伯爵が着席して、伯爵に席を勧められてから俺たちも席に座った。ツリとクレはずっと座ったまんまだったが。冷汗

 ベスさんが口火を切る。
「父上様、ご無沙汰しております。エリザベス、帰りました。」
「ベス。久しいな。それにしてもお前はいつも急だな。せめて前触れくらい寄越さんか。」伯爵様は柔和な笑みを浮かべている。ベスさんにデレデレだ。
「申し訳ありません。ところで、御正室様と母上様と兄上様は?」
「わが妻ふたりは大事な亭主をほっぽり出してふたり仲良く湯治村よ。正室と側室が仲良く亭主をほっぽり出すなど聞いたこともないわ。
 アンドリューは、昨日早馬が来て、すでに北府に向かっておる。何やら東府で重大なことがあったようでな、北府にも王都経由で情報が来て主に魔法学院が大騒ぎだそうだ。貴族に緊急招集が掛かるかもしれぬので、わしの名代で行かせたのだ。で、そちらの皆様は?」きっと俺たちのことが発表されんだな。

「こちらがゲオルクどの。両隣がゲオルクどのの連れ子のツリとクレ。それから順にリーゼロッテどの、ジュヌヴィエーヴどの、カルメンシータどのです。
 それから私とゲオルクどのは婚約致しました。」
「セバスから聞いた。お前には縁談が来ているのだがなぁ。」
「父上様。すべてお断りして下さい。庶子で行き遅れ、しかも元騎士団で今は冒険者のじゃじゃ馬ですからね。どうせ、貧乏貴族が当家に取り入るためか、体目当てのスケベ爺が妾に欲しいと言う程度でしょう?」

「ベス、父を見くびるでない。そなたをヒモ同然の貧乏貴族になどにやる気はないし、エロ爺の妾になど出すものか。そのような者どのは皆、門前払いよ。侯爵家か伯爵家の年相応の者しか取り次ぐ気はないぞ。」
「でも御次男以下でしょう?それでは爵位も付かないか、付いてもせいぜい騎士爵程度ではないですか。」
「流石にそなたの条件で、まともな貴族の嫡男の正室は無理だな。」
「ならば私はゲオルクどのの元に嫁ぎます。」

「ゲオルクどの、ご本人を前にして失礼ではあるが許されよ。娘の将来が掛かっているのでな。そのお子たちは肌の色も珍しい。そなたの実のお子ではないな。なぜ面倒を見ておられる?」
 平民の俺に「どの」と敬称を付けた。伯爵様はなかなかの人物のようだ。ベスさんの御父上だし、正直に話して差し支えないな。

「この子たちは俺と契約した精霊です。」
「なんと!」
「予め聞かれそうなご質問に答えておきますが、契約した精霊は普通の人でも見ることができます。また、魔力量が多ければ複数の精霊と契約できます。」
「複数の精霊と契約だと?そんなことがあるのか?」
「現に御眼の前に。」

「ん?ゲオルク…と言うことはそなた東部の出よな。そうか、これか!これが発表になったのなら確かに魔法学院は大騒ぎだ。これまでの常識が根底から覆ったのだからな。」伯爵様は流石に鋭い。あっと言う間に看破だ。
 俺とベスさんが北府魔法学院に行ったときはそんなじゃなかったから、入れ違いで情報が届いたか。もし分かってたら引き止められていただろう。間一髪だったな。

「…待てよ、精霊と契約したと言うことは、ゲオルクどの、そなた、まさか精霊魔術師か。」
「はい。」
「なんと、伝説の精霊魔術師まで出ておったか。これは確かに一大事だ。」
「実は御領内に火の精霊がいないか探しに来たのです。」

「あの、父上様、私に来ている縁談は断って…。」
「ベス、今はゲオルクどのと重大な話しているのだ。縁談は心配せずとも皆断る。今しばらく控えおれ。
 ゲオルクどの、そう言うことなら協力しようぞ。何か望みはあるか?」
「はい。古の火の精霊魔術師はこの地方の出身だそうです。その火の魔術師の出身の村とか、契約した火の精霊がいた場所とかの伝承はありませんか?それから精霊と話せる人はいませんか?」
「すぐ調べさせよう。
 セバス、そこで聞いていたな?すぐ手配せよ。教会にもな、片っ端から記録を調べさせるのだ。」後ろに立って控えていた爺やさんが動員された。

「伯爵様、ご協力感謝致します。」
「よいのだ。古の火の精霊魔術師が復活する。素晴らしい!しかもそれがわが婿とは。非常に愉快だ。
 おい、今日は祝いだ。酒を持て。ゲオルクどの、今夜は付き合ってもらうぞ。ベスもよく、こんな素晴らしい婿どのを見付けて来たものだ。さぁ、お嬢さんたちも、精霊様たちも…?」

 バース伯爵の勢いに押され、ツリとクレが俺の後ろに隠れた。
「すみません、人見知りなんです。」

「左様か。それはすまなかったな。ところでゲオルクどの、婚約発表は早い方がいいな。明日にでもするか?」
「父上様、それはあまりに早急な。」
「ベス。ゲオルクどのはお見受けするところ、そなたより若いであろう。20歳ぐらいか?お前はもう間もなく26歳になる。ゲオルクどのは平民の出だから庶子でも気にはすまいが、そなたもさっき申しておった通り、そなたは行き遅れのじゃじゃ馬だ。早く捕まえておかんと、ゲオルクどのはこれからモテモテになるから若い娘に掻っ攫われるぞ。」
「そのような…。」

「大ありだ。考えてもみよ。伝説の精霊魔術師でしかも前代未聞のマルチの精霊魔術師だぞ。東府公は間違いなくお抱えにしようとなさるだろうし、ともすると王家からもお声が掛かるやもしれん。そしたら叙爵もあり得るであろうな。
 悪いことは言わぬ。親の贔屓目もあるが、そなたは美貌で、魅惑的な体をしており、色香がある。男は放っておくまい。しかしな、色褪せるのも速いものぞ。今がピークと心得よ。ピーク時に高値で売り捌くのだ。」
「ち、父上様!」ベスさんは涙目になってプルプルしているが、伯爵様のこの台詞、実は他の3人も青くなって聞いていた。3人ともベスさんより1つ上だからな。

「伯爵様、実はベスさんをお迎えするのは、俺がAランクに上がってからと言うお約束なのです。いわば俺にとってのご褒美。Aランクになってようやくベスさんに相応しい男になれると思っております。」
「左様か?婚約発表すれば、ベスの縁談は断りやすかったのだがなぁ。では仕方あるまい。ゲオルクどのが早々にAランクになるのに賭けて、ベスの縁談はすべて断るか。」
「父上様、申し訳ありません。」ベスさんはほっとしている。
「さ、ゲオルクどの、いや、婿どの。今宵は呑み明かそうぞ。皆さんもな。」

 伯爵様は、絶対にベスさんの縁談回避の婚約作戦を見抜いておられたな。それでベスさんを散々弄り倒したのだ。しかしベスさんもだが、他の3人もかなり堪えてたな。しっかりフォローしないとな。

 それにしても、ルードビッヒ教授も大司教様も、東府公爵様からお召しが来るとか、場合によっては王家からも誘いが来るとか言ってたが、伯爵様も同じようなことを言われた。本当にそんなことがあるのだろうか?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/2/13

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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