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精霊の加護074 ラスプ村開発計画
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精霊の加護
Zu-Y
№74 ラスプ村開発計画
俺がラスプ村の領主になったら、現村長を俺の代官に任命して、村の実質的な運営を任せることにした。ただし、徴税については東部公爵様から派遣される役人に任せることになる。
「神父さん、お願いがあります。俺が領主になったら、相談役としていろいろな相談に乗ってくれませんか?」
「わしがか?うーん…、まあ、乗り掛かった舟じゃな。わしが力になれるとも思えんが、相談に乗るくらいならいつでもいいぞ。」
「では早速。村長さんも聞いて下さい。俺は領主を引き受けるにあたり、東部公爵様から『税収を倍にせよ。さすれば余の腹は痛まぬ。』と言われました。
どう言うことかと言いますと、今まで東部公爵様の直轄領だったラスプ村の税収はすべて東部公爵様に納められて来ました。
俺が領主になると、ラスプ村の税収は一旦俺に入りますが、俺は上納金として東部公爵様に税収の半分を納めます。
つまりラスプ村の税収を俺と東部公爵様で折半することになる訳です。ですから、ラスプ村の税収が倍になれば、東部公爵様の取り分は変わらない訳です。」
「ゲオルク、まさか税率を倍にする気か?そんなの、断じて許さんぞ。」村長が気色ばんだ。
おや、村人の増税を拒むか。思ってたよりも、多少は見所があるじゃないか。俺はちょっとだけだが、村長を見直した。
「何をバカなことを。単に税を倍にしたら村人が苦しむだけじゃないですか。俺が目指すのは村の所得を倍にして、その結果として税収を増やすことですよ。村人が潤うことが最優先です。」
「そんなことが簡単に出来るのなら、とっくにやってるわい。」どうせろくに工夫もして来なかったくせによく言うよ。
「それ程、難しいことではありませんよ。まずは精霊魔法で村の農地の収穫を倍以上に上げます。」
「「!」」
「それと新たな事業を興します。キノコの栽培です。」
「「?」」
「ご承知の通りキノコは特定の樹木の近くに生えます。ですからキノコが好む樹木だけの畑を作って、そこでキノコを栽培するんです。」
「しかしその樹木の畑ができるには、何年も掛かるではないか。」
「村長さん、精霊魔法を使えばそんなのすぐにできますよ。」
「そんなことまでできるのか?」
「できますよ。
話は戻しますが、トリュフダケはクヌギなどの傍、パインダケはアカマツの傍に生えますよね。そして土地が痩せてる程、これらのキノコはよく育ちます。つまり、これらのキノコは、樹木と協力関係にあって、樹木が土から養分を摂るのを助けてるんだと思います。だから土が痩せてる程、キノコが育つ訳です。つまりその環境を再現すれば、トリュフダケやパインダケの高級食材が収穫出来て、高値で売れる訳ですよ。」
「トリュフダケやパインダケが高級食材?」村長が訝し気に聞いて来た。
「東府ではいい値が付きますよ。王都ではさらに跳ね上がります。西府、南府、北府でも、東府よりかなりの高値が付きますね。
それと、シイキノコなんかは朽ちた樹木に生えますよね。これらのキノコは、樹木との協力関係ではなくて、朽ちた樹木を土に返すのが役割なのでしょうね。このようにいろいろなキノコに、それぞれが育ちやすい環境を与えて、様々なキノコを生産し、出荷するんですよ。」
「なるほどの。キノコとは、わしらには身近過ぎて、盲点じゃったわい。よく考えられておるのぉ。」神父さんが横でしきりに感心している。
「高級食材となるトリュフダケやパインダケは旬の時期だけですが、手頃な食材のシイキノコ、シメジノコ、エノキノコ、エリンギノコ、ナメコノコ、マイキノコ、マシュルムコなんかは、一年中食材としてのニーズがありますからね。ラスプ村ブランドとして定着させて軌道に乗れば、村にはコンスタントに富をもたらしてくれると思いますよ。そうすれば税収も上がって東部公爵様との約束も果たせる訳です。」
「いや、いくらなんでもたかがキノコでそんなことが…。」村長さんは信じられないようだった。頭が固い。
まぁ、この村は豊かな大森林の恩恵に預かっているからな。村に住んでるとピンと来ないかもしれないが、森で普通に採れるキノコや山菜が、都会に行けば、高級食材になることはごく普通だ。
東府は森の都だからそれほどでもないが、王都、西府、南府、北府では、森の恵みの価値は跳ね上がるのだ。
ラスプ村の開発に向けて、具体的に動き出すのは、俺が正式に領主に就任してからのことになる。取り敢えず、神父さんや村長との話はそこまでにして、俺と神父さんは村長宅を出て、そのまま教会へ向かった。教会で神父さんと別れ、俺とお姉様方と精霊たちは、村外れの自宅へと帰った。
「ゲオルクどの、キノコの栽培を新規の事業として立ち上げることはいつから考えていたのだ?」
「あー、あれ?つい最近だよ。リーゼさんの村に行ったらさ、村ぐるみで運営しているブレメンフォルスト工房で、樹木畑を作ってたんだよね。あれが眼から鱗でさ。だったらキノコの畑もありだよなー、って思ったのが切っ掛けなんだよね。」
「あら、そうだったの?私の故郷がゲオルク君の役に立ってよかったわ。」
「なるほどねぇ。高級キノコは高値で取引されるし、安価なキノコは食材に欠かせないし、あたしゃ、いいとこに眼を付けたと思うよ。」
「ありがと。カルメンさんがそう見立ててくれるなら、間違いないって気がするよ。」
「トリュフダケがいっぱい取れたら、いろんなお料理にトリュフダケをふんだんに使えますわね。うふふ。」流石、美食の中部料理で育ったジュヌさんだ。
「僕もキノコ料理は大好きだよ。キノコのクリームパスタとか、美味しいよねぇ。」パスタは今や全国区だが、元はビーチェさん出身の南部料理だからな。
その日の午後は、森に行くことにした。弓矢の腕を磨き、ツリと出会った森だ。俺の原点だな。
森に行く主たる目的は、キノコ栽培のための樹木畑~キノコ畑~の場所の選定だ。ラスプ村を出るとすぐ森だ。キノコ畑を作るならなるべく村に近いとこがいいよな。
ラスプ村は森の中に切り開いた村であるから、村のまわりはすべて森だ。キノコ畑の候補地はそこら中にあった。
シイキノコなどの安価でいつも出荷できるキノコ畑はラスプ村の近くへ作り、パインダケやトリュフダケなどの高級食材のキノコ畑は、実際にパインダケやトリュフダケがよく取れるポイントの周辺をキノコ畑にすればいいだろう。
森の中を小一時間歩いたが、嫁たちはピクニック気分だった。
キノコ畑の候補地に目星を付け、森に来た主要な目的を達成したので、あとはフリーだ。
俺は、精霊たちが喜ぶだろうと言うことで、森の中にあるぬる湯の温泉に連れて行くことにした。この温泉は人肌くらいの温度で、心地よく長時間使っていられる。
透き通ったぬる湯は微発泡なので、浸かっていると体に小さな泡の粒が無数に付く。これがプチプチと弾けて心地よい刺激となるのだ。
狩りの帰りには、ちょくちょくここの温泉に来て、ゆっくり浸かっていた。このぬる湯に浸かったまま、ぼーっとして、しばし時を忘れるのは、大層心地よかった。
案の定、精霊たちは着ていたものを脱ぎ捨て、温泉に飛び込んだ。一瞬、お姉様方もそうならないかなーと考えてしまったことは心の奥にしまっておく。苦笑
「よし、じゃぁ俺も。」俺は装備を外して、ぬる湯の温泉に浸かった。ああ、久ぶりだ。
すると何と言うことでしょう。
お姉様方が装備を外して、脱いでいるではないか!何の躊躇いもなく下着まで脱ぐと、たわわなメロンボールが、俺の目を釘付けにしたのは言うまでもない。
そして、そのままお姉様方も温泉に入って来た。おー、結局そうなったではないか。ラッキー♪
「あら、随分ぬるいわね。」
「うわー、細かい泡が纏わり付いて来るじゃんさー!」
「うむ、これは心地よいな。このまま眠ってしまいそうだ。」
「ところで、ゲオルクさん。視線に遠慮がございませんわ。」
「お構いなく。ってか、眼を逸らすの、無理。」
「呆れた。開き直りましたのね。」
「そりゃいつものことじゃないか。ジュヌ、ゲオルクにそれを言っても無駄だよ。」
「そうだな。ここまでガン見されると、むしろ潔くて清々しいとさえ思えて来るな。」
「うわー、ベスも理解あるねー。でもまぁ、ゲオっちだしねー。」
「ゲオルク君、よかったわね。」
木漏れ日の中で皆の笑い声が響く。長閑である。
いよいよ明日は国境の町、ミュンヒェーに向けて出発である。その前に、森の温泉でリフレッシュした俺たちは、しっかりと英気を養うことができた。
森から実家に戻る頃には日も暮れて来て、東の空に月がくっきりと昇って来た。ああ、今日は満月か。それにしてもでかい。今夜はスパフルみたいだな。
満月をフルムーン、月が最もが近付いて大きく見えるのをスーパームーンと言う。その両方が重なると、スーパーフルムーン、略してスパフルムンなのだ。俺が考えた。笑
スパフルの夜は、女性はあっち系のスイッチが入りやすくなる。今宵、実家なのが残念だ。流石に両親と弟のアルベルトがいる中で、お姉様方とそう言うことはできないしな。苦笑
帰宅すると、ちょうど夕餉の準備ができたとこで、すぐに皆で夕餉となった。アル以外は、晩酌しつつの夕餉だ。
母さんも父さんに付き合ってそこそこ呑むし、すっかりわが家に馴染んだお姉様方も、もちろん遠慮などせずに、普通に晩酌に加わっている。
ビールはヴァイツェン、つまみは枝豆他、夕餉のおかずの品々だ。
今宵は、精霊たちも呑むというのでヴァイツェンを呑ませてやった。もちろん俺からの口移しでだ。
第三形態になった精霊たちは、酒を呑むようになった。ただし、俺から口移しでないと呑まない。そして、口移しで酒を呑ませるとすぐに全身が輝く。これは、魔力が満タンになった証だ。
魔力は体液に存在し、俺は普段はキスによって、唾液に含まれる魔力を精霊たちに供給しているのだが、酒を含ませると、魔力供給の効率が上がる。どうも酒には体液中の魔力を増幅する効果があるようなのだ。これをルードビッヒ教授へ報告したら、相当スイッチが入っていた。
そう言えば酒の古代語はスピリタス。精霊を意味する古代語と一緒だ。ちなみに、俺たちのパーティ名、スピリタスは精霊を意味する古代語から取っている。
精霊と酒がどちらも古代語でスピリタスと言うのは、ひょっとすると、スピリタス=酒は、スピリタス=精霊への魔力供給を増幅するのに由来しているのかもしれないな。
俺からバイツェンを口移しで貰って呑んだ精霊たちが輝くのを見て、アルのスイッチが入った。
「アルもやるー!」
「アル、子供は、お酒はダメよ。」
「やー、アルもツリたちを光らすのー!」
「ヒルダ、まぁいいじゃねぇか。呑まなきゃよ。ちょっと口に含むぐれぇ大事ねぇって。」
「カール、あんたまたそんなこと言って!
子供の頃のゲオルクに晩酌付き合えって言って無理やり呑ませてとんでもないことになったでしょう!」マジか!
「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよな。無理やりじゃねぇぞ。ゲオルクは、喜んで呑んでたじゃねぇか。それに、その後だって、ゲオルクがちょっと陽気になって、燥いだだけだろ。」
「その後、ひっくり返って熱出したじゃないの!」
「ガキはすぐに熱を出すんだよ。別に酒のせいかは分からないだろ。」
「どこの世界に子供に酒を勧める親がいるってのよ。」
「そんなの東部じゃ当たり前だ。俺だって親父からそう仕込まれたんだ。大体、酒は命の水とも言うんだぞ。酒を呑めない男なんて、まともな東部の男じゃねぇ。」
「ちょっと、東部のせいにしないでよね。まっとうな東部の人間は子供に酒を呑ませないわよ。」え?そうなの?
言い合いになる父さんと母さん。それでこの後、仲直りの儀式だとか言ってイチャイチャしだすんだ。うん、懐かしい。笑
「なぁ、父さん、母さん、ちょっと聞いていいか?大人が付いてたら子供が酒を呑んでもいいってルール、あれはまさかうちのローカルルールか?」
「違うわよ。」
「じゃぁやっぱ東部のローカルルール?」
「何言ってんの!カールだけのルールに決まってるでしょう!」マジか!
「いや、ゲオルク。わが家のルールだ。お前も男なら息子はそうやって育てろ。俺やお前の爺さんのようにな。」なぜか父さんがサムズアップをしている。
んぐ、んぐ、んぐ。ぷはぁ~!そう言ってる間にアルがヴァイツェンに手を出していた。
「キャー、アル、何やってんの!」母さんが悲鳴を上げる。
「いい呑みっぷりじゃねえか!流石、俺の息子。」父さんは逆の反応をしている。笑
その後、アルはコテっとひっくり返って、すやすやと眠り出した。
ジュヌさんが状態異常からの回復魔法を掛けて、アルの酩酊状態を回復してくれたのだが、それを見ていた母さんは、ジュヌさんにもの物凄く感謝し、父さんは引きつって、俺には絶対にその魔法を掛けないでくれと、ジュヌさんに懇願していた。笑
夕餉の後の寛ぎタイム。
さっきのアルへのお酒云々で揉めた父さんと母さんは、仲直りの儀式を始めた。何のことはない、ふたりでイチャイチャしてるだけなのだが…。苦笑
「ちょっと、父さん、母さん。俺たちがいるのに何イチャついてんのさ。」
「ゲオルク、喧嘩の後は仲直りが大切なのよ。私たちがこうやって仲直りするのは、あんたも知ってるでしょう?いまさら何言ってんの。」
「いや、だってアルもいるしさ。」
「眠っちまってるだろうが。」
「いや、皆もいるしさ。」
「うるせぇなぁ。羨ましかったらお前もイチャイチャすりゃぁ、いいじゃねぇかよ。
よう、嬢ちゃんたち、この頭の固い馬鹿息子を天国に連れてってやってくんな。」
「何言ってん…、」
「「「「「はい。」」」」」
「え?」
お姉様方は、父さんと母さんのイチャイチャを見てスイッチが入ったらしい。そう言えば、今宵は女性のあっち系のスイッチが入りやすくなるスパフルムン(=スーパームーンでフルムーン)だった。
そのまま拘束された俺は、お姉様方に、俺の部屋に引きずり込まれ、ひん剥かれてあんなことやこんなことを…。ああ、もうお婿に行けない身体にされてしまった。笑
マイドラゴンは、ホワイトブレスを吐いてくたっとなるたびに、ジュヌさんの回復魔法とカルメンさんのバフの術で繰り返し叩き起こされ、俺は何度も何度も天国へと引きずり込まれたのだった。
最後になるが、この夜、お姉様方の魔力量の上限が100ずつ上がったことを、付け加えておく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/6/12
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№74 ラスプ村開発計画
俺がラスプ村の領主になったら、現村長を俺の代官に任命して、村の実質的な運営を任せることにした。ただし、徴税については東部公爵様から派遣される役人に任せることになる。
「神父さん、お願いがあります。俺が領主になったら、相談役としていろいろな相談に乗ってくれませんか?」
「わしがか?うーん…、まあ、乗り掛かった舟じゃな。わしが力になれるとも思えんが、相談に乗るくらいならいつでもいいぞ。」
「では早速。村長さんも聞いて下さい。俺は領主を引き受けるにあたり、東部公爵様から『税収を倍にせよ。さすれば余の腹は痛まぬ。』と言われました。
どう言うことかと言いますと、今まで東部公爵様の直轄領だったラスプ村の税収はすべて東部公爵様に納められて来ました。
俺が領主になると、ラスプ村の税収は一旦俺に入りますが、俺は上納金として東部公爵様に税収の半分を納めます。
つまりラスプ村の税収を俺と東部公爵様で折半することになる訳です。ですから、ラスプ村の税収が倍になれば、東部公爵様の取り分は変わらない訳です。」
「ゲオルク、まさか税率を倍にする気か?そんなの、断じて許さんぞ。」村長が気色ばんだ。
おや、村人の増税を拒むか。思ってたよりも、多少は見所があるじゃないか。俺はちょっとだけだが、村長を見直した。
「何をバカなことを。単に税を倍にしたら村人が苦しむだけじゃないですか。俺が目指すのは村の所得を倍にして、その結果として税収を増やすことですよ。村人が潤うことが最優先です。」
「そんなことが簡単に出来るのなら、とっくにやってるわい。」どうせろくに工夫もして来なかったくせによく言うよ。
「それ程、難しいことではありませんよ。まずは精霊魔法で村の農地の収穫を倍以上に上げます。」
「「!」」
「それと新たな事業を興します。キノコの栽培です。」
「「?」」
「ご承知の通りキノコは特定の樹木の近くに生えます。ですからキノコが好む樹木だけの畑を作って、そこでキノコを栽培するんです。」
「しかしその樹木の畑ができるには、何年も掛かるではないか。」
「村長さん、精霊魔法を使えばそんなのすぐにできますよ。」
「そんなことまでできるのか?」
「できますよ。
話は戻しますが、トリュフダケはクヌギなどの傍、パインダケはアカマツの傍に生えますよね。そして土地が痩せてる程、これらのキノコはよく育ちます。つまり、これらのキノコは、樹木と協力関係にあって、樹木が土から養分を摂るのを助けてるんだと思います。だから土が痩せてる程、キノコが育つ訳です。つまりその環境を再現すれば、トリュフダケやパインダケの高級食材が収穫出来て、高値で売れる訳ですよ。」
「トリュフダケやパインダケが高級食材?」村長が訝し気に聞いて来た。
「東府ではいい値が付きますよ。王都ではさらに跳ね上がります。西府、南府、北府でも、東府よりかなりの高値が付きますね。
それと、シイキノコなんかは朽ちた樹木に生えますよね。これらのキノコは、樹木との協力関係ではなくて、朽ちた樹木を土に返すのが役割なのでしょうね。このようにいろいろなキノコに、それぞれが育ちやすい環境を与えて、様々なキノコを生産し、出荷するんですよ。」
「なるほどの。キノコとは、わしらには身近過ぎて、盲点じゃったわい。よく考えられておるのぉ。」神父さんが横でしきりに感心している。
「高級食材となるトリュフダケやパインダケは旬の時期だけですが、手頃な食材のシイキノコ、シメジノコ、エノキノコ、エリンギノコ、ナメコノコ、マイキノコ、マシュルムコなんかは、一年中食材としてのニーズがありますからね。ラスプ村ブランドとして定着させて軌道に乗れば、村にはコンスタントに富をもたらしてくれると思いますよ。そうすれば税収も上がって東部公爵様との約束も果たせる訳です。」
「いや、いくらなんでもたかがキノコでそんなことが…。」村長さんは信じられないようだった。頭が固い。
まぁ、この村は豊かな大森林の恩恵に預かっているからな。村に住んでるとピンと来ないかもしれないが、森で普通に採れるキノコや山菜が、都会に行けば、高級食材になることはごく普通だ。
東府は森の都だからそれほどでもないが、王都、西府、南府、北府では、森の恵みの価値は跳ね上がるのだ。
ラスプ村の開発に向けて、具体的に動き出すのは、俺が正式に領主に就任してからのことになる。取り敢えず、神父さんや村長との話はそこまでにして、俺と神父さんは村長宅を出て、そのまま教会へ向かった。教会で神父さんと別れ、俺とお姉様方と精霊たちは、村外れの自宅へと帰った。
「ゲオルクどの、キノコの栽培を新規の事業として立ち上げることはいつから考えていたのだ?」
「あー、あれ?つい最近だよ。リーゼさんの村に行ったらさ、村ぐるみで運営しているブレメンフォルスト工房で、樹木畑を作ってたんだよね。あれが眼から鱗でさ。だったらキノコの畑もありだよなー、って思ったのが切っ掛けなんだよね。」
「あら、そうだったの?私の故郷がゲオルク君の役に立ってよかったわ。」
「なるほどねぇ。高級キノコは高値で取引されるし、安価なキノコは食材に欠かせないし、あたしゃ、いいとこに眼を付けたと思うよ。」
「ありがと。カルメンさんがそう見立ててくれるなら、間違いないって気がするよ。」
「トリュフダケがいっぱい取れたら、いろんなお料理にトリュフダケをふんだんに使えますわね。うふふ。」流石、美食の中部料理で育ったジュヌさんだ。
「僕もキノコ料理は大好きだよ。キノコのクリームパスタとか、美味しいよねぇ。」パスタは今や全国区だが、元はビーチェさん出身の南部料理だからな。
その日の午後は、森に行くことにした。弓矢の腕を磨き、ツリと出会った森だ。俺の原点だな。
森に行く主たる目的は、キノコ栽培のための樹木畑~キノコ畑~の場所の選定だ。ラスプ村を出るとすぐ森だ。キノコ畑を作るならなるべく村に近いとこがいいよな。
ラスプ村は森の中に切り開いた村であるから、村のまわりはすべて森だ。キノコ畑の候補地はそこら中にあった。
シイキノコなどの安価でいつも出荷できるキノコ畑はラスプ村の近くへ作り、パインダケやトリュフダケなどの高級食材のキノコ畑は、実際にパインダケやトリュフダケがよく取れるポイントの周辺をキノコ畑にすればいいだろう。
森の中を小一時間歩いたが、嫁たちはピクニック気分だった。
キノコ畑の候補地に目星を付け、森に来た主要な目的を達成したので、あとはフリーだ。
俺は、精霊たちが喜ぶだろうと言うことで、森の中にあるぬる湯の温泉に連れて行くことにした。この温泉は人肌くらいの温度で、心地よく長時間使っていられる。
透き通ったぬる湯は微発泡なので、浸かっていると体に小さな泡の粒が無数に付く。これがプチプチと弾けて心地よい刺激となるのだ。
狩りの帰りには、ちょくちょくここの温泉に来て、ゆっくり浸かっていた。このぬる湯に浸かったまま、ぼーっとして、しばし時を忘れるのは、大層心地よかった。
案の定、精霊たちは着ていたものを脱ぎ捨て、温泉に飛び込んだ。一瞬、お姉様方もそうならないかなーと考えてしまったことは心の奥にしまっておく。苦笑
「よし、じゃぁ俺も。」俺は装備を外して、ぬる湯の温泉に浸かった。ああ、久ぶりだ。
すると何と言うことでしょう。
お姉様方が装備を外して、脱いでいるではないか!何の躊躇いもなく下着まで脱ぐと、たわわなメロンボールが、俺の目を釘付けにしたのは言うまでもない。
そして、そのままお姉様方も温泉に入って来た。おー、結局そうなったではないか。ラッキー♪
「あら、随分ぬるいわね。」
「うわー、細かい泡が纏わり付いて来るじゃんさー!」
「うむ、これは心地よいな。このまま眠ってしまいそうだ。」
「ところで、ゲオルクさん。視線に遠慮がございませんわ。」
「お構いなく。ってか、眼を逸らすの、無理。」
「呆れた。開き直りましたのね。」
「そりゃいつものことじゃないか。ジュヌ、ゲオルクにそれを言っても無駄だよ。」
「そうだな。ここまでガン見されると、むしろ潔くて清々しいとさえ思えて来るな。」
「うわー、ベスも理解あるねー。でもまぁ、ゲオっちだしねー。」
「ゲオルク君、よかったわね。」
木漏れ日の中で皆の笑い声が響く。長閑である。
いよいよ明日は国境の町、ミュンヒェーに向けて出発である。その前に、森の温泉でリフレッシュした俺たちは、しっかりと英気を養うことができた。
森から実家に戻る頃には日も暮れて来て、東の空に月がくっきりと昇って来た。ああ、今日は満月か。それにしてもでかい。今夜はスパフルみたいだな。
満月をフルムーン、月が最もが近付いて大きく見えるのをスーパームーンと言う。その両方が重なると、スーパーフルムーン、略してスパフルムンなのだ。俺が考えた。笑
スパフルの夜は、女性はあっち系のスイッチが入りやすくなる。今宵、実家なのが残念だ。流石に両親と弟のアルベルトがいる中で、お姉様方とそう言うことはできないしな。苦笑
帰宅すると、ちょうど夕餉の準備ができたとこで、すぐに皆で夕餉となった。アル以外は、晩酌しつつの夕餉だ。
母さんも父さんに付き合ってそこそこ呑むし、すっかりわが家に馴染んだお姉様方も、もちろん遠慮などせずに、普通に晩酌に加わっている。
ビールはヴァイツェン、つまみは枝豆他、夕餉のおかずの品々だ。
今宵は、精霊たちも呑むというのでヴァイツェンを呑ませてやった。もちろん俺からの口移しでだ。
第三形態になった精霊たちは、酒を呑むようになった。ただし、俺から口移しでないと呑まない。そして、口移しで酒を呑ませるとすぐに全身が輝く。これは、魔力が満タンになった証だ。
魔力は体液に存在し、俺は普段はキスによって、唾液に含まれる魔力を精霊たちに供給しているのだが、酒を含ませると、魔力供給の効率が上がる。どうも酒には体液中の魔力を増幅する効果があるようなのだ。これをルードビッヒ教授へ報告したら、相当スイッチが入っていた。
そう言えば酒の古代語はスピリタス。精霊を意味する古代語と一緒だ。ちなみに、俺たちのパーティ名、スピリタスは精霊を意味する古代語から取っている。
精霊と酒がどちらも古代語でスピリタスと言うのは、ひょっとすると、スピリタス=酒は、スピリタス=精霊への魔力供給を増幅するのに由来しているのかもしれないな。
俺からバイツェンを口移しで貰って呑んだ精霊たちが輝くのを見て、アルのスイッチが入った。
「アルもやるー!」
「アル、子供は、お酒はダメよ。」
「やー、アルもツリたちを光らすのー!」
「ヒルダ、まぁいいじゃねぇか。呑まなきゃよ。ちょっと口に含むぐれぇ大事ねぇって。」
「カール、あんたまたそんなこと言って!
子供の頃のゲオルクに晩酌付き合えって言って無理やり呑ませてとんでもないことになったでしょう!」マジか!
「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよな。無理やりじゃねぇぞ。ゲオルクは、喜んで呑んでたじゃねぇか。それに、その後だって、ゲオルクがちょっと陽気になって、燥いだだけだろ。」
「その後、ひっくり返って熱出したじゃないの!」
「ガキはすぐに熱を出すんだよ。別に酒のせいかは分からないだろ。」
「どこの世界に子供に酒を勧める親がいるってのよ。」
「そんなの東部じゃ当たり前だ。俺だって親父からそう仕込まれたんだ。大体、酒は命の水とも言うんだぞ。酒を呑めない男なんて、まともな東部の男じゃねぇ。」
「ちょっと、東部のせいにしないでよね。まっとうな東部の人間は子供に酒を呑ませないわよ。」え?そうなの?
言い合いになる父さんと母さん。それでこの後、仲直りの儀式だとか言ってイチャイチャしだすんだ。うん、懐かしい。笑
「なぁ、父さん、母さん、ちょっと聞いていいか?大人が付いてたら子供が酒を呑んでもいいってルール、あれはまさかうちのローカルルールか?」
「違うわよ。」
「じゃぁやっぱ東部のローカルルール?」
「何言ってんの!カールだけのルールに決まってるでしょう!」マジか!
「いや、ゲオルク。わが家のルールだ。お前も男なら息子はそうやって育てろ。俺やお前の爺さんのようにな。」なぜか父さんがサムズアップをしている。
んぐ、んぐ、んぐ。ぷはぁ~!そう言ってる間にアルがヴァイツェンに手を出していた。
「キャー、アル、何やってんの!」母さんが悲鳴を上げる。
「いい呑みっぷりじゃねえか!流石、俺の息子。」父さんは逆の反応をしている。笑
その後、アルはコテっとひっくり返って、すやすやと眠り出した。
ジュヌさんが状態異常からの回復魔法を掛けて、アルの酩酊状態を回復してくれたのだが、それを見ていた母さんは、ジュヌさんにもの物凄く感謝し、父さんは引きつって、俺には絶対にその魔法を掛けないでくれと、ジュヌさんに懇願していた。笑
夕餉の後の寛ぎタイム。
さっきのアルへのお酒云々で揉めた父さんと母さんは、仲直りの儀式を始めた。何のことはない、ふたりでイチャイチャしてるだけなのだが…。苦笑
「ちょっと、父さん、母さん。俺たちがいるのに何イチャついてんのさ。」
「ゲオルク、喧嘩の後は仲直りが大切なのよ。私たちがこうやって仲直りするのは、あんたも知ってるでしょう?いまさら何言ってんの。」
「いや、だってアルもいるしさ。」
「眠っちまってるだろうが。」
「いや、皆もいるしさ。」
「うるせぇなぁ。羨ましかったらお前もイチャイチャすりゃぁ、いいじゃねぇかよ。
よう、嬢ちゃんたち、この頭の固い馬鹿息子を天国に連れてってやってくんな。」
「何言ってん…、」
「「「「「はい。」」」」」
「え?」
お姉様方は、父さんと母さんのイチャイチャを見てスイッチが入ったらしい。そう言えば、今宵は女性のあっち系のスイッチが入りやすくなるスパフルムン(=スーパームーンでフルムーン)だった。
そのまま拘束された俺は、お姉様方に、俺の部屋に引きずり込まれ、ひん剥かれてあんなことやこんなことを…。ああ、もうお婿に行けない身体にされてしまった。笑
マイドラゴンは、ホワイトブレスを吐いてくたっとなるたびに、ジュヌさんの回復魔法とカルメンさんのバフの術で繰り返し叩き起こされ、俺は何度も何度も天国へと引きずり込まれたのだった。
最後になるが、この夜、お姉様方の魔力量の上限が100ずつ上がったことを、付け加えておく。
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設定を更新しました。R4/6/12
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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