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第5章 外国編
心の叫び2
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自身の抱え込む心の闇。それを全て叫ぶように吐き出したアゼル。苦しい思いをさせられて、今もそれが原因で理不尽な思いをさせられた末に極限状態になりかけたのだろうか。言い切ったのか、息を切らしたアゼルの目には涙が浮かんでいた。
「ハアハア……!」
「あ、兄上……」
「…………」
リオルは、初めて聞いたアゼルが抱える心情を聞いて返す言葉が見つからなかった。困惑した顔で兄を見つめるリオルは、いつの間にか彼女が相手していた触手が動きを止めていることにすら気づかない。他はそうではないというのに。
そんな事実に真っ先に気付いたローグは危機感を覚えた。
(触手が止まった? リオさんが相手にしてたやつだけ? これは寄生生物とアゼルの意思が繋がっているのか?)
ローグは嫌な想像をした。寄生生物とアゼルの意思が繋がっているとすれば、アゼルの精神が悪い方に傾いた可能性を意味する。魔法をかけ続けるために魔力を節約したのが裏目に出てしまったのかもしれない。
「兄上、初めて私に悩みを打ち明けてくれたな」
「リオル……」
「何て言えばいいのか分からなかったが、まず先にこれだけは言わせてほしい。「誰とも共有できもしないし、誰にも打ち明けられる人がいない」なんて思って欲しくなかったな」
「……」
「言っては悪いが、確かに兄上は私達に劣っているし、性格も悪いから悪口を言われて当然だ。だけど、それは兄上自身も理解していたってことではないのか? それを理解していたから苦しんできたって……」
確かにアゼルは己にも非があるようなことを発言していた。そして、そのことでも苦しんでいるとも。
「どうして、どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ? 私達は家族じゃないか。せめて父上にでも相談すれば……」
「そんなことできるか! 僕は、腹違いのお前を蔑ろにしてきた! それでお前も僕を避けてきただろう! 父上だってそうだ、僕に期待なんかしてなかった! 今のお前やサーラ、周りのみんながな!」
「そ、それは……」
「家族だと? 僕の家族は母上だけだった! あの人だけが僕の支えだった! それなのに、みんなして僕や母上を蔑ろにしたんだ! それを王妃の葬儀の差で見せつけられたよ!」
「あ……」
王妃の葬儀。それは第一王妃と第二王妃のことを指すのだろう。アゼルの母は病死、リオルの母は戦死している。その二人の葬儀に大きな差があったのは確かだった。少なくともどちらの葬儀のことも知っている者からすれば間違いないのだ。
「兄上、あれは……」
「家族だっていうなら、何で差をつけさせてくれるんだろうな。母上の死を悲しんでくれたのは僕の他にいたのか? いないだろ! なのに、僕はお前の母が死んで不思議と悲しみを覚えたよ。彼女は何故か僕のことを気にかけてたからな」
「! 母の死を悼んでくれていたのか!」
リオルは大きく目を見開いて驚いた。アゼルが第二王妃アネーシャの葬儀に参加していたことを知っていたが、本気で悲しんでいたのかはリオルは分かっていなかったのだ。
「それに比べてお前は、お前たちはどうだ! 僕の母上の死が悲しかったか、つらかったのか、悼んでくれたのか!? そんなことなかっただろう、僕は知っているんだ!」
「そ、そんなことは……」
「そんなことはないと言うつもりか? さっき、言ったじゃないか。『母の死を悼んでくれていたのか』ってさ。驚いてそんなこと言うってことは、お前は違うってことじゃないか!」
「!? あ、あ…………」
確かにリオルはアゼルの言っていた通り驚いていた。アゼルの言葉に嘘はない。リオルには嘘が効かないのだから。だからこそ、アゼルが第二王妃の死を悲しんでいたことに衝撃を受けたのだ。
葬儀の日に、アゼルが参加しているのを見て、一緒に悲しんでくれた『かもしれない』程度にしかリオルは思っていなかったのだ。リオルの母の葬儀に関しては。本気で悲しんでいるかどうかまではリオルにも分からないのだ。
「あ、兄上……」
(兄上は、私の母の死を、悲しんでいた……? 母上は、確かに兄上にも構っていたが、邪険にされてたはず……。それに、兄上はうっとおしがって……それは違ったのか……?)
リオルは実の母とアゼルのやり取りを思い起こす。リオルの母にして第二王妃アネーシャが、アゼルを積極的に構うようになったのは、第一王妃アリアドネが無くなってからのことだった。母親を失った悲しみでアゼルが自棄になったことを心配したアネーシャだったが、アゼルはそんなアネーシャのことを拒絶していたように見えた。
(……もしかして、兄上はそこまで悪く感じては無かったのか? 母上の努力は無駄ではなかったのか? それに比べて私は……?)
リオルは兄の本音を聞いて、自身の思いを語って、母親のことを話に持ち出されて、リオルは混乱した。
「ハアハア……!」
「あ、兄上……」
「…………」
リオルは、初めて聞いたアゼルが抱える心情を聞いて返す言葉が見つからなかった。困惑した顔で兄を見つめるリオルは、いつの間にか彼女が相手していた触手が動きを止めていることにすら気づかない。他はそうではないというのに。
そんな事実に真っ先に気付いたローグは危機感を覚えた。
(触手が止まった? リオさんが相手にしてたやつだけ? これは寄生生物とアゼルの意思が繋がっているのか?)
ローグは嫌な想像をした。寄生生物とアゼルの意思が繋がっているとすれば、アゼルの精神が悪い方に傾いた可能性を意味する。魔法をかけ続けるために魔力を節約したのが裏目に出てしまったのかもしれない。
「兄上、初めて私に悩みを打ち明けてくれたな」
「リオル……」
「何て言えばいいのか分からなかったが、まず先にこれだけは言わせてほしい。「誰とも共有できもしないし、誰にも打ち明けられる人がいない」なんて思って欲しくなかったな」
「……」
「言っては悪いが、確かに兄上は私達に劣っているし、性格も悪いから悪口を言われて当然だ。だけど、それは兄上自身も理解していたってことではないのか? それを理解していたから苦しんできたって……」
確かにアゼルは己にも非があるようなことを発言していた。そして、そのことでも苦しんでいるとも。
「どうして、どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ? 私達は家族じゃないか。せめて父上にでも相談すれば……」
「そんなことできるか! 僕は、腹違いのお前を蔑ろにしてきた! それでお前も僕を避けてきただろう! 父上だってそうだ、僕に期待なんかしてなかった! 今のお前やサーラ、周りのみんながな!」
「そ、それは……」
「家族だと? 僕の家族は母上だけだった! あの人だけが僕の支えだった! それなのに、みんなして僕や母上を蔑ろにしたんだ! それを王妃の葬儀の差で見せつけられたよ!」
「あ……」
王妃の葬儀。それは第一王妃と第二王妃のことを指すのだろう。アゼルの母は病死、リオルの母は戦死している。その二人の葬儀に大きな差があったのは確かだった。少なくともどちらの葬儀のことも知っている者からすれば間違いないのだ。
「兄上、あれは……」
「家族だっていうなら、何で差をつけさせてくれるんだろうな。母上の死を悲しんでくれたのは僕の他にいたのか? いないだろ! なのに、僕はお前の母が死んで不思議と悲しみを覚えたよ。彼女は何故か僕のことを気にかけてたからな」
「! 母の死を悼んでくれていたのか!」
リオルは大きく目を見開いて驚いた。アゼルが第二王妃アネーシャの葬儀に参加していたことを知っていたが、本気で悲しんでいたのかはリオルは分かっていなかったのだ。
「それに比べてお前は、お前たちはどうだ! 僕の母上の死が悲しかったか、つらかったのか、悼んでくれたのか!? そんなことなかっただろう、僕は知っているんだ!」
「そ、そんなことは……」
「そんなことはないと言うつもりか? さっき、言ったじゃないか。『母の死を悼んでくれていたのか』ってさ。驚いてそんなこと言うってことは、お前は違うってことじゃないか!」
「!? あ、あ…………」
確かにリオルはアゼルの言っていた通り驚いていた。アゼルの言葉に嘘はない。リオルには嘘が効かないのだから。だからこそ、アゼルが第二王妃の死を悲しんでいたことに衝撃を受けたのだ。
葬儀の日に、アゼルが参加しているのを見て、一緒に悲しんでくれた『かもしれない』程度にしかリオルは思っていなかったのだ。リオルの母の葬儀に関しては。本気で悲しんでいるかどうかまではリオルにも分からないのだ。
「あ、兄上……」
(兄上は、私の母の死を、悲しんでいた……? 母上は、確かに兄上にも構っていたが、邪険にされてたはず……。それに、兄上はうっとおしがって……それは違ったのか……?)
リオルは実の母とアゼルのやり取りを思い起こす。リオルの母にして第二王妃アネーシャが、アゼルを積極的に構うようになったのは、第一王妃アリアドネが無くなってからのことだった。母親を失った悲しみでアゼルが自棄になったことを心配したアネーシャだったが、アゼルはそんなアネーシャのことを拒絶していたように見えた。
(……もしかして、兄上はそこまで悪く感じては無かったのか? 母上の努力は無駄ではなかったのか? それに比べて私は……?)
リオルは兄の本音を聞いて、自身の思いを語って、母親のことを話に持ち出されて、リオルは混乱した。
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