【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)

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第3章 王都防衛編

第75話 聖地巡礼

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 今日は月に一度の聖地巡礼の日だ。それはオタクがアニメや漫画の聖地に行くことではなく、神樹に祈りを捧げて平和に感謝する行事である。

 セフィロト教の聖地は神樹上部の南側にある。中心にある王都の真南だ。

 俺は漆黒の鎧を着た団長ゼロを操作して聖地へおもむいていた。

 まず見えてきたのは巨大な一対の宮殿のような建造物だ。双子のような建物で、両方とも天辺てっぺんにはドーム状の丸い屋根があり、その先に十字架が人々を見守るようにそびえ立っている。

 それらは王家の霊廟れいびょうと聖人の聖廟せいびょうであり、内部には歴史の貢献者達がまつられている。かつて神樹を発見し、王国を作り上げた王様と神父もそこに眠っているという。

 二つのびょうを囲む壁は、救済の壁と呼ばれていて御神体の木が聖地を守護するように根を張っている。セフィロト教信者達はその壁に向かって祈りを捧げるのだ。

 団長ゼロを動かして壁の周りを観察する。壁に触れながら祈祷きとうしたり、布を引いて土下座のように頭を下げていたりして誰も彼も真剣に祈っている。

 さらに観察していると、見知った顔が何人もいるのが見えた。

「マルクト王国のみんなが毎日おいしいご飯を食べられますように」

 俺の屋敷の近くに住む少女ムギッコだ。金髪三つ編みがかわいい。いつもパンをお裾分けしてくれるいい子。

 うんうん、少女らしいお願いでいいなぁ。

 続いて見つけたのは女王の近衛兵シトローンだ。相変わらずの巨漢きょかん一際ひときわ目立っている。

「どうかダーク老師の弟子になれますように」

 いつもと変わらずNo.8のダークにご執心しゅうしんのようだ。

 つーか、七夕じゃねぇんだぞ。国の平和を願うとか神に感謝とかしろよ。

 シトローンの近くでは、女王マルメロも両手を胸の前でからませて願っていた。金髪ロングで、碧眼へきがんの瞳が綺麗。ここだけ見たら聖女が勇者でも召喚しているようで神秘的だ。

「聖騎士団がわらわと遊んでくれますように」

 うんうん、少女らしくていいねぇ……でもお前女王だよね? 国の将来を考えろよ。

 次に見つけたのは豚鼻の中年キャロブゥ。貧民達のボスで、No.99ポテトの熱狂的信者だ。聖教ポテトの教祖でもある。コイツ属性多過ぎだろ。

「ポテトさんが幸せに暮らせますように。あとポテトさんの人形とポテトさんの絵とポテトさんの鎧のレプリカを誰か作って販売してくれますように。金に糸目は付けませんぜ」

 ただのオタクじゃねぇか! つーか、さっきから私利私欲のやつしかいねぇ! もっと神に感謝しろ!

 あきれていると、今度は知らない人間が地面に頭をガンガンぶつけながら祈りを捧げていた。

「聖騎士団死ねぇぇ!」

 ただのシンプル悪口!

 聖騎士団は人気になってきているが、まだまだアンチも多い。いや、人気だからこそアンチも増えるのか。暗殺未遂も絶えないし勘弁してほしいところだ。

 世の中の不条理さに内心なげきながら俺も壁に近づいて祈りを捧げる。

「からあげやトンカツが食べたいです。誰か開発してくれますように」

 え? 俺も私利私欲? いいんだよ。二度も国を救ってるからな! ギャハハ!

 自分に甘い俺。そんなことを考えていた時だった。

「警告! 警告! 巨獣発生! 巨獣発生!」

 突然の警報アラームに肩が跳ねた。神樹の周辺に配置しておいた鎧兵が巨獣を発見したようだ。少し徘徊はいかいしている程度の個体ならこの音は鳴らない。鳴るのは神樹に急接近している時だ。

 俺は早鐘はやがねを打つ心臓を落ち着かせながら急いでモニターを切り替えた。
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