【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)

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最終章 聖戦編

第131話 デュラハン戦3・宰相ルシフェルと北方騎士団団長グレイプニル

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 王都の東で首なし騎士デュラハンに苦戦していると、宰相さいしょうルシフェルと北方騎士団団長グレイプニルの部隊が加勢におもむいていた。

「ニートン、キャロブゥ、よく時間を稼いだ。後は任せるといい」

 蛇の入れ墨の男ルシフェルが言った。風に揺れる金の長髪が絵になる。

 その言葉に反応したのはデュラハンだった。

「おやおや、ルシフェルではありませんか」

「……教皇聖下せいか

「あなたは優秀です。殺すのは惜しい。私の手足となり共に行きませんか?」

「教皇聖下、おしたいしておりました……本物のホロウ教皇聖下はな。お前は違う。ただの化け物の下につく気はない」

「フフフ、残念です。では天のさばきを受けなさい」

 幅広はばひろの大剣を振るい、斬撃をルシフェルひきいる部隊へ飛ばした。

「東へ展開!」

 ルシフェルのよく通る声が響く。彼の能力は音を増幅させること。ルシフェルはヘビの一族で厳密には果実の一族ではないが、禁断の果実戦争に参加していたいにしえの種族なので、まぁ親戚しんせきのようなものだろう。

 そんな彼の操る鎧兵が難なく斬撃を避けた。鎧兵の群れは一頭の獣のように統率が取れている。鎧兵は声で指示すると上手く聞き取れないのかヘンテコな動きをすることがある。しかし、ルシフェルの動かす兵は一切それがない。彼の能力の賜物たまものだろう。

「化け物よ、一応聞いておく。本物の教皇はどうした?」

「ククク、コリコリしていて美味しかったですよ。人間とは実に美味です。是非繁殖はんしょくさせたいですねぇ?」

「ゲスめ。地獄に送ってやろう」

 土鎧兵がとげの弾丸のようになって敵へと迫る。

 が、首なし馬の体から放出された闇の炎で防がれた。

「馬が厄介やっかいだな。グレイ、合わせろ」

「了解!」

 後ろでサポートに回っていたブドウ酒色の髪のグレイプニルが返事をした。

 彼はブドウの一族。能力は先読み。未来視の劣化版と見せかけて対象をしぼればはっきりと見えるらしい。

「行くぜ!」

 グレイが風鎧兵をかまいたちのような飛ぶ斬撃に変えた。

「ほう」

 デュラハンが首なし馬をって避ける。刹那せつな

 馬に紫電しでんが走った。ルシフェルが複数の雷鎧兵を雷撃に変えて放ったのだ。

「なんと!?」

 デュラハンが驚く中、馬がしびれたのか動きが止まる。

 俺が以前にデュラハンと戦った時、雷攻撃は通用しなかった。しかしそれはデュラハン本体の話であり、馬の方は試していなかった。ルシフェル達には事前に伝えておいたので使用してみたのだろう。

すきあり!」

 待ってましたと言わんばかりにグレイが火鎧兵を馬の真後ろに置いていた。有無を言わさず爆発。

 爆煙が晴れると、首なし馬がその場に倒れて粒子りゅうしとなって消えかかっていた。どうやら馬だけはれたようだ。

「フフフ! いいですねぇ! 楽しいですよ!」

 愉悦ゆえつの言葉を吐きながら馬から飛び降りたデュラハン。鎧兵へと斬撃を飛ばす。

「馬鹿の一つ覚えだな!」

 グレイの風鎧兵の斬撃で相殺そうさい。さらに余った斬撃が敵に迫る。

「手数で勝てると思わないことです!」

 鎧兵の攻撃を虚空こくうから出した闇のマントで吸収。

「面白い。だが」

 ルシフェルのつぶやきと同時、新鎧兵である“光鎧兵”が周囲を明るく照らした。

「なに!?」

 敵の闇が弱まる。

「やはりな、自身の鎧の中にある影を使っていたか」

 なるほど、光で影を減らして弱体化か。

「さすがルシフェル。あなどれませんねぇ……!」

 感嘆かんたんの意を表するデュラハン。

「俺も忘れんじゃねぇぜ!」

 グレイがアピールしながら全方位から爆撃。

 煙の一部が裂けて、人間大になったボロボロのデュラハンが出てきた。

 そうか大きさを可変かへんできるんだったな。

 マズイな、逃げられるか? 俺の脳裏に不安がよぎった瞬間。

「甘いぜ! てめぇの動きはお見通しだっ!」

 先読みできるグレイの兵がチビデュラハンに迫っていた。

「——おや、チェックメイトですか。先に神の元でお待ちしておりますよ」

 死をさとったデュラハンが静かに発した。

「まずは本物の教皇に謝罪しとけよ」

 風の斬撃がデュラハンの魂とでも言うべき青い火の玉に直撃。真っ二つになった。

 直後、デュラハンはちりとなり、この世から完全に消えさった。
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